更新日 2024.03.29

第1回 消費税軽減税率制度の概要とスケジュール

  • twitter
  • Facebook
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 畑中 孝介

平成28年度税制改正大綱では、平成29年4月1日より消費税率が10%に引き上げられ、同時に軽減税率制度が導入されることとなりました。また、平成33年から「適格請求書等保存方式」が導入されるなど実務面で大きな影響が考えられます。当コラムでは、早期に課題を検討し対応策を講じていただくために、軽減税率とインボイス方式について解説します。

はじめに

 平成28年度税制改正大綱は、消費税軽減税率制度の導入の関係で発表がずれ込みましたが、2月中旬には法案が提出されており、3月末までには法案が成立すると思われます。本年度の税制改正での中心は「消費税の軽減税率制度」となっています。
 本法案は制度の成立が微妙な情勢ではありますが、もし法案が成立した場合には会計税務実務面に非常に大きな影響が出ることから警鐘の意味も踏まえ本コラムを執筆しています。
 平成29年4月1日より消費税率が10%に引き上げられるのと同時期に、一定の品目については8%の軽減税率制度が導入されることになりましたが、特に平成33年からの「適格請求書等保存方式」においては、免税事業者等の登録事業者でない事業者からの仕入等については「仕入れ税額控除の対象外」になるなど実務面に大きな影響が考えられます。
 それ以外にも請求書や帳簿に「軽減税率である旨」の記載が義務化されます。さらに、当分の間経過措置等があるため税率区分としては「5%」「8%」「10%」に加え「8%軽減」の4つの税率区分が必要になるでしょう。また、各種経費精算システム等の連携データの改修も必要になります。
 上記のように、経理部門だけでなく現業部門等に大きな影響が発生しますので留意してください。

※当コラムでは経理部門に与える影響を主に記載しています。
そのため一般的な内容及び詳細な内容等については「平成28年度Q&A税制改正の留意点」もしくは「Q&A改正消費税・軽減税率の要点」(注)をご参照ください。

(注)TKC会員のみ購入できる書籍です。TKC会計・税務セミナーに参加されるか、お近くのTKC会員にお問い合わせください。

 (以下この連載では「平成28年度税制改正の大綱」(2015年12月24日閣議決定)「平成28年度 税制改正大綱」(2015年12月16日自由民主党・公明党)をもとに記載します)

1.スケジュールの概要

 下記図表の通り、制度としては大きく分けて2段階に分かれます。

  1. (1) 第一段階として現行制度に記載事項を加えた「区分記載請求書等保存方式」(平成29年4月1日~)
  2. (2) 第2段階としてインボイス制度が導入される「適格請求書等保存方式」(平成33年4月1日~)

 第一段階は現行の制度の延長線上であり、罰則等もなく、仕入れ税額控除の方式も現行制度同様です。
 一方で第2段階はインボイス方式となっており、罰則等も強化されるとともに「適格請求書等」が発行されないもの、適正に請求書や帳簿が記載されていないものについては「仕入税額控除ができなくなる」など、現行制度とは大きく異なります。

2.税率

 軽減税率の対象となる課税資産の譲渡等は2種類とされ、軽減税率は 8%(消費税6.24%、地方消費税1.76%)とされます。

※通常の8%税率とは国税・地方税の割合が異なるため税率区分は別区分と考えるべきでしょう。

(1) 対象品目

①「飲食料品」…食品表示法に規定する食品(酒類と外食等は除外)

②定期購読契約が締結された新聞

 一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する週2回以上発行される新聞に限られます。

 適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されるまでの間は、現行の請求書等保存方式を維持しつつ、区分経理に対応するための措置が講じられます。

プロフィール

税理士 畑中孝介(はたなか たかゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会
  連結納税システム普及部会会員
  新サービス開発プロジェクトリーダー
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC中央研修所税制改正プロジェクトメンバー
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員

著書等

「日経産業新聞」「日刊工業新聞」「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆

システム・コンサルティング事例
ホームページURL

免責事項

  1. 当コラムは、コラム執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
  2. 当コラムには執筆者の私見も含まれており、完全性・正確性・相当性等について、執筆者、株式会社TKC、TKC全国会は一切の責任を負いません。また、利用者が被ったいかなる損害についても一切の責任を負いません。
  3. 当コラムに掲載されている内容や画像などの無断転載を禁止します。