システム移行

企業の成長に対応し地域社会に貢献できる会計事務所に

システム移行座談会

とき:平成26年6月30日(月) ところ:TKC東京本社

他社システムからTKCシステムへの完全移行を果たした中堅・大規模事務所を経営する3名の会員が、システム移行後の事務所経営と今後のビジョン、会計事務所の役割などについて幅広く語り合った。

出席者(敬称略・順不同)
 中村茂税理士事務所 中村 茂会員 68歳(TKC東北会岩手県支部)
 あがたグローバル税理士法人 小林邦一会員 64歳(TKC関東信越会長野支部)
 松江会計事務所 福田龍太会員 43歳(TKC中国会島根県支部)

司会/TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会
 副委員長 甲賀伸彦会員(TKC北海道会)

座談会

「内勤専門者」はつくらず男女同様に巡回監査を担当

 ──TKCシステムへの移行をされた中堅・大規模事務所を経営されている皆さまにお集まりいただきました。まず自己紹介・事務所紹介をお願いします。

中村茂会員

中村 茂会員

 中村 東北会岩手県支部の中村です。県北、青森県との県境に位置する二戸市に事務所があります。職員数は私を入れて10人ですが、一人休職中のため9人で仕事をしています。男性が6人、女性が3人。原則として女性も含め、全員巡回監査担当です。したがって内勤専門はおらず、男女同じように仕事をしてもらっています。
 税理士になる前は税務署に勤めていまして(普通科24期)、定年退官して平成18年6月にあるTKC会員事務所を承継しました。関与先件数は法人145件、個人155件、合計300件。前の事務所から働いてくれているベテラン職員が多く、個性派集団の事務所です。

 小林 関東信越会長野支部の小林です。大学卒業後は監査法人に10年ほど勤め、昭和56年に地元の長野市に戻り父の会計事務所を引き継ぎました。
 現在では「あがたグローバル税理士法人」として税理士法人化し、東京事務所もあります。私を含めて3人が代表社員で運営をしていて、職員数は44人です。うち、税理士が12人、公認会計士が11人。両方登録しているのは私を含めて4人います。そのほかに中小企業診断士や社会保険労務士などもおり、正社員の半分くらいが国家資格保有者です。モチベーションアップにもなるので、できるだけ資格取得を推奨しています。ただ資格があるから報酬が多いとか地位が上だとかは一切なく、これはもう仕事ができるかできないかで評価しています。
 関与先数は、巡回監査先として法人が370件、個人が60件ほど。その他事業再生や事業承継、財務・事業デューデリなどのスポット業務が業務全体の約半分を占めているのも、事務所の特徴かと思います。

 福田 中国会島根県支部の福田です。もともと経営や事業に興味があったので税理士を目指しました。
 開業年数は、平成14年9月開業ですので12年目です。平成22年12月、二人の創業者が昭和47年3月に設立した事務所を親族外承継しました。職員が15名、創業者1名と私、合計17人です。関与先数は、法人266件、個人91件、合計357件です。ベテランが多く職員間の連携のとれた、成熟した組織です。

安定度と拡張性の高い中堅企業向けシステムが魅力

 ──TKC入会の背景は?

小林邦一会員

小林邦一会員

 小林 入会歴としては、実は30年近いんです。父の事務所を引き継いだ後、飯塚毅TKC全国会初代会長の理念に非常に感銘を受けて入会し、講演テープやCDもたくさん聞いていました。ただ、TKCへの全面移行を考えてはいたものの、スタッフ数が20人を超えてからはなかなか踏み切れなかったんですね。実際に業務負担がかかるのはスタッフですから、システム移行で過重な負担がかかってはいけないと考えていたんです。
 でも4年ほど前、機が熟してきたというか、そろそろ移行する時期に来たなと思ったんです。そこで本格移行の意思決定をして、2年をかけて完全移行しました。ただ巡回監査がまだきちっとできていないと感じているので、現在は、巡回監査率、書面添付、40日決算をすべて100%実践できるように、5カ年計画を立てて実行中です。

 ──機が熟した、というのは。

 小林 一番の要因は社会福祉法人会計システムにありました。4年ほど前、他社システムは社福など業種別会計への対応が十分に追いついていなかったんですね。新会計基準への移行という課題も出てきて、このままではとてもやっていけない。業種別会計もきちんと対応できるところにお願いしたいという話がスタッフからも出てきました。
 それに、うちは中堅規模以上のクライアントが多いのですが、TKCにはFX4クラウド(クラウド型財務会計システム)連結納税システム(eConsoliTax)という中堅企業向けの素晴らしいシステムがあり、システムの安定度が高い上に拡張性も備えている。これはつまり、企業が成長していった時にも途切れることなく一貫性を保ちながら対応できるということ。この安心感は大きかったですね。
 それに組織の人数が増えてくればくるほど、理念が大事になってきますよね。全員が共有できるものを持っていないと組織の一体化は図れません。TKCの場合は、理念を前提としてシステムも業務体系も研修体系も一貫していますので、全然齟齬(そご)がない。ならばもうTKCシステムへ一気に替えよう、ということにしたんです。

 福田 実は私の場合、創業者の二人は早くからのTKC会員で、TKCの活動にも熱心でした。私は承継にあたってTKCに入会した格好ですが、いまでは入会してとても良かった。小林先生のお話のように、理念とシステムがマッチしているので仕事が非常にスムーズに進む。とても効率が良くなりました。

 ──TKCシステムは、TKC会員が株式会社TKCと一緒に開発しています。TKC理念がそのままシステムになっているので、ブレがないんですよね。

 福田 はい。それに『TKC会報』などの月刊誌を読むと、また新たな気持ちで一カ月頑張れます。認定支援機関をはじめとした新しい制度にもTKC全国会はいち早く取り組んでいますので、私自身、非常に刺激を受けながら仕事ができています。

 中村 税務署を中途退官した同期がTKCに入会し、私の定年間際には電話を盛んにかけてきて「中村君、税務署辞めたら分かっているよね」と(笑)。
 私としても、毎月税務署に届く『TKC会報』を見ていて、平成18年当時の誌面では電子申告が盛んにとりあげられていましたし、書面添付も先陣を切って実践している。何より巡回監査が素晴らしい。もう従来型の記帳代行型事務所では時代遅れなんだなと感じていました。
 それに私は東京国税局管内や仙台国税局管内を転勤しましたが、行く先々で、活躍されている税理士、あるいは関与先件数が多い税理士はTKC会員が圧倒的に多かったんです。それだけクライアントから選ばれ、信頼される税理士がTKCには多いんだなと感じていて、退官前から「開業したらTKCかな」という気持ちでいましたね。
 ただ実は承継した事務所は他社システムを併用していて、記帳代行型の事務所でした。それで、承継を機に巡回監査型のTKCスタイルの事務所に替えようと。もともと個人の確定申告ではTPS2000を使っていたので、法人でもTPS1000(法人決算申告システム)を使うという方針にし、決算が終えたところから財務会計もTKCシステムへと切り替えていきました。移行はほとんど問題なくスムーズに進みましたね。

法令遵守で保守も万全 優良企業ほど価格より品質重視

 ──ところで、「TKCシステムは計算料が高い」とよく言われるんですが、実際に使われてどのように感じていらっしゃいますか。

 中村 関与先件数が少なかったり収入が少なかったりしたら、もしかしたら高めに感じる人もいるかもしれません。でも私は幸いにも、ある程度の件数を引き継いでいて一定の収入がありました。SCGも月に1回来てくれるし、親身に相談に乗ってくれる仲間もたくさんできた。これだけサービスを受けているのだから、そのくらい当たり前なのかなという感覚。私自身はあまり高いと感じないですね。

 小林 私は料金についてはあまり興味がないというか。経営者としてはよくないんですけど(笑)。それよりもTKCに完全移行したらもっと新しい業務開発をしていけるんじゃないかという思いが強かったですね。
 例えばシステム料等が安くなったら、結局「顧問報酬も安くて良いよね」という方向へ行ってしまうことの方が問題だと思うのです。それよりも付加価値の高い仕事をしていく姿勢を貫くことの方が、私は大事だと思います。こういう姿勢がなかったら、結局いちばん大事なクライアントに対して、きちっとした仕事をしなければいけないところを、少し安易な方向に流れてしまうのではないかと。

福田龍太会員

福田龍太会員

 福田 おっしゃるとおり、決して価格ではないと思います。TKCシステムは法令遵守がきっちりしていますし、保守も万全。関与先も事務所も安心して仕事ができるところがいいですよね。仕事の土台である会計システムがしっかりしていると、関与先さんの経理も会計事務所も、仕事がはかどる。それが結局は、「会計で会社を強くする」の第一歩だと捉えています。私はTKCシステムが、日本でいちばん良い税務・会計システムであると考えていますから、関与先にも勧めやすいのがありがたいですね。
 経営の意思決定が迅速な関与先は、やはり黒字になりやすい。リアルタイムで経営状況が分かりますから、仮に赤字になったとしても次の手が打ちやすいし、決算の時に分かるより選択肢が多く残された状態になる。それを端的に表したのが、「会計で会社を強くする」という言葉だと思うんですね。
 実は記帳代行も一部残ってはいたのですが、この言葉に出会ってから私も非常に納得しまして、関与先の自計化をより一層推進するようになりました。
 実際、FX2に移行したある関与先では、「TKCって高いと思っていたけども、この品質なら高くないですね」と経理担当の方もびっくりしておられたんですよ。優良関与先であればあるほど、価格面よりも品質を求めてくるんですね。

「カン」の良い社長ならFX2の良さを直観で分かる

 中村 違いが分かるというか、「カン」の良い社長はFX2の良さを直観で分かるようです。
 例えば、自営で建設業関連の仕事をしているある社長は、パソコンや機械などが好きで、関与前に他社システムで自計化していたんです。お客様からの紹介で関与することになり、FX2を入れてもらったんですね。そしてFX2から出した試算表を一目見た社長が、「こっちの方が細かい経営データが分かっていいね」と。システム利用料だけを考えれば若干高くなったと思いますが、コストの問題よりも「経営に役立つデータが得られるかどうか」で判断されたようです。その後成長を続け、昨年には業績アップに伴い法人成りしたんですよ。
 ただ、地方ではどうしてもパソコンに不慣れな方が多いもの。そうした方は市販の安くて簡単な会計ソフトに走りがちなので、その前に入力し易いe21まいスターなどの良さを伝えて、キャッチしていかないといけないと思っています。
 自計化推進は職員が担当していますが、関与先にパソコンを持ち込んで画面を見せるのが一番効果的なようです。それから特に初期指導が大事。ほんの少しのトラブルでも速やかに関与先に出向いて丁寧に指導・説明して信頼を得ていくことを心掛けさせています。

 小林 時代の流れもあるかと思いますが、社会全体が二極化していますよね。当然「安いもので良い」という考えもあって良いと思う。でも「きちんとした品質のものにお金を払いたい」という人もいる。両方のお客さまを選ぼうとすると混乱が出てくるので、どちらかに舵を切っていくべきだと思うんです。

「決算申告+α」の業務が求められている時代に

 ──現在の課題は何でしょうか。

 福田 事務所の課題は、巡回監査の精度を上げて書面添付の実践件数を増やすことと、継続MASシステムの活用によって、未来会計業務を拡大していくことが必要だと考えています。
 国の施策で、認定支援機関による経営改善計画策定支援業務が税理士の役割として位置づけられたこともありますし。中小企業経営者の方にとって会計事務所の存在意義は何なのか、ということを突き詰めていくと、私たちに望まれているのは決算申告「+α」の業務なのかなと考えています。その一つが、未来会計業務だと。だから継続MASシステムを有効活用していくことが必要だと強く思っています。

 中村 現在の課題としては書面添付の件数増と継続MASの利用件数の増加、そして認定支援機関としての経営改善計画策定支援業務の実績作り。これは喫緊の課題と考えています。
 税務署に正確な申告書を出すということが、昔の会計事務所の存在意義だったんでしょうけど、今そういう時代じゃないですよね。今TKC全国会では「7000プロジェクト」の達成を目指していますが、これは当然の流れだと思いますね。そしてその経営支援の成功例でもって、社会からもっともっと信頼を得ていくことが必要とされている気がします。

 小林 自計化はまだまだ道半ばなのですが、稲盛和夫さんとか松下幸之助さんとか、天才経営者と言われるような人たちは皆、会計を経営に活かしていますよね。天才経営者は、もう皮膚感覚で本能的に会計の意義、絶対的な必要性が分かるんでしょう。そうすると、これは私の反省を含めてですが、我々会計事務所はまだそのレベルには追い付いてないという気がします。
 まさに、「会計で会社を強くする」という機能を果たしていかない限り、我々会計事務所は社会に必要とされる存在にならないと思うんですね。ドラッカーの言葉の通り、組織とは社会に貢献するためにある。ということは、社会貢献できない組織は排除されていくわけです。
 時代が変わる中で我々税理士に要求されるニーズ、社会から必要とされる役割が変わってきている。税理士も変わっていかなければいけないですよね。

システムによるサービスの価値は利用側の力量で決まる

司会/甲賀伸彦副委員長

司会/甲賀伸彦副委員長

 ──皆さんのビジョンを教えてください。

 福田 TKC理念に勇気づけられて日々仕事をすることができています。このTKCの理念を絶えず思いながら、今後業務品質をより一層向上させて、いまから次の事業承継の準備をしていきたい。巡回監査の品質を上げて、書面添付の件数の拡大と、継続MASシステムの活用によって、未来会計業務の拡大を進めていきたいと思います。
 その前提としての自計化を進める余地がまだあるので、自計化推進に邁進していきたいと思っています。

 中村 10年後のビジョンとしては、税理士法人化してスタッフ20人くらいの規模にしたい。今の組織は各自に任せていることも多いのですが、やっぱりそれではいかん。理念に基づいてしっかりした組織を作って、現在よりも自計化率や書面添付割合、継続MAS利用率の高い、総合力のある安定した事務所づくりを目指したいという気持ちです。

 小林 職業会計人というプロフェッショナルを目指している人というのは、自分の力を発揮して社会貢献したいという気持ちが強い人が多いと思うのです。だから私は、それぞれが誇りを持って仕事をしながら自己実現できるような事務所にしたいと思って今までやってきましたし、これからもそういう事務所でありたいと思います。70歳で次の世代に法人を引き継ぐと言ってありますので、より組織的な経営体制へと今後持っていきたいと考えています。

 ──「これだけは伝えておきたい!」ということがありましたらご自由にどうぞ。

 中村 事務所を経営していくにあたっては、TKCは間違いないと、自信を持って後輩たちにも勧めたいと思います。税理士としても、TKC会員としても成功されている先輩会員の事務所を見学することもできるし、勉強会等で体験談を聞かせてもらえる。非常に勉強になることが多いんですね。これは「TKCならでは」だと思います。
 それからニューメンバーズフォーラムで若い人たちと一緒に交流できるし、分科会で新しく開業された若い先生からもアドバイスをいただける。素晴らしい環境が整っています。

 小林 TKCでは税務と会計の一気通貫を守るため、税理士業界の将来に向けたさまざまな手だてを講じてくれていますよね。我々TKC会員はそれらの恩恵をただ享受するだけではなくて、その意義をよく理解して、将来に投資していかなきゃいけないと思うんです。
 TKCからはもちろん良いシステムを提供してもらっていますが、それは我々が顧客に対してサービスを提供していく中の一つの要素であって、別にTKCシステムそのものだけでそのサービスの価値が決まるわけではない。結局はそのシステムを使ってサービスを提供する我々TKC会員のレベル、力量が問われてくると思うんですね。
 だから我々会員は今回のTKCの計算料値引きの決断を意気に感じて、もっともっとTKCシステムを理解し、活用して、各事務所の業務品質をより高めていかなければいけない。システム自体が良くても、きちんと活かせなければ結局は宝の持ち腐れになってしまうのですから。

 中村 意識改革をもっとしないといけないですね。我々TKC会員事務所、特に職員がもっとレベルアップしなきゃいかん。職員が力をつければおのずとクライアントに伝わるし、事務所も信頼を受けて「TKC会員事務所は品質が良いね」という評価へつながるわけですしね。

 ──TKCシステムを軸にしながら関与先から選ばれ、喜ばれる事務所を目指すということですね。皆さんありがとうございました。

(構成/TKC出版 篠原いづみ)

(会報『TKC』平成26年8月号より転載)