TKC法律事務所実務セミナー2016 弁護人として行うべき効果的な証拠開示 開催のご報告

 平成28年8月4日(木)、9月8日(木)の計2回、弁護士の山本了宣先生(後藤貞人法律事務所)を講師にお招きし、「証拠開示」をテーマとして、2016年第6弾となる「TKC法律事務所実務セミナー2016」を開催しました。山本先生は公判前整理手続きで最重要の手続きとも言われる証拠開示に意欲的に取り組まれ、弁護人側の証拠開示請求の方法論を自ら体系化されています。当日は、効果的な証拠開示のテクニックについて、山本先生のご経験に基づき実際のケースを交えながら具体的な方法論や弁護技術についてご講演をいただきました。

証拠開示における基本的な考え方

後藤貞人法律事務所 山本 了宣 先生

 証拠開示における基本的な考え方として、まずは「4つの限界」を覚えておいてください。それは、「どんな証拠があるか分からない」「証拠の中身が分からない」「証拠の価値に後から気づく」「公判前整理手続きが終わると証拠開示請求権がなくなる」という4点です。

 この4つの限界を踏まえた上で、不可知論という立場に立ち、「分からない部分が多い中でどう動くか」という考え方をする必要があります。具体的なアプローチとしては、予断を持たないこと、対象を見切らないこと、漏れなく開示を求めることです。

 そして、証拠開示請求の作業は、①証拠を見つける ②開示請求の範囲を決める ③請求書に記載する識別事項を作る ④検察官の回答を検証する ⑤再請求する という流れで進めます。

 まずはどんな証拠があり得るか全ての証拠を考えたうえで、その中からどの証拠を開示請求するか、今回請求する証拠を決めます。その次に識別事項を作りますが、開示請求する証拠を請求書に記載するにあたり、自分が頭の中でイメージするものをしっかりと特定して文章に落とせるよう、整理する必要があります。ここで、「証拠を見つけること」「開示請求の範囲を決めること」「識別事項を作ること」の3つの要素は別のものである、ということを認識しておいてください。この3つを頭の中で切り分けて考えなければ、請求内容に漏れが生じたり、欲しい証拠のイメージと実際に請求している証拠が異なってしまう恐れがあります。

証拠開示請求の基本原則 = 「人/場所/物」×「証拠種別」

多くの証拠は「人/場所/物」につながっており、
「証拠種別」を組み合わせることで証拠の特定ができます。

証拠の見つけ方

「挑戦する交通事件弁護」(現代人文社刊・定価2,100円/税別)

【参考書籍】
「証拠開示と公正な裁判」増補版
(現代人文社刊・定価2,900円/税別)

証拠を見つけるには、①人/場所/物 ②証拠の派生関係 ③芋づると目録 ④捜査過程 ⑤ヒント集 という5つの代表的な方法があります。
①多くの証拠は「人/場所/物」に繋がっています。証明予定事実と証拠カードを利用して「人/場所/物」をリストアップすることで大枠をつかみ、その後で個別の証拠を検討していくことが良いでしょう。
②捜査は順番に進んでいくので、その過程の中から「証拠の派生」を捉えることが重要です。捜査が進んでいく中で、どのような資料が作成されるのかをイメージして、派生関係を考えてください。
③「芋づると目録」は、捜査機関の証拠の中にある、実質的に一覧として機能するものの中から証拠を見つけることです。
④「捜査過程」を把握することも重要です。証拠を読み込んだり、捜査年表を独自に作成し、「捜査官が、いつ、どこで、何をしたか」という、捜査官が主役の物語をイメージしてください。
⑤「ヒント集」といえる資料がWebサイトや書籍にて手に入るので、そこから証拠を見つけるヒントを得て役立てましょう。

なお、証拠を見つけるときに意識すべき考え方として「あみかけ型」と「争点型」の2つがあります。「あみかけ型」は、機械的に人/場所/物や派生からたどる方法であり、大穴をなくすために必要です。「争点型」は争点から欲しい証拠を考える方法で、詳しく掘り下げていくために必要です。大切なのは、この両方を行うことです。両側から攻めることで漏れなく証拠を見つけることができるのです。

参加者の声

  • 類型証拠を探す際、まず全体で何があるのかという視点を持つことが重要ということが自分の考えにこれまで無かったため、非常に参考になりました。
  • あみかけで証拠を請求する方法が参考になりました。
  • 開示請求をする際の思考法、書面の記載方法等を、良い点・悪い点が具体的に示されており、大変参考になりました。
  • 実際にミスをしそうな点について知ることができよかった。
  • 証拠開示を考えるときは常に漏れがないか不安でしたので、漏れのないように請求するための方法論を今後使っていきたいと思います。
  • 自分がまさに良くない例をやっていたことを知りました。これからが楽しみになりました。