全国会活動

TKC全国会結成の目的と
「黒字決算」と「適正申告」を
実現するための具体的運動

TKC全国会結成の目的

 TKC全国会は、税理士・公認会計士約1万1400名が組織するわが国最大級の職業会計人集団です。1971年8月17日に、飯塚毅初代会長により結成されました。『TKC会計人の行動基準書』に、その結成の目的が次のように示されています。

 TKC全国会は、わが国職業会計人の職域防衛と運命打開とを目的として開発されたTKCシステムを活用する職業会計人が、その事務所の業務水準の向上と中小企業の育成並びに存続・発展を祈願して結成した血縁的集団であり、その目指すところは、自利利他──自利とは利他をいう──の理念の実践により、確固とした職業倫理と使命感とを堅持しつつ、租税正義の実現と、社会と企業の発展に貢献することにある。

 税理士に対する「中小企業の支援者」としての社会的な期待は、これまで以上に高まってきています。こうした社会的な期待に応え、TKC全国会の結成目的を実現するためにも、私たちTKC会員は中小企業の支援者としての役割を積極的に果たしていきます。

「黒字決算」と「適正申告」を支援

 下の図表は、国税庁の資料をもとに、日本の法人税申告書の黒字申告と赤字申告の割合を示したグラフです。これを見ると、黒字申告割合が次のように推移していることが分かります。

①1952年~1974年頃 黒字申告割合が約70%の時代
②1975年~1992年頃 黒字申告割合が約50%の時代
③1993年以降      黒字申告割合が約30%の時代

 黒字申告割合が約7割を占めていた1950年代から1970年代半ばまでは、節税対策がニーズの中心であり、青色申告制度に基づいて会計帳簿の「記帳代行」を行うことが大いに役立ちました。しかし、1990年代に入り赤字申告割合が約7割になると、状況は一変しました。会計事務所の中小企業に対する最大の貢献策が、「黒字決算」と「適正申告」の支援へと変わってきたのです。

 なお、国税庁が2022年10月に発表した「法人税等の申告(課税)事績の概要」によると、令和3事務年度における全法人の黒字申告割合は35.7%と、依然として法人の7割ちかくが赤字となっています。コロナ禍や物価高騰などにより、中小企業を取り巻く経営環境は一層厳しさを増す中、持続的な成長と存続・発展にむけて取り組む中小企業に、いま必要なことや会計事務所が行うべき役割は何か。私たち税理士は、このことを真剣に考えていく必要があります。

※2004年以前は国税庁「会社標本調査結果」における数値を採用し、2005年以後は同庁「法人税等の申告事績の概要」における数値を採用しています。

TKC全国会の運動方針

 TKC全国会は、2022年から2024年までの3年間の運動方針として「未来に挑戦するTKC会計人──巡回監査を断行し、企業の黒字決算と適正申告を支援しよう!」を掲げました。

 また、それを実現するための具体策として、次の三つの目標を掲げています。

①優良な電子帳簿を圧倒的に拡大する(「TKC方式の自計化」の推進)

 「帳簿のトレーサビリティ」および改正電帳法・改正消費税法が求める「証憑なくして、記帳なし」の原則が確保されているTKCシステムを利用し、「優良な電子帳簿」を圧倒的に拡大していくことを意味します。

②租税正義の守護者となる(「TKC方式の書面添付」の推進)

 決算書を含む税務関係書類の信頼性を高めるのが、税理士法第33条の2に規定されている書面添付制度です。巡回監査を前提とした「TKC方式の書面添付」を標準業務として定着させ、書面添付制度の社会の認知度を高めます。

③黒字化を支援し、優良企業を育成する(「巡回監査」と「経営助言」の推進)

 必ず現場に赴き、すべての取引(仕訳)を確認する巡回監査は、われわれTKC会計人の根幹の業務です。この巡回監査を経た信頼できる数字を基に、月次決算体制を構築し、経営者への経営助言を行います。毎月の巡回監査と経営助言の実施により、黒字化を実現し、優良企業へと育成していきます。

TKC全国会が取り組む「優良企業」の育成とは

 TKC全国会は、黒字決算と適正申告を支援し、1社でも多くの優良企業を育成することに努めています。『TKC経営指標』(BAST)が定義する「優良企業」の条件は次の6項目です。

〈TKC経営指標(BAST)の「優良企業」の定義〉

  1. 自計化システム利用による月次決算の実施
  2. 書面添付の実践
  3. 中小会計要領への準拠
  4. 限界利益額の2期連続増加
  5. 自己資本比率が30%以上
  6. 税引き前当期純利益がプラス

 優良企業の育成とは端的に言えば、コンプライアンスに沿った、高付加価値経営に取り組む経営者を増やすことです。特に重要視されるのが、「限界利益額の2期連続増加」です。限界利益とは、別言すれば付加価値(その企業が事業活動によって生み出した新たな価値。経常利益・人件費・貸借料・金融費用・租税公課・減価償却費の総体)です。すなわち、この新たな定義に該当する企業を数多く輩出することは、わが国のGDP増大の一翼を担うことにもつながります。

 TKC全国会は、中小企業の支援者として、これらの運動を通じ、税理士に対する社会からの期待に応えることで日本経済の発展に貢献します。