更新日 2015.04.06

平成27年度税制改正のポイントと今後の動向

第4回(最終回) 国際課税・リバースチャージ・マイナンバー等

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 畑中 孝介

平成27年度の税制改正では、昨年度に引き続き、アベノミクス税制として法人の成長支援における税制、財源確保のための改正が行われます。当コラムでは、平成27年度税制改正の概要から、法人実効税率の引き下げ、欠損金制度の変更など影響の大きい改正点を中心に解説します。

 これまで当コラムでは、主に法人課税関連の改正を中心に解説してきましたが、最終回となる今回は、国際課税・消費課税やその他の改正のうち、法人に関する改正で影響が大きいと思われる項目について解説します。

1.国際課税に関する改正

(1) 外国子会社配当益金不算入制度の見直し

 外国子会社から受け取る配当等の額が、その外国子会社の所在地で損金に算入される場合、その受け取る配当等の額については、外国子会社益金不算入制度(注)の対象外となります。
 なお、益金不算入の対象外とされた配当等の額に課される外国源泉税等の額は、外国税額控除の対象とされます。

(注)配当を得るために要した費用を考慮し、配当額の95%が益金不算入とされています。

(2) 外国子会社合算税制等の見直し

 2015年4月から英国が法人税率を20%へ引き下げることにより、現行制度のままだと英国が外国子会社合算税制の対象となってしまい、損害保険会社等に大きな影響が出るためトリガー税率が従来の20%“以下”から20%“未満”へ変更されます。
 また、適用除外基準のうち事業基準の判定に係る見直しが行われ、被統括会社・統括会社・事業持株会社の範囲等が見直されます。

2.国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税の見直し(リバースチャージ)

 現在、国外取引については、原則として消費税の課税対象外となっています。そのため、近年のボーダレス化の進展と電子取引の普及により、ネット広告やネット配信等において外国企業に比べ国内企業の競争条件の不公平さが顕在化してきました。消費税率の引き上げでさらにその格差が拡大することから、新たにリバースチャージ制度が導入されることとなりました。

(1) 対象取引

 「電気通信役務の提供」については、内外判定基準が役務の提供に係る事務所等の所在地から、役務の提供を受ける者の住所地等に見直され「国内取引」とされます。

(2) 「電気通信役務の提供」とは

 電子書籍・音楽・広告の配信等の電気通信回線を介して行われる役務の提供です。

(3) 課税売上割合が95%以上である場合の負担軽減措置

 課税売上割合が95%以上等である場合には、結局はほぼ全額仕入税額控除されるため、当分の間当該特定課税仕入れはなかったものとされます。

A リバースチャージ方式の導入(対事業者向け取引)

 国外事業者(※)が行う電気通信役務の提供のうち、当該役務の提供を受ける者が事業者であることが明らかなものは「事業者向け電気通信役務の提供」とされ、その取引に係る消費税の納税義務が役務の提供を受ける事業者に転換されます。

※国外事業者とは、所得税法上の非居住者である個人事業者及び法人税法上の外国法人を言います。
また、消費税の課税対象である資産の譲渡等から事業者向け電気通信役務の提供等が除かれ、事業者が事業として他の者から受けた事業者向け電気通信役務の提供(「特定仕入れ」)が課税対象とされます。

B 国外企業者申告納税方式の導入(対消費者向け取引)

 事業者向け電気通信役務の提供以外のもの(以下「消費者向け電気通信役務の提供」については、当該国外事業者が納税義務者となります。

3.銀行口座へのマイナンバーの付番

 「番号利用法」の改正に併せて、銀行等に対しマイナンバーによって検索できる状態で預貯金情報を管理する義務が課されます。

4.税務関係書類に係るスキャナ保存制度の見直し

(1) 対象書類

 契約書及び領収書に係る金額基準(現行:3万円未満)が廃止されます。
 重要書類(契約書・領収書等)については、内部牽制や規定の整備等の適正事務処理要件を満たしていることが承認の要件とされます。

(2) 業務処理後に保存を行う場合の要件

 重要書類について、業務処理後にスキャナ保存を行う場合に必要とされている関係帳簿の電子保存の承認要件が廃止されます。

(3) 電子署名要件

 電子署名が不要となり、タイムスタンプ及び入力者等に関する情報の保存が要件とされます。

(4) 大きさ情報・カラー保存要件

 重要書類以外の書類について、書類の大きさに関する情報の保存がふようとなり、白黒での保存でも要件を満たすことされます。

5.外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)の見直し

 現行では、個別店舗ごとに免税手続きを行う必要がありますが、改正後は、商店街・ビル内の「免税手続きカウンター」等での手続きも可能になります。

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員

略歴
ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。
著書等
  • 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
  • 『令和4年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
  • 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
  • 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
  • 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
システム・コンサルティング事例
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ビジネス・ブレイン税理士事務所

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