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2023.09.19
脅迫、強要未遂被告事件  
LEX/DB25573036/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 9月11日 判決 (上告審)/令和4年(あ)第125号 
C労働組合D支部執行委員である被告人A及び同組合員である被告人Bは、E社取締役のF(当時58歳)を脅迫して、同社が日雇運転手であるD支部組合員のGを雇用している旨の就労証明書を同社に作成・交付させようなどと考え、共謀の上、京都府木津川市所在のE社の事務所において、Fが高血圧緊急症によって体調不良を呈した後もなお、そのような状態のFに対し、同社がGを雇用している旨の就労証明書を作成等することを執ように求め、さらに、D支部執行委員であるHと共謀の上、4回にわたって事務所に押し掛け、Fに対し、同社がGを雇用している旨の就労証明書を作成等することを執ように求めた上、事務所周辺にD支部組合員をたむろさせて同社従業員らの動静を監視させ、被告人A及びHが事務所に押し掛け、Fに対し、被告人Aが怒号しながら、Fに示していた就労証明書の用紙を机にたたき付け、Hが怒号して、Gを雇用している旨の就労証明書の作成等を要求し、もしこの要求に応じなければ、F及びその親族の身体、自由、財産等に危害を加えかねない旨の気勢を示して怖がらせ、もってFをして義務のないことを行わせようとしたが、Fがその要求に応じなかったため、その目的を遂げなかったとした事件で、第1審判決は、被告人両名について強要未遂罪の共同正犯を認定し、被告人Aを懲役1年、3年間執行猶予に、被告人Bを懲役8月、3年間執行猶予にそれぞれ処したため、被告人両名が控訴し、原判決は、第1審判決が、強要未遂罪の解釈適用を誤り、ひいては事実を誤認したとして、被告人両名について第1審判決を破棄し、HがFに対して怒号したことに関し、被告人Aについて脅迫罪の共同正犯を認定し、被告人Aを罰金30万円に処し、被告人Bに対して無罪を言い渡したため、検察官及び被告人Aが上告した事案で、第1審判決が強要未遂罪の解釈適用を誤り、ひいては事実を誤認したと説示しつつ、第1審判決が前提とする事実のうち、就労証明書を作成等すべき義務の有無について事実の誤認を指摘しただけで、強要罪の成立を基礎付けるその余の事実関係について、その認定の不合理性を検討しないまま、強要未遂罪の成立を認めた第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決は、第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものと評価することはできず、刑事訴訟法382条の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、本件を高等裁判所に差し戻した事例。
2023.09.19
地方自治法第251条の5に基づく違法な国の関与(是正の指示)の取消請求事件  
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和5年11月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573025/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 9月 4日 判決 (上告審)/令和5年(行ヒ)第143号 
沖縄防衛局は、普天間飛行場の代替施設を沖縄県名護市辺野古沿岸域に設置するための公有水面の埋立てに関し、公有水面埋立法42条3項において準用する同法13条ノ2第1項に基づき、埋立地の用途及び設計の概要に係る変更の承認の申請(本件変更申請)をしたところ、上告人(原告・沖縄県)は変更を承認しない旨の処分(本件変更不承認)をした。被上告人(被告・国土交通大臣)は、沖縄防衛局の審査請求を受けて、本件変更不承認を取り消す裁決をし、その後、地方自治法245条の7第1項に基づき、沖縄県に対し、本件変更申請に係る変更の承認(本件変更承認)をするよう是正の指示をした。上告人は、本件指示を不服として、国地方係争処理委員会に対し、地方自治法250条の13第1項に基づく審査の申出をしたが、本件指示は違法でないと認める旨の審査結果の通知を受けたたため、上告人は、これを不服として、同法251条の5第1項1号に基づき、本件訴えを提起し、原判決は、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、本件裁決は本件変更不承認が本件各規定に違反することを理由として本件変更不承認を取消したものであるところ、上告人は本件変更不承認と同一の理由に基づいて本件変更承認をしないものといえるから、そのことは地方自治法245条の7第1項所定の法令の規定に違反していると認められるものに該当するとし、本件指示は適法であるとした原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.09.12
殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反、現住建造物等放火被告事件  
LEX/DB25573010/東京地方裁判所立川支部 令和 5年 7月31日 判決 (第一審)/令和4年(わ)第244号 
自暴自棄になって自殺を決意した被告人が、確実に死ぬためには少なくとも二人以上殺害して死刑になるしかないと考え、不特定多数の者を殺害する目的でナイフや燃料を購入し、ナイフの刺突力を確認したり、燃焼実験を行ったりして周到に準備をした上で行った、殺人未遂、銃刀法違反の事案(判示第1、2)及び、殺人未遂、現住建造物等放火の事案(判示第3)の罪で、懲役25年、ナイフ1本(刃体の長さ約29.6cm)の没収を求刑された事案において、被害者DないしMについては、殺人未遂罪が成立することが認定できるものの、被害者B及びCについては、死亡結果が発生する具体的な危険性のある場所である特急電車両内で、被告人がライター用オイルを撒くなどした後、ジッポーライターを点火した時点で、5号車の優先座席前のおもいやりゾーン付近及び5号車と6号車の連結部分にいたことが証拠上明らかでないから、殺人未遂罪は成立しないと認定したうえで、被告人の刑事責任は極めて重大であり、社会的な影響の大きさも併せて考えると、単独で行われた通り魔無差別的な殺人未遂事件という同種事案の中でも特に重い部類に属する事案で、懲役23年に処し、ナイフ1本を没収した事例(裁判員裁判)。
2023.09.12
独立当事者参加、相続人たる地位にあること等の確認反訴請求控訴事件 
LEX/DB25595618/東京高等裁判所 令和 5年 7月18日 判決 (控訴審)/令和5年(ネ)第8号 
本件被相続人の子である控訴人(1審参加人・反訴被告)と本件被相続人の母である被控訴人(1審反訴原告)が、いずれも自身が本件被相続人の単独相続人であると主張して、控訴人と被控訴人との間において、〔1〕本件被相続人の相続人たる地位を有するのは自身のみであることの確認を求めるとともに、〔2〕本件被相続人の遺産に係る原判決別紙供託金目録記載の各供託金につき、自身がそれぞれその還付金請求権を有することの確認を求めたところ、原判決は、控訴人は父である本件被相続人を殺意をもって死亡させたものであるから、民法891条1号の類推適用により、本件被相続人の相続において相続人になることができないとして、第2順位の相続人である被控訴人の控訴人に対する請求をいずれも認容し、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人は、これを不服として控訴した事案で、控訴人の被控訴人に対する請求はいずれも理由がなく、被控訴人の控訴人に対する反訴請求はいずれも理由があると判断し、控訴人の請求をいずれも棄却し、被控訴人の反訴請求をいずれも認容した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.09.05
国家賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和5年10月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25595815/横浜地方裁判所川崎支部 令和 5年 7月11日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第343号 
亡aによる、デモ開催目的での公園内行為許可申請に対し、川崎市が行った、川崎市都市公園条例3条4項の規定に基づく不許可処分によって、亡a、原告b及び原告cの表現の自由や政治活動の自由が侵害されたとして、原告らが被告(川崎市)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金等の支払を求めた事案において、本件集会は、本件条例3条4項にいう「公園の利用に支障を及ぼさないと認める場合」に該当しないといえるから、本件不許可処分は適法であるとして、原告らの請求を棄却した事例。
2023.09.05
国家賠償請求控訴事件 
LEX/DB25595642/札幌高等裁判所 令和 5年 6月22日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第202号 
被控訴人らが、札幌市内で実施された第25回参議院議員通常選挙の候補者のための街頭応援演説に対し、路上等から「P1辞めろ」、「増税反対」などと声を上げたところ、北海道警察の警察官らに肩や腕などをつかまれて移動させられ、あるいは長時間にわたって付きまとわれるなどしたと主張して、北海道警察を設置する地方公共団体である控訴人に対し、それぞれ国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金330万円等の支払を求め、原審は、警察官らが被控訴人らに対して違法な有形力の行使等を行ったものと認め、警察官らによるこれらの違法行為によって、被控訴人らの表現の自由のほか、被控訴人2の移動・行動の自由、名誉権及びプライバシー権が侵害されたとして、被控訴人らの請求のうち、被控訴人1につき33万円、被控訴人2につき55万円の各損害賠償金等の支払を求める限度で認容し、その余の請求はいずれも理由がないとして棄却したため、控訴人が控訴した事案において、被控訴人1の控訴人に対する請求は理由がなく棄却すべきであるから、被控訴人1の請求を一部認容した原判決は一部失当であり、控訴人の被控訴人1に対する控訴は理由があるから、原判決主文第1項を取消し、同部分につき被控訴人1の請求を棄却することとし、被控訴人2の控訴人に対する請求を一部認容した原判決は相当であり、控訴人の被控訴人2に対する控訴を棄却した事例。
2023.08.29
受刑者選挙権確認等請求事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和5年10月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25595549/東京地方裁判所 令和 5年 7月20日 判決 (第一審)/令和4年(行ウ)第369号 
令和元年以来懲役刑の執行を受けている原告が、「禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者」(受刑者)の選挙権等を一律に制限している公職選挙法11条1項(2号に係る部分に限る。)の規定は国民の選挙権等を保障した憲法の諸規定に違反し無効であるとして、被告に対し、〔1〕主位的に、憲法15条1項及び3項、79条2項及び3項、公職選挙法9条並びに最高裁判所裁判官国民審査法4条に基づき、原告が次回の衆議院議員の総選挙及び最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査並びに参議院議員の通常選挙において投票をすることができる地位にあることの確認を求め、予備的に、憲法15条1項及び3項、43条1項、44条ただし書並びに79条2項及び3項に基づき、次回の国政選挙等において原告に投票をさせないことが違法であることの確認を求めるとともに、〔2〕本件規定の改廃等を怠った違法な立法不作為により原告が既に行われた国政選挙等において投票をすることができず、精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づき、3万円及びうち2万円に対する令和3年10月31日(衆議院議員の総選挙及び国民審査が実施された日)から、うち1万円に対する令和4年7月10日(参議院議員の通常選挙が実施された日)から、各支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案で、本件規定は、憲法15条1項及び3項、43条1項、44条ただし書並びに79条2項及び3項に違反するものではないから、受刑者は、本件規定により、選挙権及び国民審査権を有しないとし、国会が本件規定の改廃等をしなかったことが違法な立法不作為に当たるものということはできないとし、本件各確認請求に係る訴えのうち違法確認請求に係る訴えは、不適法であるから却下し、その余の請求をいずれも棄却した事例。
2023.08.29
懲罰決議取消等請求事件
LEX/DB25595611/大阪地方裁判所 令和 5年 7月14日 判決 (第一審)/令和4年(行ウ)第154号 
市議会は、議員である原告に対し、原告の市議会の定例会の一般質問における発言について謝罪及び反省を求める旨の決議をしたことについて、原告は、〔1〕本件決議は違法な処分であるとして、被告を相手に、本件決議の取消しを求めるとともに、〔2〕本件決議並びに市議会の広報誌への本件決議の掲載及び同広報誌の頒布により原告の名誉が毀損されるなどしたとして、被告市に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害金等の支払を求めた事案において、本件決議は、地方自治法135条1項1号の「公開の議場における戒告」に当たらず、また、本件決議は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に当たらないとし、本件取消しの訴えは、処分の取消しの訴えの対象とならない本件決議を対象として、処分の取消しの訴えを提起するものであるから不適法であるとして却下し、原告のその余の請求を棄却した事例。
2023.08.22
保全命令申立却下決定に対する即時抗告事件 
「新・判例解説Watch」知的財産法分野 解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25595689/知的財産高等裁判所 令和 5年 3月31日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和5年(ラ)第10001号 
抗告人(原審債権者)が、相手方(原審債務者。町田市)に対し、工芸美術館新築工事等の一部である本件各工事の実施により、版画美術館及びその敷地であり芹ヶ谷公園の一部を構成する本件庭園に係る抗告人の著作者人格権(同一性保持権)が侵害されるおそれがあると主張して、著作権法112条1項に基づき、本件各工事の差止めを求めたところ、原審は、版画美術館は、抗告人がその著作者である「建築の著作物」(著作権法10条1項5号)に該当し、本件各工事によって版画美術館に加えられる変更は抗告人の意に反する改変に当たるが、「建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変」(著作権法20条2項2号)に該当すると判断し、また、本件庭園は、上記「建築の著作物」に該当するとは認められないとして、本件申立てをいずれも却下したため、これに対し、抗告人が即時抗告をした事案において、原決定は相当であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.08.22
出資金払戻請求事件 
「新・判例解説Watch」倒産法分野 令和5年11月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25595640/大阪地方裁判所 令和 4年11月24日 判決 (第一審)/令和3年(ワ)第5695号 
協同組合である被告の組合員であった原告会社が、民事再生手続開始の決定を受けて、被告を脱退する旨の意思表示をしたところ、原告が、原告の被告に対する出資金501万円に係る返戻請求権は、脱退の効力が発生する事業年度の終了日において組合財産が存在することが被告の総代会において確認されたことにより停止条件が成就した旨主張して、被告に対し、本件出資金返戻請求権に基づき、上記出資金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案で、被告は、原告に対し、事業年度の終了に係る停止条件成就の機会を放棄して、本件再生債権を自働債権とし、出資に係る原告の被告に対する出資金払戻請求権501万円を受働債権として、対当額で相殺する旨の意思表示をしたが、本件再生手続開始当時同債権に係る債務が発生していない場合はもちろん、既に発生していた場合であっても、停止条件付債務に過ぎない以上、民事再生法92条1項の要件に該当しないから、本件相殺は、同項によっては許容されず、ほかに民事再生法上本件相殺が許容される根拠はないところ、原告の請求は理由があるとして認容した事例。
2023.08.15
損害賠償請求事件(那須雪崩事故遺族側勝訴判決) 
LEX/DB25595542/宇都宮地方裁判所 令和 5年 6月28日 判決 (第一審)/令和4年(ワ)第83号 
被告高体連主催の平成28年度春山安全登山講習会において、平成29年3月27日雪崩が発生し、県立高等学校の部活動の一環として参加していた生徒及び教師が死亡した雪崩事故について、被告県の公務員であり、かつ、本件講習会の講師であった被告P1、被告P2及び被告P3並びに被告高体連が、雪崩の発生を予見し、本件講習会を中止すべき義務があったのにこれを怠ったことによって生じたものであるとして、本件被災者らの遺族である原告らが、被告三講師及び被告高体連に対しては民法709条に基づき、被告県に対しては国家賠償法1条1項に基づき、各損害賠償金等の連帯支払を求めた事案で、被告県及び被告高体連に対する請求について、本件事故により各原告らに対し、別紙認容額一覧表の記載額の範囲内で賠償責任を負うとして認容し、原告らの被告県及び被告高体連に対するその余の請求並びに被告三講師に対する請求については、いずれも棄却した事例。
2023.08.15
マイナンバー離脱等請求控訴事件(マイナンバー制度からの離脱等請求訴訟控訴審判決) 
LEX/DB25595303/名古屋高等裁判所金沢支部 令和 5年 5月15日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第109号 
控訴人(原告)らが、被控訴人(被告。国)において、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の規定に基づいて、個人番号を付された控訴人らの同意なく個人番号を含む個人情報を収集、保存、利用及び提供する制度を構築、運用していることは、控訴人らのプライバシー権(自己情報コントロール権)を侵害し、憲法13条及び41条に違反するものであると主張して、被控訴人に対し、〔1〕プライバシー権等に基づき、控訴人らの個人番号の収集、保存、利用及び提供の差止め並びに被控訴人が保存する控訴人らの個人番号の削除を求めるとともに、〔2〕国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求め、原審は、控訴人らの請求をいずれも棄却したことから、控訴人らがこれを不服として控訴した事案において、控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.08.08
「結婚の自由をすべての人に」訴訟事件 
LEX/DB25595450/福岡地方裁判所 令和 5年 6月 8日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第2827号 等
同性の者との婚姻届を提出したが受理されなかった原告らが、同性同士の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の規定(本件諸規定)は、同性同士の婚姻が認められない法的状態を生じさせており、憲法13条、14条1項及び24条に違反するにも関わらず、被告が必要な立法措置を怠ったことが国家賠償法1条1項の適用上違法であると主張して、被告に対し、慰謝料等の支払を求めた事案において、同性間の婚姻を認めていない本件諸規定が立法府たる国会の裁量権の範囲を逸脱したものとして憲法24条2項に反するとまでは認めることができないとし、本件諸規定を改廃していないことが、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないというべきであるとして、原告らの請求を棄却した事例。
2023.08.08
損害賠償(株主代表訴訟)請求控訴事件(世紀東急工業株主代表訴訟控訴審) 
LEX/DB25595301/東京高等裁判所 令和 5年 1月26日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第2134号
E(控訴人ら補助参加人)の株主である被控訴人が、Eにおいて遅くとも平成23年3月から平成27年1月27日までの間、同業他社8社との間で共同してアスファルト合材の販売価格の引上げを行っていく旨の合意をすることにより、公共の利益に反して、我が国における合材の販売分野における競争を実質的に制限していた行為が独占禁止法2条6項に規定する不当な取引制限に該当し、同法3条の規定に違反するなどとして、公正取引委員会から排除措置命令及び課徴金28億9781万円の納付命令を受け、上記課徴金の納付を余儀なくされたことについて、Eの当時の取締役又は代表取締役であった控訴人らには善管注意義務違反があり、そのためにEは納付した上記課徴金の一部である18億3417万円相当の損害を被ったと主張して、会社法423条1項に基づく損害賠償請求として、控訴人Bに対しては18億3417万円、控訴人Aに対しては17億3227万円、控訴人C及び同Dに対しては各15億7942万円、各控訴人の上記責任金額の限度で連帯してEに支払うことを求め、原審は、被控訴人の請求をいずれも認容したところ、控訴人らがこれを不服として控訴した事案(なお、Eは、当審において、控訴人らを被参加人として補助参加した。)で、被控訴人の請求をいずれも認容した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.08.01
地位確認等請求事件
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和5年10月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572945/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 7月20日 判決 (上告審)/令和4年(受)第1293号
上告人(一審被告。自動車学校)を定年退職した後に、上告人と有期労働契約を締結して勤務していた被上告人(一審原告)らが、上告人と無期労働契約を締結している労働者との間における基本給、賞与等の相違は労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条に違反するものであったと主張して、上告人に対し、不法行為等に基づき、上記相違に係る差額について損害賠償等を求め、原判決は、被上告人らの基本給及び賞与に係る損害賠償請求を一部認容すべきものとしたため、上告人が上告した事案において、正職員と嘱託職員である被上告人らとの間で基本給の金額が異なるという労働条件の相違について、各基本給の性質やこれを支給することとされた目的を十分に踏まえることなく、また、労使交渉に関する事情を適切に考慮しないまま、その一部が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるとした原審の判断には、同条の解釈適用を誤った違法があるなどとして、原判決中、被上告人らの基本給及び賞与に係る損害賠償請求に関する上告人敗訴部分は破棄し、被上告人らが主張する基本給及び賞与に係る労働条件の相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるか否か等について、更に審理を尽くさせるため、上記部分につき、本件を原審に差し戻すこととし、上告人のその余の上告については却下した事例。
2023.08.01
産業廃棄物処理施設設置許可処分取消請求事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 令和6年1月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25595453/広島地方裁判所 令和 5年 7月 4日 判決 (第一審)/令和2年(行ウ)第24号
原告らにおいて、本件土地を設置場所とする産業廃棄物最終処分場につき、訴外組合の申請に対して広島県知事(処分行政庁)が令和2年4月23日付けでした廃棄物の処理及び清掃に関する法律15条1項に基づく産業廃棄物処理施設設置許可処分には、(1)本件申請が廃棄物処理法15条の2第1項各号に適合していないのにこれを許可した違法性、(2)廃棄物処理法15条3項に違反してこれを許可した違法性、(3)廃棄物処理法15条の2第3項に違反してこれを許可した違法性、(4)廃棄物処理法15条5項、6項に違反してこれを許可した違法性がある旨主張して、被告(広島県)に対し、本件許可処分の取消しを求めた事案で、原告番号1、7、8及び12には本件許可処分の取消しを求める法律上の利益を欠き、原告適格が認められず、同原告らの訴えは不適法であるとして却下し、その余の原告らの請求については、生活環境影響調査項目の一つである地下水と水質の2点をめぐる処分行政庁の調査や審査及び判断の過程には看過しがたい過誤、欠落があると認められるから、処分行政庁の判断に不合理な点があり、その判断に基づく本件許可処分は違法であるとして、認容した事例。
2023.07.25
行政措置要求判定取消、国家賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和5年10月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
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LEX/DB25572932/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 7月11日 判決 (上告審)/令和3年(行ヒ)第285号
一般職の国家公務員であり、性同一性障害である旨の医師の診断を受けている上告人(一審原告)が、国家公務員法86条の規定により、人事院に対し、職場のトイレの使用等に係る行政措置の要求をしたところ、いずれの要求も認められない旨の判定を受けたことから、被上告人(一審被告。国)を相手に、本件判定の取消し等を求め、第1審判決は、上告人の請求を一部認容したが、原判決は、本件判定部分の取消請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、本件判定部分に係る人事院の判断は、本件における具体的な事情を踏まえることなく他の職員に対する配慮を過度に重視し、上告人の不利益を不当に軽視するものであって、関係者の公平並びに上告人を含む職員の能率の発揮及び増進の見地から判断しなかったものとして、著しく妥当性を欠いたものといわざるを得ないとし、本件判定部分は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとして、原判決中、人事院がした判定のうちトイレの使用に係る部分の取消請求に関する部分を破棄し、同部分につき被上告人の控訴を棄却した事例(補足意見がある)。
2023.07.25
審決取消請求事件(ダイレックス(株)による審決取消請求事件) 
「新・判例解説Watch」経済法分野 令和5年9月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25595467/東京高等裁判所 令和 5年 5月26日 判決 (第一審)/令和2年(行ケ)第5号
原告は、被告(公正取引委員会)が原告に対してした排除措置命令及び課徴金納付命令について、それぞれその全部の取消しを求める審判請求をし、被告は、本件排除措置命令を変更し、本件課徴金納付命令を一部取り消す旨の審決をした。本件は、原告が、本件審決について、原告の審判請求を棄却した部分につき私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律82条1項各号所定の取消事由がある旨を主張して、同項に基づき、その取消しを求めた事案で、本件各命令(本件審決後において、なお効力を有するもの)はいずれも適法であり、本件審決に独占禁止法82条1項各号所定の取消事由があるとは認められないとして、原告の請求を棄却した事例。
2023.07.18
威力業務妨害被告事件 
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和5年9月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25506582/大阪高等裁判所 令和 5年 6月14日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第427号
旧P6総合センターの施設管理業務のために大阪府が大阪労働局と共同で管理していた防犯カメラにゴム手袋や白色ビニール袋を被せて、そのレンズを塞ぎ、2度にわたり威力を用いて人の業務を妨害したとして、原判決は、各公訴事実と同旨の原判示第1及び第2の各事実を認定し、これらが威力業務妨害罪に該当すると認めて被告人3名を有罪とした上(ただし、P4被告人については、原判示第2のみ)、P1被告人を罰金50万円に、P2被告人を罰金30万円に、P4被告人を罰金10万円に、それぞれ処したため、これに不服の被告人が控訴した事案で、本件カメラの角度変更の目的に関する事実誤認の主張、業務の要保護性に関する事実誤認及び法令適用の誤りの主張、威力該当性に関する事実誤認及び法令適用の誤りの主張、正当防衛の成否に関する事実誤認及び法令適用の誤りの主張はいずれも理由があり、その余の主張を判断するまでもなく、被告人3名は無罪であることが明らかであり、また、被告人3名は、いずれも無罪の判決を求める主張をするほか、本件公訴の提起自体が違法であり、あるいは、原裁判所は、不法に公訴を受理したものとして公訴棄却の判決を求める旨の本案前の主張もしているが、当裁判所は、本案前の主張について検討、判断するまでもなく、無罪の判断に至ったものであり、被告人3名にとってより有利であり、かつ、同人らが求めている無罪判決をするに熟している以上、本案前の主張の当否を判断するまでもなく、原判決を破棄し、無罪を言い渡した事例。
2023.07.18
ウイルス性肝炎患者の救済を求める全国B型肝炎訴訟広島訴訟損害賠償請求控訴事件 
LEX/DB25594965/広島高等裁判所 令和 5年 3月17日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第221号
B型慢性肝炎の患者である控訴人らが、乳幼児期に被控訴人・国が実施した集団予防接種又は集団ツベルクリン反応検査を受けた際、注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルス(HBV)に感染し、その後、成人になって慢性肝炎を発症し、いったんは沈静化した後に、更に慢性肝炎(HBe抗原陰性慢性肝炎)を再発したとして、従前の慢性肝炎の発症による損害とは区別される別個の損害が発生した旨主張して、上記再発後に発生した損害の包括一律請求として、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金等の各支払を求め、原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したことから、控訴人らが控訴した事案で、本件においては、被控訴人の集団予防接種等と控訴人らのHBV感染との間の因果関係を肯定するのが相当であり、控訴人らのHBe抗原陰性慢性肝炎の発症に係る肉体的・経済的損害及び精神的損害は甚大なものがあるというべきであるから、控訴人らの請求は、本件の同法上の違法行為と相当因果関係のある損害賠償を求める限度で理由があるとして、原判決を取り消し、控訴人らの請求をいずれも認容した事例。