注目の判例

刑法

2019.03.19
準強制わいせつ被告事件(医師無罪:患者にわいせつ 患者麻酔で幻覚の可能性) new
LEX/DB25562276/東京地方裁判所 平成31年 2月20日 判決 (第一審)/平成28年(刑わ)第2019号
特定医療法人財団病院に非常勤の外科医として勤務する被告人が、執刀した右乳腺腫瘍摘出手術の患者であるAが同手術後の診察を受けるものと誤信して抗拒不能状態にあることを利用し、同人にわいせつな行為をしようと考え、病室ベッド上に横たわる同人に対し、その着衣をめくって左乳房を露出させた上、その左乳首を舐めるなどし、同人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をしたとして起訴された事案において、Aは麻酔覚醒時のせん妄の影響を受けていた可能性があることなどからすれば、その証言の信用性には疑問を差し挟むことができ、本件アミラーゼ鑑定及び本件DNA定量検査も、信用性に疑義があり、信用性があると仮定してもその証明力は十分なものとはいえないとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2019.03.05
医師法違反被告事件 
「新・判例解説Watch」憲法分野 解説記事が掲載されました
LEX/DB25561598/大阪高等裁判所 平成30年11月14日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第1117号
被告人は、医師でないのに、平成26年7月6日頃から平成27年3月8日頃までの間、タトゥーショップで、4回にわたり、Aほか2名に対し,針を取り付けた施術用具を用いて前記Aらの左上腕部等の皮膚に色素を注入する医行為を行ったことに対し、医師法31条1項1号、医師法17条を適用し、原判決が罰金15万円に処したため、被告人が控訴した事案において、医師に入れ墨(タトゥー)の施術を独占させ、医師でない者のタトゥー施術業を医師法で禁止することは、非現実的な対処方法というべきであり、そのような医師法の解釈は合理性、妥当性を有しないといわざるを得ないとして、原判決を破棄し、無罪を言い渡した事例。
2019.02.19
各業務上過失致死被告事件
LEX/DB25562101/東京高等裁判所 平成31年 1月23日 判決 (控訴審)
静岡県御殿場市の陸上自衛隊東富士演習場内に存在する入会地の野焼作業に係る業務上過失致死の罪で起訴され、第1審判決は、いずれの被告人についても過失があるとしてその成立を認め、被告人aを禁錮1年、執行猶予3年に、被告人bを禁錮10月、執行猶予3年を言い渡されたため、これに不服の被告人両名が控訴した事案において、被告人両名には、被害者ら3名等による本件着火行為による事故について、予見することができ又は予見すべきであったとも、これを回避すべき義務があったとも認められないから、被告人両名に過失を認めた原判決は、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があり、原判決を破棄し、無罪を言い渡した事例。
2019.02.19
傷害、道路交通法違反被告事件
LEX/DB25562102/大阪地方裁判所 平成31年 1月11日 判決 (第一審)/平成28年(わ)第4499号 等
被告人は、無免許運転で普通乗用自動車を運転し道路交通法違反の事案では罰金30万円を言い渡し、傷害罪について、被告人宅にて、実子であるV(乳児)に対し、その身体を揺さぶるなどの方法により、頭部に衝撃を与える暴行を加え、回復見込みのない意識障害、四肢麻痺等の後遺症を伴う急性硬膜下血腫等の傷害を負わせたとした事案においては、合理的な疑いが残り、揺さぶり行為等の暴行があったことを認定することはできないと判断し、無罪を言い渡した事例。
2019.02.12
詐欺未遂、強盗殺人、死体遺棄被告事件(資産家夫婦強盗殺人事件)
LEX/DB25449952/最高裁判所第二小法廷 平成30年12月21日 判決 (上告審)/平成28年(あ)第543号
被告人が、普通乗用自動車内にいた親交のある資産家夫妻の各頸部にロープを巻いて締め付け、両名を頸部圧迫により窒息死させて殺害した上、長財布等を強奪し、夫婦の各死体を土中に埋没させて遺棄し、強奪したクレジットカードを不正に使用して約381万円相当の新幹線回数券50冊をだまし取ろうとしたが、未遂に終わったという強盗殺人、死体遺棄、詐欺未遂の事実につき、第一審判決が死刑を言い渡し、控訴審判決もこれを維持したため、被告人が上告した事案において、死刑制度については、憲法36条に違反しないとし、量刑については、被告人の刑事責任は極めて重いというほかなく、被告人が死体遺棄及び詐欺未遂の事実を認めていること、被告人に前科がないことなど、被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして是認せざるを得ないとし、上告を棄却した事例。
2018.12.25
詐欺,覚せい剤取締法違反被告事件
LEX/DB25449862/最高裁判所第二小法廷 平成30年12月14日 判決 (上告審)/平成28年(あ)第1808号
第1審判決は、覚せい剤取締法違反の罪(使用)のほか,詐欺罪の犯罪事実を認定し、被告人を懲役2年6月に処したため、被告人が、第1審判決に対して量刑不当を理由に控訴し、原判決は、詐欺の事実につき、職権で判示し、詐欺の故意は認められないとして第1審判決を破棄し、無罪を言い渡したことにより、検察官が上告した事案で、被告人は、捜査段階から、荷物の中身について現金とは思わなかった、インゴット(金地金)、宝石類、他人名義の預金通帳,他人や架空名義で契約された携帯電話機等の可能性を考えたなどと供述するとともに、荷物の中身が詐欺の被害品である可能性を認識していたという趣旨の供述もしており、第1審及び原審で詐欺の公訴事実を認め、被告人の供述全体をみても、自白供述の信用性を疑わせる事情はない。それ以外に詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情も見当たらないとし、被告人は自己の行為が詐欺に当たるかもしれないと認識しながら荷物を受領したと認められ、詐欺の故意に欠けるところはなく、共犯者らとの共謀も認められる。それにもかかわらず、これらを認めた第1審判決に事実誤認があるとしてこれを破棄した原判決は、詐欺の故意を推認させる外形的事実及び被告人の供述の信用性に関する評価を誤り、重大な事実誤認をしたというべきであり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであって,原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められ、原判決を破棄し、訴訟記録に基づいて検討すると、被告人を懲役2年6月に処した量刑判断を含め、第1審判決を維持し、被告人の控訴を棄却した事例。
2018.12.25
覚せい剤取締法違反、詐欺未遂、詐欺被告事件 
LEX/DB25449854/最高裁判所第三小法廷 平成30年12月11日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第44号
覚せい剤取締法違反の罪(使用・所持)、詐欺並びに詐欺未遂事件につき、第1審判決は、被告人を懲役4年6月に処したため、被告人が事実誤認を理由に控訴し、原判決は、第1審判決を破棄し、無罪を言い渡した。このため、検察官が上告した事案で、被告人は、Gの指示を受けてマンションの空室に赴き,そこに配達される荷物を名宛人になりすまして受け取り、回収役に渡すなどし、加えて、被告人は、異なる場所で異なる名宛人になりすまして同様の受領行為を多数回繰り返し、1回につき約1万円の報酬等を受け取っており、被告人自身、犯罪行為に加担していると認識していたことを自認していることから、荷物が詐欺を含む犯罪に基づき送付されたことを十分に想起させるものであり、本件の手口が報道等により広く社会に周知されている状況の有無にかかわらず、それ自体から、被告人は自己の行為が詐欺に当たる可能性を認識していたことを強く推認させるものといえ、原判決のいうような能力がなければ詐欺の可能性を想起できないとするのは不合理であって是認できないとし、原判決が第1審判決を不当とする理由として指摘する論理則、経験則等は、いずれも本件詐欺の故意を推認するについて必要なものとはいえず、また、適切なものともいい難いとし、そして、被告人は、荷物の中身が拳銃や薬物だと思っていた旨供述するが、荷物の中身が拳銃や薬物であることを確認したわけでもなく、詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情は見当たらず、被告人は、自己の行為が詐欺に当たるかもしれないと認識しながら荷物を受領したと認められ、詐欺の故意に欠けるところはなく、共犯者らとの共謀も認められ、原判決が第1審判決の故意の推認過程に飛躍があり、被告人の詐欺の故意を認定することができないとした点には、第1審判決が摘示した間接事実相互の関係や故意の推認過程に関する判断を誤ったことによる事実誤認があるとして、原判決を破棄し、第1審判決の事実誤認を主張する被告人の控訴は理由がないことに帰するとして、控訴を棄却した事例。
2018.12.25
傷害致死被告事件
LEX/DB25561710/大阪地方裁判所 平成30年11月20日 判決 (第一審)/平成29年(わ)第3167号
被告人は、平成28年10月3日午後1時30分頃から同日午後1時59分頃までの間、被告人宅で、次男(当時生後約1か月半)が泣きやまないことにいら立ち、その頭部を複数回揺さぶるなどの暴行を加え、同人に急性硬膜下血腫、くも膜下出血及び左右多発性眼底出血等の傷害を負わせ、病院において、同月15日午後2時47分頃、前記傷害に基づく蘇生後脳症により死亡させたとして傷害致死罪で起訴された事案で、被告人が午後1時30分頃の妻の外出後の状況につき、公判廷で本件当日にした供述と異なる内容の供述をしていることなどその他の事情を踏まえても(なお、午後1時30分頃の妻の外出時までに受傷をうかがわせる事情がなかったといえるかについては、必ずしも明らかでないと判断した。)、被告人が公訴事実記載の犯行に及んだことについて、常識に照らして間違いないといえるほどの立証がされているとはいえないとし、被告人に無罪を言い渡した事例。
2018.11.13
危険運転致死傷,道路交通法違反被告事件
LEX/DB25449766/最高裁判所第二小法廷 平成30年10月23日 決定 (上告審)/平成29年(あ)第927号
被告人は、夜間、片側2車線道路で、第1車線を進行するA運転の普通乗用自動車(A車)のすぐ後方の第2車線を、普通貨物自動車(被告人車)を運転して追走し、信号機により交通整理が行われている交差点を2台で直進するに当たり、互いの自動車の速度を競うように高速度で走行するため、本件交差点に設置された対面信号機の表示を意に介することなく、本件信号機が赤色を表示していたとしてもこれを無視して進行しようと考え、Aと共謀の上、本件信号機が約32秒前から赤色を表示していたのに、いずれもこれを殊更に無視し、Aが、重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約111kmで本件交差点内にA車を進入させ、その直後に、被告人が、重大な交通の危険を生じさせる速度である時速100kmを超える速度で本件交差点内に被告人車を進入させたことにより、左方道路から信号に従い進行してきたB運転の普通貨物自動車(C、D、E及びF同乗)にAがA車を衝突させて、C及びDを車外に放出させて路上に転倒させた上、被告人が被告人車でDをれき跨し、そのまま車底部で引きずるなどし、B、C、D及びEを死亡させ、Fに加療期間不明のびまん性軸索損傷及び頭蓋底骨折等の傷害を負わせた事故につき、第1審判決は、被告人及びAに対しそれぞれ懲役23年を言い渡したため、被告人両名が控訴し、控訴審判決は、被告人及びAが、いずれも、本件信号機の赤色表示を確定的に認識し、又はそもそも信号機による交通規制に従うつもりがなくその赤色表示を意に介することなく、自車を本件交差点に進入させたものとして、自動車運転処罰法2条5号にいう赤色信号を「殊更に無視し」たことが推認できるとした上、被告人及びAは、本件交差点に至るに先立ち、赤色信号を殊更に無視する意思で両車が本件交差点に進入することを相互に認識し合い、そのような意思を暗黙に相通じて共謀を遂げた上、各自が高速度による走行を継続して本件交差点に進入し、危険運転の実行行為に及んだことが、優に肯認できるとして、A車との衝突のみによって生じたB、C、E及びFに対する死傷結果を含む危険運転致死傷罪の共同正犯の犯罪事実を認定した第1審判決を是認し、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案で、被告人とAは、赤色信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する意思を暗黙に相通じた上、共同して危険運転行為を行ったものといえるとし、被告人には、A車による死傷の結果も含め、自動車運転処罰法2条5号の危険運転致死傷罪の共同正犯が成立するとし、危険運転致死傷罪の共同正犯の成立を認めた第1審判決を是認した控訴審判決の判断は正当であるとし、本件上告を棄却した事例。
2018.11.13
住居侵入、強盗殺人、強盗殺人未遂、窃盗被告事件(愛知一家強盗殺傷事件)
LEX/DB25449775/最高裁判所第一小法廷 平成30年 9月 6日 判決 (上告審)/平成27年(あ)第1585号
被告人が、(1)窃盗事件を起こして検察官から罰金刑に処せられる見込みである旨告げられて、罰金の支払に充てる資金を犯罪によって手に入れようと考え、金品窃取の目的で、A方に侵入して物色中、Aに発見されるや、金品を強取することを決意し、A(当時57歳)をモンキーレンチで殴打するなどして殺害し、Aの二男B(当時26歳)を包丁で突き刺すなどして殺害し、その後帰宅したAの三男C(当時25歳)をクラフトナイフで突き刺すなどして殺害しようとしたが、死亡させるに至らず、その際、金品を強取したという住居侵入、強盗殺人、強盗殺人未遂のほか、(2)携帯電話機や普通乗用自動車を窃取したという窃盗2件から成る事案の上告審において、上記(1)の犯行前は前科がなかったことなど、被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても、被告人を死刑に処した第1審判決を維持した控訴審の判断を是認せざるを得ないとして、本件上告を棄却した事例。
2018.09.18
住居侵入、強盗致傷被告事件
LEX/DB25560107/東京高等裁判所 平成29年11月 2日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第651号
被告人が、妻の母である被害者方に押し入って、同人(当時78歳)に暴行脅迫を加えて、同人の犯行を抑圧し、同人所有又は管理の現金等を強取したなどとされた、住居侵入、強盗致傷被告事件の控訴審において、本件の証拠構造上、犯人と被告人の同一性に関する最も重要な証拠であると認められるP8鑑定の科学的原理やその理論的正当性、更に具体的な分析内容の客観性・信頼性に関する判断材料が不十分であることからすると、原審としては、P8鑑定及びP8証言の信用性を判断するために、検察官に対してその信用性に関して釈明を求めたり、必要な証拠調べを実施したりして、専門的な知見を得る必要があったというべきであるとして、原審の手続には審理不尽の違法があり、その点が判決に影響を及ぼす蓋然性があることを直ちに否定することはできないなどとして、原判決を破棄して、本件を東京地方裁判所に差し戻した事例。
2018.07.24
強盗殺人被告事件
LEX/DB25449578/最高裁判所第二小法廷 平成30年 7月13日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第837号
被告人は、本件ホテル新館2階事務所で、金品を物色するなどしていたところ、同ホテル支配人(当時54歳)に発見されたことから、金品を強取しようと考え、同人に対し、殺意をもって、その頭部を壁面に衝突させ、頸部をひも様のもので絞め付けるなどしてその反抗を抑圧し、同所にあった同人管理の現金約43万2910円を強取し、その際、前記暴行により、同人に遷延性意識障害を伴う右側頭骨骨折、脳挫傷、硬膜下血腫等の傷害を負わせ、前記遷延性意識障害による敗血症に起因する多臓器不全により、入院中の病院で死亡させて殺害したとする事件で、第1審判決は、被告人を本件の犯人と認定した上で、強盗の故意を否定して殺人罪及び現金約26万8000円の窃盗罪を認定し、被告人を懲役18年に処したところ、被告人と検察官の双方が控訴し、第2審判決は、被告人が犯人であることを示す事情は、被告人に犯行の機会があったということしかなく、犯罪の証明が十分ではないとして、第1審判決を事実誤認により破棄し、被告人を無罪とした。これに不服の検察官が上告した事案において、原判決は、全体として、第1審判決の説示を分断して個別に検討するのみで、情況証拠によって認められる一定の推認力を有する間接事実の総合評価という観点からの検討を欠いており、第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものと評価することはできないとし、第1審判決に事実誤認があるとした原判断には刑事訴訟法382条の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、本件を高等裁判所に差し戻した事例。
2018.07.10
強姦未遂、強姦、強制わいせつ被告事件
LEX/DB25449552/最高裁判所第一小法廷 平成30年 6月26日 決定 (上告審)/平成29年(あ)第530号
被告人が経営するマッサージ店で敢行された、アロママッサージを受けに来た女性合計4名に対する強姦1件及び強制わいせつ3件のほか、被告人からアロマに関する指導を受けていた女性に対する強姦未遂で起訴された被告人が、暴行及び脅迫、被害者の同意、強姦又は強制わいせつの犯意を争い、第1審判決は、全事件が有罪であるとして懲役11年を言い渡し、控訴審判決も、強姦罪の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとは認められないなどとし、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案において、被告人は、本件強姦1件及び強制わいせつ3件の犯行の様子を被害者に気付かれないように撮影しデジタルビデオカセット4本に録画し、被告人がこのような隠し撮りをしたのは、被害者にそれぞれその犯行の様子を撮影録画したことを知らせて、捜査機関に被告人の処罰を求めることを断念させ、刑事責任の追及を免れようとしたためであるとし、さらに、本件デジタルビデオカセットは、刑法19条1項2号にいう「犯罪行為の用に供した物」に該当し、没収することができるとして、上告を棄却した事例。
2018.07.03
覚せい剤取締法違反、建造物等以外放火、非現住建造物等放火未遂、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反、窃盗被告事件
「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 9月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25560354/さいたま地方裁判所 平成30年 5月10日 判決 (第一審)/平成28年(わ)第1038号 等
暴力団関係者との交友関係のある被告人の覚せい剤取締法違反、窃盗の罪においては、被告人が所持していた覚せい剤は6グラム以上と多量である上、被告人は18歳頃から断続的に覚せい剤を使用してきたものであり、覚せい剤に対する常習性、親和性は高いとし、また、窃盗の点をみると,被告人は第三者に指示されるがままに自動車を窃取したものであり,被害額は110万円以上と高額であり、被害結果は重大であるなどとし、懲役2年に処したが、建造物等以外放火、非現住建造物等放火未遂及び火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反の各罪においては、検察官が証拠とした本件撮影(〔1〕平成27年10月4日から平成28年5月19日までの間、被告人方近隣の私人管理場所の中にビデオカメラを設置し、データを保存する外付けハードディスクの交換時を除いて24時間連続で撮影を行ったこと、〔2〕撮影範囲は、主に被告人方前の公道及び被告人方玄関であったが,被告人方玄関ドアが開いた際には、ドアの内部の様子が映り込んでおり、ドアの内部の様子が撮影されていた時間が連続約25分間に及ぶこともあったこと、〔3〕警察官は,外付けハードディスクを交換した後,人や車の動きのある部分をパソコンにダウンロードして保存しており,この際明らかに無関係な郵便配達人等の映像は除いていたが,事件と関係のない人や車等の映像でも残されていたものがあった)が、類型的に強制処分に当たるとまではいえないものの、少なくとも平成28年の初め頃以降はその撮影の必要性が相当程度低下していたことは明らかで、それにもかかわらず長期間にわたって撮影を継続したこと自体不適切であった上、しかも本件撮影方法は他の類似事案と比べるとプライバシー侵害の程度が高いものであったと評価できることを考慮すれば、本件放火事件当時の撮影は、任意捜査として相当と認められる範囲を逸脱した違法なものであったと認められるとし、被告人に無罪を言い渡した事例。
2018.07.03
各業務上過失致死被告事件
(保守管理会社の担当者 逆転無罪、シンドラーエレベータ事故 東京高裁)
LEX/DB25560511/東京高等裁判所 平成30年 3月14日 判決 (控訴審)/平成27年(う)第2179号
本件事故当時、被告人P1(エレベーター等保守管理会社の代表取締役)及び被告人P2(同社専務取締役)、被告人P3(同社メンテナンス部長)らをして、当該エレベーターの保守点検を実施させる体制を採るべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、そのような体制を採らず、エレベーター等保守管理会社がP5の管理を委託された財団法人からP5に設置されたエレベーターの保守点検業務を受託した際、その構造を把握できていないと思われる機種であるにもかかわらず、被告人P3らをして上記調査等を行わせず、同社保守点検員にその保守点検方法等を十分に理解させないまま、その保守点検を開始・実施させ、また、被告人P3は、エレベーターの保守点検を点検員に実施させるに当たり、その保守点検方法等につき十分な調査を行い、その調査結果に基づいて保守点検項目等を策定するとともに、点検員にその保守点検方法等に関して必要な情報を与え、それらを十分理解させた上、その保守点検を実施させるべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、上記調査等を行わず、約2か月後の平成18年5月25日に、5号機のかごが停止してかご及び乗降口が開いた際、ライニングの摩耗の進行によりプランジャーストロークが限界値に達していたため、かごの静止状態を保持することができず、かご及び乗降口の各扉が開いたままかごが上昇し、被害者をかごの床面と乗降口の外枠に挟ませて死亡させたとする事案の控訴審において、原判決の判断は、遅くとも平成18年5月25日時点で本件ライニングに異常摩耗が発生、進行していて、その日の定期点検で、点検員がそのことに気付くなどして本件事故を回避することができたことを前提として、被告人らの過失を認定しているものであるが、本件ライニングの異常摩耗の発生時期を推認させるとした事実の認定やその推認力の評価を誤るなどした結果、上記時点までに本件ライニングの異常摩耗が発生していたことを認めるに足りる証拠がないのに、その事実を認めて被告人らの過失を認定したものであって,経験則等に照らして不合理であり,是認することはできないとし、被告人らに本件公訴事実の業務上過失致死罪は成立しないと判断し、原判決を破棄し、被告人らに無罪の言渡しをした事例。
2018.06.05
(「性同一性障害」の被害者の胸触った男 控訴棄却)
「新・判例解説Watch」刑法分野 9月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25549755/大阪高等裁判所 平成30年 1月31日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第1032号
被告人が、深夜、神戸市内の飲食店で、一人で飲食していたところ、被害者(戸籍上は男性であるが、性同一性障害との診断を受け、本件時も長髪で女性用の衣服を身に着けるなど一見すると女性に見える姿をしていた。)も被告人の知人女性に連れられて同店を訪れ、はじめは被告人とは離れた席に座ったが、知人女性のすすめもあって被告人の隣の席に座り、被告人と被害者は話をするなどし、その際、被告人が、被害者の膨らんだ胸部を着衣の上からつかんだか否かが問題となっている兵庫県迷惑防止条例違反の事件で、原判決は、被告人に対し、同条例違反の成立を認めたため、被告人が事実誤認及び法令適用の誤りであるとして控訴した事案において、原判決は、基本的に被害者の証言の信用性を認め、これと整合しない被告人供述は採用できないとしてその信用性を否定しており、そのような原判決の判断や判断方法に誤りはないから、被告人の供述が信用できないという結論は揺るがないとした上で事実誤認はないとし、また、原判示の被告人の行為が、「人に対して、不安を覚えさせるような」行為に該当するのは明らかであり、原判決の法令の適用に誤りはないとして、控訴を棄却した事例。
2018.05.22
邸宅侵入、公然わいせつ被告事件
LEX/DB25449452/最高裁判所第一小法廷 平成30年 5月10日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第882号
被告人は、正当な理由がないのに、他人が看守するマンションに、1階オートロック式の出入口から住人に追従して侵入し、1階通路で、不特定多数の者が容易に認識し得る状態で、自己の陰茎を露出して手淫し、引き続き、2階通路で、同様の状態で、自己の陰茎を露出して手淫した上、射精し、公然とわいせつな行為をしたとした事件で、被告人は犯人との同一性を争ったが、第1審判決は、本件現場で採取された精液様の遺留物(本件資料)について実施されたDNA型鑑定(鈴木鑑定)を踏まえ、以下のとおり被告人を犯人と認めて、公訴事実どおりの犯罪事実を認定し、被告人を懲役1年に処したため、被告人が事実誤認を理由に控訴し、原判決は、被告人と犯人との同一性については合理的疑いが残るとして、第1審判決を破棄し、被告人に対し無罪を言い渡し、検察官が上告した事案において、原判決が、本件資料は1人分のDNAに由来し、被告人のDNA型と一致する旨の鈴木鑑定の信用性には疑問があるとし、被告人と犯人との同一性を否定したのは、証拠の評価を誤り、ひいては重大な事実の誤認をしたというべきであり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められるとして、原判決を破棄し、本件控訴を棄却した事例。
2018.04.10
(奈良地裁 夫殺害 妻に無罪判決 死体遺棄は有罪)
LEX/DB25549652/奈良地方裁判所 平成30年 2月 5日 判決 (第一審)/平成29年(わ)第62号 等
被告人は、長女のAと共謀の上、奈良県生駒郡の被告人及びA方で、黒色ポリ袋等で覆った被告人の夫であるBの死体を被告人の運転する軽四乗用自動車に積載し、同所から同県吉野郡の道路まで運搬した上、同死体を山林斜面に投棄し、死体を遺棄したとする事案において、被告人とAの間には,死体遺棄についての共謀が認められ、判示事実は優に認定できるとし、懲役1年6月(執行猶予3年)を言い渡し、殺人の点については、被害者の殺害につき、被告人がAと意思を通じ合っていたり、実行者等としてこれに関与した事実を認定することも到底できないとし、無罪を言い渡した事例。
2018.04.03
詐欺未遂被告事件(「受け子」に逆転有罪 最高裁)
LEX/DB25449341/最高裁判所第一小法廷 平成30年 3月22日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第322号
詐欺未遂事件につき、第1審判決は犯罪事実を認定し、詐欺未遂罪に当たるものとして、被告人を懲役2年4月に処したため、被告人が、第1審判決に対して量刑不当を理由に控訴したところ、控訴審判決は、控訴理由に対する判断に先立ち、職権で以下のとおり判示して第1審判決を破棄し、詐欺罪にいう人を欺く行為(欺罔行為)は認められず、本件公訴事実は罪とならないとして、被告人に無罪を言い渡したため、検察官が上告した事案において、本件嘘を一連のものとして被害者に対して述べた段階で、被害者に現金の交付を求める文言を述べていないとしても、詐欺罪の実行の着手があったと認められるとして、刑事訴訟法411条1号により原判決を破棄し、第1審判決は、被告人に対し懲役2年4月に処した量刑判断を含めた内容で維持し、被告人の控訴を棄却した事例(補足意見がある)。
2018.04.03
保護責任者遺棄致死(予備的訴因重過失致死)被告事件(難病長女衰弱死 母親無罪確定へ)
LEX/DB25449335/最高裁判所第二小法廷 平成30年 3月19日 判決 (上告審)/平成28年(あ)第1549号
被告人は、A(平成22年生)の実母であり、Aと養子縁組をした夫と共に親権者として自宅でAを監護していたものであるが、夫と共謀の上、自宅等で、幼年者であり、かつ、先天性ミオパチーにより発育が遅れていたAに十分な栄養を与えるとともに、適切な医療措置を受けさせるなどして生存に必要な保護をする責任があったにもかかわらず、その頃までに栄養不良状態に陥っていたAに対して、十分な栄養を与えることも、適切な医療措置を受けさせるなどのこともせず、その生存に必要な保護をせず、Aを低栄養に基づく衰弱により死亡させたとする事件で、第1審は、被告人が、Aが生存に必要な保護として、より栄養を与えられるなどの保護を必要とする状態にあることを認識していたというには合理的な疑いが残るとして、無罪を言い渡したが、検察官が控訴し、控訴審では、被告人は、上記状態にあるという認識があったと認定でき、第1審判決には事実誤認があるとし、訴訟手続の法令違反の点について判断することなく、第1審を破棄し、地方裁判所に差戻しを命じたが、これに対し、被告人が上告した事案で、控訴審において、重過失致死罪に係る予備的訴因並びに罪名及び罰条追加請求の許可決定がされているが、事後審である控訴審で追加変更された訴因、罰条についての審理、判断は、第1審判決に事実誤認又は法令違反があることを理由に第1審判決が破棄されることを前提として行うべきものであるから、第1審判決に誤りを見いだすことができない本件において、重過失致死罪の予備的訴因を審理、判断することはできないとして、原判決を破棄し、控訴を棄却した事例。