会計・税務

TKC医業会計データベースMX2・MX3活用事例 "絶対に断らない医療 "の実践には 部門別管理が不可欠

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■ 医療法人相羽医院

■ 院長 相羽 直人(あいば なおと)

 埼玉県吉川市にある医療法人相羽医院。院長の相羽直人氏は約6年前、先代の病気を機に、開業30年を超える同医院を事業承継した。糖尿病・内視鏡検査・在宅医療を3本柱に、“絶対に断らない医療” を実践し、地域の人々の信頼を獲得してきた。また、医療法人としては県内初の高専賃(適合高齢者専用賃貸住宅)やデイサービスを開設するなど介護事業にも積極的に取り組み、地域での存在感を高めている。「さまざまな機能を抱えるなか、持続的にサービスを提供するには、MX3による部門別管理でタイムリーに業績を把握することが欠かせない」と語る相羽院長に、これまでの取り組みや高専賃開設の経緯、MX3の活用法などについて話をうかがった。

医療法人相羽医院
相羽医院

埼玉県吉川市栄町888-1 

 

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JR吉川駅から徒歩約10分の場所に位置する「相羽医院」

診療科

内科・胃腸科・皮膚科

高齢者専用賃貸住宅「たんぽぽの家」

埼玉県吉川市吉川630-1 居室数:12室(夫婦部屋2室) デイサービス:定員10人 訪問介護ステーション

「糖尿病」「内視鏡検査」「在宅」を柱に“絶対に断らない医療”を実践

──相羽直人先生は約6年前、実父である先代の院長が病気になられたことで、相羽医院を事業承継されたとうかがいました。

相羽 承継した当初、患者さんが非常に少なく、とても不安な思いをしたことは、今でも鮮明に覚えています。というのも、先代は昔気質の人間で、医師の立場を上とするパターナリズム(家父長的意識)のところがありました。そのため患者さんへの対応は少し傲慢なところがあり、引き継ぐ時は、1か月に5人くらいの患者さんしかいませんでした。

──そこから具体的にどのように地域の方々の信頼獲得に努めてこられたのですか。

相羽 吉川市は、中高年から高齢者の方々が比較的多い地域です。そこで、「糖尿病の治療・予防」「内視鏡検査」「在宅医療」の3つを柱にすることで、より地域の方々のお役に立てるのではないかと考えました。

  また、先代は診療時間外に患者さんから電話がかかってくると、お断りをしていた。私は、子どもながらに「なぜ診てあげないのか」といつも疑問に感じていたわけです。そうしたことから、私は“絶対に断らない医療”をモットーにしてきました。患者さんが困っていれば、いつでもしっかり対応する。先代を反面教師にしているのでしょうね。

  そして、当初は患者数が少なかったので、1人ひとりの患者さんの話をしっかり聞き、わかりやすい説明を実践することができました。インターネットの情報には、わかりやすいものもあるので、「この病気について教えてほしい」という要望があれば、直接説明した上で、「インターネットではこういう意見もありますよ」とプリントアウトをして、お渡ししてきたことも好評でした。

  こうした取り組みを積み重ねた結果、患者数は毎年約20%ずつ増加し、現在の1日の平均患者数は、在宅患者も含めて約80人となっています。

──多くの患者さんが来院されるようになり、1人ひとりに時間をかけることも、最近では難しくなってきたのではありませんか。

相羽 確かに時間をかけて説明するにはギリギリの人数になりましたが、私の妻も医師なので、妻にもできるだけ長く勤務してもらい、今でも1人ひとりの患者さんとの時間を大切に、コミュニケーションをとるようにしています。在宅においても、在宅療養支援診療所として24時間365日の対応をしているわけですが、仮に外来中に在宅の患者さんから連絡が入った場合でも、妻に外来を代わってもらい、極力、私が診に行くようにしています。

高専賃とデイサービスを組み合わせた“中規模中機能”施設を展開

──貴院では、適合高齢者専用賃貸住宅「たんぽぽの家」を展開されています。これは、埼玉県内の医療法人として、初めての取り組みということですが、その経緯をお聞かせください。

相羽 高専賃「たんぽぽの家」は、全12室(うち、夫婦部屋が2室)で、デイサービス(定員10人)や訪問介護ステーション、居宅介護支援事業所などが併設されています。

  在宅を行うなかで、いろいろな不安を抱え暮らしている高齢者の方々をたくさんみてきました。医療・介護サービスのサポートで何とか自宅で暮らしておられる人、特別養護老人ホームなどの施設に入るのは経済的に難しい老老介護の人、住み慣れた地域を離れたくなく、遠くの息子さんの自宅や施設には馴染めないという人などです。

  こうした高齢者の方々を支えるためには、「住む」という機能をメーンに、医療・介護サービスを必要に応じて受けられるような環境を提供することが重要だと考え、平成20年に高専賃を開設しました。

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(全12室の高専賃「たんぽぽの家」。1階にはデイサービスが併設されている)

──日々の生活に不安を抱える地域の高齢者の方々を支えたいという想いから、高専賃を展開したわけですね。

相羽 高齢者の生活をサポートしたいと考えたとき、「通い」「泊まり」「訪問」の機能があり、「住む」こともできる「宅老所」をつくりたかったというのが本音でした。しかし、スタッフの負担が大きく、安全性を確保できない。定員数も限られており、採算的に難しい面もあります。

  小規模多機能の制度もできましたが、これでは「住む」という重要な機能が欠けています。また、要介護1・2の方々が利用すると、採算的に厳しくなり、要介護3・4・5の方々では毎日、通うことが難しい。そこで、高専賃にデイサービスと訪問介護を組み合わせれば、理想とするイメージに近い形、いうなれば“中規模中機能”施設を展開できると考えたのです。

──入居者のメリットはどのようなものでしょうか。

相羽 最大のメリットは“連続性”です。最期まで自宅に住み続けたいというのは、誰でも願うことです。それが何らかの事情で住めなくなると、現実的には、馴染みのない施設や、遠くの息子さんの家に行くケースがほとんどです。つまり、“住み慣れた自宅”の次の選択肢は、これまでの環境と大きくかけ離れてしまうわけです。そのギャップを埋めるのが高専賃だと思います。自宅には住み続けられないけど、高専賃に入居すれば、同じ環境で住み続けることができます。今まで通っていたクリニックやデイサービスを利用することもできます。こうした連続性は、高齢者の方々の精神的な負担を減らします。

  当法人の高専賃に入居したからといって、「すべて当法人のサービスを利用してください」ということはしません。それでは、連続性を遮ることになります。希望があれば必要なサービス提供をしますが、できるだけ今までのサービスを利用することを勧めています。

──入居料はどれぐらいですか。

相羽 家賃・共益費を含めて約10万円です。これは周辺の家賃相場と比較して決めました。また、フルパッケージ・濃厚な介護というのではなく、あくまでも入居者に自分の家として住んでいただき、必要なサービスのみをオーダーメードでカスタマイズするという仕組みになっています。たとえば、食事が必要ならば、毎月の家賃に加えて月4万円の費用がかかるといったシステムです。

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(高専賃に入居する高齢者らが集まる談話室)

──高専賃経営では、少なくても30室は必要との話も聞きます。全12室というのは、経営的に難しい面もあるのではないですか。

相羽 今でこそ満床ですが、当初は入居者がいるかどうかも不安でしたし、借入金の額にも限度がありました。結果的には、最初はこのぐらいでよかったと思います。儲けたいのであれば、25〜30室は必要だと思いますが、高専賃は儲けるためにつくったものではありません。あくまでも、地域の高齢者を支えたいという一心で開設したものです。

将来目標を実現するためには予実管理が必要不可欠

──病医院の経営環境が目まぐるしく変化するなか、適切な経営管理も非常に重要になりますね。

相羽 当法人では、クリニックや高専賃、デイサービス、訪問介護ステーションなど、さまざまなサービスを展開しています。厳しい経営環境下で持続的にサービスを提供していくためには、業績を着実に伸ばしていくことが重要です。それには、部門別管理が欠かせないと考えています。「医業会計データベース(MX3)」を導入しているのはそのためです。

  MX3では、クリニック、高専賃、居宅介護支援事業所、訪問介護、通所介護の5部門ごとに、毎月の業績をタイムリーに把握することができます。仮に赤字だった部門があれば、問題点を考え、改善策を打ち出します。赤字を宿命づけられているような部門もありますが、そこでは、どうすれば赤字が大きくならないかを検討します。

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(写真左から須田忠行税理士、相羽直人院長、監査担当者の田高明氏)

──特にどのようなデータを意識しておられますか。

相羽 初診患者数や外来患者延数など、医業収益に直接関係するデータを重視していますが、最近では薬などの在庫も意識して見るようにしています。

  当院では、患者さんの負担を少しでも軽減したいとの考えから院内処方としています。これまでは、たくさん購入すればそれだけ薬の仕入値が安くなるので、必要以上に薬を注文していました。

 しかし、結局、在庫として残り、無駄にしていた部分が多いことがわかったわけです。そこで、購入数を抑え、なるべく無駄な薬剤費は出さないようしました。その分、品切れで患者さんにご迷惑をかけるということがないように、しっかり在庫管理をするようになりました。

──コスト削減にも役立っているわけですね。

相羽 継続MASシステムで次期経営計画を立て、予算と実績を比較しながら経営できることもメリットだと感じます。当法人では、今以上に質の高い豊富なサービスを提供できる体制を目指しています。近い将来は、小規模特養やグループホームの展開も視野に入れています。そのためには、今期どれぐらい利益が必要なのか、経費をどれぐらい抑えなければならないのかという目標値をしっかり設定し、それを達成するにはどうすればいいのかということを、意識しながら経営していくことが重要になります。経営計画の必要性はわかっていましたが、実際につくるとなると、どうしていいかわからなかった。継続MASを活用することで簡単に策定できるので、非常に助かっています。

──これからの役割、展望などをお聞かせください。

相羽 まずは内視鏡検査、糖尿病の治療・予防、在宅などの医療サービスの質向上に努めていくことです。これは、医療者としての大きな責務だと考えています。また、介護サービスに関しても、小規模特養やグループホームなどを新たに開設するなど、さらなるサービスの拡充をはかりたい。こうした取り組みを通じて、地域の方々を医療と介護の両面から、しっかり支えられるような存在になりたいと思います。

会計事務所からの一言

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院長先生の理念実現のために会計・税務面からサポート

税理士法人ダン会計事務所

  代表社員 須田 忠行

 相羽直人先生は、「内視鏡検査」「糖尿病の治療と予防」「在宅医療」を柱に、患者さんの話をよく聞くこと、納得されるまで説明することを心がけ、“絶対に断わらない医療”を実践されてこられました。地域貢献への想いを形にされたのが、高専賃と介護事業の展開です。また、MX3を導入され、毎月の部門別管理を徹底し、適切な意思決定につなげるなど、経営管理の重要性も認識しておられます。

  これからも、相羽先生の想いが実現できるように、会計・税務面から全力でサポートさせていただきたいと考えております。

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TKC全国会医業・会計システム研究会 (略称:TKC医会研) は、TKC全国会の中でも特に医業・会計に精通した約1,800名の会員により構成されており、約23,000件の病院・診療所の健全経営をご支援させていただいております。