注目の判例

刑法

2018.04.10
(奈良地裁 夫殺害 妻に無罪判決 死体遺棄は有罪)
LEX/DB25549652/奈良地方裁判所 平成30年 2月 5日 判決 (第一審)/平成29年(わ)第62号 等
被告人は、長女のAと共謀の上、奈良県生駒郡の被告人及びA方で、黒色ポリ袋等で覆った被告人の夫であるBの死体を被告人の運転する軽四乗用自動車に積載し、同所から同県吉野郡の道路まで運搬した上、同死体を山林斜面に投棄し、死体を遺棄したとする事案において、被告人とAの間には,死体遺棄についての共謀が認められ、判示事実は優に認定できるとし、懲役1年6月(執行猶予3年)を言い渡し、殺人の点については、被害者の殺害につき、被告人がAと意思を通じ合っていたり、実行者等としてこれに関与した事実を認定することも到底できないとし、無罪を言い渡した事例。
2018.04.03
詐欺未遂被告事件(「受け子」に逆転有罪 最高裁)
LEX/DB25449341/最高裁判所第一小法廷 平成30年 3月22日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第322号
詐欺未遂事件につき、第1審判決は犯罪事実を認定し、詐欺未遂罪に当たるものとして、被告人を懲役2年4月に処したため、被告人が、第1審判決に対して量刑不当を理由に控訴したところ、控訴審判決は、控訴理由に対する判断に先立ち、職権で以下のとおり判示して第1審判決を破棄し、詐欺罪にいう人を欺く行為(欺罔行為)は認められず、本件公訴事実は罪とならないとして、被告人に無罪を言い渡したため、検察官が上告した事案において、本件嘘を一連のものとして被害者に対して述べた段階で、被害者に現金の交付を求める文言を述べていないとしても、詐欺罪の実行の着手があったと認められるとして、刑事訴訟法411条1号により原判決を破棄し、第1審判決は、被告人に対し懲役2年4月に処した量刑判断を含めた内容で維持し、被告人の控訴を棄却した事例(補足意見がある)。
2018.04.03
保護責任者遺棄致死(予備的訴因重過失致死)被告事件(難病長女衰弱死 母親無罪確定へ)
LEX/DB25449335/最高裁判所第二小法廷 平成30年 3月19日 判決 (上告審)/平成28年(あ)第1549号
被告人は、A(平成22年生)の実母であり、Aと養子縁組をした夫と共に親権者として自宅でAを監護していたものであるが、夫と共謀の上、自宅等で、幼年者であり、かつ、先天性ミオパチーにより発育が遅れていたAに十分な栄養を与えるとともに、適切な医療措置を受けさせるなどして生存に必要な保護をする責任があったにもかかわらず、その頃までに栄養不良状態に陥っていたAに対して、十分な栄養を与えることも、適切な医療措置を受けさせるなどのこともせず、その生存に必要な保護をせず、Aを低栄養に基づく衰弱により死亡させたとする事件で、第1審は、被告人が、Aが生存に必要な保護として、より栄養を与えられるなどの保護を必要とする状態にあることを認識していたというには合理的な疑いが残るとして、無罪を言い渡したが、検察官が控訴し、控訴審では、被告人は、上記状態にあるという認識があったと認定でき、第1審判決には事実誤認があるとし、訴訟手続の法令違反の点について判断することなく、第1審を破棄し、地方裁判所に差戻しを命じたが、これに対し、被告人が上告した事案で、控訴審において、重過失致死罪に係る予備的訴因並びに罪名及び罰条追加請求の許可決定がされているが、事後審である控訴審で追加変更された訴因、罰条についての審理、判断は、第1審判決に事実誤認又は法令違反があることを理由に第1審判決が破棄されることを前提として行うべきものであるから、第1審判決に誤りを見いだすことができない本件において、重過失致死罪の予備的訴因を審理、判断することはできないとして、原判決を破棄し、控訴を棄却した事例。
2018.04.03
傷害致死被告事件
LEX/DB25449344/最高裁判所第一小法廷 平成30年 2月26日 決定 (上告審)/平成28年(あ)第1869号
傷害致死被告事件につき、原判決が理由中で、訴因外の被告人の妻との傷害致死の共同正犯が成立するとしたことは、原審では当事者双方とも共同正犯の成立を主張せず、被告人に対する不意打ちを防止するための措置も何ら採られていないなどの本件事案の下では是認できないとし、訴因どおりに傷害致死の単独犯を認定して被告人を懲役9年に処した第1審判決は相当と認められ、控訴を棄却した原判決の結論に誤りはないとし、本件上告を棄却した事例。
2018.03.27
常習累犯窃盗被告事件
LEX/DB25549505/福島地方裁判所郡山支部 平成30年 1月31日 判決 (第一審)/平成27年(わ)第230号
被告人は、福島県郡山市内の店舗で、同店の牛肉2パック等9点(販売価格合計2740円)を窃取し(本件犯行1)、盗犯等の防止及び処分に関する法律3条、2条、刑法235条に該当するとして、起訴されたところ、保釈中に同系列の別店舗で、ホットケーキ1袋等9点(販売価格合計1936円)を窃取したため(本件犯行2)、起訴状記載の訴因が本件犯行2の公訴事実を追加する内容に変更された事案において、本件犯行1の当時、被告人は自閉症スペクトラム障害(ASD)及び強迫性障害(OCD)と診断されるが、被告人の判断能力や行動制御能力の低下を疑うべき事情はないとしつつ、本件犯行2の当時、被告人は、他の特定される解離性障害-ストレスの強い出来事に対する急性解離反応(OSDD)により心神喪失の状態にあったとの合理的な疑いが残るので、犯罪の証明がないが、この点は本件犯行1と一罪の関係にあるとして訴因変更請求がされたものと認められるから、主文において特に無罪の言渡しをせず、量刑理由として、鑑定人が、被告人の再犯防止のためにはASDに対する治療や、ホームヘルプなどの社会での支援システムを用いることが効果的であると示唆しており、被告人が今後、再犯に及ばないために治療や支援利用への強い意欲を示していることなど、酌むべき事情もあるので、治療及び支援の開始が可能な範囲で早期に行われるのが相当であるとし、求刑懲役3年に対し、被告人を懲役1年8月(未決勾留日数中540日をその刑に算入)に処した事例。
2018.02.20
窃盗,強盗殺人,住居侵入被告事件(大阪ドラム缶遺体事件)
LEX/DB25449223/最高裁判所第三小法廷 平成29年12月 8日 判決 (上告審)/平成27年(あ)第120号
被告人が、被害者夫婦方敷地に金品奪取目的で赴き、同夫婦を殺害し、金品を奪取し、強盗殺人の後に、被害者らの死体をドラム缶内に隠匿して放置し続けたとして、被告人に対し、第1審判決、控訴審判決とともに、死刑を言い渡したため、被告人が上告した事案において、量刑判断の中心となる強盗殺人の犯行は、被告人が、以前関わった居宅等工事の関係で生活状況を把握していた高齢の被害者夫婦の財産を狙って、200万円を超える金品を奪い、その機会に被害者両名の頭部をいずれも重量のある鈍器で殴打するなどし、短時間のうちに絶命させたというもので、その殺害態様は冷酷かつ悪質で、強固な殺意が認められる上、犯行の利欲性も高く、何らの落ち度も認められない2名の生命を奪ったという結果は重大であるなどとして、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして、上告を棄却した事例。
2018.01.16
傷害、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
LEX/DB25548218/仙台高等裁判所 平成29年10月31日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第130号
被告人が、〔1〕駅のプラットホームにおいて、見知らぬ女性の背後から千枚通し様の先端が鋭利な凶器でその背中を1回突き刺して傷害を負わせたといういわゆる通り魔的な傷害の事案、及び〔2〕折りたたみ式ナイフ2本をトートバッグ内に入れて携帯したという銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案の控訴審において、被告人は、本件犯行当時、広汎性発達障害の影響を受けてはいたもののその影響は大きいものではなく、善悪を判断する能力や自己の行動を制御する能力が著しく低下していたとはいえないから、完全責任能力を有していたと認められ、原判決に事実の誤認はなく、また、広汎性発達障害に罹患しており、行動の前の緩衝材ともいえる想像力や共感性の欠如が傷害の犯行に影響を与えていた可能性があることなどの原判決が説示するところの酌むべき事情や、その他所論が主張するところを十分考慮しても、本件は刑の執行を猶予するのが相当な事案であるとはいえず、被告人を懲役3年6月に処した原判決の量刑は刑期の点も含めて相当であって、これが重過ぎて不当であるとはいえないとして、被告人の控訴を棄却した事例。
2018.01.09
殺人未遂幇助被告事件
LEX/DB25449154/最高裁判所第一小法廷 平成29年12月25日 決定 (上告審)/平成28年(あ)第137号
オウム真理教による平成7年の東京都庁郵便小包爆破事件に関与したとして、元信徒の被告人が、殺人未遂と爆発物取締罰則違反の幇助罪に問われたところ、第1審判決は、爆発物製造及び爆発物使用の罪については幇助の意思が認められないから、その幇助罪は成立せず、殺人未遂罪については、幇助の意思が認められ、同罪の幇助罪が成立するとして、被告人に対し懲役5年に処したが、原判決は、被告人が本件当時、本件殺人未遂幇助の意思を有していたとの原判決の認定は、経験則、論理則に反する不合理な推論に基づくものであり、原判決の認定した幇助行為を被告人が行った際、正犯者らが人を殺傷するテロ行為を行うことを認識してこれを幇助したものと認めるにはなお合理的な疑いが残るといわざるを得ず、第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとして、第1審判決を破棄し、被告人に対し無罪を言い渡したため、検察官が上告した事案において、原判決は、間接事実からの推論の過程が説得的でないなどとして、第1審判決が説示する間接事実の積み重ねによって殺人未遂幇助の意思を認定することはできないとしたものであり、第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があり、控訴審で破棄を免れないものであったことに照らすと、第1審判決を破棄し,被告人に対し無罪の言渡しをした原判断は、結論において是認することができるとして、上告を棄却した事例。
2018.01.09
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による医療の終了の申立て及び退院の許可の申立て各棄却決定に対する各抗告棄却決定に対する再抗告事件
LEX/DB25449158/最高裁判所第一小法廷 平成29年12月25日 決定 (再抗告審)/平成29年(医へ)第20号 等
検察官は、対象者が夫と共に居住していた自宅を焼損したが、その際心神耗弱の状態にあったと認めて公訴を提起しない処分をし、地方裁判所に対し、前記行為を対象行為として対象者について医療観察法33条1項の申立てをし、今後服薬を継続するとともに心理社会的な治療を受けることによりその改善の見込みがあり、対象者に対しては手厚い医療が必要であるなどとし、通院による医療の確保は困難であるとして、対象者に対し、入院による医療を受けさせる旨決定し、その後、原々審に対し、対象者から医療観察法による医療の終了の申立てがされ、翌日には指定入院医療機関の管理者から退院の許可の申立てがあり、各申立てを棄却したが(各原々決定)したため、対象者及び指定入院医療機関の管理者がそれぞれ抗告を申し立てたが、原審は、各原々決定と同旨の判断を示して各抗告を棄却した(各原決定)ため、対象者及び指定入院医療機関の管理者がそれぞれ再抗告を申し立てた事案において、各原々決定には、医療観察法51条1項の解釈適用を誤り、本件意見の合理性・妥当性の審査を尽くすことなくこれを排斥した点で、審理不尽の違法があり、これを維持した各原決定にも同様の違法があるというべきであり、この違法は各原決定に影響を及ぼし、各原決定を取り消さなければ著しく正義に反するものと認められるとして、医療観察法71条2項により、各原決定及び各原々決定を取消し、現在の対象者の状態や治療可能性等に関する審理を尽くした上で同法による医療の終了等の可否を判断させるため、各事件を原々審である地方裁判所に差し戻した事例。
2018.01.09
現住建造物等放火被告事件
LEX/DB25449139/最高裁判所第三小法廷 平成29年12月19日 決定 (上告審)/平成28年(あ)第190号
被告人は,2名が現に住居に使用し、かつ、同人らが現にいる居宅(木造トタン葺平屋建、床面積約115.03平方メートル)に延焼し得ることを認識しながら、上記居宅に隣接した作業場建物の軒下に積み上げられていた段ボールに、ライターで着火して火を放ち、その火を上記居宅に燃え移らせて全焼させ、現住建造物等放火罪で起訴された事案において、第1審判決は、量刑事情として、上記居宅に居住していた2名が逃げ切れず一酸化炭素中毒により死亡したことをも考慮し、被告人を懲役13年に処し、原判決は、第1審判決が、刑の量定に当たり,放火行為から人の死亡結果が生じたことを被告人に不利益に考慮したことは、それ自体不当なところはなく、余罪処罰に当たるようなものでもないなどとして是認したため、被告人が上告した事案において、放火により焼損した居宅内にいた2名が一酸化炭素中毒により死亡しており、これを本件の量刑事情として考慮した第1審判決を是認した原判決に違法はないとして、上告を棄却した事例。
2017.12.26
詐欺未遂被告事件
LEX/DB25449113/最高裁判所第三小法廷 平成29年12月11日 決定 (上告審)/平成29年(あ)第1079号
被告人が、氏名不詳者らと共謀の上、A(当時84歳)をして、違約金を支払えばロト6に必ず当たる特別抽選に参加できる旨誤信させ、現金をだまし取ろうとしたが、警察官に相談したAがうそを見破り、現金が入っていない箱を発送したため、その目的を遂げなかった事案において、第1審判決は、被告人は詐欺未遂罪の共同正犯の罪責を負うとは認められないとして、被告人に対し、無罪を言い渡したため、検察官が控訴し、原判決は、被告人が欺罔行為後の共謀に基づき被害者による財物交付の部分のみに関与したという事実関係を認定し、これを前提として、だまされたふり作戦の開始にかかわらず、被告人については詐欺未遂罪の共同正犯が成立するとし、これを認めなかった第1審判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認があるとして、第1審判決を破棄し、被告人を懲役3年、執行猶予5年に処したため、被告人が上告した事案において、被告人が共犯者らと共謀の上被害者から現金をだまし取ろうとしたとして、共犯者による欺罔行為の点も含めて詐欺未遂罪の共同正犯の成立を認めた原判決は正当であるとして、上告を棄却した事例。
2017.12.12
児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,犯罪による収益の移転防止に関する法律違反被告事件
LEX/DB25449066/最高裁判所大法廷 平成29年11月29日 判決 (上告審)/平成28年(あ)第1731号
被告人が、被害者が13歳未満の女子であることを知りながら、被害者に対し、被告人の陰茎を触らせ、口にくわえさせ、被害者の陰部を触るなどのわいせつな行為をしたとして起訴され、第1審判決は懲役3年6月を言い渡し、原判決は、被告人に性的意図があったと認定するには合理的な疑いが残るとした第1審判決の事実認定を是認した上で、客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ、行為者がその旨認識していれば、強制わいせつ罪が成立し、行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないとして、昭和45年判例(最高裁昭和43年(あ)第95号同45年1月29日第一小法廷判決)を現時点において維持するのは相当でないとし、第1審判決を是認したため、被告人が上告した事案において、刑法176条にいう、わいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには、行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、その行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ないことになり、そのような個別具体的な事情の一つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難いとし、そのような場合があるとしても、故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく、昭和45年判例の解釈は変更されるべきであるとの見解を示し、刑事訴訟法410条2項により、昭和45年判例を当裁判所の上記見解に反する限度で変更し、原判決を維持するのを相当と認め、同判例違反をいう所論は、原判決破棄の理由にならないとして、上告を棄却した事例。
2017.12.12
住居侵入、殺人被告事件
LEX/DB25548075/那覇地方裁判所 平成28年11月22日 判決 (第一審)/平成27年(わ)第209号
被告人が、深夜、面識のない被害者宅に2階ベランダの施錠されていない扉から侵入した上、ベッドで横になっていた被害者に対し、その左後頸部付近をナイフ(刃体の長さ約18.5センチメートル)で複数回突き刺して殺害したという事案において、被告人は、本件犯行当時、飲酒による酩酊状態のため心神耗弱状態にあったとし、とりわけ無差別的な住居侵入・殺人の犯行であり、犯行態様が残忍な手口によるものである点で本件は被害者1名に対する殺人の事案の中でもかなり重い部類に位置付けられ、処断刑としては無期懲役刑を選択した上で酌量減軽し、懲役14年に処した事例(裁判員裁判)。
2017.12.05
殺人被告事件(妻殺害 夫に無罪判決 那覇地裁)
LEX/DB25547596/那覇地方裁判所 平成29年10月27日 判決 (第一審)/平成28年(わ)第437号
被告人が、深夜、自宅で、妻であるb(当時73歳)に対し、殺意をもって、頸部圧迫による窒息により死亡させたとして起訴され、被告人が犯人であると認められるかが争点となった事案において、検察官の主張を踏まえて、証拠上認定できる事実関係を総合しても、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれているとはいえず、被告人が犯人であることが合理的疑いを入れない程度に証明されたとは認められないとして、被告人に無罪を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2017.11.28
殺人未遂(認定罪名傷害)被告事件
(平成29年 5月15日さいたま地方裁判所(平成28年(わ)第1666号)の控訴審)
LEX/DB25547489/東京高等裁判所 平成29年 9月28日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第1131号
被告人が、深夜、自宅で、妻(当時78歳)の右肩部、右側腹部及び背部をペティナイフ(刃体の長さ約12.2cm)で各1回突き刺し、全治まで約2か月間を要する右側腹部・背部・右肩部刺創等の傷害を負わせたことにつき、原判決は被告人に傷害の故意があったと認め、被告人を懲役2年6月に処したため、被告人が控訴した事案において、本件行為を「社会的相当行為」であると誤信していた可能性はなく、被告人に対し、傷害罪の成立を認め、被告人に懲役2年6月を言い渡した原判決の量刑が、その刑の執行を猶予しなかった点を含め、重すぎて不当であるとはいえないとして、控訴を棄却した事例。
2017.11.28
殺人未遂被告事件
(平成29年 9月28日東京高等裁判所(平成29年(う)第1131号)の原審)
LEX/DB25547490/さいたま地方裁判所 平成29年 5月15日 判決 (第一審)/平成28年(わ)第1666号
被告人が、深夜、自宅で、妻B(当時78歳)に対し、その右肩部、右側腹部及び背部をペティナイフ(刃体の長さ約12.2センチメートル)で各1回突き刺し、全治まで約2か月間を要する右側腹部・背部・右肩部刺創等の傷害を負わせたとした事案において、被告人は、本件犯行当時、飲酒と睡眠導入剤服用の副作用の影響により自己の行為の危険性を正確に認識する能力が低下し、その結果、本件行為により、被害者の死ぬ危険性が高いことを認識できていなかった可能性が否定できないというべきであり、被告人に殺意があったとは認定できないとしたうえで、刃物による傷害の事案としては、相応に悪質であるとし、被告人を懲役2年6月に処した事例(裁判員裁判)。
2017.10.17
業務上過失致死被告事件 
LEX/DB25448933/東京高等裁判所 平成29年 9月20日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第344号
A社が運営していた天竜川の舟下り事業において、旅客船の運航中に、噴流の発生していた流域を通過する際、噴流等の影響により、舳先が180度右転回したため、船頭が旅客船を上流に遡らせようとしたところ、上流からの強い流れに押されて遡上できずに左岸方向に斜航し、左岸岸壁に旅客船を衝突させて転覆させ、乗船していた乗客4名及び船頭1名の計5名を溺死させたという業務上過失致死の罪で起訴され、原判決は、舟下り事業の安全統括管理者兼運行管理者であったBを禁錮2年6月に、船頭主任及び運航管理補助者であった被告人を禁錮2年6月に、舳乗り船頭であったDを禁錮3年にそれぞれ処し、それぞれに執行猶予4年を言い渡したため、被告人が控訴した事案において、二人の船頭の適切な状況判断や操船があったといえるかはさておき、被告人の立場からは、本件噴流等の影響によって旅客船の舳先が振られ、安全に操船することが困難な状態になったために転覆してしまうことについての現実的な危険性を認識し得なかったものと考えるのが相当であるとし、被告人には本件転覆事故について注意義務違反を認めることはできないとして、原判決を破棄し、被告人に対し、無罪を言い渡した事例。
2017.08.29
傷害致死、監禁、傷害被告事件 
LEX/DB25546331/大阪地方裁判所堺支部 平成29年 7月19日 判決 (第一審)/平成28年(わ)第519号 等
A(当時3歳)の実母である被告人が、被告人方にて、Aに対し、何らかの熱源をその右頬、左肘付近に接触させるなどし、全治約10日間の右頬部熱傷、全治3~4週間の左肘部熱傷の傷害を負わせた後、夫と共謀の上、Aを浴室出入口ドアの内鍵つまみ部分が取り外された浴室内に入れ、外側から施錠して同外鍵にテープを貼って固定した上、棒を同ドアの外側にテープで貼り付け、その内側から解錠すること及び同ドアを開けることが著しく困難な状態にするなどし、同浴室から脱出することを著しく困難ならしめ、同人を不法に監禁したとして起訴された傷害致死、監禁、傷害被告事件において、夫の供述に被告人の供述を排斥するほどの信用性を肯認するのは躊躇せざるを得ないとし、検察官が指摘する重要事実を認めることはできないのであるから、被告人と夫との共謀は認められず、被告人に対する傷害致死の点については、その証明が不十分であり、犯罪の証明がないとし、刑事訴訟法336条により無罪を言い渡し、被告人に対する監禁の点については、被告人が、実母として本来守るべき立場にありながら、抵抗できない3歳の幼児を虐待したのであるから、幼少期における逆境的環境での体験が犯行に影響を及ぼしていることを踏まえても、なお厳しい非難に値し、やけどの程度は重篤なものではなく、監禁の態様も悪質性の高いものとまでは言えないことを考慮すれば、当然に実刑に処するべき犯情とまでは言えないとし、懲役2年6月、執行猶予5年(保護観察付き)を言い渡した事例。
2017.07.11
業務上過失致死被告事件 
LEX/DB25545945/佐賀地方裁判所 平成29年 5月29日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第3号
夏休みイベント企画の川遊び中に8歳の児童が川の深みで溺れ、死亡した事故に関し、イベントa倶楽部の代表として同倶楽部の会務を統括する業務に従事していた被告人Aと、同倶楽部の監査役であり、実質的に同倶楽部の代表を補佐し、会務を掌理する業務に従事していた被告人Bが起訴された、業務上過失致死被告事件において、本件溺水事故が発生した原因は、従前に採られていた監視態勢すら採られず、成人スタッフが児童らを引率して集団行動すべきであるのにこれを分散させた結果、監視する成人スタッフが誰1人としていない状況下で児童らに川遊びをさせたことにほぼ尽きると考えるのが相当であり、高度な結果回避義務を被告人A、Bの両名に負担させることは相当とはいえないとした上で、被告人Aについては、被告人Bを補佐する立場にとどまっていたと考えるのが相当であるとして、無罪を言い渡し、被告人Bについては、上記注意義務に反して監視・救助態勢を採らないまま川遊びプログラムを開始し、その結果、被害児童が溺水したため、被告人Bが責任を負うことは明らかであるとし、本件事案の性質・内容などに照らし、罰金70万円に処した事例。
2017.07.11
業務上過失致死被告事件 
LEX/DB25545946/佐賀地方裁判所 平成29年 5月29日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第3号
夏休みイベント企画の川遊び中に8歳の児童が川の深みで溺れ、死亡した事故に関し、α市産業部観光課課長であり、同課に設置され、住民参加型の各種体験イベントを開催するなどの業務を行うαグリーン・ツーリズム推進協議会事務局の事務局長である被告人Aと、同課副課長兼グリーン・ツーリズム推進係長である被告人Bと、同課グリーン・ツーリズム推進係員であり、同協議会に関する業務の主査兼同協議会の事務局員として、同協議会の事務を処理する業務に従事していた被告人Cが起訴された、業務上過失致死被告事件において、従前に採られていた監視態勢すら採られず、成人スタッフが児童らを引率して集団行動すべきであるのにこれを分散させた結果、監視する成人スタッフが誰1人としていない状況下で児童らに川遊びをさせたことにほぼ尽きると考えるのが相当であり、高度な結果回避義務を被告人A、B、Cに負担させることは相当とはいえないとした上で、被告人Cは、市役所の職員として、川遊びという危険性を伴う本件キャンプに継続して関わっていたものであるから、業務性が認められることは明らかであるとし、被告人Cについては、罰金40万円に処し、被告人A、及び被告人Bについては、ともに過失責任を問うことはできないとし、無罪を言い渡した事例。