会計・税務

[TKC医業会計データベースMX2・MX3活用事例] 家庭医と専門医の"橋渡し役"が地域には必要

img_b0295_01.jpg■ 医療法人社団正悠会 みたか中村脳神経外科クリニック
■ 理事長 中村 正直(なかむら まさなお)

 東京都三鷹市の「みたか中村脳神経外科クリニック」は、家庭医と専門医が抱くそれぞれの悩みを解消する中間的な施設が必要と、平成20年に開業した。両者の“橋渡し役”として、患者のスクリーニングを行い、適切な専門医に紹介、あるいは家庭医に返すという診療スタイルは、すぐに地域の人々や医療機関に受け入れられ、順調に患者数を伸ばしている。「環境変化が激しい昨今、TKC医業会計データベース(MX2)で、適切な業績管理をしていかなければ、安定経営は維持できない」と語る理事長の中村正直氏に、開業経緯やMX2の活用法をうかがった。

DATA 医療法人社団正悠会
みたか中村脳神経外科クリニック
img_b0295_02.jpg
JR三鷹駅南口より徒歩1分、さまざまな店舗が建ち並ぶ中央通りに面している

img_b0295_03.jpg
医療法人社団正悠会
みたか中村脳神経外科クリニック
所在地 東京都三鷹市下連雀3-27-13正栄ビル2F
http://myclinic.ne.jp/mitaka_nouge/pc/
診療科目 脳神経外科・内科
診療時間 月・火・木・金;
9:00〜12:30、
15:00〜18:30
土;
9:30〜13:30
※水曜、日・祝日は休診
スタッフ 医師2人、看護師3人(パート)、放射線技師(1人)、 臨床検査技師2人(パート)、 受付事務スタッフ6人
(常勤1人・パート5人)

家庭医と専門医の両方の立場を経験  それぞれの悩みを解消するために開業

──みたか中村脳神経外科クリニックの開業経緯からお聞かせください。

中村 もともと杏林大学医学部付属病院の脳神経外科の医長をしていたのですが、神奈川県で診療所を経営していた父が他界し、急遽、大学病院で勤務医をしながら、その診療所でも働くことになったのです。

  父の診療所は内科と小児科を標榜する、いわゆる家庭医です。それまでは専門医療の経験しかなかったわけですが、家庭医療に従事するなかで、少しずつ診療所の地域での役割や必要性を理解していきました。このように専門医と家庭医の両方の立場を担うなかで、それぞれが悩みを持っていることに気がつきました。

  家庭医は、患者さんが「頭が痛い」と訴えてきても、検査機器が十分に揃っていないため的確な診断ができません。専門外の領域ならなおさらです。そこで専門医を紹介することになります。専門医にとっては、とにかく、その患者さんが手術を必要としているのかどうかを早く知りたい。しかし、大病院での検査は何週間も待つことになるので、なかなか結果が出ません。

  すると、検査結果が出るまでの間、家庭医は「あの患者さんはどうだろうか?」と心配し続け、専門医も「あの患者さんは手術が必要なのだろうか?」と曖昧な気持ちのまま、次第にモチベーションが下がっていく。患者さんだって「私は大丈夫なのだろうか?」と不安な日々を過ごすことになります。

  それぞれの悩みを解消するためには、家庭医と専門医の間に立ち、患者さんのスクリーニングを行い、適切な専門医に紹介する、あるいは家庭医に返すといった “橋渡し役”のような医療機関が必要だと考えました。そこで平成20年5月、専門の検査技師を配置し、MRIやマルチスライスCT、エコー、心電図など、脳神経外科の疾患に対応できる検査機器を揃えたクリニックを開業したわけです。

img_b0295_04.jpg
脳外科の疾患に対応した検査機器を揃える同院。写真はMRI

──家庭医と専門医の両方を経験したからこその開業なのですね。

中村 脳神経外科以外の他の専門領域でも、当院のような中間的な位置づけの医療機関は必要だと思いますが、当院の医療サービスの質を担保するためには、20年間という経験と実績がある脳神経外科に的を絞ったほうがよいと考えました。ただ、脳神経外科の患者さんのなかには、内科の疾患が関係するケースもあるので、標榜科として内科を掲げています。

──神奈川県のお父様の診療所ではなく、新たにこの場所で開業したのはどうしてですか。

中村 勤務していた杏林大学病院に比較的近いということが大きいです。開業しても、勤務医時代に診ていた患者さんを継続的に診ることができます。また、都内なら、どのような医師が、どの病院に勤務しているのかをある程度把握しているので、患者さんに合った適切な専門医を紹介できると考えました。この地域に脳神経外科を標榜するクリニックが1件もなかったこともその理由です。父の診療所は弟が承継しました。

地域の医療機関との信頼関係の構築が不可欠

──当初、患者さんはどれぐらい来られましたか。

中村 オープン前に内覧会を行ったこともあり、初日、2日目は午前中で受付を終了するほどの患者さんに来ていただきました。そこから少しずつ落ち着き、1年目の平均患者数は1日約50人でした。現在は約60人となっています。事業計画では1年目の患者数を1日50人と設定したので、ほぼ計画どおりに進んでいます。
  検査件数については、MRIが1日約20件で、エコーが3〜4件ぐらい、CTは月6〜7件程度です。

──開業スタイルの特性上、やはり他の医療機関からの紹介患者がメーンとなっているのでしょうか。

中村 その割合は半々です。患者層としては、20代後半から中高年の方がメーンです。症状は、頭痛やめまいといった不定愁訴が多いですが、頭をぶつけたという子どもの患者さんも比較的たくさんおられます。

──当初から多くの患者さんが来院されましたが、その要因をどのように考えておられますか。

中村 開業前、ポスティングなどの広告の時間を十分に取ることができたのが大きかったと思います。

 というのも、MRIから発生する強い磁場が、1階の携帯ショップに影響するということで、急遽、追加工事が必要になり、オープンが遅れてしまったのです。結果、十分に広告ができたのでよかったわけですが、ビル診の場合は、そうしたところにも配慮しなければならなかったのです。当初は愕然としましたが、今ではよい経験をしたと感じています。

──日々の診療で心がけていることはありますか。

中村 患者さんを紹介いただく地域の診療所や大病院の信頼を裏切らないということです。そのためには、検査が終わったら紹介いただいた医療機関にしっかり返すのはもちろん、紹介いただいた医師が、何を求めているのか、何を考えて紹介したのかを推察し、期待どおりの対応を行うことが重要になります。

  たとえば、家庭医から患者さんを紹介された時は、単に検査をするだけでなく、結果から診断をつけて、考えられる治療方針、薬の処方、追加検査の必要性などを提示します。

  そうしたことを1つひとつ積み重ねることで、「あそこのクリニックに紹介するとしっかり診てくれる」ということが広がり、地域の医療機関との信頼関係が構築されるのではないかと考えています。

──患者さんに対して気をつけていることもあるのでしょうね。

中村 もちろん、医療機関だけに気を配り、患者さんに不適切な対応をしていては本末転倒です。患者さんに「この先生は感じが悪い」と思わせてしまったら、当然、当院の評判は落ちますし、紹介してくれた医療機関の評判を落としてしまうことにもなります。

  患者さんに対する話し方については気をつけています。なかでも中高年の方が訴える不定愁訴に対して、「年齢のせいですから仕方がないですよ」という言い方は絶対にしません。「年齢からくる身体の変化は確かにありますが、改善は十分可能ですよ」など、少しでも満足してもらえるような対応を心がけています。

──貴院では、一般外来や検査などを行うとともに、「脳ドック」にも取り組んでいるとうかがいました。

中村 自由診療ということもあり件数は、年間40〜50件程度です。検査の数、種類によって4つのコースにわかれており、金額は4〜7万円となっています。受けられる方は、40代前半から50代後半の方がメーンですが、最近では30代の若い方も増えてきました。

  開業から約2年が経過した今、患者さんのニーズが少しずつ見えてきたので、コースの体系を見直し、よりニーズに合致した形にしたいと考えています。

今改定の影響をMX2で把握し改善策に結び付ける

──これからも健全経営を続けていくためには、経営面をしっかり管理していくことも求められますね。

中村 幸いにも開業からこれまで患者数は増えているので、毎月、収支はプラスで推移しています。しかし、外部環境が著しく変化するなか、これからも安定した経営を続けていくためには、適切な業績管理が欠かせません。そのためのツールとして、当院では「TKC医業会計データベース(MX2)」を導入しています。

  MX2は、当院の毎月の医業収益や経常利益、患者数、経費などの業績をタイムリーに把握できます。この魅力は、業績を前月、前年同月と簡単に比較できることにあると思います。仮にマイナスであることがわかったら、すぐにスタッフ全員で、何が問題だったのかを検証し、その改善策を講じています。

img_b0295_05.jpg
写真左は顧問の齊藤武税理士、右は中村正直理事長

──経営的な問題点をタイムリーに把握し、その改善に役立てているわけですね。

中村 この4月に診療報酬が改定されましたが、改定前と改定後の業績を簡単に比較できることも大きなメリットだと感じています。

  今改定は10年ぶりのプラス改定ということでしたが、クリニックには決して喜べるような内容ではありませんでした。実際、検査料などが下がった影響で、当院では、収益が前年比で月数十万円のマイナスとなっています。年間で考えると400万円弱の減収になることが見込まれますので、早急に対応していかなければならないと感じています。

そのためには、地域の医療機関との連携を強化し、増患につなげていくことはもちろんですが、スタッフを適切に配置することも重要だと考えています。日によって患者数が大きく異なるのですが、これまでは、それに関係なく一定のスタッフを配置してきました。患者数が少ない時は、スタッフが余ってしまうということもあったわけです。これを改善できれば経費を抑えることができ、仮に収益が下がったとしても前年同様の利益は確保できるのではないかと考えています。

  また、自由診療のメニューを拡充し、保険診療以外の収入源を確保することも大切です。そこで最近、「MC-FAN」という検査を導入しました。これは、いわゆる“血液サラサラ”検査です。マスコミなどでもたびたび取り上げられており、ニーズも高いのですが、これを実施している医療機関は意外と少ないのです。患者さんの生活習慣の改善に役立つものだと考えています。

──これからの地域での役割をお聞かせください。

中村 脳神経外科の領域における家庭医と専門医の中間的な位置づけとして開業し、約2年が経過したわけですが、そのニーズの高さを今、改めて実感しているところです。そのなかで、これからは脳神経外科という領域を越えて、さまざまな専門医療の領域において、“橋渡し役”として機能していく必要もあると実感しています。そのためには、さらなる検査機器の充実、スタッフの確保などが欠かせません。近い将来、そうした体制を構築し、地域の方々、地域の医療機関にとってなくてはならない存在になれれば嬉しいです。


(平成22年4月7日/「TKC医業経営情報」2010年5月号より)

img_b0295_07.jpg外来(入院)収益分析表

診療報酬改定の影響を分析することが必要不可欠
  TKC医業会計データベース(MX2)では、診療報酬改定後の医業収益への影響を適切に分析することができます。増加、減少した項目については、ドリルダウンにより月別にその実績を確認することも可能です。たとえば、改定前と比べて「外来収益」が下がっていた場合、マイナス改定の影響で「外来患者1人1日当り収益」が減少したのか、「外来患者延数」が落ちたのかなどの原因を的確に把握することができます。 診療報酬改定により病医院経営の環境は2年に1度、大きく変わります。その影響をしっかり把握し、適切な対応策を講じることが安定経営につながります。

※TKC医業会計データベース(MX2)画面サンプル(取材病院とは関係ありません)

img_b0295_07.jpg会計事務所からの一言

院長先生の“熱い想い”を全力でサポートします

さいとう会計事務所
所長 齊藤 武

  中村正直先生とは、会計事務所の開設以来のお付き合いをさせていただいております。同じ新規開業者として、ともにその困難を分かち合い、乗り越えてまいりました。
  先生の温かく誠実なお人柄と丁寧な診療により、患者さんや連携先のドクター、院内スタッフの信頼は厚く、地域になくてはならない医療機関として期待されています。
  先生の医療に対する熱い想いの実現のため、これからも職業会計人として、全力で経営面をサポートします。

セミナーのご案内

運営組織のご紹介

TKC全国会医業・会計システム研究会 (略称:TKC医会研) は、TKC全国会の中でも特に医業・会計に精通した約1,800名の会員により構成されており、約23,000件の病院・診療所の健全経営をご支援させていただいております。