会計・税務

[図解!"税"の豆知識(2)] 新たな「グループ法人税制」は医療法人にも関係します!

丹羽 篤 医業経営コンサルタント 税理士

「グループ法人税制」ってどんなもの?

 組織再編税制や連結納税制度の整備などを背景に、分社化や完全子会社化、M&Aを通じた企業グループの形成など、グループ法人の一体的運営が進展しています。そういうなか、グループ法人間のさまざまな取引に対する課税面・実務面への配慮から、平成22年度税制改正では、「グループ法人税制」の整備が行われました。

  その内容は、100%支配関係にあるグループ内取引等に関する税制の整備(法人単体課税制度の創設)と連結納税制度の見直しが中心です。医療関係者は「これは一般企業にだけ関係すること」と思っていませんか。実は医療法人で、100%支配グループ内(完全支配関係)にあるすべての法人に「強制適用」されます。つまり医療法人にも関係しますので注意が必要です。

  それでは今改正の主な見直しを見てみることにしましょう。

(1)100%支配グループ法人間の資産の譲渡損益の繰り延べ
  連結納税制度と同様、棚卸資産および帳簿価額1,000万円未満を除く、固定資産・土地・有価証券・金銭債権・繰延資産の譲渡による損益は繰り延べ、その譲渡損益調整資産が譲受け法人で譲渡(グループ内を含む)・減価償却・除却・グループ離脱などの時点で損益を計上、認識します。

(2)100%支配グループ法人間の寄附金の取り扱い
  寄附金を支出した法人では全額損金不算入、受け入れた法人では全額益金不算入として課税対象外とすることにより、グループ内での資金の移動を容易にしました。ただし、相続税や贈与税の恣意的な軽減に利用される可能性を排除するため、法人による完全支配関係がある場合に限定され、個人(親族等を含む)により支配されている場合は、従来どおり寄附した側は損金算入限度額を除き損金不算入、受け入れ側は全額益金算入されます。

  医療法人については別途説明するように、原則として法人による完全支配は想定されませんので本項目は対象外となります。

(3)100%支配グループ内法人からの受取配当の益金不算入
  従来、配当のうち負債利子に対応する部分は益金不算入から除外され課税されていましたが、全額益金不算入としてグループ内の設備投資や配当原資等の資金移動を容易にしました。

(4)100%支配グループ法人に属する中小法人の「課税特例」について
  資本金や出資の額が1億円以下の中小法人には、以下のような課税軽減の中小特例措置がありますが、親会社の資本金が5億円以上の場合は適用されないこととなりました。
  ・中小企業の軽減税率(年800万以下30%→18%)
  ・特定同族会社の特別税率(留保金課税)の不適用(医療法人はそもそも対象外です)
  ・貸倒引当金の法廷繰入率(実績繰り入れ率との有利選択適用)
  ・交際費の損金算入特例(年600万まで、ただし10%は損金不算入)
  ・欠損金の繰戻しによる還付制度

  ※(1)(2)については平成22年10月1日の取引より、(3)(4)については平成22年4月1日以降開始事業年度より、それぞれ適用されます。

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グループ法人税制に該当する医療法人とは?

 医療法人は「会社」ではないので留保金課は対象外ですが、逆に非上場株式等の相続税や贈与税の納税猶予の対象からも外されています。それに対しグループ法人税制は、株式もしくは「出資」が判定対象にされているため、出資持ち分の定めのない社会医療法人や特定医療法人、基金拠出型医療法人また財団医療法人は対象外ですが、出資持ち分のある旧来の経過措置型医療法人(出資額限度法人を含む)は対象範囲に含まれます。

  「100%支配関係」というと、複数の法人(会社)間で直接、または3社以上での間接的な支配関係を思い浮かべると思います。しかし、医療法人は原則、法人からの出資および他の法人の株式・出資の保有は想定されませんので、該当するのは、個人及びその6親等以内の血族・3親等以内の姻族等同族関係者が 100%支配しているケースとなります。具体的には、前頁の図で示したような場合、同族関係者(複数も含む)のみで100%支配関係があることになります。

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グループ法人税制と連結納税制度の違いは?

 今改正で、連結制度納税の開始や加入時での連結法人の繰越欠損金の控除の持ち込みの一部改善など、連結納税制度の使い勝手も改善され、グループ法人税制の強制適用とのかね合いで、中小法人でも検討の余地が増えました。

  以上ご説明したとおり、グループ法人税制は大企業を頂点とする企業グループだけでなく、個人や同族が支配しているとされる場合等、資本規模に関係なく強制適用されます。

  100%支配関係のあるグループ間の資産の譲渡などの取引に際しては、これらの適用に留意することが非常に重要となります。また、兄弟などが資本金5億円以上の対象会社を所有しており、思いがけず中小特例の適用外になるなどのケースへの注意も不可欠となります。

  医療法人を含めたグループ法人の一覧図や、同族関連会社や同族関係者の出資関係図などの整備を定期的に行い、場合によってはグループ企業の整理・統合などの検討も必要になるかもしれません。

(「TKC医業経営情報」2010年11月号より)

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