注目の判例

刑法

2018.09.18
住居侵入、強盗致傷被告事件
LEX/DB25560107/東京高等裁判所 平成29年11月 2日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第651号
被告人が、妻の母である被害者方に押し入って、同人(当時78歳)に暴行脅迫を加えて、同人の犯行を抑圧し、同人所有又は管理の現金等を強取したなどとされた、住居侵入、強盗致傷被告事件の控訴審において、本件の証拠構造上、犯人と被告人の同一性に関する最も重要な証拠であると認められるP8鑑定の科学的原理やその理論的正当性、更に具体的な分析内容の客観性・信頼性に関する判断材料が不十分であることからすると、原審としては、P8鑑定及びP8証言の信用性を判断するために、検察官に対してその信用性に関して釈明を求めたり、必要な証拠調べを実施したりして、専門的な知見を得る必要があったというべきであるとして、原審の手続には審理不尽の違法があり、その点が判決に影響を及ぼす蓋然性があることを直ちに否定することはできないなどとして、原判決を破棄して、本件を東京地方裁判所に差し戻した事例。
2018.07.24
強盗殺人被告事件
LEX/DB25449578/最高裁判所第二小法廷 平成30年 7月13日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第837号
被告人は、本件ホテル新館2階事務所で、金品を物色するなどしていたところ、同ホテル支配人(当時54歳)に発見されたことから、金品を強取しようと考え、同人に対し、殺意をもって、その頭部を壁面に衝突させ、頸部をひも様のもので絞め付けるなどしてその反抗を抑圧し、同所にあった同人管理の現金約43万2910円を強取し、その際、前記暴行により、同人に遷延性意識障害を伴う右側頭骨骨折、脳挫傷、硬膜下血腫等の傷害を負わせ、前記遷延性意識障害による敗血症に起因する多臓器不全により、入院中の病院で死亡させて殺害したとする事件で、第1審判決は、被告人を本件の犯人と認定した上で、強盗の故意を否定して殺人罪及び現金約26万8000円の窃盗罪を認定し、被告人を懲役18年に処したところ、被告人と検察官の双方が控訴し、第2審判決は、被告人が犯人であることを示す事情は、被告人に犯行の機会があったということしかなく、犯罪の証明が十分ではないとして、第1審判決を事実誤認により破棄し、被告人を無罪とした。これに不服の検察官が上告した事案において、原判決は、全体として、第1審判決の説示を分断して個別に検討するのみで、情況証拠によって認められる一定の推認力を有する間接事実の総合評価という観点からの検討を欠いており、第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものと評価することはできないとし、第1審判決に事実誤認があるとした原判断には刑事訴訟法382条の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、本件を高等裁判所に差し戻した事例。
2018.07.10
強姦未遂、強姦、強制わいせつ被告事件
LEX/DB25449552/最高裁判所第一小法廷 平成30年 6月26日 決定 (上告審)/平成29年(あ)第530号
被告人が経営するマッサージ店で敢行された、アロママッサージを受けに来た女性合計4名に対する強姦1件及び強制わいせつ3件のほか、被告人からアロマに関する指導を受けていた女性に対する強姦未遂で起訴された被告人が、暴行及び脅迫、被害者の同意、強姦又は強制わいせつの犯意を争い、第1審判決は、全事件が有罪であるとして懲役11年を言い渡し、控訴審判決も、強姦罪の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとは認められないなどとし、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案において、被告人は、本件強姦1件及び強制わいせつ3件の犯行の様子を被害者に気付かれないように撮影しデジタルビデオカセット4本に録画し、被告人がこのような隠し撮りをしたのは、被害者にそれぞれその犯行の様子を撮影録画したことを知らせて、捜査機関に被告人の処罰を求めることを断念させ、刑事責任の追及を免れようとしたためであるとし、さらに、本件デジタルビデオカセットは、刑法19条1項2号にいう「犯罪行為の用に供した物」に該当し、没収することができるとして、上告を棄却した事例。
2018.07.03
覚せい剤取締法違反、建造物等以外放火、非現住建造物等放火未遂、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反、窃盗被告事件
「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 9月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25560354/さいたま地方裁判所 平成30年 5月10日 判決 (第一審)/平成28年(わ)第1038号 等
暴力団関係者との交友関係のある被告人の覚せい剤取締法違反、窃盗の罪においては、被告人が所持していた覚せい剤は6グラム以上と多量である上、被告人は18歳頃から断続的に覚せい剤を使用してきたものであり、覚せい剤に対する常習性、親和性は高いとし、また、窃盗の点をみると,被告人は第三者に指示されるがままに自動車を窃取したものであり,被害額は110万円以上と高額であり、被害結果は重大であるなどとし、懲役2年に処したが、建造物等以外放火、非現住建造物等放火未遂及び火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反の各罪においては、検察官が証拠とした本件撮影(〔1〕平成27年10月4日から平成28年5月19日までの間、被告人方近隣の私人管理場所の中にビデオカメラを設置し、データを保存する外付けハードディスクの交換時を除いて24時間連続で撮影を行ったこと、〔2〕撮影範囲は、主に被告人方前の公道及び被告人方玄関であったが,被告人方玄関ドアが開いた際には、ドアの内部の様子が映り込んでおり、ドアの内部の様子が撮影されていた時間が連続約25分間に及ぶこともあったこと、〔3〕警察官は,外付けハードディスクを交換した後,人や車の動きのある部分をパソコンにダウンロードして保存しており,この際明らかに無関係な郵便配達人等の映像は除いていたが,事件と関係のない人や車等の映像でも残されていたものがあった)が、類型的に強制処分に当たるとまではいえないものの、少なくとも平成28年の初め頃以降はその撮影の必要性が相当程度低下していたことは明らかで、それにもかかわらず長期間にわたって撮影を継続したこと自体不適切であった上、しかも本件撮影方法は他の類似事案と比べるとプライバシー侵害の程度が高いものであったと評価できることを考慮すれば、本件放火事件当時の撮影は、任意捜査として相当と認められる範囲を逸脱した違法なものであったと認められるとし、被告人に無罪を言い渡した事例。
2018.07.03
各業務上過失致死被告事件
(保守管理会社の担当者 逆転無罪、シンドラーエレベータ事故 東京高裁)
LEX/DB25560511/東京高等裁判所 平成30年 3月14日 判決 (控訴審)/平成27年(う)第2179号
本件事故当時、被告人P1(エレベーター等保守管理会社の代表取締役)及び被告人P2(同社専務取締役)、被告人P3(同社メンテナンス部長)らをして、当該エレベーターの保守点検を実施させる体制を採るべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、そのような体制を採らず、エレベーター等保守管理会社がP5の管理を委託された財団法人からP5に設置されたエレベーターの保守点検業務を受託した際、その構造を把握できていないと思われる機種であるにもかかわらず、被告人P3らをして上記調査等を行わせず、同社保守点検員にその保守点検方法等を十分に理解させないまま、その保守点検を開始・実施させ、また、被告人P3は、エレベーターの保守点検を点検員に実施させるに当たり、その保守点検方法等につき十分な調査を行い、その調査結果に基づいて保守点検項目等を策定するとともに、点検員にその保守点検方法等に関して必要な情報を与え、それらを十分理解させた上、その保守点検を実施させるべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、上記調査等を行わず、約2か月後の平成18年5月25日に、5号機のかごが停止してかご及び乗降口が開いた際、ライニングの摩耗の進行によりプランジャーストロークが限界値に達していたため、かごの静止状態を保持することができず、かご及び乗降口の各扉が開いたままかごが上昇し、被害者をかごの床面と乗降口の外枠に挟ませて死亡させたとする事案の控訴審において、原判決の判断は、遅くとも平成18年5月25日時点で本件ライニングに異常摩耗が発生、進行していて、その日の定期点検で、点検員がそのことに気付くなどして本件事故を回避することができたことを前提として、被告人らの過失を認定しているものであるが、本件ライニングの異常摩耗の発生時期を推認させるとした事実の認定やその推認力の評価を誤るなどした結果、上記時点までに本件ライニングの異常摩耗が発生していたことを認めるに足りる証拠がないのに、その事実を認めて被告人らの過失を認定したものであって,経験則等に照らして不合理であり,是認することはできないとし、被告人らに本件公訴事実の業務上過失致死罪は成立しないと判断し、原判決を破棄し、被告人らに無罪の言渡しをした事例。
2018.06.05
(「性同一性障害」の被害者の胸触った男 控訴棄却)
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LEX/DB25549755/大阪高等裁判所 平成30年 1月31日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第1032号
被告人が、深夜、神戸市内の飲食店で、一人で飲食していたところ、被害者(戸籍上は男性であるが、性同一性障害との診断を受け、本件時も長髪で女性用の衣服を身に着けるなど一見すると女性に見える姿をしていた。)も被告人の知人女性に連れられて同店を訪れ、はじめは被告人とは離れた席に座ったが、知人女性のすすめもあって被告人の隣の席に座り、被告人と被害者は話をするなどし、その際、被告人が、被害者の膨らんだ胸部を着衣の上からつかんだか否かが問題となっている兵庫県迷惑防止条例違反の事件で、原判決は、被告人に対し、同条例違反の成立を認めたため、被告人が事実誤認及び法令適用の誤りであるとして控訴した事案において、原判決は、基本的に被害者の証言の信用性を認め、これと整合しない被告人供述は採用できないとしてその信用性を否定しており、そのような原判決の判断や判断方法に誤りはないから、被告人の供述が信用できないという結論は揺るがないとした上で事実誤認はないとし、また、原判示の被告人の行為が、「人に対して、不安を覚えさせるような」行為に該当するのは明らかであり、原判決の法令の適用に誤りはないとして、控訴を棄却した事例。
2018.05.22
邸宅侵入、公然わいせつ被告事件
LEX/DB25449452/最高裁判所第一小法廷 平成30年 5月10日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第882号
被告人は、正当な理由がないのに、他人が看守するマンションに、1階オートロック式の出入口から住人に追従して侵入し、1階通路で、不特定多数の者が容易に認識し得る状態で、自己の陰茎を露出して手淫し、引き続き、2階通路で、同様の状態で、自己の陰茎を露出して手淫した上、射精し、公然とわいせつな行為をしたとした事件で、被告人は犯人との同一性を争ったが、第1審判決は、本件現場で採取された精液様の遺留物(本件資料)について実施されたDNA型鑑定(鈴木鑑定)を踏まえ、以下のとおり被告人を犯人と認めて、公訴事実どおりの犯罪事実を認定し、被告人を懲役1年に処したため、被告人が事実誤認を理由に控訴し、原判決は、被告人と犯人との同一性については合理的疑いが残るとして、第1審判決を破棄し、被告人に対し無罪を言い渡し、検察官が上告した事案において、原判決が、本件資料は1人分のDNAに由来し、被告人のDNA型と一致する旨の鈴木鑑定の信用性には疑問があるとし、被告人と犯人との同一性を否定したのは、証拠の評価を誤り、ひいては重大な事実の誤認をしたというべきであり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められるとして、原判決を破棄し、本件控訴を棄却した事例。
2018.04.10
(奈良地裁 夫殺害 妻に無罪判決 死体遺棄は有罪)
LEX/DB25549652/奈良地方裁判所 平成30年 2月 5日 判決 (第一審)/平成29年(わ)第62号 等
被告人は、長女のAと共謀の上、奈良県生駒郡の被告人及びA方で、黒色ポリ袋等で覆った被告人の夫であるBの死体を被告人の運転する軽四乗用自動車に積載し、同所から同県吉野郡の道路まで運搬した上、同死体を山林斜面に投棄し、死体を遺棄したとする事案において、被告人とAの間には,死体遺棄についての共謀が認められ、判示事実は優に認定できるとし、懲役1年6月(執行猶予3年)を言い渡し、殺人の点については、被害者の殺害につき、被告人がAと意思を通じ合っていたり、実行者等としてこれに関与した事実を認定することも到底できないとし、無罪を言い渡した事例。
2018.04.03
詐欺未遂被告事件(「受け子」に逆転有罪 最高裁)
LEX/DB25449341/最高裁判所第一小法廷 平成30年 3月22日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第322号
詐欺未遂事件につき、第1審判決は犯罪事実を認定し、詐欺未遂罪に当たるものとして、被告人を懲役2年4月に処したため、被告人が、第1審判決に対して量刑不当を理由に控訴したところ、控訴審判決は、控訴理由に対する判断に先立ち、職権で以下のとおり判示して第1審判決を破棄し、詐欺罪にいう人を欺く行為(欺罔行為)は認められず、本件公訴事実は罪とならないとして、被告人に無罪を言い渡したため、検察官が上告した事案において、本件嘘を一連のものとして被害者に対して述べた段階で、被害者に現金の交付を求める文言を述べていないとしても、詐欺罪の実行の着手があったと認められるとして、刑事訴訟法411条1号により原判決を破棄し、第1審判決は、被告人に対し懲役2年4月に処した量刑判断を含めた内容で維持し、被告人の控訴を棄却した事例(補足意見がある)。
2018.04.03
保護責任者遺棄致死(予備的訴因重過失致死)被告事件(難病長女衰弱死 母親無罪確定へ)
LEX/DB25449335/最高裁判所第二小法廷 平成30年 3月19日 判決 (上告審)/平成28年(あ)第1549号
被告人は、A(平成22年生)の実母であり、Aと養子縁組をした夫と共に親権者として自宅でAを監護していたものであるが、夫と共謀の上、自宅等で、幼年者であり、かつ、先天性ミオパチーにより発育が遅れていたAに十分な栄養を与えるとともに、適切な医療措置を受けさせるなどして生存に必要な保護をする責任があったにもかかわらず、その頃までに栄養不良状態に陥っていたAに対して、十分な栄養を与えることも、適切な医療措置を受けさせるなどのこともせず、その生存に必要な保護をせず、Aを低栄養に基づく衰弱により死亡させたとする事件で、第1審は、被告人が、Aが生存に必要な保護として、より栄養を与えられるなどの保護を必要とする状態にあることを認識していたというには合理的な疑いが残るとして、無罪を言い渡したが、検察官が控訴し、控訴審では、被告人は、上記状態にあるという認識があったと認定でき、第1審判決には事実誤認があるとし、訴訟手続の法令違反の点について判断することなく、第1審を破棄し、地方裁判所に差戻しを命じたが、これに対し、被告人が上告した事案で、控訴審において、重過失致死罪に係る予備的訴因並びに罪名及び罰条追加請求の許可決定がされているが、事後審である控訴審で追加変更された訴因、罰条についての審理、判断は、第1審判決に事実誤認又は法令違反があることを理由に第1審判決が破棄されることを前提として行うべきものであるから、第1審判決に誤りを見いだすことができない本件において、重過失致死罪の予備的訴因を審理、判断することはできないとして、原判決を破棄し、控訴を棄却した事例。
2018.04.03
傷害致死被告事件
LEX/DB25449344/最高裁判所第一小法廷 平成30年 2月26日 決定 (上告審)/平成28年(あ)第1869号
傷害致死被告事件につき、原判決が理由中で、訴因外の被告人の妻との傷害致死の共同正犯が成立するとしたことは、原審では当事者双方とも共同正犯の成立を主張せず、被告人に対する不意打ちを防止するための措置も何ら採られていないなどの本件事案の下では是認できないとし、訴因どおりに傷害致死の単独犯を認定して被告人を懲役9年に処した第1審判決は相当と認められ、控訴を棄却した原判決の結論に誤りはないとし、本件上告を棄却した事例。
2018.03.27
常習累犯窃盗被告事件
LEX/DB25549505/福島地方裁判所郡山支部 平成30年 1月31日 判決 (第一審)/平成27年(わ)第230号
被告人は、福島県郡山市内の店舗で、同店の牛肉2パック等9点(販売価格合計2740円)を窃取し(本件犯行1)、盗犯等の防止及び処分に関する法律3条、2条、刑法235条に該当するとして、起訴されたところ、保釈中に同系列の別店舗で、ホットケーキ1袋等9点(販売価格合計1936円)を窃取したため(本件犯行2)、起訴状記載の訴因が本件犯行2の公訴事実を追加する内容に変更された事案において、本件犯行1の当時、被告人は自閉症スペクトラム障害(ASD)及び強迫性障害(OCD)と診断されるが、被告人の判断能力や行動制御能力の低下を疑うべき事情はないとしつつ、本件犯行2の当時、被告人は、他の特定される解離性障害-ストレスの強い出来事に対する急性解離反応(OSDD)により心神喪失の状態にあったとの合理的な疑いが残るので、犯罪の証明がないが、この点は本件犯行1と一罪の関係にあるとして訴因変更請求がされたものと認められるから、主文において特に無罪の言渡しをせず、量刑理由として、鑑定人が、被告人の再犯防止のためにはASDに対する治療や、ホームヘルプなどの社会での支援システムを用いることが効果的であると示唆しており、被告人が今後、再犯に及ばないために治療や支援利用への強い意欲を示していることなど、酌むべき事情もあるので、治療及び支援の開始が可能な範囲で早期に行われるのが相当であるとし、求刑懲役3年に対し、被告人を懲役1年8月(未決勾留日数中540日をその刑に算入)に処した事例。
2018.02.20
窃盗,強盗殺人,住居侵入被告事件(大阪ドラム缶遺体事件)
LEX/DB25449223/最高裁判所第三小法廷 平成29年12月 8日 判決 (上告審)/平成27年(あ)第120号
被告人が、被害者夫婦方敷地に金品奪取目的で赴き、同夫婦を殺害し、金品を奪取し、強盗殺人の後に、被害者らの死体をドラム缶内に隠匿して放置し続けたとして、被告人に対し、第1審判決、控訴審判決とともに、死刑を言い渡したため、被告人が上告した事案において、量刑判断の中心となる強盗殺人の犯行は、被告人が、以前関わった居宅等工事の関係で生活状況を把握していた高齢の被害者夫婦の財産を狙って、200万円を超える金品を奪い、その機会に被害者両名の頭部をいずれも重量のある鈍器で殴打するなどし、短時間のうちに絶命させたというもので、その殺害態様は冷酷かつ悪質で、強固な殺意が認められる上、犯行の利欲性も高く、何らの落ち度も認められない2名の生命を奪ったという結果は重大であるなどとして、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして、上告を棄却した事例。
2018.01.16
傷害、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
LEX/DB25548218/仙台高等裁判所 平成29年10月31日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第130号
被告人が、〔1〕駅のプラットホームにおいて、見知らぬ女性の背後から千枚通し様の先端が鋭利な凶器でその背中を1回突き刺して傷害を負わせたといういわゆる通り魔的な傷害の事案、及び〔2〕折りたたみ式ナイフ2本をトートバッグ内に入れて携帯したという銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案の控訴審において、被告人は、本件犯行当時、広汎性発達障害の影響を受けてはいたもののその影響は大きいものではなく、善悪を判断する能力や自己の行動を制御する能力が著しく低下していたとはいえないから、完全責任能力を有していたと認められ、原判決に事実の誤認はなく、また、広汎性発達障害に罹患しており、行動の前の緩衝材ともいえる想像力や共感性の欠如が傷害の犯行に影響を与えていた可能性があることなどの原判決が説示するところの酌むべき事情や、その他所論が主張するところを十分考慮しても、本件は刑の執行を猶予するのが相当な事案であるとはいえず、被告人を懲役3年6月に処した原判決の量刑は刑期の点も含めて相当であって、これが重過ぎて不当であるとはいえないとして、被告人の控訴を棄却した事例。
2018.01.09
殺人未遂幇助被告事件
LEX/DB25449154/最高裁判所第一小法廷 平成29年12月25日 決定 (上告審)/平成28年(あ)第137号
オウム真理教による平成7年の東京都庁郵便小包爆破事件に関与したとして、元信徒の被告人が、殺人未遂と爆発物取締罰則違反の幇助罪に問われたところ、第1審判決は、爆発物製造及び爆発物使用の罪については幇助の意思が認められないから、その幇助罪は成立せず、殺人未遂罪については、幇助の意思が認められ、同罪の幇助罪が成立するとして、被告人に対し懲役5年に処したが、原判決は、被告人が本件当時、本件殺人未遂幇助の意思を有していたとの原判決の認定は、経験則、論理則に反する不合理な推論に基づくものであり、原判決の認定した幇助行為を被告人が行った際、正犯者らが人を殺傷するテロ行為を行うことを認識してこれを幇助したものと認めるにはなお合理的な疑いが残るといわざるを得ず、第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとして、第1審判決を破棄し、被告人に対し無罪を言い渡したため、検察官が上告した事案において、原判決は、間接事実からの推論の過程が説得的でないなどとして、第1審判決が説示する間接事実の積み重ねによって殺人未遂幇助の意思を認定することはできないとしたものであり、第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があり、控訴審で破棄を免れないものであったことに照らすと、第1審判決を破棄し,被告人に対し無罪の言渡しをした原判断は、結論において是認することができるとして、上告を棄却した事例。
2018.01.09
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による医療の終了の申立て及び退院の許可の申立て各棄却決定に対する各抗告棄却決定に対する再抗告事件
LEX/DB25449158/最高裁判所第一小法廷 平成29年12月25日 決定 (再抗告審)/平成29年(医へ)第20号 等
検察官は、対象者が夫と共に居住していた自宅を焼損したが、その際心神耗弱の状態にあったと認めて公訴を提起しない処分をし、地方裁判所に対し、前記行為を対象行為として対象者について医療観察法33条1項の申立てをし、今後服薬を継続するとともに心理社会的な治療を受けることによりその改善の見込みがあり、対象者に対しては手厚い医療が必要であるなどとし、通院による医療の確保は困難であるとして、対象者に対し、入院による医療を受けさせる旨決定し、その後、原々審に対し、対象者から医療観察法による医療の終了の申立てがされ、翌日には指定入院医療機関の管理者から退院の許可の申立てがあり、各申立てを棄却したが(各原々決定)したため、対象者及び指定入院医療機関の管理者がそれぞれ抗告を申し立てたが、原審は、各原々決定と同旨の判断を示して各抗告を棄却した(各原決定)ため、対象者及び指定入院医療機関の管理者がそれぞれ再抗告を申し立てた事案において、各原々決定には、医療観察法51条1項の解釈適用を誤り、本件意見の合理性・妥当性の審査を尽くすことなくこれを排斥した点で、審理不尽の違法があり、これを維持した各原決定にも同様の違法があるというべきであり、この違法は各原決定に影響を及ぼし、各原決定を取り消さなければ著しく正義に反するものと認められるとして、医療観察法71条2項により、各原決定及び各原々決定を取消し、現在の対象者の状態や治療可能性等に関する審理を尽くした上で同法による医療の終了等の可否を判断させるため、各事件を原々審である地方裁判所に差し戻した事例。
2018.01.09
現住建造物等放火被告事件
LEX/DB25449139/最高裁判所第三小法廷 平成29年12月19日 決定 (上告審)/平成28年(あ)第190号
被告人は,2名が現に住居に使用し、かつ、同人らが現にいる居宅(木造トタン葺平屋建、床面積約115.03平方メートル)に延焼し得ることを認識しながら、上記居宅に隣接した作業場建物の軒下に積み上げられていた段ボールに、ライターで着火して火を放ち、その火を上記居宅に燃え移らせて全焼させ、現住建造物等放火罪で起訴された事案において、第1審判決は、量刑事情として、上記居宅に居住していた2名が逃げ切れず一酸化炭素中毒により死亡したことをも考慮し、被告人を懲役13年に処し、原判決は、第1審判決が、刑の量定に当たり,放火行為から人の死亡結果が生じたことを被告人に不利益に考慮したことは、それ自体不当なところはなく、余罪処罰に当たるようなものでもないなどとして是認したため、被告人が上告した事案において、放火により焼損した居宅内にいた2名が一酸化炭素中毒により死亡しており、これを本件の量刑事情として考慮した第1審判決を是認した原判決に違法はないとして、上告を棄却した事例。
2017.12.26
詐欺未遂被告事件
LEX/DB25449113/最高裁判所第三小法廷 平成29年12月11日 決定 (上告審)/平成29年(あ)第1079号
被告人が、氏名不詳者らと共謀の上、A(当時84歳)をして、違約金を支払えばロト6に必ず当たる特別抽選に参加できる旨誤信させ、現金をだまし取ろうとしたが、警察官に相談したAがうそを見破り、現金が入っていない箱を発送したため、その目的を遂げなかった事案において、第1審判決は、被告人は詐欺未遂罪の共同正犯の罪責を負うとは認められないとして、被告人に対し、無罪を言い渡したため、検察官が控訴し、原判決は、被告人が欺罔行為後の共謀に基づき被害者による財物交付の部分のみに関与したという事実関係を認定し、これを前提として、だまされたふり作戦の開始にかかわらず、被告人については詐欺未遂罪の共同正犯が成立するとし、これを認めなかった第1審判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認があるとして、第1審判決を破棄し、被告人を懲役3年、執行猶予5年に処したため、被告人が上告した事案において、被告人が共犯者らと共謀の上被害者から現金をだまし取ろうとしたとして、共犯者による欺罔行為の点も含めて詐欺未遂罪の共同正犯の成立を認めた原判決は正当であるとして、上告を棄却した事例。
2017.12.12
児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,犯罪による収益の移転防止に関する法律違反被告事件
LEX/DB25449066/最高裁判所大法廷 平成29年11月29日 判決 (上告審)/平成28年(あ)第1731号
被告人が、被害者が13歳未満の女子であることを知りながら、被害者に対し、被告人の陰茎を触らせ、口にくわえさせ、被害者の陰部を触るなどのわいせつな行為をしたとして起訴され、第1審判決は懲役3年6月を言い渡し、原判決は、被告人に性的意図があったと認定するには合理的な疑いが残るとした第1審判決の事実認定を是認した上で、客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ、行為者がその旨認識していれば、強制わいせつ罪が成立し、行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないとして、昭和45年判例(最高裁昭和43年(あ)第95号同45年1月29日第一小法廷判決)を現時点において維持するのは相当でないとし、第1審判決を是認したため、被告人が上告した事案において、刑法176条にいう、わいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには、行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、その行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ないことになり、そのような個別具体的な事情の一つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難いとし、そのような場合があるとしても、故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく、昭和45年判例の解釈は変更されるべきであるとの見解を示し、刑事訴訟法410条2項により、昭和45年判例を当裁判所の上記見解に反する限度で変更し、原判決を維持するのを相当と認め、同判例違反をいう所論は、原判決破棄の理由にならないとして、上告を棄却した事例。
2017.12.12
住居侵入、殺人被告事件
LEX/DB25548075/那覇地方裁判所 平成28年11月22日 判決 (第一審)/平成27年(わ)第209号
被告人が、深夜、面識のない被害者宅に2階ベランダの施錠されていない扉から侵入した上、ベッドで横になっていた被害者に対し、その左後頸部付近をナイフ(刃体の長さ約18.5センチメートル)で複数回突き刺して殺害したという事案において、被告人は、本件犯行当時、飲酒による酩酊状態のため心神耗弱状態にあったとし、とりわけ無差別的な住居侵入・殺人の犯行であり、犯行態様が残忍な手口によるものである点で本件は被害者1名に対する殺人の事案の中でもかなり重い部類に位置付けられ、処断刑としては無期懲役刑を選択した上で酌量減軽し、懲役14年に処した事例(裁判員裁判)。