システム移行編

「TKC方式の自計化」の先には、関与先とともに成長できる世界が広がっている

【NMS委員会座談会】TKCシステムへの移行編

とき:平成28年9月1日(木) ところ:TKC東京本社

事務所承継あるいは独立開業に伴い、他社システムからTKC自計化システムヘの移行に取り組んだ3名の会員が、移行を決意した背景や移行後の事務所経営などについて幅広く語り合った。

出席者(敬称略・順不同)
 土屋政信会員(平成11年12月入会・TKC関東信越会)
 菊地正和会員(平成22年12月入会・TKC東京都心会)
 三好建弘会員(平成20年8月入会・TKC中国会)

 司会/大井敏生会員(TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会副委員長)

座談会

「絶対に入会しない」と決意してニューメンバーズフォーラムに参加したが・・・・・

──はじめに、事務所の概要をおうかがいします。

土屋政信会員

土屋政信会員

土屋 当事務所は渋沢栄一の出身地でネギの生産地としても有名な埼玉県深谷市にあります。もともと不動産鑑定士で税理士でもある父が事務所を経営していたのですが、平成12年に父が廃業することにしたため、私が開業してお客さまと職員を引き継ぎました。
 現在のお客さまは42件、職員はパートを含め3名です。最近は特にFX4クラウドの導入に力を入れています。

菊地 それまで勤めていた事務所を辞めて開業したのが平成22年9月1日なので、ちょうど今日が「独立記念日」です。大学卒業後は金融機関に就職したのですが、税理士を目指すため4年で退職し、2年間勉強に専念したあと2つの会計事務所で14年間勤務しました。どちらもTKCではなかったので、いつも決算書をさかのぼって修正していました(笑)。
 お客さまは52件、職員は4名です。事務所は山手線の高田馬場駅が最寄りです。

三好 広島県福山市から来た三好です。もともと祖父が会計事務所を経営していたので、大学院卒業後の平成18年に入所し、平成23年に引き継ぎました。現在の職員は7名、お客さまは約150件です。
 地方の事務所なので何かに特化するということはなく、所得税、法人税、相続税とすべて対応できるようにしています。最近は7000プロジェクトにも取り組んでおり、金融機関から業績の悪化した会社を見てほしいといった依頼が少しずつ増えています。

──土屋さん、三好さんは事務所承継に伴いシステムを移行したわけですね。菊地さんは独立直後からお客さまがいて、そのシステムを移行したのですか。

菊地 はい。勤務時代に私が増やしたお客さまと、私の担当先で毎月悩みを聞くなど特に関係が深かったお客さまの合計15件を引き継がせていただきました。

──TKC入会のきっかけは。

三好 私がTKCを初めて知ったのは、税理士を目指して大学で税法を勉強していた時です。その大学ではTKC法律情報データベース(LEX/DB)を利用できたので、引き続き使いたいと思ったのが入会の理由の一つです。
 また祖父の事務所で働きはじめてからよくTKC社員が入会の勧誘に来ており、その時に説明された継続MASを使ってみたいと思ったので、少し迷ったのですが腹をくくって入会しました。

菊地 TKCについては勤務時代から「試算表が翌日にならないと出てこない」など悪い話ばかり聞いていたので、独立の際も入会するという選択肢は一切考えませんでした。しかし数年前、大学の先輩である神奈川会の古川雅司先生に、北海道で開催されたニューメンバーズフォーラムに誘われたのです。TKCと聞いて最初は断ったのですが「5000円で北海道に行ける」ということに魅力を感じ、「絶対に入会はしない」と固く決意して(笑)、結局参加しました。
 ところが、フォーラムで聞いた講演に感動した上に、入会もしていない私にたくさんの先生が親身になってアドバイスしてくれることにびっくりして、今まで抱いていた印象がガラッと変わりました。東京に戻ってからもTKC社員に熱心に勧められ、最終的に入会を決断しました。

土屋 父の事務所は他社システムで記帳代行をしていたのですが、事務所を継いでから、職員がお客さまから預かった領収書を整理して帳簿を作っているのを見たときに「この仕事を一生続ける意義があるのか」と悩んでいたのです。そんな時、私も地元のTKC会員にニューメンバーズフォーラムに誘われたので行ってみたところ、ちょうど「第1次成功の鍵(KFS)作戦」を展開している時期で、「自計化」や「巡回監査」という言葉が頻繁に聞こえてきました。
 そして「自計化ってもしかしてお客さまが入力するの?うちとは完全に逆だ」と衝撃を受けました。あまりのショックに夜も眠れなかったことを覚えています。事務所の業績も悪く、5年先、10年先を考えるとシステムを全面的に切り替えて記帳代行から脱却するしか生き残る道はないと考え、TKC入会を決意しました。

関与先の自計化が進まず辛い時は飯塚初代会長の著書を読んで乗り越えた

──どのように移行を進めていったのか、背景も含めお聞かせください。

土屋 私は3年間限定でシステム移行に取り組もうと決めました。もし自分の判断が間違っていてお客さまも事務所も良くならないなら、ダラダラと続けても周りの人の迷惑になるだけだからです。ですから3年間必死でやってみて、それでもダメなら事務所経営はきっぱり諦めようと思っていました。

──「記帳代行が当然」という感覚のお客さまを説得するのは大変でしたか。

土屋 そうですね。数十件のお客さまが離れていきました。考えてみれば当たり前です。父は「領収書を持ってきてもらえば帳簿を作りますよ」と言って顧問契約を結んだのに、私の代になったら「自分で記帳してください」と真逆のことを言っているわけですから。それでも一件一件訪問して説得したところ「顧問料が同じで毎月業績が分かるようになるなら、そっちの方がいいね」と応じていただけるお客さまも半分くらいありました。
 ただそうは言っても、実際に訪問して社長に現金出納帳の書き方を教えようとしたところ、途中で怒ってしまい、現金出納帳を投げつけられたこともありました。職員も4人いたのですが全員に反対されて、まさに「四面楚歌」の状態。結局1年半で全員辞めてしまいました。

──本当に大変だったのですね。どうやって乗り越えたのですか。

土屋 やはり3年間と決めていたのでそれまでの辛抱だと思えたことと、心が折れそうな時は飯塚毅全国会初代会長の『職業会計人の使命と責任』(TKC出版)を読んだのです。そこにお客さまを説得するための理論が書いてありましたし、何より「あの飯塚初代会長だって職員が辞めてしまうなどの苦労をしているのだから、自分が苦労するのは当たり前だ」と勇気づけられました。
 現在は7割以上のお客さまの自計化が完了しています。

──三好さんも祖父の事務所を引き継いだわけですが、移行のきっかけは。

三好建弘会員

三好建弘会員

三好 正直に言うと、TKCに入会したものの最初は他社システムとの併用でもいいと思っていました。しかし、2つのシステムを併用すると機能を覚えるのが大変ですし、何より、あるTKC会員の先輩から「君は記帳代行を職員に押しつけて、自分だけ経営助言などやりがいのある仕事をしている。それで一人前の所長と言えるのか」と指摘されたこと。この言葉が心に刺さり、本気でシステム移行に取り組もうと決意できました。
 そして今年5月には、事務所の朝礼で「他社システムはリース契約の更新をせず、すべてTKCシステムに変える」と全職員に宣言しました。

──移行の進捗状況はいかがですか。

三好 約150件のお客さまのうち、TKC自計化システムの利用は約50件です。40件は私がTKCに入会した後に増やしたお客さまで、はじめからTKC自計化システムを導入したので、他社から移行したのは10件ほど。今のところは、社長の反発もなく応じてもらえています。
 苦労したのは職員への説明です。やはり今まで使い慣れたシステムを変えるのは抵抗感があるでしょうし、多くの職員が私より年上でキャリアが長いので、無意識に遠慮してしまうという私自身の問題も大きいと思います。
 でも今では、お客さまの自計化を進め、継続MASを活用して経営計画の策定支援や経営助言を実践し、社長から「ありがとう」と感謝してもらう。こうした経験を職員にしてもらうことこそ、所長である自分の仕事だと痛感しています。

「お客さま目線」で判断した結果TKCシステムがベストの選択だった

──菊地先生は承継ではありませんが、なぜ移行しようと思ったのですか。

菊地正和会員

菊地正和会員

菊地 はじめてTKC自計化システムを触った時、やたらボタンが多いし、聞き慣れない言葉もたくさんあるし、本当は使いたくなかったんです(笑)。
 ではなぜ移行しようと思ったかというと、すべてお客さまのためです。まず多くの金融機関が、TKC会員が作成した決算書を信頼しており、TKC会員の関与先専用の融資商品まで作っています。さらに、お客さまにとって怖い存在である税務署もTKCには一目置いている。
 その理由を考えたとき、やはりTKCシステムは一度締め切って伝送したら一切修正できない仕組みになっており、それがTKCの信頼・ブランドにつながっているのだと気付いたのです。
 本当にお客さまのメリットを考えるのであれば「使いづらい」とか本質的ではないことにこだわるべきではなく、迷わず導入すべきというのが一番の理由です。
 もう一つは、TKCシステムで処理をしようとするといちいち警告メッセージが出てきて煩わしかったのですが、これも知識が十分でない職員を育てることにつながるという意味があることを聞き、TKCシステムなら業務品質の標準化も実現できるのではないかと考えました。

背水の陣で関与先の自計化に臨み2週間毎日訪問して社長を指導

──移行の手順をお聞かせください。

土屋 まず「これからは記帳代行をやめて、提案型の業務を目指す」というビジョンを掲げ、職員に事務所の現状を説明しました。このままでは事務所を継続できないことを分かってもらう必要があると思ったからです。
 次に、お客さまに「今後は記帳代行をしません」とお伝えして、応じていただけるところからTKC自計化システムを導入し、巡回監査を実践しました。そして発生主義会計を取り入れ、企業防衛の提案までつなげるという流れです。
 最初に自計化システムの導入に応じてくれたのは、年商約1億円の旅館業のお客さまでした。誰が入力するのかと思ったら、当時60歳を超えていてろくにパソコンを触ったことがない社長が「自分がやる」と。仕方ないので仕訳辞書を作り、最初の2週間は私が毎日通って入力を教え、自計化を定着させました。
 ここで自計化できなかったら「それみたことか。所長の言っている理想は絵空事だ」と職員に思われてしまうので、何がなんでも成功させようと必死でしたね。その結果、毎月5日頃には前月の数字が把握できるようになり、業績も良くなって社長に喜ばれました。

菊地 私はこう説明しました。「今までのシステムの方が使いやすいけれども、金融機関や税務当局に信頼されているのはTKCシステムだけ。私も以前、金融機関にいたので分かりますが、企業に提出してもらう決算書はいくらでも粉飾できるから信用されず、唯一TKCシステムだけが粉飾できない仕組みです。融資も受けやすくなるし、御社のメリットを考えたら絶対TKCをお勧めします」。
 これで全員納得いただけたし、新規のお客さまが「今自社で使っている会計ソフトを使いたい」と言ってきても、同じように説明すればまず断られません。
 あとは、TKCのテレビCMの影響も大きかったですね。「TKCは黒字化を応援してくれるんですよね」と言われたこともありますし、今後もどんどんCMを流してほしいです。

三好 私は、まず信頼関係がある社長を選び「自社で入力し業績を管理するのが本来の姿ですから、そろそろ自計化しましょう」と提案したので、素直に応じていただけました。ただ、今後は同じようにはいかないだろうと覚悟しています。
 また、ある社長から「今、役員借入金はいくらですか」という電話があった時は「社長、自分が会社にいくら貸しているのか把握していないのはおかしいですよ。自社で入力し、すぐに数字が分かる体制を作りましょう」と話すなど、自計化の重要性を伝えるようにしています。
 提案の際に気をつけているのは、意見を押しつけているように感じさせないこと。TKCの会合だと自計化や巡回監査、継続MASが当たり前ですから、つい社長にもその調子で話をしてしまいがちですが、社長も当然同じように考えるだろうと決めつけると反発されます。

菊地 私も「TKCシステムは使いにくい」と感じていたので、当然お客さまもTKCシステムへの移行は嫌がるだろうなと覚悟していました。ところが、実際に移行を進めてみたら全然違っていて、「慣れてしまえばどのシステムでも同じ」というお客さまがほとんどでした。
 結局、職員や自分自身の意識の問題であり、「お客さまが納得しない」と決めつけて言い訳しているだけなのです。

座談会

ハード面(システム)でもソフト面(親身な相談相手)でも社長の満足度が高くなった

司会/大井敏生会員

司会/大井敏生NMS委員会副委員長

──システム移行の結果お客さまがどう変わったか、あるいは事務所にどのような変化があったかお聞かせください。

三好 一番分かりやすい例としては、自計化前には赤字だった会社が、自計化に伴って月次巡回監査体制が整い、継続MASを利用して経営計画も立てるようにした結果、黒字転換をした。同じようなお客さまが何件もありました。
 事務所の変化としては、一番は収益面です。祖父の事務所を引き継いだ時は決して業績が良いとは言えない状況でしたが、自計化割合が高まるにしたがって事務所の収益も改善してきました。
 TKCシステムの導入先には経営計画策定や経営助言業務などでご満足いただけているので、顧問料を値上げしてもまず文句を言われることはありませんし、逆に社長の方から「そろそろ値上げした方がいいのでは?」と言っていただけることもありました。
 こうした良い兆候は職員にも伝えているので、事務所内の雰囲気も少しずつ変わってきており、システム移行に乗り気になっている職員も増えてきました。

土屋 私も同じで、年一をやめて自計化したお客さまには、業績がタイムリーに分かり経営が良くなったことで非常に感謝されました。中には、移行前に比べ売上規模が2倍になった会社もあります。
 もちろん離れてしまうところもありましたが、同じ方向性のお客さまが残って一緒に仕事ができているので、結果的には良かったかなと思います。

菊地 TKC入会前から、毎月事務所オリジナルの月次決算書を作り、それを私が直接社長に報告するというスタイルだったので、それとTKC方式の巡回監査を合わせると月に2回社長と会うことになります。つまり担当者が巡回監査をして、その後私が出向くか、社長に来所してもらい月次決算書を説明する。こんなことをしていたら非効率的だと思われるかもしれませんが、これによってお客さまとの絆がものすごく深まりました。
 TKCシステムを導入すればハード面の不安が一切なくなりますし、それに加えて経営相談に親身になって対応するなどソフト面も充実するので、社長の満足度が非常に高い。だからこそ新しい関与先をご紹介いただけたりするわけです。
 また職員も、社長からの相談に対して一緒に悩み、解決策を考えた結果、絆が深まって感謝の言葉という目に見えない報酬をいただけるので、非常にやりがいを持って働いてくれるようになりました。

「どうせTKCシステムに移行するのだから、早くした方がいい」

──これからシステム移行に取り組もうとする会員に向けて一言お願いします。

菊地 TKCのすごいところは、常に進化を続けていること。私が入会してからの6年間でも、マイナンバーやフィンテック対応など私の想像を超える打ち手、それも付け焼き刃ではなく理念に基づく地に足の着いた打ち手を実現しています。
 TKCを信じて、早急に関与先に自計化システムを導入すべきです。

三好 他の会員というよりむしろ自分自身に対してのメッセージですが(笑)、「どうせ移行するのだから、できるだけ早くした方がいい」。それだけです。

土屋 10年後がどのような時代になっているかを考えると、AIの進化によって、記帳代行のように機械的に処理できる仕事が無くなっているのは確実です。では何が残るかというと、クリエイティブな仕事、人と人とのコミュニケーションを前提とする仕事しかあり得ません。
 それこそが経営助言業務や社長の思いを形にする経営計画策定支援業務であり、それを実践するためにはTKCシステムを導入するしかないと私は思います。
 どんなにAIが進化しても、人の心と心をつなぐ仕事、社長に元気になってもらう仕事は人間にしかできません。それをするためにどうすればいいのかを考えれば、自ずと目指すべき方向性は見えてくるのではないでしょうか。

(構成/TKC出版 村井剛大)

(会報『TKC』平成28年10月号より転載)

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