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税理士が教える 「経営計画作成のコツ」(2)
甲賀伸彦税理士事務所 税理士・行政書士 甲賀 伸彦
1964(昭和39)年1月生まれ。1987年3月早稲田大学社会科学部卒業。1989年3月早稲田大学大学院商学研究科卒業。同年4月シティバンク・エヌ・エイ東京支店入社。1992年9月クレディスイス銀行東京支店入社。1996年2月税理士登録し、甲賀伸彦税理士事務所を開設する。同年12月有限会社マネジメントアカウンティングを設立。釧路公立大学非常勤講師(経営分析論、簿記論Ⅲ)。
URL:http://www.ninja.ac/index.html
経営計画の作成の手順①~ 自社の現状を認識する ~
中小企業経営者にとって「計画」は企業を舵取りする上での羅針盤の役割を果たし、社長さんの「夢」(元気な会社)を実現するうえで重要な役割を果たします。その計画を作成するのにはどのような手順が必要になるのでしょうか? 今回から、経営計画の作成手順について解説をしていきます。
経営計画を作成する上でまず行わなくてはならないのが、「自社の現状分析を行い、自社の現状を認識する」ことです。これは、日頃から計画の作成を意識した会計処理をしておくことで、その手間を省くことができます。こうした会計処理の仕方については顧問されている税理士に相談してください。
【経営計画の作成の手順】
1 自社の現状を認識する(あわせて経営環境等も認識する)
2 事業内容、財務、収益の3分野から経営課題をまとめる
3 経営課題に対する具体的な解決策(ソリューション)を検討する
4 数値のシミュレーションを繰り返し「経営計画」をまとめる
5 「経営計画」を実行する
6 「経営計画」の進捗状況のモニタリングを行う
自社の現状分析を行う前に確認すべきこと
では、自社の現状分析はどのように進めればよいのでしょうか。
まずは、過去の決算資料等の実績の中から、現在の業績につながっている一番の原因を探っていきますが、その前に準備することがあります。
まず、自社の過去の決算書が「きちんと発生主義で経理されているのか」、また「一定の会計ルールで処理されているか」を確認する必要があります。適切な財務分析を行うためには、その基礎データとなる過去の決算書に一貫性が必要です。一貫性がなければ、比較検討する意味がありません。過去のデータがきちんとしていない中で「計画」を作成しても実効性のないものとなります。
また、自社の生産性を分析する際には、正確な従業員数などの把握や決算数値以外の追加的な情報も必要になってきますので、事前に確認をしておきます。
さらに、「変動損益計算書」の考え方を理解しておいた方が良いでしょう。「変動損益計算書」というと難しそうに思えますが、制度会計上の損益計算書と違い、すべての費用を売上に伴って増減する「変動費」と、売上にかかわらず一定の費用が発生する「固定費」に分け、経営者の感覚に即したものにしたものです。
この考え方を使って制度会計上の損益計算書を、「経営者の意思決定に役立つ」情報に組み替えることで、経営者は自社の現状を把握しやすくなります。変動損益計算書の中で限界利益(粗利と考えればいいでしょう)という項目があります。これは売上髙から変動費を引いた値をいい、自社の現状を把握する上で重要な数値となります。
現状分析 ~ 同業他社比較 ~
自社の現状を分析するためには、最初に3期分の決算書データをもとに、これまでの業績の推移を確認していきます。この際、重要なのが同業他社比較です。これにより他社(黒字企業)と比較した場合の特徴点をとらえて、どこに自社の「強み」や「弱み」があるのか、また、改善できそうな部分はどこなのかということを、大まかにつかんでいきます。
同業他社比較をするための数値は、信頼の置けるものが必要です。TKCグループホームページには、22万社以上の決算書を基礎とした「TKC経営指標(BAST)」の速報版が掲載されています。こういったものを参考にすればいいでしょう。
また、それ以上に詳細なデータが必要な場合は顧問税理士に相談してください。
現状分析 ~ 損益計算書 ~
【経営計画作成のための、損益計算書を分析するポイント】
○商品別・市場別に分解した限界利益を確認する
○期間比較し、実数の推移・構成比の変化・対前年比を確認する
売上高・限界利益は全社の利益を確認することに加え、商品別・市場別に分解した限界利益率表を作成し、商品ごとに利益状況の確認を行うことが必要です。経営者は往々にして、「この商品は利益率が高く儲かっているはずだ」といった先入観を持ちやすいものですが、この表を作成するとこにより、商品ごとや市場別の分析を客観的に行いやすくなります。
また、「どの市場(顧客)に」「どの商品が」「どの位の限界利益率で」売り上げられているかを確認することで、実際に計画を作成する際にもプロダクトミックスの改善を考えるための参考資料となります。さらに、本表の限界利益率の合計額が、変動損益計算書の限界利益額と概ね一致しているかをチェックします。食い違いが大きい場合は、値引きなどの原因が必ずありますのでその理由を確認しておきます。
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また、3期比較変動損益計算書などを活用し、販売実数の推移・構成比の変化・前年対比による増減率などから異常値を見つけ、その原因を絞り込んでいきます。
現状分析 ~ 貸借対照表 ~
【経営計画作成のための、貸借対照表を分析するポイント】
○売掛債権一覧表・棚卸資産別一覧表を作成し、資産性を確認する
○金融機関別借入金残高一覧表を作成し、資金計画を確認する
企業会計の目的である財務諸表の作成では、1会計期間の経営成績を明らかにする「損益計算書」と1会計期日における財政状態を明らかにする「貸借対照表」がその中心となります。どちらの財務諸表も重要な情報となりますが、企業評価という観点からは、その重要性が、「貸借対照表」にシフトしてきています。すなわち、「損益計算書」は、期間損益の結果をとらえたものであり単発的な会計情報にしか過ぎませんが、長年の期間損益計算の結果を毎期少しずつ受け、それを自己資本として蓄積した内容を表現する「貸借対照表」が企業評価の上で重要な会計情報となってきています。
貸借対照表を見る際には、売掛債権一覧表や棚卸資産別一覧表を作成して、不良債権の発生の有無、不良在庫や過大在庫の有無をチェックして、早期に是正するべき箇所を把握していきます。すわなち、財務デューデリジェンス(資産査定)をおこない実態バランスを把握することが大切です。
また、金融機関別借入金残高および担保ポジション一覧表を作成します。これは、計画を作成する際に返済による資金圧迫を確認して、借り換えの方向性などにつき確認するために作成します。
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ここで作成した資料は、自社分析を行うために作成しますが、ここでしっかりとした資料を作成し、自社分析を行うことで、実際に計画を検討する際に参考となります。
(本稿は、日本政策金融公庫発行のメールマガジンサービス「事業者サポートマガジン」9月21日号に掲載されたものです。内容は、あくまで掲載当時のもので、その後、状況等が変化している場合もあります)
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