茨城県の中部に位置し、「笠間焼」で知られる笠間市。8年前の市町村合併にともない発足した笠間市社会福祉協議会では、「誰もが安心して暮らせる福祉のまちづくり」を掲げ、多様な取り組みをおこなっている。昨年導入した『FX4クラウド(社会福祉法人会計用)』を活用し、業務品質が向上したと柴沼真一総務グループ長は話す。

快適な職場づくりを進め活発な福祉活動を展開

笠間市社会福祉協議会:柴沼グループ長(左)

笠間市社会福祉協議会:柴沼グループ長(左)

──組織のプロフィールを教えてください。

柴沼 平成18年に茨城県内にあった1市2町(旧笠間市、旧友部町、旧岩間町)が合併し現在の笠間市ができました。それにともない社会福祉協議会も合併し、笠間市社会福祉協議会が設立されました。旧友部町にあった拠点を「本所・友部支所」とし、「笠間支所」、「岩間支所」、「介護保険事業所」に事務局を置いています。非常勤の介護保険ヘルパーの方をふくめ、組織全体で約180名の職員が働いています。

──日ごろ、どのような活動をされていますか。

柴沼 支所の下にある各支部では地域の方々が中心となり、さまざまな地域福祉活動を行っていて、およそ80のボランティアサークルがあります。介護保険事業所のほうは、居宅介護、訪問介護などを手がけています。

──ボランティア活動が盛んですが、具体的な内容は?

柴沼 ひとり暮らしの高齢者の方にお弁当を手作りして届ける「配食サービス」、手話通訳・学習を実施している「手話サークル」、市広報誌を朗読した録音テープの作成・貸し出しを行っている「音訳サークル」などがあり、多種多様ですね。

──ホームページに「復興ボランティア」募集の告知が掲載されていました。

柴沼 小学生以上の笠間市民の方を対象にボランティアを募り、宮城県内で定期的に活動しています。朝の5時に笠間市をバスで出発し、午前中は被災地域の海岸清掃や草取り、花植えなどをして、午後は地元のお店での買い物による復興支援を行っています。日帰りで参加できるため親子で参加される方も多く、市民の皆さんからご好評をいただいている活動のひとつです。
 そのほか、市内在住・在学の中学生以上を対象にした「ワークキャンプ」を夏休み期間中の2日間、実施しています。初日はアイマスクや耳せんをし、体に負担をかけて歩く高齢者の疑似体験をしたり、車いすの使用方法、手話などを学んでもらいます。2日目は高齢者施設で業務実習を行います。ワークキャンプを受講した後、福祉や介護の職業を志す人もいて、当協議会で実習生として受け入れたこともあります。

──「善意銀行」という事業も手がけられているとか。

柴沼 ええ。金銭だけでなく、労働や物品を預かり、社会福祉を増進する活動に生かす試みです。ご自身で栽培されたお米や野菜を寄付していただける市民の方も多く、配食サービスのお弁当の食材として活用させていただいています。これまでには善意銀行で貯蓄した資金をもとに、市民の方に貸し出すリフト付車両を購入したこともあります。

──近ごろは人材難が言われていますが、魅力ある職場づくりのための施策は行っていますか。

柴沼 職員の大半を女性が占めており、育児休暇や有給休暇の取得促進、「ノー残業デー」の設置など、働きやすい職場づくりを推進しています。「くるみんマーク」の取得もその一環です。くるみん認定とは子育てをサポートしている企業の証しとして、厚生労働省が定めたものです。
 茨城労働局で開催された研修会に参加し、審査を経て昨年9月に認定を受けました。就業規則の内容や有給休暇などの取得実績、ノー残業デーの周知メールのチェックなど、審査項目は多岐にわたりました。就職活動中の学生さんにとって、くるみん認定企業であるかどうかは重要な要素になっているようです。茨城県内の社協の中で認定を受けているのは、当社協だけだと思います。

──運営で気を配っている点は?

柴沼 市民の方々あっての社協なので、理事会、評議員会の場やアンケートを活用し、広くご意見を伺うようにしています。とくに評議員会にはボランティア団体や地域の方などが参加されていて、重要なご意見をいただいています。

4カ所の拠点から65の事業状況を把握

──『FX4クラウド(社会福祉法人会計用)』を利用されているそうですね。

柴沼 根本(明人顧問税理士)先生からシステムをご紹介いただき、昨年から利用しています。合併後も合併前と同じX社の会計ソフトを使っていましたが新会計基準に移行するにあたり、5社ほどからシステム切り替えの提案を受けました。システムデモを見せてもらい、最終的には先生と相談して『FX4クラウド』の導入を決めました。TKCのシステム推進担当者が足繁く訪れ、熱意を持って提案してくれたのが大きかったです。

──根本先生との関与のきっかけを教えてください。

柴沼 根本先生は以前から旧笠間市と契約を結ばれており、現在の笠間市ができた平成18年以来、税務顧問をお願いしています。おととしまでTKCではない会計ソフトを利用していたので、決算業務などやりづらかったのではと思います。

──システムの運用形態をお聞かせください。

柴沼 組織全体で65の事業を手がけており、それらを5つの拠点区分(①地域福祉事業拠点区分②共同募金配分金事業拠点区分③介護保険事業拠点区分④受託事業拠点区分⑤指定管理事業拠点区分)に分け、4人の職員で伝票入力しています。クラウドのため、すべての支所からシステムを参照でき、根本先生の事務所からも起動して質問に対応していただけるのが便利ですね。

──操作は慣れましたか?

松田 長年利用していたシステムから切り替えたため、当初は少し戸惑いもありましたが、今ではひと通り問題なく操作できています。入力漏れやミスをするとメッセージで教えてくれる機能があり、非常にありがたいです。 

──今年の3月が『FX4クラウド(社会福祉法人会計用)』に切り替えて、初めて迎えた決算だったわけですね。

柴沼 はい。従来利用していたシステムより安心感がありますね。自分が入力した伝票の間違いを自分で探すのは大変な作業なんです。毎月財務諸表の整合性を自動的にチェックしてくれるので、決算にかける労力が減りました。5月に開催した理事会、評議員会では、出席者から決算書の内容に関する質問がいっさいありませんでした。おそらく組織始まって以来のことだと思います。

根本 従来の会計ソフトを利用していてもっとも大変だったのは消費税の計算でした。笠間市社会福祉協議会様では数多くの事業を展開されており、消費税の納税が多額になります。事業要項を確認しながら、課税売り上げおよび個別法による課税仕入れの区分判定を行うと相当の時間がかかりますが、『FX4クラウド』は利便性が高く、迅速な月次処理と申告業務を行えました。

柴沼 新会計基準では財務諸表の公開が義務づけられており、昨年度からホームページで掲載しています。従来利用していたソフトでは、ここまでわかりやすい資料は作成できなかったと思います。 

──数多くの事業を手がけられているので、決算書は相当なボリュームになるのでは?

柴沼 トータルで200ページをこえましたが、文字のフォントや大きさがちょうど良く、非常に見やすかったです。日々の伝票入力を正確に行えたため、決算をひかえて伝票の誤りを探す必要もなくなりました。

根本 先日、社会福祉協議会向けの研修会で講師を務めたさい、笠間市社協様の許可をいただいて決算書を参加者の方々に回覧してもらいました。新会計基準で決算を組もうとしている社協の局長や経理担当者は、決算書の法令準拠性の高さと見やすさに一様に驚かれていました。

──今後活用していきたい機能はありますか。

柴沼 根本先生、TKCの担当者にご支援いただきながら、オリジナル帳表を作成できる「マネジメントレポート設計ツール」を活用していきたいです。システムからデータを切り出すと円単位で出てくるため、予算書は千円単位に入力し直して作成しています。その手間が省けるといっそう効率化を図れます。そして将来的には、各支所の職員がリアルタイムで伝票入力や伺い書の作成を行える体制を整えたいですね。

(本誌・小林淳一)

法人概要
名称 社会福祉法人 笠間市社会福祉協議会
代表者 塩畑敏之
設立 2006年4月
所在地 茨城県笠間市美原3-2-11
TEL 0296-77-0730
職員数 175名
URL http://www.kasama-syakyo.jp/
顧問税理士 根本明人
根本明人税理士事務所
茨城県水戸市千波町2482-16
TEL:029-241-1327

掲載:『戦略経営者』2014年8月号