損害・生命保険の仲介を主業務に不動産、ビル賃貸業務も手がける浜松損害保険サービス。そもそもが浜松信用金庫の関係会社だけに、その計数管理能力は群を抜いており、ここ数年は右肩上がりの業績を続けている。澤崎好美社長、伊藤彰啓取締役業務管理部長、そして、同社の会計・税務をサポートするイセキサイド税理士法人の鈴木和雄税理士に話を聞いた。

社員のスキルアップによりより顔の見える営業へ

浜松損害保険サービス:澤崎社長(中央)

浜松損害保険サービス:澤崎社長(中央)

──1965年に、浜松信用金庫の関連会社として創業されたと聞いています。

澤崎 当初は、浜信代弁という社名で、融資先が火事などの災害・事故にあった時に備え、損害保険への加入の仲介を行うことを目的に設立されました。2000年には生命保険も扱うようになりました。われわれのような業態を「金融機関の別働体」と言う人もいます。生損保併せて20社の代理店になっているので、顧客に柔軟な提案ができることが強み。もちろん当社の主力業務であり、全体の60%がこの事業での売り上げになります。

──97年には不動産業へ進出されています。

澤崎 当時、不動産の動きも活発になり、新設しました。たとえば、お客さまの要望で事業用や居住用の土地がほしいという情報が入れば、その仲介をします。商品性の不動産は持っていません。それでも当社の事業の15%を占めています。

──このほか、近年はビル賃貸業にも新たに参入されました。

澤崎 2008年に現在の本社ビルを購入し、旧本社跡地の駐車場収入と併せて賃貸料収入が入るようになりました。また、現在では、さらに2つの賃貸物件を持っており、事業として年商の25%を稼ぎ出すほどに成長してきました。

──ここ数年、売り上げ、利益ともに絶好調のようですが、理由は?

澤崎 直接的にはM&Aによる新規顧客の増加、あるいは保険見直し本舗やライフプラザパートナーズさんといった他代理店との提携により幅広いチャネルからの顧客の増加が挙げられるでしょう。しかし、本質的には、従業員のスキルアップによる効果が大きいと思います。当社のような業態はとにかく「人」です。前述の通り、当社は多くの保険会社さんの乗り合い代理店なので、商品数が豊富で多岐にわたっています。したがって、社員には大量かつ最新の保険知識が必要になってくる。そのため、頻繁に勉強会を開催したり、社外研修も含めて、教育には最大限の力を注いでいます。その成果が徐々に出始めてきたと考えています。

──どのような営業手法をとられているのでしょうか。

澤崎 最初のとっかかりの契約は火災保険のケースが多いようですが、その後、お客さまとのお付き合いのなかで自動車保険や傷害保険、賠償責任保険へと広げていくような形が理想です。繰り返しになりますが、当社は乗り合い代理店なので、多くの選択肢を提案できるのが強みですね。

──伸びている商品は?

澤崎 主力の火災保険や自動車保険も伸びているのですが、近年特徴的なのは、企業向けの賠償責任保険や機械保険などが好調です。

──機械保険とは?

澤崎 機械の誤作動や突発的な事故に対応する保険のことです。浜松市は、NC旋盤など高度な制御が必要な機械を扱う製造業者が数多くあります。そのため、機械保険のニーズが高いのです。また、建設会社からも、最近は、工事現場などで社員や第三者にけがをさせてしまった場合の労働災害総合保険・賠償責任保険の需要が高まっています。公共工事の場合、そのような保険への加入が義務づけられていますしね。今後は地域の建設会社は重要なお客さまになります。

経営計画と予実管理が会社の方向性を決める

──『FX2』の導入は平成19年3月期からとお聞きしました。狙いは?

伊藤 営業課長だった私が、平成18年4月に総務・経理など管理の仕事を任されるようになり、浜松信用金庫のある支店長の紹介で竹内恵子税理士事務所(現イセキサイド税理士法人)をご紹介いただきました。前任者は、同庫の顧問税理士に指導を受けながら会計・税務を行っていたのですが、その税理士さんも本体の仕事でお忙しく何かと不便だったからです。そのため、自動的に他社ソフトからTKCの『FX2』に移行したという経緯です。

──使い勝手はいかがでしょう。

伊藤 出力されるデータは以前に比べて非常に分かりやすくなったという印象はありますね。当社の望みはとにかくリアルタイムに数字をつかみたいということ。そこに応えていただけるのがありがたいです。

鈴木税理士 当初は、信用金庫法に基づく業務報告書の勘定科目体系にとまどいましたが、議論を重ねながらそこに多少の改良を加えて使いやすくし、加えて、部門別管理も本格的にスタートしました。

──どのような部門に分けられていますか。

伊藤 保険(損保・生保)、不動産仲介、賃貸の3つの部門です。賃貸というのは、現在、コンビニへの賃貸物件が2カ所ありますので、そこを自社ビル・駐車場管理と分けて損益を出しています。この部門別管理によって、各事業の損益分岐点をきっちりと見極め、利益を積み上げることができるようになりました。

──『FX2』からの出力帳表はどう活用されていますか。

伊藤 月次決算が確定するのが翌月中旬なので、その時期の経営会議では『FX2』の経営データを配り、予算と実績に乖離がないかを中心に議論して、今後の方向性を検討しています。

──予算はどのように作られていますか。

鈴木 まず、私が役員の方々にヒアリングをして経営計画策定ツールの『継続MAS』を使って予算の数字をおこします。ただし、ここでも、金融機関独特の勘定科目へのアレンジが必要で、その数字をベースにしながらスプレッドシートを使って作り直します。

伊藤 単年度予算の正確性にはこだわっています。そのため、鈴木先生のご指導のもと、作りっぱなしの計画ではなく、できるだけ予実に乖離が出ないように半期経過時と第3四半期の終了時点と、年に2度の改訂を行っています。

鈴木 同社では業績をとても緻密に管理されていて感心します。要求されるレベルも高い。それと、すばらしいのは、不採算部門がひとつもないこと。確実に利益を積み上げる事業をつくられてきました。それと、金融機関の関係会社だけに、税効果会計など高度な会計処理を要求されます。私個人としても非常に勉強になります。

──中期計画は?

澤崎 今後の方向性の確認資料として、5カ年の中期計画を作成しています。

──現状の経営課題は?

伊藤 今年の10月から火災保険の最長契約期間が36年から10年に短縮されます。それによって収益が減るのは確実で、その分、他の保険への多様化をより一層進める必要があるでしょう。また、自動車保険についていえば、現状契約自体は増えていますが、保険料の上昇傾向が続いており、価格競争力を武器にした通販保険の脅威が増しています。これによって当社顧客の「契約継続率」がやや落ちていることが気がかりですね。将来的なリスクととらえています。

澤崎 先ほども触れましたが、最後はいかに良い人材を育てるかにかかってくるのではないかと思っています。当社の経費はほとんどが人件費ですからね。一人前になるには保険分野、不動産分野ともに数年はかかります。人材育成をより強化し、人対人、顔の見える営業を徹底すれば、その分付加価値がつき、競争力も加わり、おのずと道は開けてくると考えています。

(本誌・高根文隆)

会社概要
名称 浜松損害保険サービス株式会社
設立 1965年5月
所在地 静岡県浜松市中区元城町115-1
売上高 4億9000万円
社員数 24名
URL http://hamamatsusonpo.co.jp/

CONSULTANT´S EYE
増収増益の秘訣は緻密な計数管理
イセキサイド税理士法人 税理士 鈴木和雄
静岡県浜松市中区佐鳴台4-36-25 TEL:053-445-6161
http://www.isekiside.com/

 当事務所と浜松損害保険サービスさんとのお付き合いは、平成18年にさかのぼります。私にとっても当事務所に入所してはじめてのお客さまということで、特別の思い入れがあります。当初は、浜松信用金庫の関係会社ということで金融機関独特の勘定科目体系を採用されていることにとまどいもありました。

 しかし、慣れてくるにつれて、伊藤彰啓取締役業務管理部長の指揮のもと実践される、緻密な計数管理への取り組みに感心させられるばかりでした。

 きっちりと単年度計画を立てられ、年2回の見直しをされるほどの緻密な予実管理のもとに業務を遂行されるためか、同社には不採算事業というものがありません。

 また、利益計画については、人材募集や昇給に伴う人件費の見込み、あるいは設備投資、節税対策まで、あらゆる経営項目において正確性を求められます。さらに、平成20年には、自社ビル取得をきっかけにビル賃貸事業を手がけられてからは、収益力も格段に上がり、ここ数年は景気低迷にもかかわらず増収増益を続けておられます。

 さらに、税効果会計については、繰り延べ税金資産の回収可能性の判断もしっかり行うよう指示を受けるなど、非常に高度な会計処理を実践されています。

 それだけに私自身にとっても会計人として勉強になるし、また、シビアに仕事の評価をしていただけるので、大変ありがたく思っています。

 今後とも、自らもスキルを研鑽しながら、同社の要望に出来うる限り応え、経営に少しでもプラスになる仕事を実践していきたいと考えています。

掲載:『戦略経営者』2015年2月号