確定拠出年金制度(日本版401k)導入を検討しています。1月からスタートしたというマッチング拠出について教えてください。(広告業)

 アメリカの401(k)プランにならって日本版401kとも呼ばれる確定拠出年金が導入されて10年が経過しました。今では440万人、1万6600社が採用する国内第2位の企業年金制度として普及しています。また採用企業の8割が中小企業というのも大きな特徴で、中堅・中小企業にとって使いやすい制度です。

 確定拠出年金制度の大きな特徴は、会社は毎月の掛け金拠出と制度運営にのみ責任を負えばよく、運用の責任は社員の自己責任に委ねることができるところです。退職金や企業年金の支払い準備は賃金の支払い準備と同等に重要な会社の責任ですが、計画的かつ安定的に支払い準備を行うことは困難が増しています。確定拠出年金は会社にとっても従業員にとっても安定をもたらすことのできる退職給付準備の一方策といえます。

 なお会社拠出の掛け金については拠出限度額がありますが(月額5万1000円。他に企業年金を併用する場合は2万5500円)、全額損金算入が認められます。

社員の任意拠出が可能に

 日本の確定拠出年金は企業年金制度の一部としてスタートしたため、今まで社員の任意拠出は行えませんでした(社員に自己負担を求め、見かけ上は会社負担掛け金と行政に届け出る事例があるがこれは例外的)。

 今回スタートしたマッチング拠出では、規約に定めることで、社員に任意で追加掛け金拠出をさせることができます。ただし2点の拠出制限があり、労使拠出の合計が前述の拠出限度額を超えないこと、社員の拠出額が会社の拠出額を超えないことが要件です。

 拠出のルールは各社の規約で定めればよく、1000円単位とする、拠出開始や金額改定時期を定めるといったことも可能です。また、強制規定ではないので、企業がマッチング拠出を認めない(規約に盛り込まない)ことも可能です。

 財形年金と性格的には類似していますが、制度の詳細は大きく異なっていますので注意が必要です。

 マッチング拠出の税制については、掛け金が課税所得から全額控除(小規模企業共済等掛金控除)され、運用益は非課税、受け取り時も退職所得控除や公的年金等控除の対象となるなど、優れたメリットがあります。自分の老後のために所得を積み立てるとこれらの税制メリットが得られるわけですから、社員にとっては大きな福音となるでしょう。

 会社にとっても、確定拠出年金制度の枠組みを拡大することで、実質的な掛け金負担は行わずとも社員に対する福利厚生を拡充することができます(税制負担は国)。会社が負うコストは給与計算、年末調整等の事務負担増に限られ、採用の妙味があります

 注意点としては、確定拠出年金の定めに準じ原則60歳まで解約ができない点です。利用開始時に社員に十分な説明と確認を行うことが望ましいでしょう。

 個人の老後資金準備の難しい昨今、全般に魅力の大きい制度で、すでに確定拠出年金を実施している企業はマッチング拠出制度導入のタイミングを検討してみるといいでしょう。またこれから確定拠出年金導入を検討されているようでしたら、マッチング拠出を制度導入と同時にスタートしてみてはいかがでしょうか。

掲載:『戦略経営者』2012年9月号