会計・税務

制度改正Q&A 平成22年度税制改正のポイント

 民主党政権として初めてとなる平成22年度税制改正は、所得税・個人住民税の扶養控除が廃止・縮減されるなど、家計には増税色が強まる内容になった一方で、子ども手当や高校無償化などに重点を置き、「控除から手当てへ」という政策スタンスが明確に現われたことが大きな特徴です。

 医療関係に視点を移すと、周産期の連携を担う医療機関に係る特例や、地震防災対策用資産に係る特例の延長など、地域医療を再生するための改正が目立ちます。また、社会保険診療に係る事業税の非課税措置、社会保険診療以外の部分に係る事業税の軽減措置については、本年度中も継続的議論の対象とした上で存続となりました。

 「所得税法等の一部を改正する法律案要綱」から主な改正点を紹介します。

周産期の連携を担う医療機関に係る特例の延長等

Q1
民主党政権では、地域医療の再生や高齢者が安心して暮らせる社会の実現に向けた税制見直しが行われると聞きましたが、具体的な内容を教えてください。

A1
周産期の連携を担う医療機関に係る特例や、病院等が取得した地震防災対策用資産に係る特例、高齢者向け優良賃貸住宅建設促進税制、高齢者等が居住する住宅に係るバリアフリー改修促進税制などが延長されます。

(1)周産期の連携を担う医療機関に係る特例の延長

周産期医療の連携体制を担う医療機関が取得した分娩室や陣痛室、新生児室などに係る不動産取得税の特例(当該不動産価格の2分の1を課税標準から控除)について、適用期限を6年間延長した上で、廃止されます。控除割合は以下のように段階的に縮減されます。

・平成22年4月1日〜平成25年3月31日まで取得:2分の1
・平成25年4月1日〜平成27年3月31日まで取得:3分の1
・平成27年4月1日〜平成28年3月31日まで取得:6分の1

(2)地震防災対策用資産に係る特例の延長

病院等が取得した地震防災対策用資産に係る固定資産税の特例(課税標準を3年間に限り3分の2に軽減)の適用期限が4年間延長の上、廃止されます。

(3)高齢者向け優良賃貸住宅建設促進税制の延長

高齢者向け優良賃貸住宅に係る固定資産税の特例(最初の5年度分に限り3分の2を減額)の適用期限が1年間延長されます。

(4)住宅に係るバリアフリー改修促進税制の延長

高齢者等が居住する家屋に一定のバリアフリー改修工事に係る固定資産税の特例(翌年度分に限り3分の1を減額)の適用期限が3年間延長されます。  

少額減価償却資産に係る特例の延長等

Q2
医業経営に直接関係する改正には、どのようなものがありますか。

A2
少額減価償却資産に係る特例や中小企業投資促進税制などが延長されるとともに、小規模企業共済制度の加入対象者が拡大されます。

(1)少額減価償却資産の特例の延長

中小企業等が30万円未満の少額減価償却資産を取得した場合に、その取得価額を損金算入(年間300万円を限度)する特例の適用期限が2年間延長されます。

(2)中小企業投資促進税制の適用期限の延長

医業や医薬品・医療機器産業、生活衛生関係営業などを行う中小企業等が、一定規模以上の機械装置や普通貨物自動車等を取得した場合に、その取得価額の税額控除(7%)、または特別償却(30%)を認める特例の適用期限が2年間延長されます。

(3)中小企業等基盤強化税制の拡充

特定の中小企業が、一定金額以上の事業基盤強化設備を取得した場合に、その取得価額の税額控除(7%)または特別償却(30%)を認める特例を拡充し、医業を行う中小企業等が、レセプト電算処理やレセプトのオンライン請求を行うためのソフトウェア等を取得した場合にも適用されることになりました。

(4)小規模企業共済制度等の加入対象者の拡大

「小規模企業共済制度」の加入対象者に「共同経営者(配偶者・後継者等)」が追加されます。また「中小企業退職金共済制度」の加入対象者も拡大され、「同居親族のみを雇用する事業の従業員」もその対象になり、事業主掛金の必要経費への算入などが認められます。

(5)中小企業の交際費の損金算入の特例の延長

交際費等の損金不算入制度の適用期限が平成24年3月31日まで2年延長されます。同時に中小企業(資本金1億円以下)に一定額の損金算入を認める特例 ※ の適用期限も同24年3月31日まで延長されます。
※ 定額控除限度額(600万円)までの90%相当額について損金算入が可能です。交際費支出が600万円以上の場合、損金算入限度額は540万円になります。

個人所得、住宅・土地関連

Q3
個人クリニックに関係する改正を教えてください。

A3
所得税や個人住民税の扶養控除の廃止・縮減が行われます。
また住宅・土地関連では、住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税限度額の引上げなどが行われます。

(1)所得税・個人住民税の扶養控除の見直し

所得税・個人住民税について、年少扶養親族(扶養親族のうち年齢16歳未満の人)に係る扶養控除が廃止されます。また、特定扶養親族(扶養親族で年齢 16歳以上23歳未満の人)のうち、年齢16歳以上19歳未満の人に係る扶養控除の上乗せ部分25万円(個人住民税は12万円)が廃止され、扶養控除額が 38万円(個人住民税は33万円)となります。

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各種手当等も見直され、以下の手当等については、所得税と個人住民税を課さず、国税、地方税の滞納処分による差し押さえも禁止されます。

・子ども手当
・高校の授業料実質無償化
・父子家庭に支給されることとなる児童扶養手当等
・求職者支援給付
・新たに雇用保険制度の対象となる人が支給を受ける失業等給付

(2)住宅取得等資金の贈与の非課税限度額の引上げ

直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母)から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、その非課税限度額(従前500万円)が以下のように引上げられます。

・平成22年中に住宅取得等資金の贈与を受けた人 ※…1,500万円
・平成23年中に住宅取得等資金の贈与を受けた人…1,000万円

※平成22年は、現行制度と選択して適用できます。暦年贈与の基礎控除(110万円)は従前どおり使えます。
 対象者は、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下の人です(従前所得制限なし)。平成22年1月1日から適用され、その期限は平成23年12月31日までです(従前平成22年12月31日まで)。

(3)住宅取得等資金贈与の上乗せ分の廃止

住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税制度の特例(1,000万円の特別控除の上乗せ)が廃止されます。年齢要件の特例(贈与者である親の年齢制限なし)の適用期限は2年延長されます。

(4)小規模宅地等の相続税に係る特例の見直し

小規模宅地等の相続税の課税価格の計算の特例について、以下の見直しが行われます。

・相続人等が相続税の申告期限までに事業、または居住を継続しない宅地等を適用対象から除外。
・一の宅地等に共同相続があった場合、取得した人ごとに適用要件を判定(現行は居住しない人にも適用)。
・一棟の建物の敷地として使用していた宅地等で、特定居住用宅地等の要件に該当する部分と、それ以外の部分がある場合は、部分ごとに按分して軽減割合を計算。
・特定居住用宅地等は、主として居住用に使用されていた一の宅地等に限られる。

平成22年4月1日以後の相続、遺贈に適用されます。

(「TKC医業経営情報」2010年4月号より)

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