会計・税務

[図解!"税"の豆知識(3)] 理解しておきたい「源泉徴収」の仕組み

石川 誠 医業経営コンサルタント 税理士

そもそも「源泉徴収」って何?

 原稿料や講演料をもらう際に所得税を源泉徴収されています。この源泉徴収で一番なじみ深いのは給与です。給与の支払いにおいて、あらかじめ所得税を差し引いてスタッフに渡し、一方で差し引いた所得税をスタッフに代わり納税します。これが源泉徴収制度です。日本では、納税者がその年の所得金額とそれに対する税額を自ら計算し、申告・納付する「申告納税制度」を採用していますが、個々が申告納税を行うと納税者も税務署も煩雑な手続きに追われ、両者の負担が増大してしまいます。それでは税金の確保も難しくなります。源泉徴収は、支払者が税金を給与から天引きして代わりに納めることで、納税の手続きをより簡略化し、より確実に税金を徴収する仕組みとしています。

  この源泉徴収は、給与以外にも利子や配当、原稿料や講演料、弁護士や税理士などに支払う報酬なども対象になります。
  そもそも“源泉”とは、温泉などがわき出る「源」ということです。つまり、個々の所得の「源」である支払者が納める税金という意味で“源泉”という言葉が用いられています。

納付はインターネットからもできる

 前述したように、医療法人や個人クリニックなどの医療機関が、人を雇用して給与等を支払う場合は、その支払額に応じて、その都度、所得税を差し引き、国に納めます。このように所得税を差し引いて、国に納める義務がある者を「源泉徴収義務者」と呼びます。

  スタッフの給与から天引きした源泉所得税は、「支給日の翌月10日」までに金融機関や郵便局で納付することになります。給料の他にも、税理士や弁護士などへの報酬を支払う場合も源泉徴収(原則として支払額の10%)を行い、給料の源泉所得税と一緒に「源泉徴収高計算書」に合計金額を記入して納付することになります。
  また、源泉所得税の納付は、自宅や医療機関からインターネットを経由して電子的に行うこともできます。従来のように金融機関の窓口まで出向く必要がないため、金融機関の場所や受付時間などの制約がなくなるというメリットがあります。
  ただし、電子納税では領収書が発行されません。領収書が必要な場合は従来どおり、窓口に納付書を持参して納付を行う必要があります。

「納期の特例」を活用しよう!

 スタッフが常時9人以下のクリニックなどの場合は、源泉徴収した所得税を半年分まとめて納付できる制度を活用することをお勧めします。これを「納期の特例」といいます。

  納付は月に1回ですが、日々の業務で忙しいなか、銀行等に毎月足を運ぶのは大変です。この特例の適用を受けていると、その年の1月から6月までに源泉徴収した所得税は7月10日、7月から12月までに源泉徴収した所得税は翌年1月10日が、それぞれ納付期限になります。この特例を受けるためには、所在地を所轄する税務署長に申請書を提出することが必要です。

  「納期の特例」を受けている場合、翌年1月10日の納付期限を、さらに1月20日に延長する特例を受けることができます。この特例を受けるには、その年の12月20日までに税務署長に申請書の提出が必要です。

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“うっかり”忘れにはペナルティが課せられる

 源泉所得税は他の税金と性格が異なり、スタッフから預かっている税金です。滞納した場合、重いペナルティが課せられます。1日でも遅れると、納付税額の 10%(不納付加算税)を追加して納めなければなりません。税務署に指摘される前に自主的に納税した場合でも、納付税額の5%が追加となりますので、 “うっかり”忘れることのないように注意が必要です。

法定調書合計表で1年間の税額を提出

 毎年1月31日までに前年分の給与等の支払い金額等を記載した「法定調書合計表」を所轄税務署に提出します。1年間の給与等の合計額とそれにともなう1年間の源泉税額を記載します。この場合、一定の役員等については、「源泉徴収票」を添付しますので、個々の内容が税務署に報告される仕組みになっています。

  また、年末調整とは直接関係ありませんが、報酬料金や家賃などを支払っている場合には、報酬料金等の金額等を「法定調書合計表」の所定の欄に記入し、「支払調書」を添付します。したがって、支払う側が誰に報酬や家賃を支払ったか税務署に報告する義務があるのです。

 精算の手続きが「年末調整」

 その1年間に給与から源泉徴収した税額の合計額は、必ずしもその人が納めるべき税額と一致しないのが通常です。年の途中で給与額に変動があったり、扶養親族が増えたり、生命保険料控除や地震保険料控除などが加味されていなかったりするからです。こうした不一致を精算するため、1年間の給与総額が確定する年末に、その年に納めるべき税額を正しく計算し、それまでに徴収した税額との過不足分を求め、その差額を徴収または還付することが必要となります。この精算の手続きを「年末調整」と呼んでいます。

  スタッフはこの年末調整の際、「源泉徴収票」を受取ることとなりますが、医療機関は「源泉徴収票」と同じ内容が記載された「給与支払報告書」を、翌年1月 31日までに市区町村に提出しなければなりません。「給与支払報告書」は、各人2枚ずつ市区町村ごとにまとめて、一定の事項を記載した総括表に添付して送付します。この「給与支払報告書」は、個々の住民税などの計算の基礎となる仕組みになっています。

ワンポイント!
懇親会費用であっても源泉徴収されることがある?

Q:スタッフの日頃の苦労をねぎらうため、懇親会や忘年会を行っていますが、あまり高額になると源泉徴収しなければならなくなる場合があるといわれました。これはどういうことですか?

A:通常、懇親会や忘年会などの厚生行事の費用は「厚生費」として経費にできますが、あまりに高額の場合、スタッフに対する経済的利益として給与と判定されることがあります。そのため所得税の源泉徴収が必要になるケースが出てくるということです。
 その判断基準は「社会通念上一般的」かどうかです。会食、旅行、ボウリング大会、カラオケ大会などは認められる範囲の典型といえます。
 ただし行事の不参加者に対してメリットを得られなかった代わりに金銭を支給すると、支給を受けた不参加者はもちろん、その不参加の理由が自己都合の場合、支給を受けていない参加者もその金銭の額で源泉徴収されることになりますので注意が必要です。

 

(「TKC医業経営情報」2010年12月号より)

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