会計・税務

[図解!"税"の豆知識(6)] 「スタッフとの飲食費」は福利厚生費?

 医業経営コンサルタント 税理士 佐藤 正雄

福利厚生費ってどんなもの?

 3月は病医院にスタッフが新しく入ってくる季節です。一方で長年、勤めていたスタッフが退職する季節でもあります。この時期、病医院では、「歓送迎会」を企画する機会がたくさんあります。こうした歓送迎会の会費は、全額、病医院が負担するケースがありますが、この金額は基本的に「福利厚生費」となります。福利厚生費は、病院会計準則によると「福利施設負担額、厚生費など従業員の福利厚生のために要する法定外福利費」となっています。福利厚生費の判断基準は、スタッフに対する福利厚生のための費用かどうかです。具体的には次のものがあります。

・看護宿舎、食堂、売店等の利用の際の事業主負担額。
・病院職員の診療、健康診断を行った場合の減免額。
・衛生、保健、慰安、修養、教育訓練等に要する費用。
・団体生命保険料及び慶弔に際して一定の基準により支給される金品等の現物給与。

※金額の大きいものは独立した科目を設ける

福利厚生費にはならないものとは?

 福利厚生費とは、スタッフに対する福利厚生のための費用ですが、その判断に迷うケースもあります。たとえば、得意先や仕入先などへの接待、慰安などは「接待交際費」となりますし、スタッフの健康保険や厚生年金などの法令に基づく事業主負担額は「法定福利費」となります。具体的には下図を参照してください。

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 また、スタッフの福利厚生のために会食などを行った際、参加しなかったスタッフに、参加に代えて金銭を支給した場合は、参加したスタッフも含めて全員が給与扱いになります。また、この際、事業専従者は原則、スタッフと同じ取扱いとなります。また、院長などの事業主の会食費については、参加することでスタッフを監督するといった役割を担う場合などは必要経費となります。事業主と事業専従者だけの場合は通常「家事費」となり、必要経費とは認められません。

 所得税法上は、金銭以外の経済的利益も収入とされていて、病医院が負担するレクリェーションなどの費用は、スタッフは経済的利益を受けることになるので原則課税対象となり、給与扱いとされ、病医院は源泉徴収をする義務があるとされています。しかし、所得税法基本通達で社会通念上、一般的に行われているレクリェーション費用の経済的利益は課税しなくても差し支えないとしているため、税務上はスタッフに対する給与ではなく、福利厚生のための費用と認められています。ただし、経済的利益として給与課税されないためには次の要件を満たしていなければなりません。

・全員が参加の機会を与えられている。
・おおむね50%以上参加している。
・社会通念上一般的に行われている。
・金額が妥当である(高額でない)。

慰安旅行も福利厚生費になるの?

 旅行の目的がスタッフの慰安のためであり、社会通念上一般的に行われている場合で次の2つの要件を満たしていれば福利厚生費として認められます。

・旅行期間が4泊5日以内であること。海外旅行の場合は目的地の滞在日数でよい。
・参加スタッフの人数が全スタッフ数の50%以上参加していること。職務上、全員が一同に参加することができず複数回にわけて実施しても、参加者が全体の50%以上ならよい。

 旅行の企画立案、主催者、旅行の目的、規模、行程職員等の参加割合、スタッフの負担割合や負担額などが総合的に判断されます。豪華旅行や病医院の負担額が高額なものは給与となります。

スタッフの食事代の取扱いは?

 スタッフに支給する食事代について、以下の2つの要件を満たしていれば非課税となります。

・半額以上を職員等本人が負担していること。
・事業主負担が月額3,500円以下であること。

 残業や宿日直の際の食事代については、実際の食事の支給であり、出前や弁当、院内で調理する食事、近隣の飲食店での食事が非課税となります。金銭の支給は課税されるので注意が必要です。

また取引先を接待することはよくあることです。接待の目的は取引先の接待であり、接待した側の役員やスタッフの飲食代も接待交際費となります。法人税法上、交際費は損金不算入の対象となります。役員やスタッフは職務で接待しているので、経済的利益を受けていないとされ、給与として課税されません。

健康診断の費用は?

 労働安全衛生法で「事業者は労働者に対して医師による健康診断を行わなければならない」とされており、最低、年1回は実施することが求められています。この費用は事業者負担となり福利厚生費となります。

 また、人間ドックの費用も給与課税となりません。役員、またはスタッフの健康管理の必要性から、雇用主に対し、一般的に実施されている人間ドック程度の健康診断の実施が義務づけられています。一定年齢以上の希望者はすべて健診を受けることができ、かつ検診を受けた者のすべてを対象として、その費用を負担する場合は課税する必要はありません。

 福利厚生費は、その支出目的が病医院の職員等の福利厚生のためであり、全員を対象としています。税務は社会通念上一般的におこなわれておりその金額が妥当であることとされています。あらかじめ慶弔規程や永年勤続者表彰規程等ルールを決めておくと税務署にも説明しやすいでしょう。

ケーススタディ/成績優秀者の海外旅行の取扱いは?

Q.創立100周年記念行事の一環として成績優秀者に対し、抽選で海外旅行に招待したいと考えています。この海外旅行の費用はどのような取扱いとなりますか。

A.「給与所得」となります。

旅行に招待する者の選定を抽選という方法で行うことからすると、その旅行に招待されるか否かは偶発的ですが、その旅行の抽選対象者である成績優秀者は所定の業績を挙げた者に限られており、その旅行に招待する者の抽選方法が偶発性を有しているとしても、これにより受ける経済的利益は勤務の対価としての性質を有しているものと認められます。対象者が従業員全員ではなく業績を上げた者に限られているため給与として課税されます。

国税庁HP「質疑応答事例:源泉所得税関係」より抜粋・編集

 

(「TKC医業経営情報」2011年3月号より)

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