寄稿

マイナンバー制度の施行をチャンスと捉えよう!

待ったなし! 来年1月からスタート!

TKC全国会会長 粟飯原一雄

TKC全国会会長
粟飯原一雄

 10月から「通知カード」の郵送が開始され、いよいよマイナンバー制度の運用が目前に迫っています。
 ご承知のように本制度は、税と社会保障の一体化や災害対策の3分野が主目的とされていますが、去る9月3日に衆議院において金融機関の口座情報や健康診断情報など利用範囲の拡大の内容を盛り込んだマイナンバー法改正案が成立し、将来に向かって本制度の活用拡大についても条件整備が進められています。
 マイナンバー制度については、行政手続き簡素化や所得捕捉による脱税減少などの効果が期待される一方で、情報流出への懸念や中小企業の経営リスクや業務負担増等の課題も指摘されています。
 しかし本制度は、平成28年1月1日から、待ったなしでスタートすることが決定されており、安全管理措置などのルール違反者には、厳しい罰則が適用されます。
 企業規模の大小にかかわらず、すべての関与先企業に適切な対応が必要とされています。
 TKC会員事務所のマイナンバー対応については、すでにご案内したとおり、「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」や『マイナンバー対応ガイドブック』(日本税理士会連合会)、『会計事務所のためのマイナンバー制度実務対応ガイドブック』(TKC全国会総務委員会監修)等の基本資料を熟読し所内体制整備を図ることが重要であることは言うまでもありません。
 さらに現在、全国のTKC会員事務所において、『中小企業のためのマイナンバー制度実務対応ガイドブック』や「PXまいポータル」などをテキストとして、関与先向けの「経営支援セミナー」が積極的に開催されており、全ての関与先企業が安心してマイナンバー制度に対応していただくための活動が広がっています。

漏えい発覚の場合、厳しい対応が予測される

 マイナンバー制度への企業の対応については「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」において、特定個人情報の各種の保護措置が示され、安全管理措置が義務づけられています。
 ガイドラインでは、情報漏えいが発生した場合の対応については「別に定める」としてきましたが、この9月28日付けの官報に、「事業者における特定個人情報の漏えい事案等が発生した場合の対応について」が、特定個人情報保護委員会名で告示され、10月5日から施行されました。そこには企業内部で講ずることが望ましいこととして、次の6項目が記載されています。

 ①事業者内部における報告、被害の拡大防止
 ②事実関係の調査、原因の究明
 ③影響範囲の特定
 ④再発防止策の検討・実施
 ⑤影響を受ける可能性のある本人への連絡等
 ⑥事実関係、再発防止策等の公表

 特に⑤は、漏えい事案が起きた場合は、2次被害の防止等のために「速やかに、本人に連絡し、又は、本人が知り得る状態に置く」とされ、⑥では、「事実関係及び再発防止策等について速やかに公表する」と定めています。
 このほか特定個人情報に関する番号法違反の事案又は違反の恐れのある事案を把握した場合の報告等も定めています。
 このような漏えいが起きないように、TKC会員事務所では、関与先との委託内容を明確にした上で、「TKCシステム利用パターン」別に分類整理し、社内ルールと関与先との関係書類(TKC全国会総務委員会『マイナンバー制度への対応に伴うTKC会員が準備すべき関係書類の解説』)等に基づいて、個々の関与先企業と周到な準備を進めることが可能です。

TKCシステムには特段の安全性がある

 TKC会員のマイナンバー対応のために、TKCシステムでは、万全の準備をしています。TKCの飯塚真規営業本部長は、『TKC会報』(平成27年8月号・9月号)で次のように述べています。

「PXまいポータルは、セキュリティ・ゲートウェイ・サービスを強化し、SSL(個人番号を暗号化する通信技術)とクライアント証明書によりセキュアな通信を実現しています」
「情報漏洩の多くは、データセンターの運営を他社に委託しており、委託先の管理体制がずさんだったために発生しています。これに対して、TISCによる保管機能は、TKCの社員が運営する自社データセンターで、JISQ27001(情報セキュリティ管理の国際規格)等にもとづく運用を実施しています。インターネットからの悪意ある攻撃者の侵入、ウイルス・スパイウェアのブロック(入口対策)と危険なサイトへの通信を遮断(出口対策)の両面において情報セキュリティに万全な体制をとっているのです」

 TKCシステムではこのようにセキュリティ面で特段の安全性が図られていますが、便利さの面でも配慮されています。
 この11月からPXシリーズのオプションとして提供されるPXまいポータルには次のような機能があります。

 ①関与先企業の役社員はパソコンやスマートフォンを通じてマイナンバーを会社に提出できる。
 (そのマイナンバーは、パソコン・スマホに保存されない)
 ②役社員は、本人確認資料として、通知カード、個人番号などの画像を添付できる。
 ③関与先の給与担当者は、本人確認を目的に、PXシリーズからTISCに保存されたマイナンバー及び画像デー
  タを確認できる。
 ④会計事務所では、OMSの管理画面から、関与先の役社員、扶養親族ごとのマイナンバー収集状況を確認でき
  る。

 このほか、「扶養控除等申告書」の電磁的方法での保管(電磁的方法による提供の承認申請書が必要)や利用料金の低額さなども特徴と言えます。

「マイナンバー制度アドバイザー事務所」に登録しよう

 中小企業等へのマイナンバー制度の周知度はまだ全般的に低い状況にあります。
 東京商工リサーチが、今年6月23日から7月7日にかけて実施したインターネットによるアンケート調査によれば、マイナンバー制度の導入準備について67.5%が「検討中」と回答。中小企業では「未検討」が35.3%となっています。多くの企業において、制度への認識、運用に向けての準備が遅れているのが実態です。
 そこでTKC全国会はTKCシステムを活用してマイナンバー対応を助言する事務所であることを示す「マイナンバー制度アドバイザー事務所」を発足させました。登録条件は次の2つです。

 (1) 「OMSクラウド」または「OMS2010」の利用事務所。
 (2) 自らの給与計算事務で「PXまいポータル」を利用している事務所。

  (提供開始前は「Web給与明細サービス」利用事務所)

 各SCGサービスセンターで登録でき、登録した会員事務所はTKCグループHPの税理士リストにその旨表示され、認定プレート、ポスター、名刺シール等が提供されます。
 すべてのTKC会員事務所がこの「マイナンバー制度アドバイザー事務所」にエントリーしていただき、関与先の円滑なマイナンバー対応をサポートいただくことを期待しています。

 マイナンバー制度は、いわば新たな社会インフラと言えます。本制度が整備され国民に定着するまでには、まだ時間がかかるものと予測されます。TKC会員としては、本制度が将来的に、より公正・公平な社会実現に大きく寄与することを期待して、目前に迫った運用開始の対応準備をしっかり進めるとともに、このマイナンバー制度施行を大きなチャンスと捉え、安心・安全・便利なTKCシステムをフルに活用して、TKC方式による自計化の普及につなげていきたいものです。

(会報『TKC』平成27年11月号より転載)