本州、東アジア地域の玄関口、北九州市小倉。小倉駅にほど近い西日本総合展示場は、イベント展示場として西日本有数の規模を誇る。隣接する北九州国際会議場では「G7北九州エネルギー大臣会合」関連のシンポジウムが開かれるなど、海外からの注目度も増している。協会の各部門担当者に誘致戦略、組織運営の勘所を聞いた。

自主事業でノウハウを培い多様な顧客ニーズに対応

西日本産業貿易コンベンション協会

西日本産業貿易コンベンション協会:村田総務課長(中央)

──協会の大まかな事業概要を教えてください。

村田 公益財団法人として西日本総合展示場(本館、新館)、北九州国際会議場、AIM3F展示場の4施設を管理運営しています。JR小倉駅から動く歩道で徒歩5分というロケーションを生かし、規模、予算に関わるお客さまのご要望をうかがって柔軟に対応できるのが特徴です。貸館事業のほか、自主事業の企画運営、MICE(マイス ミーティング、インセンティブツアー、コンベンション・カンファレンス、エグジビションの略称)の誘致活動を通して地域経済の活性化、産業振興の一翼を担っています。

──自主事業の内容は?

村田 平成27年度は「西日本陶磁器フェスタ」や「トミカ博」、「エコテクノ」などの展示会を主催しました。さらに「北九州将棋フェスティバル」、「全国女性俳句大会」といった文化イベントも開催しています。お客さまに対して、主催者としてのノウハウを元に提案できるのがわれわれの強みですね。

──エコテクノに加えて「中小企業テクノフェア」を同時開催しているとか。 

古賀 地場中小企業の優れた技術力、製品を実演、展示し、マッチングを図るのを目的としており、ことしで25回目になります。昨年の開催実績としては2万8000人を上回る人々にご来場いただき、135件、2700万円の商談がありました。ことしは10月12日から14日までの開催を予定しています(出展申し込み締め切りは7月19日)。

志村税理士 西日本総合展示場では地元の福岡ひびき信用金庫さんも「ひびしんビジネスフェア」というイベントを開いていて、ひびしん取引先相互のビジネスマッチングを行っています。私の所属するTKC北九州支部も例年ブースを出し、来場者の相談を受け付けています。

──マイスの誘致活動はどのように行っていますか。

安部 誘致部ではこれまで主に国内の学会、大会の誘致活動に積極的に取り組んできましたが、昨年6月に北九州市が観光庁から「グローバルマイス強化都市」に選定されたのを機に、国際会議の誘致に力を入れています。ことし4月にはドイツ・フランクフルトで開催されたマイス専門見本市「アイメックス」に初めて参加しました。
 日本政府観光局の出展したブースに各地のコンベンションビューローが集まり、世界中のバイヤーに施設の魅力をアピールしてきました。従来、われわれの運営する施設で国際会議を開催するお客さまはどちらかというと韓国、中国、台湾などアジア地域の方々がメーンでしたが、これからは欧米諸国の誘致活動も積極的に行っていきます。

──最近の話題として、韓国釜山コンベンションセンター(BEXCO)と協定を結ばれたそうですね。

古賀 アジア諸国へ市場拡大を目指す九州の企業が増えているなか、われわれも海外市場に進出し国際化を図らなければなりません。BEXCOは積極的に海外展開していることで知られ、海外の展示場の中では距離が最も近い。協定の締結により、BEXCOで開催される展示会へ地元九州の企業の出展を後押ししたり、われわれの運営する展示場への企業誘致に取り組んでいきます。

──外国語の習得など、職員教育についてお聞かせください。

村田 海外で誘致活動を促進するためには英語によるコミュニケーション力向上が不可欠であり、TOEIC受検のための教材費の補助が受けられるようになっています。また、外部研修機関が開催する部長研修、課長研修などに参加して社外の人と交流を深め、見聞をできるだけ広めるようにしています。

伺書から支払管理まで一元的な運用が可能に

──TKCの『FX4(公益法人会計用)』を8年前に導入されたと聞きました。

村田 まず、クライアント・サーバ型のシステムを導入し、昨年10月にクラウド版に移行しました。システムコンサルタントの志村先生に運用を支援していただいており、給与計算システムの『PX2』も昨年から利用しはじめたところです。

──日々の運用はどのように?

中村 私を含めて複数名の会計担当者が伝票入力を行っていて、北九州市や当協会主催のイベントは公益事業として、民間団体主催のイベントや駐車場収入などを収益事業として計上しています。伺書の作成については、職員のほぼ全員が各自のパソコンからシステムに入力していて、月間の枚数は600枚ほどにのぼるでしょうか。システム利用前は手書きした伺書を責任者が決裁、承認していたため、一連の作業を効率化できました。

──具体的には?

中村 伺書を作成する時に「伺書辞書」機能を活用して入力項目を最小限に抑え、入力ミス防止に役立てています。それから、承認された伺書が支払予定および仕訳データとして連動するのも大きいですね。《支払予定カレンダー》で日ごとの支払予定を確認できるほか、請求書と支払額の整合性をチェックした上で金融機関への振り込みデータを作成できるので、月末の締め切り業務が楽になりました。従来、相当な枚数の仕訳を入力していましたが、その手間が減り省力化につながりました。

──請求書データの入力方法を教えてください。

中村 外部のソフトウエア会社に委託開発してもらった業務システムに入力しています。入力済みの請求データはCSV形式のファイルに切り出して『FX4クラウド(公益法人会計用)』に連携できるので、システマチックに運用できるようになりました。

──伺書作成から支払いまでの業務を一元化できたわけですね。

中村 ええ。『FX4(公益法人会計用)』に移行してからは、協会全体の収支状況を随時把握できるようになったのと、委託費、水道光熱費といった勘定科目の推移をチェックして決算期末に向けた予測が立てやすくなりましたね。

──そうした収支の話をする場というと?

村田 ほぼ毎週開いている幹部会で意見交換することが多いですね。話し合う内容は予算に対する進捗(しんちょく)、施設の稼働率、収益のことなどもろもろです。システムから出力した《事業別損益予算実績》を元により見やすく加工した帳表を中村さんに作成してもらっています。

──クラウド版の使い勝手はいかがでしょうか。

中村 プログラムのレベルアップがあったとき、以前は社内のサーバに入っているシステムをまず更新し、その後1台1台のパソコンにインストールしていたため、作業が負担になっていました。その点、クラウド版では新入職員にパソコンを配備したときなども簡単にインストールでき、とても助かっています。先日熊本で地震がありましたが、システムのデータはTKCデータセンター(TISC)にあるため、安心して運用できるのもメリットだと感じています。

──『PXまいポータル』も利用されています。

中村 志村先生にお勧めいただき、『PX2』とあわせて導入しました。『PXまいポータル』で職員のマイナンバーを入力し、クラウド上でデータが保管されるので収集から保管までストレスなく運用できています。

志村 『PXまいポータル』はマイナンバーを預ける職員の方、保管する協会側双方にとって安心して任せられる仕組みだと思います。いまフィンテックが話題になっていますが、『FX4クラウド(公益法人会計用)』のインターネットバンキング機能がさらに強化されれば、活用したいですね。

──今後の展望をお聞かせください。

村田 平成29年4月に北九州市観光協会との合併を控えています。観光協会は社団法人であるため、社内規定や会計処理方法など今から調整を進めておかなくてはなりません。ゆくゆくは会計システムを一本化する必要もあるでしょう。外部環境の変化としては、展示場の近くで北九州スタジアムが建設中でサッカーチーム、ギラヴァンツ北九州のホームグラウンドとして来年3月から供用が開始される予定です。こうした外部環境の変化も生かしながら、前年度を上回る実績を目指し、北九州市のにぎわい創出、活性化に貢献していきたいと思います。

(SCG第二営業部・小山育伸/本誌・小林淳一)

会社概要
名称 西日本産業貿易コンベンション協会
設立 1976年3月
所在地 福岡県北九州市小倉北区浅野3-8-1
職員数 45名
システム
コンサルタント
志村俊郎
志村俊郎税理士事務所
福岡県行橋市中央2-9-20
TEL:0930-22-3219
URL:https://www.tkcnf.com/stac/

掲載:『戦略経営者』2016年6月号