税務官公署出身会員に聞く

国際税務の知識と経験を生かし関与先を支援したい

山本光一国際会計事務所 山本光一(東京都心会四谷支部)
山本光一会員

山本光一会員

国税専門官として27年の勤務を経て、平成18年に独立開業した山本光一会員。英語力を生かし、「国際会計事務所」として、関与先の繁栄に向けた支援を目指すという。

海外取引関連の調査に携わる

 ──これまでのご経歴を教えていただけますか。

 山本 大学時代は英語サークルに入り、基礎の発音矯正から始めて、英語劇、ディベート、討論などに毎日明け暮れました。「英語を生かして、日本にある外国法人や海外取引のある企業の調査に挑戦したい」とアピールしたのが功を奏したのか、昭和52年に国税専門官試験に合格。東京国税局総務部に採用されました。
 葛飾税務署、東京上野税務署で法人課税部門を担当したあと、東京国税局調査第二部に配属され、2年後に調査第一部の特別国税調査官(特官)付きに配属されました。上場会社に対する海外取引関連の調査を担当してだいぶ鍛えられました。
 その後日本橋税務署では貿易担当でした。当時は国際専門官ではなく貿易担当がいわゆる国際取引の案件を扱っていたので、私も貿易会社を中心に調査しました。
 再び調査第一部の特官付きになったときは、機動班で、商社などの海外取引調査を担当しました。ニューヨーク・マイアミに海外出張に行ったときが、私の最高潮だったと思います。

 ──どんなときに、語学力が生きましたか。

 山本 あるとき英文の契約書の翻訳をしていたら文法の一部に誤りを見つけて、そこから芋づる式に不正が発覚したことがありました。それが評価されたのか、「みんなの前で発表してくれ」と言われました。
 それから、税務大学校の「国際租税セミナー」の選抜試験に合格して「一般コース」の研修を受け、1年後「特別コース」にも通いました。タックスヘイブン税制、外国税額控除制度などの国際税務の他に、一般的な貿易実務や英会話の授業などもあって、学生の頃のように楽しく勉強したことが、その後の事務所経営にも生きています。

念願の海外子会社を持つ企業に関与

 ──開業のきっかけはどんなことでしたか。

 山本 地元で「ある税理士が後継者を探している」と聞き、平成17年に退官して、いったんその事務所でお世話になりました。結局、承継は円満に辞退して、平成18年に開業しました。

 ──関与先拡大は、どのように取り組まれたのですか。

 山本 開業後、すぐにホームページを開設しました。さっそく2週間ほどで1件関与が決まって、翌月も同様に1件増加。最初は、こんなに簡単に増えるものかと驚きました。ホームページは妻が制作したので、女性ウケが良かったのかもしれません。
 セミナーの開催を通じて関与につながった事例もありました。ただ、開業直後こそ順調に増えましたが、途中鳴かず飛ばずの時期もあって、2年間で10件ほどだったと思います。
 最近では、ホームページ経由で税務調査に関するご相談を通じて、売上げ約40億の中国とアメリカとメキシコに子会社を持つ企業の関与が決まって、いよいよ国際色が出てきたと思います。それから、経営革新等支援機関の認定を受けていたので、「会社を経営するにあたって、認定支援機関の税理士にお願いしたい」と言われて、関与が決まったケースもありました。現在の関与先は、法人25件・個人5件です。

国際税務のポイントは租税条約

 ──「国際会計事務所」を看板に掲げられたのはいつ頃からですか。

税務官公署退官者会員増強連絡会の支部代表委員委嘱状

事務所が入居するビルは、新宿御苑の向かい側にある。
(山本会員の隣は女性スタッフ)

 山本 開業から2年後、新宿に事務所を移転して「山本光一国際会計事務所」としました。きっかけは、大学の同期会に顔を出したときに、たまたま話をした同期が税理士法人の代表社員で、「事務所の一角を貸すから来ないか」と誘われたことで、「国際税務についていろいろ相談に乗ってほしい」とのことでした。関与先拡大といっても、一人ではじめた事務所なので間口は狭くてもいいわけです。すべての人に当てはまるとは思いませんが、私の場合は得意分野をアピールしたことで、自分の知識と経験を必要としている関与先から選ばれる確率が高くなったと思います。

 ──国際税務を扱う際のポイントはなんですか。

 山本 租税条約を確認することです。相手国の税制を知ることも大事。各国で税制が違うので、日本の税制だけで安易に判断してはいけません。最近相談を受けた事例も、海外に子会社を設立したいという内容でした。タックスヘイブン税制や移転価格税制を踏まえて、しっかりした会社を設立することが必要です。

 ──今後の抱負をお聞かせください。

 山本 OMSは最近使い始めたところで、TKC自計化システムの件数はまだ少ないですが、私自身、(株)TKCの担当のSCG社員にも助けてもらいつつ、ゆくゆくはすべて移行する決意です。
 これまでTKC会員として、事務所経営の成功事例を数多く目の当たりにしてきましたし、周りにはいつでも門戸を開いてくださる素晴らしい会員が多くて安心です。これからも、国際税務に重点をおきながら、TKCシステムを活用して関与先の繁栄のために誠心誠意努めたいと思います。

(TKC出版 益子美咲)


山本光一(やまもと・こういち)会員
平成17年税理士登録、平成18年開業、同年TKC入会。趣味はテニス。59歳。
山本光一国際会計事務所
 住所:東京都新宿区新宿2-5-3 AMビル10F
 電話:03-3226-0988

(会報『TKC』平成25年7月号より転載)