会計・税務

TKC医業会計データベースMX2・MX3活用事例 選手の現場復帰までをトータルサポートするスポーツクリニック

img_b0289_01.jpg■  かみもとスポーツクリニック
■  院長 上本 宗忠(かみもと むねただ)

 栃木県佐野市の “ かみもとスポーツクリニック ” は、その名が示すとおりスポーツ医療に専門特化したクリニックだ。ケガをした局所の治療だけにとどまらず、その原因となった選手(患者)の全身のコンディションやからだの使い方にまで目を向け、早期の現場復帰とケガを再発させないからだづくりなどのトータルサポートを目指す。

 開業5年目を迎え、患者も着実に増え安定した経営を「TKC医業会計データベース(MX2)」によるタイムリーな業績把握が支える。利益やコストをしっかり把握し、堅実な経営を行う上本宗忠院長にクリニック経営の考え方をうかがった。

施設概要
 診療科目
整形外科、内科、リハビリテーション科

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東北道と北関東道がクロスする交通アクセスのよい場所にある「かみもとスポーツクリニック」

所在地

〒 327-0821 栃木県佐野市高萩町1315-8
TEL :0283-22-1114
http://www.kamimotosportsclinic.com/

診療時間

月〜金;
13:00 〜 20:30

土曜日;
9:00 〜 12:00

※ 日・祝日は休診土

スタッフ
  •  医師1名
  • 放射線技師1名
  • 理学療法士3名
  • トレーナー1名
  • 受付1名
  • 事務1名

スポーツ選手の現場復帰にはトータルサポートが不可欠

──全国でも数少ないスポーツクリニックということでの開業ですが、どういう経緯からですか。

上本 大学や関連病院でスポーツ外来を行ってきましたが、子どもたちがケガをして来ても、そこではケガの治療しかできません。リハビリにしても社会復帰までのメディカルリハビリで、スポーツ選手の側に立ったアスレチックリハビリは時間的にも、コスト的にも難しいのが現状です。選手は復帰するために病院やクリニックを受診しているのに、単に「休みなさい」というだけで、「何をしていいのか」「何をしてはいけないのか」「いつ復帰できるのか」というメッセージがないんです。そのため、選手の現場復帰までをトータルでみるためのクリニックが必要だと考えていました。

  もう1つは、ケガの治療から一歩進んでその原因についてもアドバイスできなければまた再発することになります。たとえば足首の捻挫であっても、ひざや股関節、からだの使い方、そういうトータルの動きをみることが必要なのです。そのため、実際にトレーニングするなかでそのことを気づいてもらい、ケガを再発しないからだづくりをしてほしいと思いました。

  3つ目は、医者と個々の選手という関係だけでなく、監督やコーチ、家族などの環境を巻き込んだトータルのネットワークでスポーツ選手をサポートしたいという想いがありました。生涯を通して好きなスポーツを継続できる環境づくりにも取り組みたい。この“3つのトータル”を実現することが当院の目標であり、クリニックをつくった理由でもあります。

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(小さい体育館のような広々としたコンディショニングセンター)

──その一方で手術も積極的に行われています。昨年は250件以上の実績ですね。

上本 そのうち200件が関節鏡の手術です。いまは関節に7ミリ程度の小さな穴を開け、からだのダメージをより小さくする医療技術がものすごく進歩しました。それによって入院期間も短縮し、コンディションを落とさずに早期にスポーツ復帰することができるようになりました。午前中、私はそれらの手術を関連の病院で行っています。手術からリハビリまで、すべてにかかわりたかったのです。この2つは両輪であり、“トータルサポート”にはどちらも欠かせないものです。

診療時間をシフトすることで“手術”と“リハビリ”の両立を可能に

──スポーツクリニックということでは、患者さんの数もしぼられるわけですが。

上本 当初は前例も少なく、「整形外科クリニック」で始めたほうがよいというアドバイスもありましたが、やはり開業の理念を実現すべく、「スポーツクリニック」として特色を前面に打ち出すことにしました。
  注射や薬による治療をなるべく行わず、リハビリやトレーニングによる治療ということが少しずつ浸透してきて、いまでは付き添ってこられた家族の方など、一般の患者さんも徐々に増えています。

──手術とクリニックの両立は大変ですね。

上本 関節鏡の手術は自分としても好きだったし、ひとつの武器としたかったので、開業することでそれをあきらめたくありませんでした。それと、選手はクリニックには学校や練習が終わってから来たいわけです。そのニーズに応える意味でも、診療時間を午後にシフトすれば午前中は手術を行える。それで13時から20時30分までの診療時間としたのです。

──スポーツ選手と一般の患者さんの割合は。

上本 7割ぐらいがスポーツ選手です。最近は小学生が増えています。

  われわれが子どもの頃は神社や公園で友だちと遊びながら運動能力を高めていたわけですが、いまはそういう時間もありません。いきなり競技スポーツといっても、投げたり跳んだりすることができずにケガにつながっているのです。正しい投げ方などのからだの使い方が悪かったり、下半身をうまく使えないのです。

──小学生の割合はどれくらいになりますか。

上本 スポーツ選手の3〜4割が小学生で、中学生も含めると6〜7割になります。

  リハビリにしても、年齢や個々の発達段階がありますから、各々に応じたきめ細やかなメニューをトレーナーや理学療法士と相談しながら提供しています。

  トレーニングは、プログラムを中心に1時間前後、自主的に行うことを主眼にしています。単に「これをしなさい」というやり方ではなく、「何が問題で」「どういう目的で何をするか」、選手の希望もくみ取りながら、選手と一緒に考えていく場にしたいのです。

──どういう原因のケガが多いのですか。

上本 からだの軸、コアの部分がしっかりとできていないことが多いですね。あとは関節、骨盤、股関節や足首などの関節に柔軟性がない。軸がコントロールできないため急な動きに体勢を保てずに、膝をひねったり、足首をひねるのです。スポーツは思いも寄らない動きの連続ですから、そういう動きにきちっと対応できればケガの予防につながります。当院では、そういうからだをコントロールするトレーニングがメーンとなるので、トレーニングマシンは1つもありません。

売上げや利益、コストをしっかり把握し堅実経営で夢の実現を計画する

──開業時の患者数はどんな感じでしたか。

上本 だいたい40人ぐらいでした。この6月で5年目に入りましたが、いまは70人ぐらいです。1人ひとりの診療時間がある程度必要なので、これ以上増えると個々の診療の質の低下が危惧されます。ですから、今後売上げを伸ばすには診療の質を上げることが必要であり、付加価値を高めていかなければなりません。

──付加価値というと、具体的には。

上本 鍼治療であったり、治癒力を高める酸素カプセルも用意しています。トータルの復帰サポートのなかでそういうものを加えていき、治療期間の短縮やレベルアップにつなげていきたいと思います。

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(ケガの早期回復に役立てる「酸素カプセル」)

──そういう中で「医業会計データベース(MX2)」で管理されています。どう活用されていますか。

上本 会計の実務は妻が担当し、私はその結果を見て経営にどう役立るかを考えるわけです。現状がリアルタイムでわかりますし、それも数字だけでなくグラフ化できるので、年間の売上げの推移や前年との比較もとてもわかりやすいですね。たとえば、例年売上げが下がる月があれば、何か新しい工夫が必要だということも考えたりします。

──月次のデータではどのような点に注目されますか。

上本 やはり売上げと粗利と実際の利益です。それと、コストにどれぐらいかかっているかです。

──専門のトレーナーなども必要ですから、人件費比率なども注意されたりしているのですか。

上本 若く、向上心の高い人材が集まってきてくれていますので、いまはそれほど人件費を気にすることはありません。

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左から岩田修一税理士、監査担当の鈴木和之氏、上本宗忠院長

──コンディショニングセンターなどの初期投資も多く必要だったと思いますが。

上本 少し多かったかもしれませんが、トレーニングマシンはほとんど入れてませんので、そういう意味では少なく済んだと思いますし、実は看護師もいません。皆さんびっくりされますが、注射もほとんどしませんし、薬も鎮痛剤と抗生剤程度ですので医療専門職は必要ありません。注射が必要であれば自分で行いますし、薬も 10種類くらいです。どういう展開になるか不安もありましたので、初期投資を最小限に抑えたのです。

  スタッフの入れ代わりはありましたが、自分の目指す方向に着実に前進していると思います。いまは次のステップへの準備段階で、基盤固めです。

──具体的な計画はあるのですか。

上本 子どもたちが芝生のうえで走ったり、からだをぶつけたり、かわしたりという大きな動きができる屋外コンディショニングセンターをつくるのが夢です。コストのことや、それをどう経営に結びつけていくかは、これから十分に練らなければなりません。4〜5年先につくれたらよいと思います。

 リハビリを含めた全身の治療が再発予防につながる

──前十字靱帯のケガで将来を棒に振る人がいますが。

上本 やはり、からだの軸のつくり方が関係します。前十字靱帯はジャンプやステップでバランスが崩れ膝が内側に入り込むことで切れたりします。ヒザとつま先を同じ方向にして、からだをしっかり支えるようにすればケガは少なくなります。接触プレーでなくても損傷しているケースが多く、とくに女子バスケットやバレーボールなどのよくジャンプをする競技で起きています。断裂であっても手術は関節鏡で2時間もかかりません。7ミリの傷が2つと3センチの傷が1つで靱帯を移植します。入院は10日間ぐらいで、そのあとリハビリです。だいたい復帰まで6〜8か月かかります。

  このリハビリが大事で、再度ケガをする選手は、自分なりに判断して復帰する。それでは、からだはケガをしたときの動きのままですから同じことを繰り返すわけです。当院では手術だけでなく、社会復帰までのメディカルリハビリ、さらにスポーツ特性に応じたアスレチックリハビリで現場復帰までトータルにサポートしますから、再受傷率はかなり低く抑えられています。

──リハビリがとても重要になるわけですね。

上本 私の考えとしては「治療=予防」です。局所の治療だけでなく、全身の治療を主眼にしたトレーニングは、再発予防ということです。「局所の治療は治療ではない。全身の治療が治療だ」ということがスポーツ医療ではいちばん大事なことだと思います。

  いま、人とのかかわり方を知らないとか、あいさつができないとか、靴をそろえられないという子どもが増えています。そういうこともスポーツ医療を通して教えていきたい。それが私の最終的な使命だと思っています。そして、スポーツ医療は社会に必要なものであることを根付かせる。それが当クリニックの役割だと思います。

img_b0289_06.jpg会計事務所からの一言

     業績管理や経営計画策定のサポートを全力で行います

    岩田会計事務所
    税理士医業経営コンサルタント 岩田 修一

  上本先生の夢である“スポーツクリニック”を実現できたことは大変喜ばしいことです。さらにその経営においても順調に推移しており、理想的な展開だと感じています。それを可能としたのは、「午前中は手術、午後はクリニック」というスキームを考えつかれたことが大きいと思います。

  今後も屋外コンディショニングセンターの設置などの夢を持っていらっしゃるようなので、その実現に向けて、業績管理や経営計画策定のサポートを全力で行っていきたいと思います。

(平成21年9月25日/「TKC医業経営情報」2009年11月号より)

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