経営者の皆様へ
年商50億円をめざす企業の皆様へ
年商5億円を超えてから50億円の壁を突破するまでの道程は、決して平坦なものではないようです。
例えば、産能大学経済学部の宮田矢八郎教授は「ヒット商品が年商10億円の壁を破り、ブランドの構築が年商30億円の壁を破る」と著書『理念が独自性を生む』(ダイヤモンド社)で述べています。
第二、第三の独自商品・サービスを創り出し、これをヒット商品へと育て、さらにブランド力を構築していくことが、年商50億円突破に至るプロセスであるというわけです。
一方で、拡大する組織の中で経営者のマネジメントは複雑化し、難しい決断も多くなってくるでしょう。
1つの判断の誤りが、経営の危機へとつながってしまうことも十分に考えられます。
経営者には、明確な経営理念を掲げ、組織を整備・強化し、幹部を育成して権限の委譲を図っていくことが求められるようになります。
ここでは、年商5億円の壁をすでに突破し、10億円、30億円、50億円超へとステップアップをめざす経営者の方々に、課題解決のヒントを提供していきます。
部門長のマネジメント力をいかに鍛えるか
会社が成長して複数部門を有するようになってくると、すべてを経営者ひとりで管理するのには限界も出てきます。
そこで必要となってくるのが、社長の代わりに各部門を切り盛りする部門長の存在です。
ところが、多くの経営者は、この部門長の育成で頭を悩ませているようです。
部門長のマネジメント力が心許ないようでは、経営者は安心して部門運営を任せることができません。
さらなる成長には、部門長を育てるための仕組みが不可欠です。
部門長を鍛えるための最もオーソドックスな手法は、「部門別業績管理体制」の構築です。
これは、製造業であれば「工場別」、小売業であれば「店舗・営業所別」などといったように事業を区分けして、部門ごとに儲かっているか損をしているかをつかむ管理手法のことです。部門長は、いわばその部門の経営者であり、部門経営に対して一定の権限を有すると同時に、部門業績に対し責任を持つ立場となります。
つまり、企業を複数部門の集合体として捉え業績管理を行っていくわけです。
部門ごとの採算を把握するには、すべての費用を売上変動に伴い増減するかどうかで「変動費」と「固定費」に分類して表示する「変動損益計算書」の考え方を用います。
例えば複数店舗を展開する居酒屋チェーンなら、まず各店舗売上から店舗ごとの食材費等(変動費)を引いて限界利益(粗利)を算出します。
さらに、限界利益から店舗ごとの調理係やフロア係の人件費、家賃など(直接固定費)と、本社人件費等を店舗ごとに配賦した金額など(間接固定費)を引くことで、店舗ごとの営業利益を出していきます。
この各店舗の営業利益が、それぞれの店長の営業成績となります。
店舗(部門)別業績管理体制によって店(部門)長を鍛えるには、3つのポイントがあります。
1つ目は、部門長に、会社の戦略と経営計画を担当部門の計画と結びつけて理解させることです。
仮に全社の売上目標が前期比103%で自部門のそれが110%であったら、担当部門長は「それだけ自分の担当する部門が戦略的に重要だ」と認識できるでしょう。このように部門長に自身の責任範囲を明確に理解させ、当事者意識を植え付けるのです。
2つ目のポイントは、自部門の業績向上への意欲を高める仕組みです。分かりやすいのは、業績連動型の給与体系でしょう。
例えば、部門利益の一定割合を決算賞与としてその部門に支給するといったことが考えられます。
3つ目は、経営者と部門長が適切なコミュニケーションをとることです。
部門長は常に正確な“現場情報”を経営者に報告し、経営者の戦略判断に貢献できるようにします。
そうしてことの繰り返しで、徐々に部門長はトップの考え方や判断基準を理解できるようになっていきます。
理想は、部門長が経営者の分身となって活躍できるようになることです。
TKC会員会計事務所は、会計ソフト「FXシリーズ」を活用し、中小企業の部門別業績管理体制構築を支援しています。
事例:店舗別管理で高品質低価格と高収益性を両立させる
K社は、東京で“こだわりの蕎麦屋”を5店舗を展開する年商約7億円の企業です。グルメも納得の高品質な手打ちそばをリーズナブルな価格で提供し、多くのファンを獲得している人気店です。
同社の経営の最大の特徴は、そばの“命”である「粉」と「つゆ」は本店から提供しますが、それ以外はすべて各店舗の判断に一任している点。店舗が判断するのは、メニュー構成や価格設定、キャンペーン・イベントの企画などとなっています。
同社K社長は「当社は、ファミレスのような中央集権体制ではなく、各店の独自性を尊重した連邦国家体制をとっています。それぞれの店で創意工夫し、特色を生み出しているのです」と言います。
この体制は、「きちっとしたそばを格安で提供することで蕎麦職人の文化を守り、その一方で経営においても高い収益性を実現する」(高品質・低価格・高収益)といった社長の経営方針を具現化するため、試行錯誤の末、行き着いた結論だったそうです。
社長の言う「連邦国家体制」とは、すなわち店舗(部門)別業績管理体制のことです。
なぜ同社は、高品質・低価格・高収益という一見矛盾する困難な目標を実現できたのでしょうか。
K社長の答えは「部門別業績管理によって店長が鍛えられ、現場力が向上したから」でした。
同社では、店長が年度予算の策定から参加し、店舗ごとに目標を設定。その達成を目指し、店長が主体となって店舗の業績管理を行っています。
もちろん、各店個別の改善策も、現場の知恵を活かして店長が立案。K社長はよほどのことがない限り口出ししません。「5店舗はそれぞれロケーションも客層も異なる。各店が実情にあった改善策を行わなければ効果は期待できない」と社長は強調します。
ある店長が実際に行った改善例を紹介してもらいました。
「その店長は、『エビ2本』だった天ぷらセットを『エビ1本と複数の野菜』に変更するということをしました。常識的に考えるとエビが野菜にグレードダウンした分、売れ行きが落ちると予想します。ところがこの時は、逆にヒット商品になったのです。その店舗のお客様のヘルシー志向が高まっていたことが成功の要因でした。店長に任せたことで、経費削減と売上向上を一石二鳥で実現できました」
その時々の特定商圏の顧客ニーズは、日々、顧客と接している店長だからこそ捉えることが可能です。
同社は部門別業績管理体制によって、そうした現場に眠っている力を引き出すことに成功したわけです。
さらに同社では、店舗業績を各店のボーナスの査定にも反映させています。これによって、より真剣に店長は店舗運営に当たるようになったそうです。
また、自社施設での研修会も実施しています。
研修内容は、社長と店長、社員が一同に会し、芸術鑑賞などで感性を磨くことが中心だといいます。これが社長と店長の大切なコミュニケーションの場となっています。
(協力:博英税理士法人)
中期経営計画は社長の“夢”実現への工程表
年商5億円を超えると、経営者ひとりの力量だけではさらなる成長を望めません。
そこで部門長を鍛え、役割と権限を委譲していく必要が生まれてきます。
また、部門長に役割と権限を委譲するためには部門別業績管理体制が重要であり、部門別業績管理体制を機能させる上で不可欠となるのが経営計画です。
一般に経営計画には、長期経営計画(10年程度)、中期経営計画(3~5年)、その短期経営計画(1年)の3つがあります。
経営環境の変化が激しい近年は、中期計画と短期計画を策定するケースが大半です。
短期計画は中期経営計画の初年度計画でもあります。
さらに短期計画は月次予算へと落とし込みます。
これと月次試算表の実績とを対比させながら毎月、計画の進捗管理を行っていきます。
経営計画のメリットは、社内・社外の両面であります。
まず社内において期待できる効果は、目標に向かって社員が一丸となれることです。
部門ごとに目標を設定すれば、部門長が果たすべき責任が明確化され、それが部門長の動機づけにもつながります。
経営計画は、社長の“夢”や“目標”を実現するためのいわば工程表です。
山登りにたとえるなら、頂上(夢・目標)に辿り着くために、1日目(1年目)にベースキャンプ到着、2日目(2年目)に前進キャンプ建設といった麓から頂上までの道筋を記した登山計画書。パーティのメンバー(社長・部門長)は全員でこれを共有し、各自の役割を全力で全うします。
当然、途中で天候(経営環境)が変化すれば、隊長(社長)がルート変更(戦術の見直し)などを決断します。
実際の経営計画書には、目標が具体的な経営数値で記されています。
これによって目標と現実との差(課題)が明確に把握できるため、社長や部門長は有効な打ち手をとりやすくなります。
一方、社外に対しては、しっかりした経営計画があることで、金融機関や取引先、顧客からの信頼が高まります。
なかでも金融機関は、企業の経営計画を非常に重視しています。
例えば、昨今、金融機関が赤字企業に対し、黒字転換のための中期経営計画である「経営改善計画」の提出を求めるケースが増えています。
実現性の高い抜本的な「経営改善計画」は、たとえ業績不振であっても取り引きを継続するための十分な裏付けとなるからです。
また、平成21年12月に施行された「中小企業等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(中小企業金融円滑化法)でも、金融機関に対し経営改善計画を提出した企業の「貸付条件の変更等」(企業から見れば返済条件の変更)に応じる努力をするよう定めています(平成23年3月まで)。
まだまだ経営計画そのものを策定していない企業が多いようです。
その有効性は理解しつつも、どうやって策定したらいいのかが分からないという社長も少なくないでしょう。
TKC会員会計事務所では、中小企業の経営計画策定を支援しています。
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