会計・税務

[TKC医業会計データベースMX2・MX3活用事例] 損益分岐点を的確に把握し計画的な経営に取り組む

img_b02_004_1.jpg■ 医療法人仁杖会 県庁前内科クリニック
■ 理事長 髙村 真(たかむら まこと)

  栃木県宇都宮市の「県庁前内科クリニック」は、働き盛りのビジネスマンの心と身体を支える医療を提供するため、平成16年に開業した。質の高い医療サービスの提供は、ビジネスマンだけでなく地域全体の信頼にもつながっている。「これからも質の高いサービスを提供し続けるためには、TKC医業会計データベース(MX2)を活用した適切な経営管理が欠かせない」と語る理事長の髙村真氏にこれまでの取り組みやMX2の活用法について話をうかがった。

DATA 医療法人仁杖会
県庁前内科クリニック
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一般企業が集まる宇都宮市内の中心地に位置する「県庁前内科クリニック」
所在地 栃木県宇都宮市本町 1-19 佐藤ビル 1F
診療科目 内科・心療内科・循環器科・漢方外来(保険適応)・アレルギー科・在宅医療
診療時間 月・火・木・金;
9 :00 〜 12 :30
14 :00 〜 18 :00
※14 : 00 〜 16 : 30 は在宅医療可
※ 土・日・祝日は休診
スタッフ 医師 1 人、看護師3人、受付事務 1 人
一般企業が集まる宇都宮市内の中心地に位置する「県庁前内科クリニック」


──「県庁前内科クリニック」の開業経緯からお聞かせください。働き盛りのビジネスマンを支えるために市内中心地で開業

髙村 もともとは札幌医科大学で循環器内科を希望していました。そのなかで高血圧や心筋梗塞などの生活習慣病と呼ばれる病気は、心のストレスや心理状態と深く関係している側面があることがわかり、「循環器内科医になるためには心療内科学にも精通しておかなければならない」と考えるようになりました。しかし、当時、心療内科は確立された医療ではなく、学ぶ場所が限られていました。そうしたなか九州大学では心療内科学を学ぶことができるということで、札幌医科大学を卒業後、福岡へと渡り、九州大学医学部付属病院の心療内科に入局したわけです。その後、九州の病院で循環器内科や心療内科の臨床をしながら、薬理学や漢方医療なども学びました。

  宇都宮市に来ることになったのは、福岡にある企業の産業医をすることになったのがきっかけです。「宇都宮の支社で産業医をしてほしい」とお願いされ異動してきたわけです。そこで4年ほど産業医を務めた後、平成16年7月に内科、心療内科、循環器科などを標榜する「県庁前内科クリニック」を開業しました。

──もともと開業医を目指しておられたのですか。

髙村 「開業医になる気はまったくなかった」と言えば嘘になりますが、強い想いがあったわけではないというのが正直なところです。

  ただ、産業医をしているなかで、心のストレスが原因で高血圧や心筋梗塞などの慢性疾患に苦しんでいるビジネスマンの方々をたくさん見てきました。次第に「1人でも多くのビジネスマンの方々の心と身体をサポートしたい」と考えるようになり開業を決意しました。ビジネスマンの方々が仕事帰りに通院しやすいように、午後の受付時間は18時までにしました。開業場所もビジネスマンの方々が比較的集まっている市内の中心の県庁前を選びました。

  医療法人名の「仁杖会」には、「杖」のような存在として、患者さんを博愛の精神(仁)でずっと支えていきたい、そんな想いが込められています。

──現在、どれぐらいの患者さんが来院されておられますか。

髙村 当初の1日の平均外来患者数は約20人で、現在でもその数は微増といったところです。ただ、「開業医なら在宅医療も行わなければならない」と考えていたので開業から1年が経過した頃から在宅にも取り組み始めました。当初は1日2〜3人ぐらいでしたが今では1日5〜6人に増えています。

  考えていた以上に在宅ニーズは大きく、遠方の患者さんからお願いされることもたびたびあるのですが、遠くの患者さんの在宅を担当すると、もし何かあった場合にすぐに対応できない可能性があります。在宅療養支援診療所としての役割を確実に担えないかもしれないので、在宅については当院が責任をもって対応できる距離の患者さんだけに限らせていただいています。在宅を行っている他のクリニックと密に連携をしているので、遠方の患者さんから依頼があった場合は、近くの適切なクリニックを紹介しています。

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(明るく清潔感のある待合室)

──患者層はどのようになっていますか。

髙村 外来の患者さんは20〜40代の男性ビジネスマンがほとんどです。特に40代の働き盛りの方がメーンで、扱う疾患もストレスからくる生活習慣病が多いです。会社で責任ある立場を任され、そのプレッシャーから身体に症状が出てしまう。また軽度のうつ病やパニック障害、社会不安障害などを診ることも増えてきました。これらは会社勤めをしたばかりの20代の方が中心です。当院が対応する範囲は、軽度の神経科疾患やストレスからくる内科的疾患の治療です。神経科疾患で出社できない、入院が必要といった中等度以上の患者さんについては適切な医療機関に紹介しています。

  一方、在宅については、認知症の高齢者がメーンです。勤務医時代は臨床をしながら薬理学も研究し、そのなかで薬剤をバランスよく処方して認知症の症状を効果的に抑え安定させるノウハウを身につけました。こうした適切な薬物療法を行うことができるのが当院の特徴の1つだと考えています。このことが地域のケアマネジャーのなかで広がり、認知症の在宅患者が増加してきたということもあります。

慢性疾患の患者をメンタル面からアプローチできることが強み

──患者さんと接する上で意識されてきたことなどはございますか。

髙村
 患者さんとのコミュニケーションについては特に意識してきました。診療での患者さんとの会話は、信頼関係を高めるという意味だけでなく、認知療法と呼ばれる治療の一環でもあります。そのなかで、うつ病や社会不安障害の患者さんに対しては、あえて最初の1か月間はあまり会話に重点を置かず、薬剤が効いてくる2か月目以降から意識的に会話をしていくことがポイントになります。また、心の病気というのは、よい状態と悪い状態を交互に繰り返しながら徐々に治っていくものです。そのことを初診時に伝えておくことも非常に大切です。そうしなければ、本当は改善しているのに、たまたま気持ちが落ち込んだ時に、そのことだけを悪く捉えて、症状が悪化してしまうこともあるからです。あとは、「症状は軽度なので治療は長くても1年間ぐらいで終わります」ということをしっかり説明し、なるべく患者さんの不安を払拭することが大切になります。

──実際の治療結果はいかがですか。

髙村 実際に心のストレスを軽減することで慢性疾患が改善した患者さんというのは多いです。ずっと高血圧の薬を飲み続けていた患者さんが、当院に通院するようになって、薬から自立することができたというケースもあります。心のストレスと身体の症状は一見、関係ないと思われがちですが、実際は密接に関係しています。そのことは意外と知られていません。

  一般に心療内科を標榜するクリニックというのは精神科も標榜するものですが、当院はあくまでも内科・循環器科の慢性疾患の治療がメーンです。その治療をメンタル面からもアプローチできることが当院の大きな強みだと考えています。

患者動向をタイムリーに把握し素早く対応することが重要

──どのようなスタッフ体制で回しておられますか。

髙村 医師1人、看護師3人、受付事務1人の5人体制です。特にスタッフには、患者さんへの対応について気をつけさせています。たとえば、電話がかかってきたらどんな方に対しても丁寧な受け答えをする、待合室で何か困っている患者さんがいたらすぐに声をかける、どんなときでも明るい笑顔を意識するなどです。また、院内に置いてあるさまざまなアイテムは、なるべくオレンジ色で統一するようにしています。オレンジ色は「人の温かみ」「人懐っこさ」などを現わす色です。私も含めた全員で、来院した1人ひとりの患者さんを温かくお迎えするという意味でそうしています。

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外来(入院)収益分析表

外来患者数を「初診」と「再診」にわけてしっかり把握することが重要!!
 病医院経営において、「外来患者数」は収益を伸ばすために非常に重要な項目です。しかし、単に“外来患者数”という大枠で把握するだけでは、大雑把な経営になってしまいます。初診患者数と再診患者数にわけて毎月管理することで、より自院の強み、弱みを明確にでき、的確な対応策を講じることができます。 MX2では、毎月の外来患者数だけでなく、初診、再診の患者数をわけて把握でき、前年同期との比較もグラフで簡単に確認することができます。

※TKC医業会計データベース(MX2)画面サンプル(取材病院とは関係ありません)

 

──現在、課題などはございますか。

髙村 外来患者数がもう少し増えればよいと思います。特に心のストレスが原因で慢性疾患に困っている患者さんの治療では評価をいただいてきました。そのことが口コミで広がり、地域の内科クリニックから患者さんをご紹介いただくことが増えてきましたが、そのことをさらにアピールして、1人でも多く、患者さんのお役に立てればと考えています。

──質の高い医療サービスを持続的に提供するためには、経営面の安定も不可欠ですね。

髙村 開業から約6年が経過し、少しずつ当院の取り組みが地域に広がり、患者数は外来、在宅ともに微増ですが増えています。しかし、昨今のクリニックの経営環境の変化は著しく、油断はできません。そのなかで、医業経営の安定化を図るためには、医療の質を高めるだけでなく、しっかりと経営管理をしていくことが重要です。当院ではそのために「TKC医業会計データベース(MX2)」を導入しています。毎月の業績をタイムリーに把握することができ、グラフでも一目で確認できるのがMX2のメリットだと感じています。

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(写真左から髙村真理事長、理事長夫人で看護師の髙村正子氏、田島隆雄税理士)

──特にどのデータを意識して見ておられますか。

髙村 特に「患者数」を意識しています。医業経営では、収益を伸ばすためには患者数を増やすしかありません。当院では「外来患者」と「在宅患者」の2種類があります。たとえば、外来患者数が前年同月と比較し少ないことがわかれば、バランスを見極めた上で1か月の在宅患者数を増やすなどのコントロールを行います。その際、毎月の損益分岐点を把握し、全体の医業収益がそれを下回らないように気をつけています。

──毎月の業績を確認して適時、軌道修正を行っているわけですね。

髙村 借入金はすべて返済したからといって、全体の収益を単に把握するだけではいけません。在宅患者数が増えているのか、外来患者数が増えているかを的確に掴む。さらに初診患者数や再診患者数は前年同期と比べてどうなのかをしっかり把握する。もし減っているならなぜ減っているのかを明らかにし、その対応を素早く行う。こうしたことを毎月、続けていくことが大切です。現状では、外来の慢性疾患の患者数がまだまだ少ない傾向にあります。もともとそうした患者さんを診るために開業しましたので、その数が増えれば私自身のモチベーションも高まります。

──今後の地域での役割などをお聞かせください。

髙村 働き盛りのビジネスマンの方々は、仕事をするなかで、上司からの圧力、部下の指導など、さまざまなストレスに悩まされると思います。そして、そのストレスが原因で身体に症状が出てしまうことがある。そうしたビジネスマンの方々に、会社で元気に活躍していただき、また、自宅に帰って幸せな家庭を築いてほしい。それを“杖”のように影から支えていく。そんな役割を果たしていければよいと考えています。

(平成23年1月8日/「TKC医業経営情報」2011年3月号より)

医業経営コンサルタントからの一言

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先生の理念実現のために税務・会計面から支援します!

田島税務会計事務所
所長 田島 隆雄
    

  髙村真先生とは開業当初からのお付き合いをさせていただいております。質の高い医療サービスの徹底は、働き盛りのビジネスマンや在宅の認知症患者だけでなく、地域の他のクリニックやケアマネジャーなどの信頼にもつながっています。“杖”のような存在として地域を支えるという先生の理念を実現するために、これからも税務・会計面からサポートしていきます。

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TKC全国会医業・会計システム研究会 (略称:TKC医会研) は、TKC全国会の中でも特に医業・会計に精通した約1,800名の会員により構成されており、約23,000件の病院・診療所の健全経営をご支援させていただいております。