会計・税務

TKC医業会計データベース MX2・MX3活用事例 部門別管理の徹底が理念である"地域貢献"を支える

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■ 医療法人慈誠会 山根病院

■ 理事長 山根 毅(やまね たけし)

 昭和53年に個人の有床診療所からスタートし、平成16年に法人化した島根県浜田市にある医療法人慈誠会。医療提供体制が不足する地域の人々にも十分な医療サービスを提供したいと考え、開業からこれまで、ベッド数の増床に合わせて病院へ転換、療養病床の開設、糖尿病治療など、地域ニーズに合わせて体制を整備してきた。こうした取り組みが、約30年間にもわたり、地域の人々に愛され続けてきた大きな要因といえよう。

  「これからも地域に貢献し続けるためには、TKC医業会計データベース(MX2)を活用した部門別管理の徹底が不可欠」と語る理事長の山根毅氏に、これまでの取り組みやMX2を活用した部門別管理のあり方などについて話を聞いた。

医療法人慈誠会
 山根病院

島根県浜田市熱田町1517番地1

診療科:内科・肛門科・外科・整形外科

病 床:46床

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平成15年に改修し、ベット数を46床に増床した山根病院

三隅分院

島根県浜田市三隅町岡見290番地1

医療療養病床:60床

医療機関が不足する地域の人々にも十分な医療を提供したい

──開業から約30年にもわたって地域医療を実践してこられた山根病院のこれまでの経緯からお聞かせください。

山根 もともとこの地域には、内科と産婦人科のクリニックが1件ずつしかなく、それ以外に医療機関はまったくありませんでした。お世辞にも医療提供体制が整っているとはいえないこの地域に住む方々でも、十分な医療サービスを気軽に受けられるようにしたいと考え、19床の有床診療所を開設したのは昭和53年のことです。それからも、1人でも多くの地域の方々の期待に応えられる医療機関を目指して、少しずつ自院の体制を拡充し、現在は46床(急性期30床、慢性期16床)の病院となっています。また、地域の高齢化に対応するため、平成18年には医療療養病床60床の三隅分院を開設しました。

──地域の方々にとって非常に重要な役割を果たしてきたわけですね。

山根 特に入院機能を持っていることが大きかったと思います。それまでは、ここから数キロ離れた浜田市内や江津市内の大病院に行くしかなかったわけです。いまも無床のクリニックは少しずつ増えているなかで、入院機能があるのは少ないのが現状です。

  現在の1日の平均外来患者数は約100人で、46床のベッドは常にいっぱいです。また、60床の療養病床も満床となっています。開業から約30年が経過した現在でもたくさんの患者さんに来院していただいている現状を見ると、少なからず地域の方々の役には立っているのではないかと感じています。

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(充実したリハビリは高齢者にとって不可欠となっている)

「ポジション確立」「ニーズへの対応」が安定経営の要点

──長年にわたって病院経営をしてこられ、どのようなことが重要だとお考えですか。

山根 病院を継続的に運営するためには、大きく2つのポイントがあると思います。

  1つは、地域での自院の役割をしっかり認識した上で経営することです。浜田市や江津市などで構成する浜田医療圏域のなかでの当院の役割は、国立病院機構浜田医療センターや済生会江津総合病院などの中核病院の退院患者の受け皿となり、亜急性期の患者さんの治療を行うことです。そして、家族の介護力などに応じて在宅に帰す。それが難しいなら、適切な療養病床や介護老人保健施設などに送る。その一方でクリニックから紹介された患者さんを積極的に受け入れることも大きな役目の1つです。

  医療圏域のなかで、どこの医療機関がどのような医療サービスを行い、自院の役割は何かを的確に見極めて、その役割に応じた医療サービスを提供する自院のポジションを確立することが重要です。これにより、患者さんだけでなく、圏域内の医療機関からの信頼も格段に高まります。

──療養病床を開設したのは、自院の役割・機能から長期療養の入院患者の受け入れ先をしっかり確保するためでもあるのですね。

山根 そのとおりです。数年前までは、地域内に療養型の病院がいくつかありましたが、ほとんど撤退してしまい、入院する患者さんの次の受け入れ先で非常に困っていました。そういう経緯から、三隅分院を新たに開業したということがあります。

  療養型には比較的、高い医療レベルが求められます。気管切開や挿管の技術が必要ですし、中心静脈栄養の注射だって簡単ではありません。人工呼吸器の管理も大変ですし、胃ろうをつくる能力も不可欠です。これらは、経験と技術がなければできないことですし、特に内科医にとっては負担が大きいことです。ほとんどの療養病床は、こうした医療の質を担保できずに撤退されたということです。

  少しでもこの地域の方々のためになればという思いでつくった療養病床ですが、そのニーズは考えていた以上に高く、益田市など遠くからも患者さんが来られています。

──療養型の三隅分院は、幅広い地域の患者さんに対応されているわけですね。2つ目のポイントとしてはどのようなことがあげられますか。

山根 地域ニーズを適切に把握し、それに合致した医療サービスを提供するということです。

  当法人がこれまで、ベッド数を増床してきたのも、療養病床を開設してきたのも、地域に不足しているサービス、必要とされているサービスを適切に見極め、それに応えてきた結果なのです。ニーズを意識し、それに1つひとつしっかり応えていくことで、地域での存在価値が高まります。

  最近では、肛門科及び糖尿病などの患者が増えています。浜田市、江津市に肛門科及び糖尿病の専門医が少なく、特に糖尿病については数年前より常勤の医師を置き、管理栄養士、糖尿病療養指導士などを配置し生活習慣病の治療を始めました。これらも地域のニーズに対応するための取り組みの1つです。また、肛門科につきましては、PPH法という新しい術式で手術をするようになり、術後の疼痛も少なく、遠方よりの患者も多数みえております。

患者と医療者の関係は一緒に病気を治す“パートナー”

──患者さんと接する上で心がけていることなどはございますか。

山根 当院に来院される患者さんのほとんどは、長いお付き合いで、顔見知りの方々です。そうした環境のなかで、特に気を付けていることは、患者さんに対して、決して馴れ馴れしい態度をとらないということです。患者さんと医療者側が馴れ合ってしまうと、両者の関係性に“ゆるさ”というものが生じてしまいます。それが、取り返しのつかない医療事故につながることだってあるわけです。

  あくまでも、患者さんと医療者側は、1つの病気を治すための“パートナー”の関係であるべきだと考えています。これは私だけでなく、すべてのスタッフに意識させていることです。

──スタッフ教育などで取り組んでいることはございますか。

山根 定期的な勉強会などを開催しているというわけではありませんが、医療サービスを向上させるために、すべてのスタッフを外部の研修会に積極的に参加させるようにしています。また、糖尿病やじょく瘡についての学会発表などにも積極的に出てもらっています。

  難しいのは接遇面ですね。これまでも外部から講師を招いて何度か研修会などを開催していますが、こればかりは勉強したからといってよくなるというものでもありません。個々のスタッフの性格によるところが大きいです。

  それと昨今では、医師の教育も難しくなっていると感じています。というのも、時代の変化とともに、最近の若い医師の労働観が大きく変わってきました。私が若い頃は、たとえ深夜や休日に電話がかかってきたとしても、すぐに駆けつけて患者さんを診なければならないと教えられてきましたし、それが医師として当たり前のことだと思っていました。若い医師には、そうした“聖職意識”が足りないような気がします。

  技術的な教育を行って、そのスキルを高めることはもちろん重要です。しかし、“すべては患者さんのために”という断固たる想いがあって、はじめて成り立つのが医師という職業なのです。若い医師には、こうした気持ちをもう少し持ってほしいと強く感じています。そうした想いを次世代に伝えるのが、我々ベテラン医師の大きな役目なのかもしれません。

部門別管理の徹底が適切な意思決定を支える

──近年、病医院経営の環境は厳しくなっています。こういう状況のなかで、これまで同様、地域ニーズに応えていくためには、経営面もしっかり管理していくことが重要ですね。

山根 確かに診療報酬のマイナス改定や医療制度の変化などの影響で、全国的に医業経営は厳しくなっています。こうしたなか、順調な経営を維持していくためにはしっかりと経営管理を行っていくことが非常に重要です。自計化システムである「TKC医業会計データベース(MX2)」を導入したのはそのためです。

  当法人には、一般病院の本院と療養型三隅分院の2つの部門があります。MX2では、これらを部門として、毎月の収益やコストなどの最新の業績を簡単に把握することができます。部門別管理をしっかり行うことで、それぞれの部門の特徴を正確に把握・分析できるようになりました。

  たとえば、本院部門は収益に対して人件費比率が非常に高い傾向にあります。何も考えずに人員配置をすれば、すぐに赤字になってしまいます。MX2で収益と人員配置のバランスとをしっかり見極めることで、黒字を保つことができる。たとえ赤字になったとしても大きな深手を負わなくても済むわけです。

──どのような数値を意識してみておられますか。

山根 特に「経常利益」を重視しています。いくら医業収益が伸びているからといって、同じようにコストも増加していたら、いわゆる“儲け”の部分は変わらないわ けです。それを知らずに、莫大な設備投資を行ったり、スタッフの給与を上げたりして、気がついたら赤字になってしまうなんてことも十分にあり得ることで す。そういう意味で、利益を正確に把握することは、適切な意思決定につながると考えています。

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写真左から近重勉税理士、山根毅理事長、本院事務担当者の川方暁氏、監査担当の来須利都子氏(近重勉税理士事務所)

──MX2での適切な経営管理が、現在の病院を支えているわけですね。

山根 何よりMX2を導入してから、経営に対して興味を持つようになりました。これまでは、医師として、質の高い医療を提供してさえいれば、経営も成り立つものだと考えていたところがあったかもしれません。しかし、医師と経営者の両方の立場をしっかりとこなさなければ、目まぐるしく変わるいまの環境変化には絶対に対応できません。経営者としての意識が高まったと実感しています。

──これからの役割・展望などをお聞かせください。

山根 まずは、地域での自院の役割を自覚し、そのなかで地域の方々の期待に応えるためにベストを尽くすということを、これからも徹底していきたいと思っています。そして、その上で、療養病床を中心とした慢性期医療にさらに力を入れていきたいと考えています。こうした取り組みがさらなる地域貢献につながると感じています。

医業経営コンサルタントからの一言

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順調な経営を維持できるようにきめ細かいサポートを行います

近重勉税理士事務所 所長

  近重 勉(ちかしげ つとむ)

 山根毅先生は、開業から今日まで長年に渡り、「すべては患者さんのために」を理念に、地域の方々へ安心できる医療サービスを提供されてこられました。温厚な人柄の山根先生は、患者さんのお話に親身になって耳を傾けられ、丁寧な診察をされておられます。患者さんからの信頼も非常に高く、この地域にはなくてはならない大きな存在です。

 今後も院長先生が安心して医療に専念していただけるように、会計、税務面のみならず、幅広くそしてきめ細かいサポートを心掛けていきたいと思っております。

(平成21年3月5日/「TKC医業経営情報」2009年7月号より)

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