更新日 2010.05.10

グループ法人税制と連結納税制度の比較検討のポイント

第3回 連結納税制度の改正(概要)

  • twitter
  • Facebook
税理士  畑中 孝介

TKCシステム・コンサルタント 税理士 畑中 孝介

平成22年度税制改正においてグループ法人税制が創設されました。そこで、皆さんが気になる制度の概要や連結納税制度との相違点、比較検討のポイントなどを全10回にわたって連載いたします。

2010年5月10日掲載

 平成22年度税制改正では、グループ法人税制の創設とともに、連結納税制度の一部見直しが行われております。今回は連結納税制度の改正の概要についてお伝えします。

 主な改正点は下記の通りです。

  1. 子法人の欠損金を連結納税グループ加入時に持ち込み可能とする
  2. グループ内の寄附金について全額益金不算入とする
  3. 時価評価対象法人となる条件を緩和する
  4. 承認申請期限を短縮する
  5. 子法人の連結納税グループへの加入時期を柔軟にする

【制度改正の目的】

 この改正の目的は、以下の2点にあると思われます。

  1. グループ法人税制の導入に伴い、グループ法人税制との制度の統一化を図った
  2. 連結納税の導入がなかなか進まないことから、その阻害要因を取り除いた

 課税所得ベースで見た場合、連結納税制度を選択している企業は、すべての企業の課税所得の合計のうち、7%程度にとどまっています。米国と比べても、1/7程度の適用状況にとどまっています。そこで、連結納税制度のデメリットを改善するとともに、利便性の向上を図り、制度の普及を図る意図があると思われます。

【制度改正の概要】

 それでは、改正点の概要を見てみましょう。

  1. 子法人の欠損金を連結納税グループ加入時に持ち込み可能とする
    従前は、株式移転の場合などの例外を除き、連結加入時の子法人の欠損金は、原則として切り捨てとなっていました。改正後は、5年以内に適格再編以外でグループ化した法人などを除き、欠損金は持ち込めるようになります。
    ただし、単体納税同様、当該子法人の所得を限度として、控除できる点に注意が必要です。詳細な内容については第7回で解説します。
  2. グループ内の寄附金について全額益金不算入とする
    従前は、寄附金を受領した側が全額益金算入となり、支出した側は全額損金不算入となっていました。平成22年度税制改正では、この点が改正され、寄附金を受領した側は全額益金不算入、支出した側は全額損金不算入となり、グループ内での寄附は、所得に影響しないこととなります。
  3. 時価評価対象法人となる条件を緩和する
    100%資本関係にある企業グループ内で非適格株式交換を行った場合、従来は、時価評価対象法人となっていましたが、平成22年度改正では、グループ内であれば原則として時価評価課税の対象にならないこととされました。
    グループ法人税制において、グループ内の資産譲渡損益が繰延になったことに伴い、連結納税制度においても、同様の措置が取られたということになります。
  4. 承認申請期限を短縮する
    従前、連結納税の承認申請の提出期限は、連結納税制度を適用する事業年度の開始の日の6月前とされていましたが、平成22年度税制改正では、3月前に短縮されました。
  5. 子法人の連結納税グループへの加入時期を柔軟にする
    期中で新たに連結納税グループに加入する子法人について、従前では完全支配関係が生じた日に加入することとされていました。平成22年度税制改正では、完全支配関係が生じた日以後最初の月次決算日の翌日とすることもできるように柔軟化が図られました。

上記の4・5については、実務負担の軽減を図ったものということができます。

【連結納税制度を選択する企業は一気に増加する】

 昨年開催されたTKC連結納税セミナーのアンケート集計結果によれば、連結納税制度を適用しない主な要因として、「子法人の欠損金の切り捨て(70%)」と、「グループ内寄附金の損金不算入(20%)」が挙げられていました。平成22年度税制改正では、この2点が改正されたことになります。

 それに加え、グループ法人税制の導入で、グループに対する課税はおおむね統一化が図られました。また、景況感の悪化により欠損法人が増加しています。連結納税の場合には所得通算ができますのでそういったメリットもクローズアップされつつあります。

 上記の状況を踏まえて考えると、これから、連結納税制度を選択する企業は一気に増加するのは間違いがない状況だと思われます。

  • twitter
  • Facebook

この連載の記事

テーマ

プロフィール

この執筆者の記事一覧へ

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員

略歴
ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。
著書等
  • 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
  • 『令和4年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
  • 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
  • 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
  • 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
システム・コンサルティング事例
ホームページURL
ビジネス・ブレイン税理士事務所

免責事項

  1. 当コラムは、コラム執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
  2. 当コラムには執筆者の私見も含まれており、完全性・正確性・相当性等について、執筆者、株式会社TKC、TKC全国会は一切の責任を負いません。また、利用者が被ったいかなる損害についても一切の責任を負いません。
  3. 当コラムに掲載されている内容や画像などの無断転載を禁止します。