事務所経営

7000プロジェクトで地域の中小企業支援の空気が変わった!

【7000プロジェクト地域リーダー座談会】
 経営支援を標準業務とするため、継続して取り組もう!

とき:平成28年3月25日(金) ところ:TKC東京本社

平成28年3月末時点で、7000プロジェクトの実績は5000件を超え、全国利用申請件数の約5割に達した。4月以降のプロジェクト活動展開を前に、佐藤正行プロジェクトリーダーと、直近で実績の伸びている地域会のリーダー2名が集まり、これまでのプロジェクト活動の振り返りと今後の方向性についての議論を行った。

出席者(敬称略・順不同)
 佐藤正行(7000プロジェクトリーダー・近畿京滋会)
 温井徳子(東京中央会リーダー)
 湯川直樹(南近畿会リーダー)
  飯塚真規(TKC専務)

司会/赤平 順(7000プロジェクト推進支援本部事務局長)

7000プロジェクト地域リーダー座談会

早期の取り組みスタート、意義の浸透、周囲の協力が実績につながる

 ──7000プロジェクトも発足から2年経過し、各地域の環境も、活動開始当初とは変化してきたかと思います。
 まずは各地域での成果につながった取り組みについてお話しいただけますか。

佐藤正行会員

佐藤正行会員

 佐藤 まず近畿京滋会で取り組んだことは、「なぜ7000プロジェクトをしなければならないのか」という意義の浸透です。あとは声掛けと理事の率先垂範。研修会も相当行いましたね。
 そもそも近畿京滋会は、全国会のプロジェクト発足前からこの事業に取り組んでいた会員が10名弱おり、活動をスムーズにスタートすることができました。
 地域会の当初目標を達成した後、上積みした目標に向かって取り組んでいますが、まだまだ案件は出ると思っています。

 温井 東京中央会の温井です。私は昨年の8月に7000プロジェクトのリーダーというお話をいただきました。その時点で自分の事務所で5~6件実践しており、うちの事務所でこれぐらいできるのなら、多少お声掛けすれば取り組んでもらえるのかなと思っていました。
 まずは自分で動こうと、週に2カ所の会員事務所を訪問したり、支部長の協力を得て、個別相談会を10週連続で行ったりしました。それでも昨年の年末はなかなか件数が進まないという状況だったので、12月31日に「長文注意」とタイトルに付けた非常に長いメール(笑)を理事の方全員と、私が事務所訪問した会員、相談会参加会員に送って実践を呼びかけました。さらに年明けの賀詞交歓会でもお話ししたところ、共感いただける会員が増えはじめ、協力的な雰囲気が醸成され、地域会全体で非常に連帯感が出たように思いました。
 未だに地域会目標は達成できていませんが、昨年に種まきしたものが年明けに芽が出て数字も伸びはじめ、ワースト3からは脱却することができました。

 湯川 南近畿会の湯川です。南近畿会は近畿京滋会、静岡会に続いて、3番目に当初目標を達成しました。南近畿会が目標達成できた一つのポイントは、まず動き出しが早かったということです。
 実は7000プロジェクトが始まる前から当事業について地域会で研修やパネルディスカッションなどを行っていました。そういうことでプロジェクト発足後に先行して動ける体制があったのです。
 また、各県リーダーも就任いただいた時点ですでにご経験があり、推進活動を積極的にしていただけたことが、南近畿会が伸びた要因です。理事会もすごく協力的な雰囲気で、周囲の支援体制が大変充実していたことは、地域会リーダーとして本当にありがたかったです。

金融機関側でも当事業の認知度が上がっている

 ──当事業の一方の当事者である金融機関の反応はさまざまでしたが、各地域の状況を教えてください。

 佐藤 京都では、非常に前向きな金融機関があって助かりました。特に信用金庫メインの案件では、完全に職業会計人と一緒に取り組むことができたという印象です。信用保証協会の絡む案件では保証協会も一緒に取り組んでくれました。

 温井 東京はやはりメガバンクからの融資が非常に多かったので、最初は取り付く島もないという状況でした。そこで、まずは切り口を日本政策金融公庫(以下、日本公庫)との一行取引先に絞って、全部声を掛けてくださいと呼びかけしました。そうして取り組んだ結果、日本公庫の各支店と地域会の各支部長との協力関係ができ、お互いの訪問が活発になっていると聞いています。大きな金融機関はともかく、日本公庫や信用金庫とは、非常に地域会・支部との連携がうまくとれるようになってきたという実感があります。
 日本公庫からも会員事務所との連携が密になったと言っていただけましたし、融資先の状況が分かるようになったとも聞いたので、すごく良かったですね。

湯川直樹会員

湯川直樹会員

 湯川 今は7000プロジェクトも浸透してきましたが、当初は、経営改善計画策定支援事業そのものを地域の金融機関にもっと認識いただかないといけないという課題がありました。
 この課題に対して、近畿の4地域会で平成26年12月に地域金融機関をお呼びして、「7000プロジェクトフォーラム」を開催しました。そこでは当プロジェクト担当副会長の坂本孝司先生にこの事業の意義についてご講演いただいたほか、TKCの取り組みをご紹介して、認識いただくという活動をしました。
 それが功を奏したのか、今となっては地元の金融機関でこの事業をまったく知らないという反応はなくなってきています。
 まさしく佐藤先生が冒頭におっしゃった意義の部分が、金融機関の方にも届いて、会員の腹にも落ちたと思うんですね。金融機関と認定支援機関が連携して、中小企業を支援するのが当たり前の世界になるという一歩先を見据えた活動なのだという理解が進んだと思います。

経営者・金融機関・税理士の三者の連携のためにもモニタリングは重要

 ──モニタリングの段階に入っている案件も増えているかと思います。TKC会員事務所が行うモニタリングに対する金融機関の反応はいかがでしょうか。

 湯川 金融機関は、モニタリング会議の時点で直近のデータが出ているということで意外と喜んでくれています。そこにプラスして「この数字は、こういう要因でこうなっています」というコメントを「決算業績報告シート」に記入して示すと、ありがたいと感じてくれているようです。TKCの基本業務をしっかりやっている結果としてのモニタリングは評価されていると思います。

 佐藤 モニタリングに関しては、目標がある程度達成できているところと、目標が全然達成できていないところの2つに完全に分かれると思います。達成しているところに関しては、TKCシステムから出る資料を金融機関に郵送して終わりです。TKC会員にとっては、通常の月次巡回監査がモニタリングです。
 数字が未達成のところに関しては、事業の内容について聞かれますので、若干厳しい話にはなります。特にプロパー融資の多い先ではそうです。でも、件数はそんなに多くありません。だからモニタリングが事務所の通常業務を圧迫するという認識は全然ないですね。

温井徳子会員

温井徳子会員

 温井 金融機関の方からお話を聞くと、やはり融資先の業績を把握したいと。ところが現実には、毎月試算表を見せてくれる融資先は1割ぐらいしかないそうです。
 経営改善計画策定支援事業の制度上のモニタリングは年1回でもいいと思いますが、メイン行や残高の大きい金融機関には、試算表を毎月社長が持っていき、金融機関の方とコミュニケーションを取ってもらうといいと思います。
 私としては、社長にとって金融機関はそんなに敷居の高いところではないという発想に持っていきたいんですよね。これこそ7000プロジェクトの意義だと思いますが、税理士も含めて三者の連携で中小企業をよくしていくと認識してもらうためには、どうしても社長には金融機関と密な関係を構築してほしいのです。

TKCのフィンテックでモニタリングは新しい世界に入る

 ──TKCシステムでもモニタリング面で新機能を開発しているそうですが、飯塚専務からご紹介いただけますか。

飯塚真規専務

飯塚真規専務

 飯塚 いまフィンテックが注目されていて、クラウド会計ベンダーが金融機関と連携して、金融機関がクラウド会計のデータを見られるようにするという話が出ています。しかし、そこで見られる会計データは正確性・信頼性が担保されていません。
 TKCが考えているのは、TKC会員事務所が月次巡回監査を行って正確性を確保した会計データを、関与先さんの許諾を得た上で、TKCのデータセンターに伝送する際にOMS経由で金融機関にもモニタリングデータとして送って差し上げる仕組みを構築するということです。
 もう具体的な商談も進めています。これが実現すれば、金融機関にも大きなメリットがあります。まず毎月の実績の情報が来る、しかも紙でなくデータで来るということですね。いま金融機関は、パンチャーさんを雇って、決算書の内容を入力しているので、データで届くと本当にありがたいそうです。かつ、そのデータの中には予実の対比など、金融機関がモニタリングとして見たい情報をセットしてお送りできないかなと考えています。この仕組みをいろいろな金融機関に提案したいと思っています。

 佐藤 それは素晴らしいと思いますよ。これから各金融機関がフィンテックの活用に取り組むと思いますが、答えはないじゃないですか。何が正解なのか模索している中で、「TKCのフィンテックはこういうものです」と一つ出せれば、非常にインパクトは強いんじゃないですか。

 飯塚 何より重要なのは、先生方が月次巡回監査された信頼性の高い会計データだというところです。

 佐藤 モニタリングと言っても、経営改善計画策定支援事業の制度上のモニタリングと、金融機関の融資先に対する一般的なモニタリングがあります。今の話は一般的なモニタリングの方の話ですよね。TKC会員の場合は、どちらも一緒ですが、ここが本当に素晴らしいところだと思っていて、国が決めた制度のモニタリングと、TKC会員が毎月やっていることが、一致しているのです。これが中小企業経営力強化支援法なんですよ。これは外部から見るとなかなか分からないところですから。金融機関の方にどう分かっていただくかが大事ですね。

信用保証協会とはお互いの理解が進み協力関係が構築されている

赤平 順推進支援本部事務局長

赤平 順推進支援本部事務局長

 ──7000プロジェクトの活動を通して、信用保証協会との連携が大きく進んできたと思われますが、各地域における成果や連携の事例をご紹介ください。

 温井 東京は地域会が5会あるので、東京都心会の鈴木信二リーダーにまとめていただいて、5会で東京信用保証協会との連携を進めてきました。昨年の6月には「7000プロジェクトフォーラム」にもご出席いただきました。
 その後、東京中央会では、東京信用保証協会の本店・五反田支店とTKCのセンターで2、3カ月に1回ミーティングをしています。ただそれはまだ地域会の幹部だけの話ですので、今後は一般の会員と信用保証協会との相互交流を進めていきたいですね。

 湯川 私の事務所がある和歌山県の信用保証協会は、もともと経営支援に力を入れ始めていたなどの背景もあって、7000プロジェクトに対しても協力的でした。ただ、組織対組織としての連携までには至っていません。
 その理由の一つとして、TKC会員であったとしても、全員が同レベルの業務をしているわけではないということを言われました。これは私が今後の課題だと思っていることですが、税理士の中には経営改善や金融支援にあまり強くない方も当然おられます。金融機関や信用保証協会にもそれをご理解いただいた上で、地域で中小企業を支援していく土壌を作るという高邁な観点に立って、そういった税理士を鍛えていただきたいのです。そして地域として幅広く受け皿を作っていくというのが重要なのではないかと思っています。
 もちろんTKC全国会としても実践会員数をもっと増やしていかないといけないわけです。

 ──ある信用金庫の方からも、今の湯川先生のお話の通り、「金融機関が税理士を選ぶけれども、税理士を育てていかないと、われわれも一緒に育たないんだ」というお話を聞いたことがあります。
 京都の信用保証協会はいかがですか。

 佐藤 京都でこの事業の実績がずっと先行して進んでいたのは信用保証協会の力が大きかったのではないかと思います。金融機関にはメガバンクもあれば地銀もあり、信金・信組もある。全部考え方も違いますし、温度差もあります。再生の手法やものさしも違います。この全体の調整をしながら、「経営改善計画策定支援事業の計画はこれぐらいのレベルです」という目線合わせを信用保証協会がしてくれて、信金を中心にオール京都というイメージで枠組みを作って推進してくれたのです。
 先ほどもお話ししたように、京都では先行して取り組んでいたTKC会員がいたので、この枠組みに税理士が乗り遅れずにきちんと入ることができました。これが大きかったですね。
 今まで信用保証協会とわれわれは実務的な接点が全然ありませんでしたが、この活動が始まってからは相当交流もできましたし、おそらく保証協会の主たる方は、TKC全国会の考え方を皆さんご存じだと思います。当然近畿京滋会としても話をしに行っています。京都信用保証協会の嵯峨専務理事という方が非常に前向きな方で、感覚もTKCの7000プロジェクトの感覚と全く一緒で、友好的な関係ができています。

 飯塚 TKCの各地のセンター長からの報告では、去年6月の段階では、あまり連携のとれていない信用保証協会が21ありましたが、今は8まで減って、逆にTKC各支部の例会等に積極的に参加いただいたり、あるいは講師として来ていただいたりというところが全国で40以上あるという状況です。今後さらに重要な連携関係になるだろうと考えています。

制度の運用体制は刻々と変化している 失敗経験があっても再チャレンジを

 ──湯川先生からもお話がありましたが、今後の課題として、実践会員数の増加という問題があります。未実践の会員、あるいは実践が1件にとどまっている会員にアドバイスをお願いします。

 佐藤 一度取り組んだけれど、うまくいかなくてやめてしまった方、あるいは1件やってみたけど大変で2件目はやらないという方も多いと聞きます。どういうところで失敗されたか分かりませんが、制度の運用というものは、現場の状況を見ながら刻々と変化していきます。その時に失敗された要因は、今はもうなくなっているという可能性も高いです。
 特に難しい案件に取り組んで苦労された方は、もう一度簡単な案件に取り組んでみていただきたいと思います。必ずこの先の事務所経営にプラスになります。

 温井 運用が変わるという話の具体例でいうと、最初の頃は金融機関から「利用申請を出すと格付が変わります」という反応がよくありました。これは勘違いだと思うんですけど、今はそういう誤解はほとんどなくなりました。佐藤先生がおっしゃるように未実践会員は簡単な案件からスタートして、ぜひ成功体験に結びつけてもらいたいです。
 実践件数の少ない会員事務所は、10年後の事務所をどうしていきたいかというビジョンを持つとともに、現状への危機感を持ってもらいたいですね。そうすれば、必然的にこの事業に取り組まざるを得ないと思い至るのではないかと思います。

 湯川 和歌山でも最初のうちはこの事業を利用することに消極的な金融機関が多かったと思います。それが、中小企業再生支援全国本部や金融庁からの働きかけの影響だと思いますが、制度の利用がだんだん浸透してきました。制度そのものは変わっていなくても、現場での雰囲気が変わってきているということを認識いただくことが重要ですよね。
 最初に利用申請の段階で金融機関との話がうまく進まなかった方も、いま同じところに行ったらすんなり行くかもしれないということです。最近になってからですが金融機関さんから融資先に「こういう制度があります」という連絡が直接行くこともあるようになりました。

 温井 先に金融機関から関与先に説明されてしまうと、会計事務所の対応が遅いと言われているようなものですから、1件でも早く取り組んだ方がいいですね。

 湯川 南近畿会も実践件数は目標に達しましたが、実践会員数はまだ少ないのです。7000プロジェクトの意義をしっかり伝えて、制度の枠組みに乗らないとしても、関与先の「経営改善」を支援していくことは当たり前だという認識を広めたいです。継続MASを使って経営改善計画の策定を支援して、その改善策の中に金融支援を受けることが含まれるのであればこの事業を使う──ということでいいのです。業績が超優良で無借金のような企業を除いて、これをするのが当たり前だというご認識を会員の皆さんに持っていただけたらなと思います。

100%保証付きのゾーンもTKC会員は支援するべき

 ──経営改善支援をめぐる環境として注意する点はありますか。

 佐藤 信用保証協会が「条件変更改善型借換保証」という制度を3月に出されました。この背景にはおそらく、100%協会保証の借入しかない企業の経営改善が全く進捗しておらず、これから本格的に取り組むことの表れであると思います。
 京都の例で言えば、地銀がメインでプロパーが少しでもある先は、地銀主体で動いて先行して進んだので、残っている案件は少ないです。信金メインの先は、まさにわれわれが一緒になって取り組んで、大分進捗してきました。ところがいま言ったような100%保証付きの借入しかない企業は、主体的に経営改善計画の策定に取り組もうというところがないのです。
 ということは、このゾーンを支援するのはTKC会員事務所しかいないのです。TKC会員以外の誰かが、自ら立ち上がってこのゾーンのお客さんに「やりましょう」とは言わないと思うんですよ。
 信用保証協会が税理士に直接依頼するという慣行はまだあまりなくて、金融機関を通して行うのが普通です。融資先に直接「この事業を使ってください」ということは言えますが、その融資先の顧問税理士によっては全然進みません。
 金融機関の場合は、あなたがやらないなら他に回しますよということもありますが、こういうことがないゾーンです。本当に自ら立ち上がってやる人だけになる。ここでわれわれTKC会員が使命だと思ってこれに対応しないと、税理士抜きのスキームが誕生する可能性がありますね。そうなると、経営支援という役割への職業会計人の関わりが弱まることになり、結果としてTKC全国会の組織力も弱くなってしまいます。そうならないように会員が意識を高めて、先に成果を残していくというところが必要なのだと思います。

会計事務所業務のパラダイムシフトへの備えとして経営改善支援のスキルは必須

 ──これからの経営改善支援・中小企業支援に、TKC会員はどう取り組んで行くべきでしょうか。

 湯川 再生支援協議会が制度として期限を迎えますが、9割以上の金融機関が必要だと認識している、という情報が出ていました。再生支援協議会事業と経営改善計画策定支援事業は異なるにしても、支援協議会の対象でない企業の方が数は多いはずなので、やはりこれを支援していくことが当たり前の世界になっていくだろうと思います。
 その中でやはり財務の重要性を感じます。「経営者保証に関するガイドライン」にしても、すべて財務データの信頼性がベースになっていると思うのです。理想も含めていえば、7000プロジェクトだけではなくて、顧問税理士がしっかり確認できた信頼性のある財務データを基に、金融機関もしっかり判断をしていくようになってほしい。担保に依存しない、企業の将来性などをしっかり見据えた上で金融の世界が動いていくという展開になってほしいと思っています。
 そういう世界を視野に入れると、今これに関わるか関わらないかということが、会計事務所の5年後、10年後に大きく影響してくると思います。何よりも、支援してくれる会計事務所と付き合われているお客さまが一番幸せだと思うんですよね。自分もそういう事務所づくりをしていきたいと思います。

 温井 以前は、会計事務所にとって経営計画策定は、税務・会計に加えての付加価値業務だったと思います。しかし、7000プロジェクト活動が進むにつれて、地域会でも「これはTKC会計人にとっての標準業務だ」という捉え方が浸透してきました。今後も、経営改善計画策定支援を当たり前にできる事務所がもっともっと増えないといけないと考えています。
 この事業はもちろんお客さまを支援するための制度ですが、それ以外の側面として、計画を作ってモニタリングしていくというのは、巡回監査担当者の育成にも非常に役立つはずです。国から補助金をいただきながら職員教育ができるという側面を前向きに捉えて取り組んでいただければと思います。

 飯塚 私からはIT的な観点から少しお話しさせていただきます。経営改善計画策定支援や継続MASといった業務は、元々ある通常業務にさらに上乗せされる業務だから大変だというイメージがあると思います。今は記帳代行と自計化に大きく会計事務所の手法が分かれていて、自計化していれば継続MASにもつながりやすいという状況です。一方で記帳代行という仕事は将来的になくなると言われています。
 TKCでは6月からFXシリーズに銀行信販データの読込機能を搭載する予定です。将来的には証憑をスキャンして仕訳に展開するという技術も提供される予定です。つまり、ITの側面だけで言えば、中小企業は会計事務所に頼まなくても、帳簿を作成し、決算ができるようになる。場合によっては、申告までできると考えるだろうと思います。これは、とんでもない誤解なわけですが、昨今のクラウド会計ベンダーの動向を見ていると、この誤解はどんどん広がってしまいます。
 一方で、しっかり会社を経営するには適時・正確な会計データと、これに基づく経営計画、PDCAが必要になります。もちろん、決算書は会計の専門家がその内容を担保したものでなければならない。では、この観点で、中小企業を支援するのは誰なのか? ということが非常に重要になるわけです。
 そういう観点でも、経営改善支援、あるいはもっと広く経営支援と言ってもいいのかもしれませんが、そういった業務に移行する準備を始めないと、危ないなというのが私の感覚です。

 佐藤 いま飯塚専務が言われたように、おそらく近い将来に会計事務所の業務がガラッと変わっていく中で、経営支援は、絶対に事務所の標準業務として定着させていかなければならないと思います。
 今後、金融機関が「事業性評価」や「経営者保証ガイドライン」などの金融施策の下で業務を展開していくときに、軸になっていくものが中小企業経営力強化支援法だと思っているんです。これは3年ほど前にできて、定着してきています。これをやることが「経営支援」だという認識が広がって、これができるところに対して金融機関は仕事を出すという展開になると思うのです。
 中小企業経営力強化支援法の内容は、TKC会員であれば大ジャンプで飛びつくような大変な内容ではなくて、低いハードルを跳び越えていくぐらいの内容です。われわれがするべきことは、事務所として経営支援のスキルを標準業務として身に付け、それを展開するということ。あとは金融機関への報告をきちんとできるスキルを身に付けることです。この認識をどれだけの会員が持てるか。TKC会員が社会に対して有用であるということを、実績を出してきちんと示さないといけません。
 そして次の課題はそれらを金融機関に認識してもらうことです。当然その時に必要なのは7000プロジェクトの実践を通じて培った地域での信頼関係と、経営支援ができる事務所の会員の数です。このような活動ができれば先ほど話のあったパラダイムシフトが来ても、TKC会員のやる仕事はたくさんあります。
 飯塚毅全国会初代会長が、関与先指導について、「関与先の全部が己だと思え」「関与先の健全な発展のために祈りを持って全力投球せよ」と言われていますが、これは7000プロジェクトそのものですね。TKC会員として取り組むのが当然であって、むしろ歓迎すべき方向性だと思います。TKCが目指す「会計で会社を強くする」世界を定着させるチャンスです。このチャンスを本当につかみたいですし、つかめるだろうと思っています。

(構成/TKC出版 蒔田鉄兵)

(会報『TKC』平成28年5月号より転載)

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