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2022.06.21
懲戒処分取消等請求事件
LEX/DB25572187/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 6月14日 判決 (上告審)/令和3年(行ヒ)第164号
上告人(被控訴人・被告。氷見市)の消防職員であった被上告人(控訴人・原告)は、任命権者であった氷見市消防長から、上司及び部下に対する暴行等を理由とする停職2月の懲戒処分(第1処分)を受け、さらに、その停職期間中に正当な理由なく上記暴行の被害者である部下に対して面会を求めたこと等を理由とする停職6月の懲戒処分(第2処分)を受けことにより、被上告人が、上告人を相手に、第1処分及び第2処分の各取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めたところ、原判決は、第1処分は適法であるとしてその取消請求を棄却すべきものとする一方、第2処分の取消請求を認容し、損害賠償請求の一部を認容したため、上告人が上告した事案で、停職6月という第2処分の量定をした消防長の判断は、懲戒の種類についてはもとより、停職期間の長さについても社会観念上著しく妥当を欠くものであるとはいえず、懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできないとし、原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるとし、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、第2処分に関するその他の違法事由の有無等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻すこととした事例。
2022.06.21
業務上横領被告事件
LEX/DB25572177/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 6月 9日 判決 (上告審)/令和3年(あ)第821号
被告人は、株式会社Bの取締役兼総務経理部長として同社の経理業務を統括していたCと共謀の上、同社名義の銀行口座の預金をCにおいて同社のために業務上預かり保管中、東京都内の同社事務所において、自己の用途に費消する目的で、Cにおいて、情を知らない同社職員に指示して、上記口座から、Cらが管理する銀行口座に、現金2415万2933円を振込入金させ、もってこれを横領したとして、第1審判決は、被告人の行為は、刑法65条1項により、同法60条、253条(業務上横領罪)に該当するが、被告人には業務上の占有者の身分がないので、同法65条2項により同法252条1項(横領罪)の刑を科することとなり、その上で、公訴時効の成否について、公訴時効の期間は、科される刑を基準として定めるべきであるとし、横領罪の法定刑(5年以下の懲役)を基準として刑事訴訟法250条を適用し、公訴時効の期間は5年(同条2項5号)であるから、本件の犯罪行為が終了した平成24年7月5日から起算して、本件の公訴提起がされた令和元年5月22日には公訴時効が完成していたとして、被告人に対し、同法337条4号により免訴を言い渡したことに対し、検察官が控訴し、被告人に対する公訴時効の期間は業務上横領罪の法定刑を基準とすべきであるのに横領罪の法定刑を基準として公訴時効の完成を認めた第1審判決には法令適用の誤りがあると主張したところ、原判決は、第1審判決の認定した犯罪事実及び本擬律を前提に、公訴時効の期間は、成立する犯罪の刑を基準として定めるべきであるとし、業務上横領罪の法定刑(10年以下の懲役)を基準として刑事訴訟法250条を適用すると、公訴時効の期間は7年(同条2項4号)であるから、本件の公訴提起時に公訴時効は完成していないとして、第1審判決を法令適用の誤りを理由に破棄し、第1審判決と同旨の犯罪事実を認定して、被告人を懲役2年に処したため、被告人が上告した事案で、公訴時効制度の趣旨は、処罰の必要性と法的安定性の調和を図ることにあり、刑事訴訟法250条が刑の軽重に応じて公訴時効の期間を定めているのもそれを示すものと解され、処罰の必要性(行為の可罰的評価)は、犯人に対して科される刑に反映されるものということができるとし、本件において、業務上占有者としての身分のない非占有者である被告人には刑法65条2項により同法252条1項の横領罪の刑を科することとなるとした第1審判決及び原判決の判断は正当であるところ、公訴時効制度の趣旨等に照らすと、被告人に対する公訴時効の期間は、同罪の法定刑である5年以下の懲役について定められた5年(刑事訴訟法250条2項5号)であると解するのが相当であり、本件の公訴提起時に、被告人に対する公訴時効は完成していたことになるとして、原判決を破棄し、本件控訴を棄却した事例(補足意見がある)。
2022.06.14
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 令和4年8月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572164/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 6月 3日 判決 (上告審)/令和3年(受)第1125号 等
建物の解体作業等に従事した後に石綿肺、肺がん等の石綿(アスベスト)関連疾患にり患した者又はその承継人である被上告人らが、建材メーカーである上告人らに対し、当該疾患へのり患は、上告人らが、石綿含有建材を製造販売するに当たり、当該建材が使用される建物の解体作業等に従事する者に対し、当該建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等(本件警告情報)を表示すべき義務を負っていたにもかかわらず、その義務を履行しなかったことによるものであるなどと主張して、不法行為等に基づく損害賠償を求め、原判決は、被上告人らの不法行為に基づく損害賠償請求を一部認容したため、上告人らが上告した事案において、上告人らが、石綿含有建材を製造販売するに当たり、当該建材が使用される建物の解体作業従事者に対し、本件警告情報を表示すべき義務を負っていたということはできないとして、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中、被上告人らの請求に関する上告人ら敗訴部分は破棄し、上記破棄部分のうち、被上告人X1の請求に関する部分については、原審の確定した事実関係によれば、同被上告人が石綿含有建材を使用する建設作業に従事していた時期があることから、損害の額等について更に審理を尽くさせる必要があるので、本件を原審に差し戻すこととし、また、その余の被上告人らの請求は、第1審判決は結論において正当であり、上記破棄部分のうち、同被上告人らの請求に関する部分につき、同被上告人らの控訴を棄却し、同被上告人らの原審で拡張した請求を棄却した事例。
2022.06.14
過失運転致死、道路交通法違反被告事件
LEX/DB25592166/大阪地方裁判所 令和 4年 3月25日 判決 (第一審)/令和2年(わ)第1120号
被告人は、平成31年2月19日午後7時21分頃、大阪府四條畷市内の道路において、普通乗用自動車を運転中、自車前方に転倒しうつ伏せに横臥していた被害者(当時86歳)を自車車底部で轢過し、同人に心臓破裂等の傷害を負わせる交通事故を起こした際、自損事故を起こしたことを認識したにもかかわらず、その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を、直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかったとして、懲役1年6月を求刑された事案で、本件事故につき被告人に過失があったと認定することはできず、過失運転致死については、犯罪の証明がないというべきであるから、刑事訴訟法336条により、被告人に対して無罪の言渡しをしたが、救護等義務違反の点については犯罪の証明がないが、この点は前掲関係各証拠によって優に認定できる報告義務違反の罪と観念的競合の関係にあるとして起訴されたものと認められるから、道路交通法違反の罪で、被告人に対し罰金5万円に処した事例。
2022.06.07
在外日本人国民審査権確認等、国家賠償請求上告、同附帯上告事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和4年8月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572155/最高裁判所大法廷 令和 4年 5月25日 判決 (上告審)/令和2年(行ツ)第255号 等
国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない在外国民に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民審査に係る審査権の行使が認められていないことの適否等が争われ、在外国民である第1審原告X1は、第1審被告に対し、主位的に、次回の国民審査において審査権を行使することができる地位にあることの確認を求め(本件地位確認の訴え)、予備的に、第1審被告が第1審原告X1に対して国外に住所を有することをもって次回の国民審査において審査権の行使をさせないことが憲法15条1項、79条2項、3項等に違反して違法であることの確認を求め(本件違法確認の訴え)、また、平成29年10月22日当時に在外国民であった第1審原告らは、第1審被告に対し、国会において在外国民に審査権の行使を認める制度を創設する立法措置がとられなかったことにより、同日に施行された国民審査において審査権を行使することができず精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めたところ、原審は、本件地位確認の訴えを却下すべきものとした上で、本件違法確認の訴えに係る請求を認容する一方、上記の損害賠償請求を全部棄却したため、第1審被告が上告し、1審原告らが附帯上告をした事案で、(1)国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことは、憲法15条1項、79条2項、3項に違反するとし、(2)在外国民である第1審原告X1に係る本件違法確認の訴えは、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法であるとし、(3)本件立法不作為は、平成29年国民審査の当時において、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるとして、原判決中第1審原告らの損害賠償請求を全部棄却すべきものとした部分(原判決主文第1項(3))は破棄し、第1審判決中当該請求に係る部分は相当であるから、第1審被告の控訴を棄却し、第1審原告らのその余の上告、第1審被告の上告及び第1審原告X1の附帯上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2022.06.07
国家賠償請求事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和4年8月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25592297/東京地方裁判所 令和 4年 5月16日 判決 (第一審)/令和3年(ワ)第7039号
東京都知事は、新型コロナウイルス感染症のまん延防止対策としての緊急事態宣言期間中であった令和3年3月18日、都内で経営する飲食店において、被告が行った営業時間短縮の要請に応じなかった原告に対し、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)45条3項に基づき、原告の施設(店舗)を午後8時から翌日午前5時までの間の営業のために使用することを停止する旨の命令を発出したことに対し、原告が、上記要請に応じない正当な理由があったこと、上記命令の発出は特に必要があったと認められないことなどの理由で、同命令は違法であり、また、特措法及び同命令は営業の自由、表現の自由等の基本的人権を侵害するなどの理由で違憲であるところ、同命令に従い営業時間を短縮したために売上高が減少し、営業損害を被ったと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、被告に対し、上記損害の一部である104円の支払を求めた事案で、特措法45条3項の原告に対する命令(本件命令)は、特措法45条3項の「特に必要があると認めるとき」の要件に該当せず違法であるが、都知事が本件命令を発出するに当たり過失があるとまではいえず、職務上の注意義務に違反したとは認められないとし、特措法及び本件命令の違憲性については、特措法45条2項及び3項所定の規制は、同法の目的に照らして不合理な手段であるとはいえないから、これら各条項が原告の営業の自由を侵害し、法令違憲であるとは認められず、また、本件命令は原告の表現の自由に対する過度な干渉として憲法21条1項に違反すると認めることはできないとして、原告の請求を棄却した事例。
2022.05.31
不正競争防止法違反幇助被告事件
LEX/DB25572151/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 5月20日 判決 (上告審)/令和2年(あ)第1135号
被告人は、火力発電システム等に係る施設又は設備を構成するボイラ、ガスタービン等の機器及び装置の研究、開発、設計、調達、製造等に関する業務等を目的とする本件会社の取締役常務執行役員兼エンジニアリング本部長として同社の火力発電所建設プロジェクト等を統括していたものであるが、同社がタイ王国ナコンシータマラート県カノム郡において遂行していた火力発電所建設工事に関して、同建設工事現場付近に建設した仮桟橋に、火力発電所建設関連部品を積載した総トン数500tを超えるはしけ3隻を接岸させて貨物を陸揚げするに当たり、本件仮桟橋は、総トン数500t以下の船舶の接岸港として建設許可されたものであったため、同郡に管轄を有する同国運輸省港湾局第4地方港湾局ナコンシータマラート支局長として、同郡において、水上輸送に関する検査、船舶検査、船舶登録、タイ領海内船舶航行法に基づく桟橋使用禁止等の権限を有していた外国公務員等であったBから許可条件違反となる旨指摘され、貨物を陸揚げできなかったことから、同社の執行役員兼調達総括部長として同社の物品調達、輸送業務を統括していたC、同社の調達総括部ロジスティクス部長として同社の輸送業務を統括していたDほか数名と共謀の上、平成27年2月17日頃、同郡内において、Bに対し、新たに接岸する船舶の種別の変更申請を行う等の正規の手続によらずに上記許可条件違反を黙認して本件はしけの本件仮桟橋への接岸及び貨物の陸揚げを禁じないなどの有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に、同国内の業者を介し、現金1100万タイバーツ(当時の円換算3993万円相当)を供与し、もって外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせないことを目的として、金銭を供与したとして起訴され、第1審判決は、公訴事実と同旨の犯罪事実を認定し、被告人を懲役1年6月、3年間執行猶予に処したため、被告人は、第1審判決に対して控訴し、原判決は、被告人に不正競争防止法18条1項違反罪の共同正犯の成立を認めた第1審判決は事実誤認があるとして、第1審判決を破棄し、被告人には同罪の幇助犯が成立するとして、被告人を罰金250万円に処したことで、検察官、被告人の双方が上告した事案で、本件供与に関する共謀の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決は、第1審判決について、論理則、経験則等に照らして不合理な点があることを十分に示したものとは評価することができず、第1審判決に事実誤認があるとした原判断には刑事訴訟法382条の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、不正競争防止法18条1項違反罪の共同正犯の成立を認めた第1審判決の判断は正当として是認することができ、また、記録に基づいて検討すると、被告人のその余の控訴趣意もいずれも理由がなく、第1審判決はこれを維持するのが相当であるとし、被告人の控訴を棄却した事例。
2022.05.31
行政文書不開示処分取消請求事件
LEX/DB25572147/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 5月17日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第340号 等
被上告人が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成26年法律第67号による改正前のもの)に基づき、消費者庁長官に対し、株式会社安愚楽牧場(旧商号は有限会社安愚楽共済牧場)に関する行政文書の開示を請求したところ、これに該当する行政文書のうち別紙目録記載の部分等に記録された情報が情報公開法5条6号イ等所定の不開示情報に該当するとして、当該部分等を除いた一部を開示する旨等の各決定を受けたため、本件各決定のうち別紙目録記載の部分等に関する部分の取消しを求めたところ、原審は、本件各決定のうち別紙目録記載3から11までの部分に関する部分の取消請求を認容したため、上告人及び附帯上告人が上告受理申立てをした事案で、原判決中、別紙目録記載の部分に関する部分は破棄し、同目録記載の部分に記録されている情報が情報公開法5条6号イ所定の不開示情報に該当するか否か等につき更に審理を尽くさせるため、上記の破棄部分につき、本件を原審に差し戻すこととし、上告人のその余の上告については、上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので、棄却した事例(補足意見がある)。
2022.05.24
情報不開示決定取消等請求控訴事件
LEX/DB25592204/東京高等裁判所 令和 4年 4月 7日 判決 (差戻控訴審)/令和3年(行コ)第171号
東京拘置所に未決拘禁者として収容されていた控訴人が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(令和3年法律第37号による廃止前)に基づき、処分行政庁である東京矯正管区長に対し、控訴人が収容中に受けた診療に関する別紙記載の保有個人情報の開示を請求したところ、同法45条1項所定の保有個人情報に当たり、開示請求の対象から除外されているとして、本件情報の全部を開示しない旨の決定を受けたことから、本件決定が違法であると主張してその取消しを求めるとともに、本件決定により精神的苦痛を受けた等として、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料及び弁護士費用相当額の支払等を求め、第1審は、被収容者の医療情報である本件情報は、開示等に係る規定の適用除外となる行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たるとし、これを開示しない旨の本件決定は適法であるとして、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人は控訴し、差戻し前の控訴審も控訴を棄却したが、上告審は、被収容者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は、行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たらないと解するのが相当であるとし、本件情報は上記保有個人情報に当たらないから、同法12条1項の規定による開示請求の対象となるとし、これと異なる差戻前の控訴審を破棄し、更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻しを命じた。その後、差戻後の控訴審の事案において、控訴人の請求のうち、本件決定の取消しに係る部分の訴えは訴えの利益を欠き不適法であるから却下し、国家賠償請求については一部認容し、その余の請求を棄却した内容で、第1審判決を変更した事例。
2022.05.24
株主総会決議取消請求控訴事件(日邦産業の株主総会決議取消請求事件)
LEX/DB25592151/名古屋高等裁判所 令和 4年 2月18日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第609号
被控訴人(被告)の株主である控訴人(原告)が、被控訴人に対し、被控訴人の令和2年6月24日開催の第69期定時株主総会(本件株主総会)における本件議案を可決する旨の本件決議は、控訴人が提出した本件議案に反対する旨の議決権行使書面が提出期限までに到達したか、到達したとみなすべきであるのに、被控訴人がその議決権行使を認めなかった点において、決議の方法が法令に違反するものであったとして、本件決議の取消しを求め、原審が控訴人の請求を棄却する旨の判決をしたところ、これを不服として控訴人が控訴した事案で、本件決議が内容とする本件買収防衛策の有効期間は、原審口頭弁論終結後に被控訴人の第70期定時株主総会が開催され、終結したことによって、満了しており、被控訴人の第70期定時株主総会において、「当社株式等の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)継続の件」を可決する旨の決議がされたのであるから、本件買収防衛策が既に失効しているにもかかわらず、これを可決した本件決議を取り消すことに具体的な実益があるという特別の事情がない限り、本件訴えは、本件買収防衛策の有効期間満了により訴えの利益を欠くに至ったというべきであるとし、原判決を取消し、控訴人の訴えを却下した事例。
2022.05.24
窃盗(原審認定罪名・占有離脱物横領)被告事件
「新・判例解説Watch」刑法分野 令和4年7月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25592203/大阪高等裁判所 令和 3年12月10日 判決 (控訴審)
被告人は、令和2年12月2日午後1時33分頃、大阪市内のパチンコ店の男子トイレにおいて、被害者保有の現金27円及び小銭入れ等33点在中のクラッチバッグ1個(時価合計約5万5977円相当)を発見し、これを占有を離れた他人の物との認識の下に、自己の用に供する目的で同所から持ち去り、占有を離れた他人の者を横領したとして窃盗により起訴されたが、原審公判で、被告人・原審弁護人は、公訴事実記載の外形的事実、すなわち被告人が前記日時場所で置き忘れられていた本件クラッチバッグを持ち去ったことは認めつつ、被告人は本件クラッチバッグを置き忘れた被害者がいまだ現実に管理支配していた状況の認識を欠いていたもので、占有離脱物横領罪の範囲でしか故意は認められないとして、窃盗罪の故意を争い、原判決は、主観的には占有離脱物横領の故意で客観的には窃盗の罪を犯したものと認め、両罪が実質的に符合する限度で軽い罪である占有離脱物横領罪が成立する旨判断し、懲役8月に処したたため、被告人が控訴した事案で、原判決は、理由不備、訴訟手続の法令違反、法令適用の誤り及び量刑不当の誤りはないとし、本件控訴を棄却した事例。
2022.05.17
覚醒剤取締法違反被告事件
LEX/DB25572121/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 4月28日 判決 (上告審)/令和3年(あ)第711号
第1審判決が、被告人の尿に関する捜索差押調書、鑑定嘱託書謄本及び鑑定書の証拠能力を認め、覚醒剤自己使用の事実について被告人を有罪としたところ、被告人が控訴し、原判決は、強制採尿令状執行としての強制採尿手続も違法であるとして、第1審判決を破棄し、被告人に対して無罪を言い渡したため、検察官が上告した事案で、本件強制採尿手続の違法の程度はいまだ令状主義の精神を没却するような重大なものとはいえず、本件鑑定書等を証拠として許容することが、違法捜査抑制の見地から相当でないとも認められないから、本件鑑定書等の証拠能力は、これを肯定することができると解するのが相当であり、本件鑑定書等の証拠能力を否定した原判決は、法令の解釈適用を誤った違法があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるとし、原判決を破棄し、本件鑑定書等の証拠能力を肯定した第1審判決の判断は、その結論において是認することができ、また、訴訟記録に基づいて検討すると、第1審判決は、被告人を懲役3年2月に処した量刑判断を含め、これを維持するのが相当であるとした事例。
2022.05.17
退院の許可の申立て棄却決定及び入院を継続すべきことを確認する旨の決定に対する各抗告棄却決定に対する再抗告事件
LEX/DB25572117/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 2月 8日 決定 (再抗告審)/令和3年(医へ)第27号
退院の許可の申立て棄却決定及び入院を継続すべきことを確認する旨の決定に対する各抗告棄却決定に対する再抗告をした事案で、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)による処遇制度に関し、憲法14条、34条違反をいう点は、医療観察法による処遇制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁)の趣旨に徴して明らかであるなどとして、本件抗告を棄却した事例。
2022.05.10
法人税更正処分等取消請求事件
LEX/DB25572104/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 4月21日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第303号
被上告人(原告・被控訴人)は、平成20年12月期(平成20年10月7日から同年12月31日までの事業年度)及び平成21年12月期(平成21年1月1日から同年12月31日までの事業年度から平成24年12月期までの各事業年度に係る法人税の確定申告において、被上告人と同じ企業グループに属するUMIFからの金銭の借入れに係る支払利息の額を損金の額に算入したところ、麻布税務署長は、同族会社等の行為又は計算の否認に関する規定である法人税法132条1項を適用し、上記の損金算入の原因となる行為を否認して被上告人の所得の金額につき本件支払利息の額に相当する金額を加算し、本件各事業年度に係る法人税の各更正処分及び平成20年12月期を除く本件各事業年度に係る過少申告加算税の各賦課決定処分に対し、被上告人が、上告人(被告・控訴人。国)を相手に、本件各処分(上記各更正処分については申告額を超える部分)の取消しを求め、第1審判決は、本件各処分を取り消したことで、上告人が控訴し、原判決も控訴を棄却したため、上告人が上告した事案で、本件借入れは、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものとはいえず、本件借入れは、法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」には当たらないとし、原審の判断は正当として是認することできるとして、本件上告を棄却した事例。
2022.05.10
傷害、暴行被告事件
LEX/DB25572105/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 4月21日 判決 (上告審)/令和2年(あ)第1751号
被告人は、交際相手Cの双子の男児A及びB(当時7歳)に対する傷害等(Aに対する暴行及び傷害、Bに対する傷害)の各事実で起訴され、第1審判決は、Aに対する暴行及びBに対する傷害の各事実を認定した上、Aに対する傷害について、急性硬膜下血腫等及び重度の認知機能障害等の後遺症を伴う脳実質損傷の傷害を負わせた旨の犯罪事実を認定し、被告人を懲役3年に処したため、被告人は、第1審判決に対して控訴し、原判決は、Aに対する傷害について本件暴行を認定することはできないとして第1審判決を事実誤認を理由に破棄し、被告人に対し、Aに対する暴行及びBに対する傷害の各事実につき懲役1年6月、4年間執行猶予を言い渡し、Aに対する傷害の事実につき無罪を言い渡したため、検察官および被告人の双方が上告した事案で、本件暴行を認定した第1審判決に判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決は、事実誤認の審査に当たり必要な検討を尽くして第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものと評価することはできず(最高裁平成23年(あ)第757号同24年2月13日第一小法廷判決・刑集66巻4号482頁参照)、刑事訴訟法382条の解釈適用を誤ったものというべきであり、この違法は判決に影響を及ぼすものであって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。なお、Aに対する傷害の事実は、原判決が有罪としたAに対する暴行及びBに対する傷害の各事実と併合罪の関係にあるとして起訴されたものであるから、上記違法は、原判決の全部に影響を及ぼすものである。よって、刑事訴訟法411条1号により原判決を破棄し、同法413条本文に従い、本件を高等裁判所に差し戻すこととした事例。
2022.05.06
相続税更正処分等取消請求事件
LEX/DB25572099/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 4月19日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第283号
共同相続人である上告人らが、相続財産である不動産の一部について、財産評価基本通達の定める方法により価額を評価して相続税の申告をしたところ、札幌南税務署長から、当該不動産の価額は評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められるから別途実施した鑑定による評価額をもって評価すべきであるとして、それぞれ更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたため、被上告人(国)を相手に、これらの取消しを求め、第1審判決、原判決とも、請求を棄却したため、上告人らが上告した事案で、本件各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが租税法上の一般原則としての平等原則に違反するということはできないとし、本件各更正処分において、札幌南税務署長が本件相続に係る相続税の課税価格に算入される本件各不動産の価額を本件各鑑定評価額に基づき評価したことは適法であり、原審の判断は是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2022.05.06
横領被告事件
LEX/DB25572096/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 4月18日 判決 (上告審)/令和2年(あ)第131号
被告人は、Aが取締役を務める有限会社BがC所有の茨城県の本件土地を購入するに当たり、本件土地の農地転用許可を得るために本件土地の登記簿上の名義人を一旦被告人とし、農地転用等の手続及び資材置場として使用するための造成工事終了後にBに本件土地の所有権移転登記手続をする旨Aの兄であるDと約束し、被告人が代表理事を務めるE組合に前記Cが本件土地を売却する旨の合意書を作成し、その際、Dに土地代金500万円を支払わせ、同組合を登記簿上の名義人として本件土地をBのために預かり保管中、D及びBに無断で本件土地を売却しようと企て、株式会社Fに、本件土地を代金800万円で売却譲渡した上、本件土地について同社への所有権移転登記手続を完了させ、横領したとして起訴され、第1審判決は、本件土地の買主はBであるとして被告人の主張を排斥し、訴因変更後の公訴事実どおりの犯罪事実を認定して被告人を懲役1年6月に処したため、被告人が控訴し、事実誤認を主張したところ、原判決は、職権で、農地を転用する目的で所有権を移転するためには、農地法所定の許可が必要である以上、この許可を受けていないBに本件土地の所有権が移転することはないから、本件土地に関してBを被害者とする横領罪は成立し得ず、第1審判決には、横領罪の解釈、適用を誤った点について判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるので、第1審判決を破棄して被告人を無罪としたことに対し、検察官が上告した事案で、農地の所有者たる譲渡人と譲受人との間で農地の売買契約が締結されたが、譲受人の委託に基づき、第三者の名義を用いて農地法所定の許可が取得され、当該第三者に所有権移転登記が経由された場合において、当該第三者が当該土地を不法に領得したときは、当該第三者に刑法252条1項の横領罪が成立するものと解されるとして、原判決を破棄し、高等裁判所に差し戻した事例。
2022.04.26
共有持分権確認請求事件
LEX/DB25572093/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 4月12日 判決 (上告審)/令和3年(受)第919号
上告人は、本件建物の建築時に上告人及び被上告人を含む3町内会の間で本件建物をその3町内会の共有とする旨の合意がされた旨主張したが、これに対し、被上告人は、本件合意がされた事実はないから、上告人は本件建物の共有持分権を有しない旨主張したところ、第1審は、本件合意の存否が本件の争点であり、本件合意があったと認められるとして、本件請求を認容する判決をし、被上告人が控訴し、原審は、本件請求は本件建物の共有持分権が上告人自体に帰属することの確認を求めるものであるところ、権利能力のない社団である上告人が所有権等の主体となることはできないとして、本件請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、原審が、上告人の請求につき共有持分権の構成員全員への総有的帰属の確認を求める趣旨か否かについて、釈明権の行使を怠った違法があるとし、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととした事例。
2022.04.26
公金支出差止等請求控訴事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 令和4年6月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25591999/東京高等裁判所 令和 3年12月15日 判決 (控訴審)/令和2年(行コ)第246号
日野市が、都市計画公園である北川原公園の予定地内に、近隣の可燃ごみ処理施設に出入りする廃棄物運搬車両の通行路を整備することとし、設計業務委託契約、工事請負契約及び工事監理業務委託契約を締結したことについて、日野市の住民である被控訴人らが、当時の日野市長であったP3市長による本件各契約の締結が違法であると主張して、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、控訴人(日野市の執行機関である日野市長)を相手方として、P3市長に対して損害賠償請求をすることを求めた住民訴訟で、原判決は被控訴人ら並びに第1審原告P1及び第1審原告P2の請求を全部認容したため、控訴人が原判決の全部を不服として控訴した事案において、被控訴人らの請求は理由があるからこれを認容すべきであり、これと同旨の原判決は正当であり、控訴人の被控訴人らに対する本件控訴は理由がないから棄却し、原判決中、第1審原告P1及び第1審原告P2の請求に係る部分を取り消した事例。(なお、本件訴訟のうち、第1審原告P1の請求に係る部分は、令和2年6月28日に第1審原告の死亡により、第1審原告P2の請求に係る部分は平成30年10月27日に第1審原告の死亡により、それぞれ訴訟終了の宣言をした。)
2022.04.19
国家賠償請求事件(第1事件、第2事件)
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和4年6月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25591984/札幌地方裁判所 令和 4年 3月25日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第2369号 等
原告らが、街頭演説に対して路上等から「P1辞めろ」、「増税反対」などと声を上げたところ、北海道警察の警察官らに肩や腕などをつかまれて移動させられたり、長時間にわたって付きまとわれたりしたと主張して、被告(北海道)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金の支払等を求めた事案で、原告らに対する警察官らの本件行為の一部について、国家賠償法1条1項の適用上、違法であるとし、また、原告らの表現の自由は、警察官らによって侵害されたものとし、原告2の移動・行動の自由、名誉権及びプライバシー権の侵害についても、警察官らによって侵害されたものとして、原告らの請求を一部認容した事例。