会計・税務

制度改正Q&A 医療法人運営にともなう " 監事業務 " の要点と留意点

医業経営コンサルタント 税理士 丹羽 篤

第5次医療法改正により、医療法人の内部管理体制の強化や経営の透明性の確保の観点から、監事の職務の明確化・強化が図られ、平成20年3月以降決算期からの新様式による事業報告書等の提出・閲覧制度も始まり、ほぼ1年が経過しました。今号では改めて監事に課された職務を確認するとともに、1人医師医療法人規模での監事の監査の方法や、監査報告書の作成上の留意点などをQ&A形式で解説します。

Q1 医療法改正により監事の職務が医療法で明確に規定されたそうですが?

A1 従来は民法規定を準用していましたが、監事を中心とした内部管理体制強化の観点から、医療法上で以下の職務が明記されました。

  1. 医療法人の業務及び財産の状況を監査すること。
  2. 毎期監査報告書を作成し、会計年度終了後3か月以内に社員総会または理事に提出すること。
  3. 監査の結果、業務または財産に関し不正や法令・定款等の重大な違反事実があるときは都道府県知事や社員総会等に報告すること。
  4. 報告のため必要であれば社員総会等を招集し、また理事に対し業務または財産の状況について意見を述べること。

Q2 監事の具体的な監査業務はどのようになりますか?

A2 日頃より医療法人の業務や財産の状況に対し、監査を心がけることが期待されますが、実務的には次のようになります。

  1. 会計年度終了後2か月以内に、イ)業務及び財産の状況に関する事業報告書、ロ)貸借対照表、ハ)財産目録、ニ)損益計算書等の提出を理事から受ける。
  2. 監事は上記をもとに、業務・財産の状況を監査する。
  3. 会計年度終了後3か月以内に(つまりわずか1か月で)、業務および財産の状況が適正である旨の監査報告書を作成し、社員総会または理事に提出する(不正や違反等があれば、Q1の (3) や (4) を行う)。
  4. 事業報告書等、監査報告書を含む一連の書類は都道府県知事に提出され、定款とともに一般の閲覧に供される。

Q3 監査報告書には、どのような内容を記載するのですか?

A3 監査報告書は、以下の内容を対外的に証明するものです。

  1. 事業報告書が法令・定款に従い法人の状況を正しく示していること。
  2. 会計帳簿の記載が正しいこと。
  3. 計算書類が損益・財産の状況を正しく示していること。
  4. 理事の職務の執行に関し、不正な行為や法令や定款に違反する重大な事実がないこと。

 現在のところは、書類の作成・届出の実施を重視し、監査方法の概要と結果の簡潔な記載および監事の記名押印で受理されていますが、今後は監査報告書の記載内容の充実と監事の署名や実印押印が要請されることも十分に考えられます。

Q4 監査や監査報告書作成を行うに際し、留意すべきことは何ですか?

A4  監査報告書を作成するということは、医療法人の業務や財産の報告に虚偽や法令違反がないことを対外的に証明するものであり、広く閲覧に供されることになります。その結果、これらの作成・届出の懈怠や虚偽記載については、登記の懈怠や剰余金の配当禁止違反などと同じように、監事は理事とともに連帯責任を問われ 20 万円以下の過料に処されることになります。また、あってはなりませんが診療報酬の不正請求や脱税、粉飾決算などがあれば、ステークホルダー(利害関係者)から多額の損害賠償請求を含めた責務を追及されることも十分に考えられます。「実際に法人監査を実施できない者が名目的に選任されていることは適当でなく、財務諸表を監査しうる者が選任されていること」(厚労省・運営管理要綱)が求められることになる所以でもあります。

   安易な考えで親族などを監事にされているケースは、同族要件に抵触することになるだけでなく、今後、一層厳しくなると思われる監査報告書の精度への要求に対応するためにも、その人選をしっかり再検討する必要があります。

Q5 監査の方法として、どのように行うことになっているのでしょうか?

A5 厚労省のモデルでは、主に以下の 3 つの方法が示されています。

  1. 理事会など重要会議に出席する。
  2. 業務・財産の状況を調査し、理事等から職務の執行状況を聴取、事業報告を求める。
  3. 会計帳簿等の調査、事業報告書や計算書類の監査を行うこと。

 監事に要求されている監査内容は、業務監査も含め、非常に広範な範囲に及んでいます。医療法人の規模、つまり社会医療法人を筆頭に大規模な病院や介護老人保健施設などと、それ以外の法人では、求められている監査(報告書)の内容や精度は異なり、決して一律ではありません。   ただし、Q4で説明しましたリスクなどもあることから、ただ漫然と監査報告書のモデルにしたがって作成、提出するのではなく、ガバナンスの構築や医療サービスの品質の確保など、業務の改善・向上に結びつくような日常的な監査の仕組みを構築することが重要となります。監事が理事やスタッフ、会計事務所などと密に連携しながら行えるような方向で考えてみてはいかがでしょうか。

  厚労省の運営管理指導要網に準じた監査事項の簡単なチェックリスト(参考)をつくりました。このチェックリストを活用して監査事項をしっかり確認するとともに、院内で日常的にチェックしていく体制を構築することが大切です。 img_b0286_01.jpg

(「TKC医業経営情報」2009年5月号より)

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