独立開業

入会セミナーはTKC理念に基づく事務所経営の出発点

入会セミナー200回記念座談会 入会セミナーの原点を語る

とき:平成29年7月7日(金) ところ:リーガロイヤルホテル東京

TKCに入会後、最初に受講する必須研修「TKC入会セミナー」が、平成29年7月7日(金)の開催で200回を迎えた。平成7年の創設以来、20有余年の受講実績は合計9076名(配偶者を含めると1万1478名)に上っている。これを記念して、200回目のセミナー当日に本セミナーに深い関わりのある7名に集まっていただき、200回記念座談会を開催。中央研修所の川添渉所長の進行のもとで、入会セミナー創設の原点や各自の関わり、入会セミナーへの提言などについて幅広く語り合っていただいた。

出席者(敬称略・順不同)
 粟飯原一雄TKC全国会最高顧問
 三木武彦会員(TKC全国会顧問)
 齋藤保幸会員(TKC全国会参与)
 甲賀伸彦会員(TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員長)
 吉野 太会員(TKC全国会巡回監査・事務所経営委員会副委員長)
 ・髙橋宗寛和尚(中央研修所顧問)
 ・角 一幸TKC社長

司会/川添 渉会員(TKC全国会中央研修所長)

入会セミナー200回記念座談会

「TKC会員はどうあるべきか」という方向を入口で確認してもらうことが目的

 川添(司会) 第200回記念の入会セミナーが開催された本日、入会セミナー創設とリニューアルに関わった会員先生方、そして講師をお務めの皆さまにお集まりいただきました。まず、入会セミナー創設の原点をうかがいます。粟飯原先生と三木先生、入会セミナー創設の経緯について教えていただけますか。

粟飯原一雄最高顧問

粟飯原一雄最高顧問

 粟飯原 私はTKCに入会したのが昭和48年3月です。当時は飯塚毅全国会初代会長の実地講習会があり、そこでの講演で非常に感動して入会しました。でも、会員が増えていくにしたがって、飯塚初代会長がすべての実地講習会をお一人で担うのが難しくなり、各地域会会長がそれぞれの地域会で実地講習会講師を務めることになったのです。
 ただ、時が経つにつれて、地域によって実地講習会の開催頻度と内容にばらつきが出てきました。何より全国会創設の理念についての語りが弱いという実態があった。さらに平成4年にニューメンバーズ・サービス(NMS)委員会が発足して、新入会員のフォローをNMS委員会が担うようになったのですが、NMS委員会主催の各セミナーと実地講習会との整合性をどうとるかという課題も生じていたのです。
 そこで平成6年に全国会常務会の諮問機関として戦略特別委員会が発足したとき、委員長を仰せつかった私は、最初の会議で実地講習会の今後について皆さんに議論してもらったんです。それで、戦略特別委員会のメンバーだった三木先生が入会セミナーを発案されました。

 三木 平成6年の秋に第1回の戦略特別委員会が開催され、これからの全国会活動の話になったとき、粟飯原先生が「実地講習会を見直すべきではないか」と議論の口火を切られました。
 議論では、せっかくTKCに入ったのだから、TKC理念とTKC会計人のあるべき姿を学ぶ研修は入会直後にきちんとしたほうがいいのではないか。でないと、いずれ全国会活動にアンバランスが生じてしまうのではないか──ということを申し上げたら、皆さんがそのとおりだと。そこで、当時の粟飯原委員長からプロジェクトリーダーを仰せつかり、坂本孝司先生と藤元勝先生(九州会)の3人で企画をまとめることとなりました。

 川添 委員会・プロジェクトでは、どのような議論がなされていたのですか。

三木武彦会員

三木武彦会員

 三木 最初に戦略特別委員会で確認したのは、入会セミナーは「入口」なので、そこできちんとTKC会計人の方向を確認してもらい、その後は実務セミナー等で実務面のスキルを継続的に磨いてもらう体系にしようという研修改革の方向性でした。そして、第1回の入会セミナーは翌年(平成7年)の4月に開催することも決まりました。会議は秋でしたから、非常にタイトなスケジュール(笑)。坂本先生は浜松、私は広島、藤元先生は鹿児島なので、広島や大阪で集まって会議を重ねましたね。
 プロジェクトメンバーで議論し、入会セミナーは基本的に1回しか受けないものなので、第1に感動を与えること、そしてTKC理念をしっかり理解してもらうこと、さらにオールTKCの奥行の深さを感じてもらうこと──を基本コンセプトとしました。そして配偶者同伴とし、スケジュールは年間9回。金曜日と土曜日に実施し、1日目は全国会創設の経緯と基本理念を学んだうえで髙橋和尚から自利利他の講話をしてもらう。2日目は巡回監査の徹底断行と発展する事務所経営のポイント、そして(株)TKCの支援体制とシステム開発思想を学ぶカリキュラムとし、最後に飯塚毅全国会初代会長から修了証を授与してもらう流れとしました。
 2日がかりでしかも懇親会つき、配偶者同伴となると大変な予算がかかります。ところが、この企画案を戦略特別委員会で提案したとき、粟飯原先生も飯塚真玄社長(当時)もまったく異論を言われなかった。すぐにゴーサインを出され、全国会常務会に上申されてうれしかったです。

 粟飯原 皆さんがそれだけ問題意識を持っていたということですよね。

 三木 当時は、今よりもシステムの使い勝手や値段のメリットだけで入会した人もいて、飯塚先生のお話に感動して入会した僕らからすれば残念な思いがあったんですね。だから入会セミナーの開催が正式に全国会常務会で決まったときは胸が熱くなりましたね。

TKC理念を伝えるテキスト・ビデオを準備 終了後には思わず握手を交わした

 川添 角社長は、第1回入会セミナーの司会をされていたそうですね。

角 一幸TKC社長

角 一幸TKC社長

  ええ。私は(株)TKC側で、当時は営業本部におりまして事務方をしていました。その関係で、第1回・第2回の入会セミナーの司会進行役を務めさせていただきました。
 いまでもよく覚えていますが、プロジェクトの第1回会議は広島でしたよね。

 三木 そうでしたね。

  海のそばのホテルでした。その会議から始まって、準備をさせていただきました。いまはもう使っていないテキストも多いのですが、飯塚毅初代会長の国会意見陳述のビデオを制作したり、『TKC会報』の巻頭言を抜粋した書籍『職業会計人の使命と責任』(TKC出版)をTKC出版と一緒に編集したり。書籍の編集過程では、抜粋するにあたり『TKC会報』を第1号からすべて読み直す必要があったので、私にとってはTKC全国会創設の理念を振り返る非常に良い機会になりました。
 開催実績をみると、約1万1000名の会員先生のうち、9割近くが入会セミナーを受講されている計算ですので、入会セミナーを開催していなかった場合の現在を考えると、本当にぞっとしますよね。非常に重要なこの入会セミナーの企画を担当させていただいて、その企画がかくも大きな結果と、そしてまた20年以上200回にわたり継続して行われていることは、私にとっては大きなプライドでもありますね。

 三木 実は、当時の雰囲気はいまと全然違っていて、かなり参加者に気を遣っていました。腫物に触るようなと言ったほうが正しいかもしれません(笑)。職業会計人としての使命や、髙橋和尚による自利利他の話はきちんと理解してもらいたいけれど、参加者から「こんなはずじゃなかった」と思われるかもしれないと、プロジェクトメンバーはずいぶん心配していました。だから初日が終わったとき、「途中で帰ってしまった人はいませんでしたか」と飯塚真玄社長に聞いたんですよね(笑)。そしたら「誰も帰りませんでした」と。その言葉に胸をなでおろして、思わず飯塚社長と握手したのを覚えています。
 2日間の日程を終えたあとの食事会で、飯塚毅先生が非常に満足そうな表情をされていて、僕はものすごくうれしかったですね。

『TKC基本講座』の内容をベースに平成20年にリニューアル

 川添 平成20年4月、『TKC基本講座』をベースとした内容へと入会セミナーがリニューアルされました。このときは、齋藤先生が戦略特別委員長をお務めでしたね。

齋藤保幸会員

齋藤保幸会員

 齋藤 平成19年の戦略特別委員会の会議で、入会セミナーのリニューアルが議題に上りました。ただ、僕が入会したときは入会セミナーがなかったので、まずは現状を知らなければいけませんから、同委員会の委員だった橋脇公彦先生(近畿兵庫会)と一緒に2日間みっちり参加しました。
 2日間で4人の先生の講義を聞きました。素晴らしい先生方が講師なのでもちろん有益ではあったのですが、さまざまな事務所経営論を続けて聞く立場の新入会員は、受け止めきれないのではないかという不安を持ったのですね。
 僕としては、入会して初めて参加するセミナーなのだから、とにかく『TKC基本講座』を読む機会にしたいと考えました。というのも、僕は『TKC基本講座』はTKC会員のバイブルだと思い、平成19年時点で70回くらい読んでいたんです。当時は2分冊で、表紙の色がブルーの「理念編」、オレンジの「巡回監査編」とあり、これらはTKCの基本中の基本ですから、事務所経営をしていて迷いや悩みが出てくるたびにむさぼるように読んでいたんです。
 新入会員には、より分かりやすいかたちでTKCの原点をきちんと提示したかったので、この基本講座をベースとした内容にすれば聞く側としても頭に残るし、事務所に戻って読むきっかけにもなると思いました。講師の先生方としても、飯塚毅全国会初代会長が書かれた『TKC基本講座』の言葉に沿いながら自分の体験談をプラスしていけば理念の話もしやすいし、TKCの基本的なスタンスから外れることはないだろうと。そこで1日目は「TKC理念と巡回監査の意義」、2日目は「巡回監査とTKCシステム」をテーマとして、平成20年4月開催の入会セミナーから『TKC基本講座』をベースとした内容に刷新しました。
 その後、「自己探求」の映像を最初に見てもらう構成としました。『TKC基本講座』とあわせて、「税理士の使命」を新入会員に認識してもらうことを狙いとしています。

第1回から休まず講師を務めた髙橋宗寛和尚が飯塚毅賞を受賞

 川添 200回を超える入会セミナーの歴史の中で、強調すべきは髙橋和尚が第1回から一度も休まず「自利利他」についての講師を務めておられることです。私も平成8年の入会セミナーに参加し、和尚が「発心ただしからざれば万業も空し」というお話をしてくださったことをよく覚えています。髙橋和尚、20年以上講師を続けられていますが、率直な思いをお聞かせいただけますか。

髙橋宗寛和尚

髙橋宗寛和尚

 髙橋 ありがたいことに、私はTKCの先生方ととても良いご縁をいただいています。飯塚毅初代会長にも真玄名誉会長にもものすごくかわいがっていただいて、何かチャンスがあればご恩返しをしたいと思っていました。ですから「入会セミナーを手伝ってほしい」というご依頼があったとき、私なんかより力量のある方はもっといっぱいいるんだろうけれども、私で間に合うならばということでお話しさせていただいてきました。そのおかげで、次から次へと本当に良いご縁をいただけました。
 入会セミナーが200回を超えたことで、私のライフワークの一つになったという気がしています。さらに飯塚毅賞(第21回・平成25年)という望外な賞を、しかも粟飯原先生からいただきました。その理由の一つに「継続」を挙げていただきました。私はありがたいご縁をいただいたとつくづく思います。

 粟飯原 入会セミナー発案者の三木先生も平成24年に第20回飯塚毅賞を受賞されましたね。入会セミナー関連で2人選ばれているのはすごいですよね。

 三木 入会セミナーが存続できているのは髙橋和尚に拠るところが大きいと思います。1回も休まずに務められているのは、本当に頭が下がります。

 川添 聞き手の反応を、和尚はどのようにお感じになっていますか。

 髙橋 まず外見からの違和感でしょうか。僧形ですからね(笑)、「会計人の集団にどうして!?」と。ですから、どうやってアレルギーを起こさないようにするかということは私なりに気を遣っているつもりです。そして、受講者や企画者の皆さんとやりとりをしながら間の取り方を学ばせていただき、いろいろと相談しながら少しずつ状況に合わせて内容もレジュメも変更を加えてきました。

自分が入会セミナーで感じた感動を今度は講師として伝えていきたい

 川添 甲賀さん、吉野さんも私と同じく入会セミナーを受講しています。現在では入会セミナーの講師を務めるお二人ですが、いかがお感じでしょう。

甲賀伸彦会員

甲賀伸彦会員

 甲賀 今日行われた200回記念の入会セミナーで、第1講をお話しさせていただきました。飯塚毅先生にはなれませんけれども、その言葉のエッセンスを少しでも新入会員に伝えるのが役割だと思いながらお話ししています。
 僕は平成9年1月の入会ですが、そのころ飯塚先生ご本人は入会セミナーに関わっていらっしゃいませんでした。生で飯塚先生のお話も聞いたことはありません。ですから、この入会セミナーでは飯塚先生のビデオやご本人が書かれた書物を通して、飯塚先生の言われた「祈り」をもって全国会活動についてお伝えしていきたいと思っています。
 NMS委員長としては、入会セミナーに続く実務セミナーのテキスト制作も担当させてもらっています。『ニューメンバーズ実務セミナーテキスト』は今年の改訂で13版となり、TKCの発行テキストの中では最も版数が多いそうです。先ほど三木先生が、入会セミナーと実務セミナーの位置づけをお話しくださり、実務セミナーテキストはやはりニューメンバーズのために必要な制作物であることを再認識できました。新入会員へのフォローを改めてきちんとやらなければいけないという気持ちになりました。

吉野 太会員

吉野 太会員

 吉野 僕は平成12年10月に入会セミナーを受けました。印象に残っているのは、千葉会の武藤和義先生と東北会の植松正美先生、そして髙橋宗寛和尚のお話です。メモをたくさん取りました。ゼロからの開業でこの先どうしようという不安がある中での参加でしたから、どういう心持ちでどうやって事務所経営をしていけばいいか、関与先拡大をしていけばいいのかというお話はものすごく勉強になりました。和尚のお話は背筋がピッと伸びる感じがありましたし、三木先生の言われた感動とともに入会できたという実感が本当にありました。
 6年前、旧巡回監査・書面添付推進委員会副委員長のお役目をいただいたときに入会セミナー講師の依頼がありました。そのとき強く思ったのは、自分が入会したときの感動を新入会員にも持ってもらいたいということでしたね。ですから、それ以来、可能な限りテキストに沿いながら、飯塚先生の言葉を自分はこう読み取って実践した、というような伝え方を工夫しています。時には『TKC基本講座』に加えて、『TKC会計人の行動基準書』や『電算機利用による会計事務所の合理化』にある言葉も紹介するようにして、なるべくTKCの本質的な部分、一番根っこの部分をきちんと伝えていきたいと思っています。

『TKC基本講座』は読み返すたびにTKC会計人としての「中心線」を確認できる

『TKC基本講座』

『TKC基本講座』

 三木 僕も10年間講師を務めさせていただきましたが、感動を与えるというのは意識して続けてほしいなと思います。講師の先生方にお願いしたいのは、いかにTKCの理念を事務所経営に落とし込むか、それを講師の自分たちはどう実践してきたかを新入会員にきちんと伝えてほしいということ。TKC理念に基づく事務所経営をしていたら成功した──という講師の体験談を伝えることが、感動につながるんじゃないかと僕は思うんですよね。

 吉野 飯塚先生や諸先輩方の教えを表面的に捉えてしまうと、時代背景が全く違うし、TKCのシステムは独特なので、ギャップを感じてうまくいかないんですよね。
 だから、飯塚先生はどうして会計事務所にはコンピュータとともに巡回監査をセットで導入しなければならないと考えたのか? その際のシステムはどうあるべきで、巡回監査はどうあるべきなのか?──という本質的な部分を、私たちが飯塚先生の言葉から読み取ってTKC理念とTKCシステム、そして事務所経営がどう関係しているか、そのあたりを伝えていかなければと思っています。『TKC基本講座』は、講師を務める前日に必ず読み直しているのですが、読むたびに中心線を確認できるんですよね。日常を過ごしていると、どうしても迷ったりブレがあったりするので、そのときの自分の位置から戻れるのはありがたいと思っています。

 甲賀 毎回、感じ方が違うんですよね。あのときはこういう解釈でいたけど、今読み返すと違う解釈になっていた、なんてこともしょっちゅうあります。「昔の自分は間違っていたのかな」と怖くなることもあります。

 齋藤 「回数多く読め、数多く読むな」というドイツのことわざが『TKC基本講座』の冒頭に書いてありますね。書いてあることは一緒なのに、読むたびに自分の受け止め方が変わっていることに気が付きます。自分自身が変わっているからでしょうね。

先人の祈りや思いを引き継いで若い人が育っていくのがTKC

司会/川添 渉会員

司会/川添 渉中央研修所長

 川添 研修所としては、実務のスキルアップのための研修はもちろんですが、やはりメンタルの部分を鍛える研修が大事だと思っています。理念研修全般については皆さんいかがでしょうか。

 吉野 確かに、入会3年目あたりに、もう1回原点に返ろうというような理念を学ぶ研修があるといいなと思いますね。

 粟飯原 セミナーを聞いたときは皆熱い思いを持って帰るんだけれども、1カ月、2カ月くらいすると頭からすっと消えちゃう。特に理念の部分は、繰り返し聞くチャンスがあるといいのかもしれないね。そうすると甲賀先生、入会セミナーのあとのフォローが非常に重要ですよね。

 甲賀 そうですね。やっぱり理念を学ぶ研修はもう1回あったほうがいいと思います。実はNMS委員会でも、NM会員の卒業基準を作ろうかという話になっているんです。その基準に理念を学ぶ研修の受講を入れるのもいいかもしれません。

 齋藤 入会セミナーは200回以上の歴史があって、講師を務められた先生方が全国にいらっしゃるのだから、30~40年のキャリアがある先生方に、ご自分の自利利他の実践について語っていただく理念研修の企画もいいと思うんですよね。地域会や支部の主催で数多く開催してもらえればいいなと。

 川添 先日、三木先生にも近畿京滋会の理念研修に講師として来ていただきました。とても新鮮でした。

 三木 京セラ創業者の稲盛和夫さんが、成功の方程式として「能力×熱意×考え方」を言われていますね。皆、税理士試験に受かっているんだから能力はあるわけですよ。開業して、熱意もある。だけど考え方(理念)がマイナスであれば全部マイナスになって失敗してしまいます。だから、いまの自分の考え方や立ち位置がどうなっているか、常に棚卸ししないといけないんですよね。
 飯塚毅初代会長は、「自利利他を自己の実践原理としなければならない」と言われていますよね。自己の実践原理といったら、毎朝の「おはよう」から始まって、夜「おやすみ」の間ずっと「自利利他」でないとダメだということ。これを続ければ人生が徐々に転換して大発展する、とも言われているけれど、それを実際にどこまでやるかを飯塚初代会長は問うているわけです。人は易きに流されやすいですから、自分にどう歯止めをかけるかは、やっぱり心の問題なんでしょうね。

第200回入会セミナー タイムテーブル

●1日目
 開会式(DVD「自己探求」視聴)
 講義1
  TKC理念①(『TKC基本講座』第1部)
  講師:甲賀伸彦会員
   ・TKC創設とTKC全国会結成
   ・職業会計人の行動指針と実践的行動規範
   ・「TKC会計人の行動基準書」
 講義2
  TKC理念②(『TKC基本講座』第1部)
  講師:髙橋宗寛和尚
   ・自利利他の生き方とは
 講義3
  TKCシステムの開発思想(『TKC基本講座』第4部)
  講師:田中康義SCG営業部長
   (株)TKCの事業目的と経営戦略

●2日目
 DVD「飯塚毅全国会初代会長講話Ⅰ」視聴
 講義4
  巡回監査・書面添付・TKC全国会の活動
  (『TKC基本講座』第2部・第3部・第5部)
  講師:吉野 太 会員
 講義5
  TKC全国会会長講演
  講師:坂本孝司 全国会会長

 髙橋 三木先生が実践原理と言われましたね。講義では毎回「自利利他」の言葉の意味を最初に説明するのですが、そのときに「税理士の先生方は、新しい言葉に対して知的に対応することはとても興味があるでしょう。でも飯塚先生の真骨頂は、『TKC会計人の基本理念(25項目)』で、『TKC会計人は、自利利他の理念を、自己の実践原理として位置づけた、職業会計人の集団である』と言い切ったことなんです。覚悟してください」と申し上げるんです。
 本当におこがましいことだと思っています。でも、聞き流されても、言い続けていくのが飯塚先生の祈りです。もちろん私どもは飯塚先生のようにはなれないけれども、その祈りに共鳴した者なのですから、めげずに自分の立場、立場で言い続けていく。飯塚先生が提示したものを相手の耳に届くように、うんと工夫しながらとにかく語り継ぐ。そういう姿勢をずっと継続していかなくちゃいけないと思います。
 禅の世界に、「正念(しょうねん)相続」という語があります。ふつう、相続というと、昨日と今日が同じもののような気がしますよね。ところが、白隠禅師がおっしゃるのはそうではなく、昨日は昨日で、今日は今日の時点で、その日の無心(正念)を生きてごらん。そうすると、10年経ったら10年後の、新鮮な、無心(正念)に出会えるよ、とのことのようです。
 これは世代交代を重ねていく中で大事なことで、粟飯原先生や三木先生が入会セミナーというかたちで始めてくださった祈りを齋藤先生たちが発展させ、そして甲賀先生や吉野先生が同じように感じて入会された先生方のために無心になって行動する。けれど同じことをしているかといったらそうではない。これが正しい念を相続するということであって、決して同じ形態を継続することではないのです。先人の祈りや思いを次の世代の人たちに丁寧に伝え、それを真摯にくみとっていただき、そこでまた人が育つ。それが、TKCなんだと思います。

 川添 皆さん、本日は大変貴重なお話をありがとうございました。入会セミナーの意義と目的を改めて確認できました。入会セミナーで得た感動を継続し、そして事務所も発展できる会員が増えるよう、研修所としてもさらなる研修の充実に努めていきたいと思います。

第200回TKC全国会入会セミナー集合写真

坂本孝司会長・歴代のNMS委員長・飯塚真玄TKC名誉会長とともに記念撮影が行われた

(構成/TKC出版 篠原いづみ)

(会報『TKC』平成29年10月号より転載)