注目の判例

憲法

2019.02.05
性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件
「新・判例解説Watch」憲法分野・家族法分野 4月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449940/最高裁判所第二小法廷 平成31年 1月23日 決定 (特別抗告審)/平成30年(ク)第269号
抗告人(申立人)が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に基づき、性別の取扱いを女から男にすることを求めたところ、第1審が抗告人の申立てが却下されたため、抗告人がこれを不服として即時抗告をしたが、即時抗告審でも却下されたため、抗告人が特別抗告をした事案で、「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」を求める性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号の本件規定の下では、本件規定の目的、制約の態様、現在の社会的状況等を総合的に較量すると、本件規定は、現時点では、憲法13条、14条1項に違反しないとした事例(補足意見がある)。
2019.01.08
選挙無効請求事件 
「新・判例解説Watch」憲法分野 3月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449871/最高裁判所大法廷 平成30年12月19日 判決 (上告審)/平成30年(行ツ)第153号
平成29年10月22日施行の衆議院議員総選挙について、東京都第2区、同第5区、同第8区、同第9区、同第18区及び神奈川県第15区の選挙人である上告人らが、衆議院小選挙区選出議員の選挙の選挙区割りに関する公職選挙法の規定は憲法に違反し無効であるから、これに基づき施行された本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して提起した選挙無効訴訟の上告審において、本件選挙当時、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできないとし、本件上告を棄却した事例(意見及び反対意見がある)。
2019.01.08
選挙無効請求事件 
「新・判例解説Watch」憲法分野 3月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449872/最高裁判所大法廷 平成30年12月19日 判決 (上告審)/平成30年(行ツ)第109号 等
平成29年10月22日施行の衆議院議員総選挙について、各選挙区(東京都第1区ほか264選挙区)の選挙人である上告人らが、衆議院小選挙区選出議員の選挙の選挙区割りに関する公職選挙法の規定は憲法に違反し無効であるから、これに基づき施行された本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して提起した選挙無効訴訟の上告審において、本件選挙当時、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできないとし、本件上告を棄却した事例(意見及び反対意見がある)。
2018.10.30
裁判官に対する懲戒申立て事件
LEX/DB25449743/最高裁判所大法廷 平成30年10月17日 決定 (上告審)/平成30年(分)第1号
被申立人(高等裁判所の民事事件担当の判事)が、実名が付された自己のアカウントで、高等裁判所で控訴審判決がされて確定した自己の担当外の事件である犬の返還請求等に関する民事訴訟についての報道記事を閲覧することができるウェブサイトにアクセスすることができるようにするとともに、本件アカウントにおける投稿が裁判官である被申立人によるものであることが不特定多数の者に知られている状況の下で行われたものであった本件ツイートをし、上記訴訟を提起して犬の返還請求が認められた当事者の感情を傷つけた事実につき、被申立人である裁判官に対する懲戒申立てをした事案において、被申立人の行為は、裁判所法49条にいう「品位を辱める行状」に当たるとし、被申立人は、本件ツイートを行う以前に、本件アカウントにおける投稿によって裁判官の品位と裁判所に対する国民の信頼を傷つけたなどとして2度にわたる厳重注意を受けており、取り分け2度目の厳重注意は、訴訟に関係した私人の感情を傷つけるものである点で本件と類似する行為に対するものであった上、本件ツイートの僅か2か月前であったこと、当該厳重注意を受ける前の事情聴取の際、被申立人は、訴訟の関係者を傷つけたことについて深く反省しているなどと述べていたことにも照らすと、そのような経緯があるにもかかわらず、本件ツイートに及んだ被申立人の行為は、強く非難されるべきものであるとして、裁判官分限法2条の規定により被申立人を戒告することとした事例(補足意見がある)。
2018.07.31
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」憲法・行政法分野 10月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449587/最高裁判所第一小法廷 平成30年 7月19日 判決 (上告審)/平成28年(受)第563号
都立高校の教職員であった被上告人(原告・被控訴人)ら又はその被承継人らは、その在職中、各所属校の卒業式又は入学式において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の職務命令に従わなかったところ、東京都教育委員会(都教委)は、このことを理由として、東京都公立学校の再任用職員、再雇用職員又は非常勤教員の採用候補者選考において、上記の者らを不合格とし、又はその合格を取り消して、定年又は勧奨による退職後に再任用職員等に採用しなかったことを踏まえ、都教委が上記の者らを不合格とし、又はその合格を取り消したことについて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるなどとして、被上告人らが上告人(被告・控訴人。東京都)に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、第1審判決は、東京都教育委員会の裁量権の範囲の逸脱又は濫用を認め、被上告人らの請求を一部認容したため、上告人が控訴し、控訴審判決も第1審判決を維持しため、上告人が上告した事案において、任命権者である東京都教育委員会が、再任用職員等の採用候補者選考に当たり、従前の勤務成績の内容として本件職務命令に違反したことを被上告人らに不利益に考慮し、これを他の個別事情のいかんにかかわらず特に重視すべき要素であると評価し、そのような評価に基づいて本件不合格等の判断をすることが、その当時の再任用制度等の下で、著しく合理性を欠くものではなく、本件不合格等は、いずれも、都教委の裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないとして、原判決を破棄し、第1審判決中上告人敗訴部分を取消し、同部分につき被上告人らの請求をいずれも棄却した事例。
2018.07.17
損害賠償等請求事件(非公開の本尊写真 無断使用に差し止め判決)
LEX/DB25560628/徳島地方裁判所 平成30年 6月20日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第309号
四国88か所の寺院に関する団体である原告霊場会並びにそのうちの2つの寺院である原告極樂寺及び原告大興寺が、〔1〕原告らが許可していない寺宝(本尊)等を写真撮影し、撮影が許可された寺宝(本尊)等の写真についても原告らが許可した条件に反して展示・公開し、同写真を使用した御影(紙札)、書籍及び商品を制作・販売・頒布した被告の行為は、原告らとの間の撮影許可合意に反し、又は原告らの宗教的人格権を侵害するものであり、〔2〕各寺院の名称が付記された上記御影(紙札)を用いて御影本体又はこれを収録した冊子、額、掛け軸、つい立て等を頒布等する被告の行為は、不正競争に該当し、又は原告らの氏名権を侵害するものであるとして、被告に対し、原告ら各自につき慰謝料の支払等を求めるとともに、上記〔1〕の撮影許可合意違反又は宗教的人格権侵害による不法行為に基づき、本件写真の展示・公開、本件写真を使用した御影(紙札)・書籍・商品の頒布等の各差止め並びに本件写真、そのネガフィルム及び電子データ、本件写真を使用した御影・書籍・商品の各廃棄、上記〔2〕について不正競争防止法3条又は氏名権侵害の不法行為に基づき、本件御影及びこれを収録した冊子、額、掛け軸、つい立て等の頒布等の各差止め及び各廃棄、並びに原告らの名誉・信用回復措置として、謝罪広告の掲載をそれぞれ求めた事案において、原告極楽寺及び原告大興寺の宗教上の人格権を侵害する不法行為に該当するとして、請求を一部認容し、また、原告極樂寺については本件写真2について、原告大興寺については本件写真67について、被告に対し、それぞれ、上記各写真の公開等及び上記各写真を使用した御影・書籍・商品の頒布等の各差止め並びに上記各写真、そのネガフィルム及び電子データ、上記各写真を使用した御影・書籍・商品の各廃棄を請求したことについて、一部認容した事例。
2018.07.10
「新・判例解説Watch」憲法分野 8月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449514/東京高等裁判所 平成30年 5月18日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第5012号
日本国憲法9条について詠んだ第1審原告の本件俳句がさいたま市立公民館が発行する「公民館だより」(本件たより)に掲載されなかったことについて、第1審原告が、本件たよりへの掲載と国家賠償を請求するとともに、控訴審において民法723条に基づく名誉回復措置の請求を追加した事案において、本件俳句には、第1審原告が憲法9条は集団的自衛権の行使を許容するものと解釈すべきではないという思想、信条を有していることが表れていると解し、これを本件たよりに掲載すると公民館の公平性・中立性を害するとの理由で掲載を拒否したのであるから、第1審被告の掲載拒否行為は、第1審原告の公民館の利用を通じた社会教育活動の一環としてなされた学習成果の発表行為につき、第1審原告の思想、信条を理由に、これまでの他の住民が著作した秀句の取扱いと異なる不公正な取扱いをしたものであり、これによって、第1審原告の人格的利益を違法に侵害したというべきであるとして、原判決を変更し、賠償額を減額した事例。
2018.06.05
固定資産税等課税免除措置取消(住民訴訟)請求事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 7月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25560133/那覇地方裁判所 平成30年 4月13日 判決 (差戻第一審)/平成29年(行ウ)第9号
那覇市の住民である原告が、当時の那覇市長が補助参加人(一般社団法人)に対して都市公園である松山公園の敷地内に久米至聖廟(本件施設)を設置することを許可し、その使用料を全額免除したことは政教分離原則(憲法20条1項後段、3項、89条)に違反し、本件免除は無効であるにもかかわらず、被告(那覇市長)は、違法に上記使用料の徴収を怠っているなどと主張して、〔1〕地方自治法242条の2第1項3号に基づき、被告が、松山公園の使用料を請求しないことが違法であることの確認を求めた差戻後第一審の事案において、本件設置許可等のうちの本件免除は、那覇市と本件施設とのかかわり合いが、我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとして、憲法89条の禁止する公の財産の利用提供に当たり、ひいては憲法20条1項後段の禁止する宗教団体に対する特権の付与にも該当すると解するのが相当であるとし、また、本件免除は、憲法20条3項の禁止する国の機関たる地方公共団体による宗教的活動にも該当すると解するのが相当であるとして、被告が使用料のうち181万7063円を補助参加人に対し請求しないことの違法確認を求める原告の請求は全部理由があるとし、原告の請求を認容した事例。
2018.03.20
命令服従義務不存在確認請求控訴事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 5月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449235/東京高等裁判所 平成30年 1月31日 判決 (控訴審)/平成29年(行コ)第157号
陸上自衛官である控訴人が、いわゆる平和安全法制整備法(平成27年法律第76号)により新設された自衛隊法76条1項2号が違憲であるとして、同号に定める防衛出動の命令に服する義務のないことの確認を求めたところ、原判決が、控訴人が防衛出動命令の発令される事態に現実的に直面しているとはいえず、また、現時点において控訴人又は控訴人が所属する部署に対して防衛出動命令が発令される具体的・現実的可能性があるということはできないとした上で、控訴人の有する権利又は法律的地位に危険や不安が存在するとは認められないから、本件訴えは確認の利益を欠き、不適法であるとして本件訴えを却下したことから、控訴した事案において、本件訴えは適法な無名抗告訴訟と認められるとして、原判決を取り消し、本件を原裁判所に差し戻した事例。
2018.03.06
性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する即時抗告事件
LEX/DB25549283/広島高等裁判所岡山支部 平成30年 2月 9日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成29年(ラ)第17号
抗告人(申立人)が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に基づき、性別の取扱いを女から男にすることを求めたところ、原審が抗告人の申立てを却下したため、抗告人がこれを不服として抗告した事案において、性別の取扱いの変更を認める要件の一つとして、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号が定めることが、立法府が有する裁量権の範囲を逸脱するとは認めることはできないとして、憲法13条に反しないとし、申立てを却下した原審判を相当であるとして、抗告を棄却した事例。
2018.02.20
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 H30.2月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
「新・判例解説Watch」家族法分野 H30.3月中旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25548884/神戸地方裁判所 平成29年11月29日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第1653号
原告D(原告Aの母)は、夫(婚姻関係にある配偶者)から継続的に暴力を振るわれ、離婚の手続を取ることができないまま別居し、夫との婚姻継続中、原告Aの生物学上の父と交際し、原告Aを懐胎し出産し、原告Dは、夫に原告Aの存在を知られることを恐れ、その出生届を提出することができず、原告Aの実父が提出した原告Aの出生届は、夫の嫡出推定が及ぶことを理由に不受理とされ、原告D及び原告Aは、妻や子に夫に対する嫡出否認の訴えの提起が法律上認められていないことから、結果として、原告Aは無戸籍となり、原告B(原告Aの子)及び原告C(原告Aの子)は、原告B及び原告Cは、母である原告Aに戸籍がないため、その戸籍に入ることができず、原告Aと同様に無戸籍となったことにつき、民法774条~民法776条(本件各規定)は、父(夫)にのみ嫡出否認の訴えの提訴権を認めることによって、合理的な理由なく、父と子及び夫と妻との間で差別的な取扱いをしており、社会的身分による差別(憲法14条1項)に該当し、同項及び憲法24条2項に違反していることが明らかであり、国会(国会議員)は本件各規定の改正を怠っており、その立法不作為は、国家賠償法上違法であると主張した原告らが、被告(国)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、精神的損害に対する慰謝料及び弁護士費用として、金員の支払を求めた事案において、本件各規定についての憲法適合性に関する原告らの主張はいずれも理由がないとし、原告らの請求を棄却した事例。
2018.01.09
医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定に対する抗告棄却決定に対する再抗告事件
LEX/DB25449140/最高裁判所第三小法廷 平成29年12月18日 決定 (再抗告審)/平成29年(医へ)第16号
医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定に対し、抗告したが棄却決定となったため、再抗告した事案において、医療観察法の目的の正当性、同法の規定する処遇及びその要件の必要性、合理性、相当性、手続保障の内容等に鑑みれば、医療観察法による処遇制度は、憲法14条、22条1項に違反するものではなく、憲法31条の法意に反するものということもできないとして、抗告を棄却した事例。
2017.12.19
受信契約締結承諾等請求事件
「新・判例解説Watch」H30.1月中旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449082/最高裁判所大法廷 平成29年12月 6日 判決 (上告審)/平成26年(オ)第1130号 等
原告(NHK)が、原告のテレビ放送を受信することのできる受信設備を設置したが、放送受信契約を締結しない1審被告に対し、主位的には、放送法64条1項等によって1審原告と1審被告との間で放送受信契約が成立していると主張して、放送受信契約に基づき、上記受信機を設置した月から現在までの受信料の支払を求め(主位的請求)、予備的には、上記放送受信契約が成立していないことを前提として、被告は放送受信契約締結義務の履行を遅滞していると主張して、債務不履行に基づく損害賠償として上記受信料相当額の支払を求め(予備的請求1)、被告は放送受信契約締結義務を負うと主張して、原告からの上記申込みに対する承諾の意思表示と、上記申込み及び承諾の意思表示によって成立する放送受信契約に基づき、上記受信料の支払を求め(予備的請求2)、被告は上記受信料相当額を不当に利得していると主張して、上記受信料相当額の返還を求め(予備的請求3)、1審判決が、主位的請求及び予備的請求1をいずれも棄却し、予備的請求2を認容し、原告及び被告の双方がこれを不服として控訴し、被告が受信機を設置した日の属する月の翌月である平成18年4月分から平成26年1月分までの未払受信料又は未払受信料相当額の支払等を求める請求に変更し、控訴審は、原告の主位的請求及び予備的請求1を棄却し、予備的請求2については認容し、これと一部異なる1審判決を変更し、被告の控訴を棄却したため、双方が上告した事案において、放送法64条1項は、同法に定められた原告の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の受信契約の締結を強制する旨を定めたものとして、憲法13条、21条、29条に違反しないとし、また、受信契約に基づき発生する受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(受信契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は、受信契約成立時から進行するものと解するのが相当であるなどとし、原告の請求のうち予備的請求2を認容すべきものとした控訴審の判断は、是認することができるとして、本件各上告を棄却した事例(補足意見、反対意見がある)。
2017.11.21
九条俳句不掲載損害賠償等請求事件 
「新・判例解説Watch」H29.12月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25547455/さいたま地方裁判所 平成29年10月13日 判決 (第一審)/平成27年(ワ)第1378号
原告が被告(さいたま市)に対し、〔1〕かたばみ三橋俳句会と三橋公民館は、本件句会が三橋公民館に提出した俳句を同公民館が発行する公民館だより(本件たより)に掲載する合意をしたと主張し、同合意に基づき、原告が詠んだ俳句を本件たよりに掲載することを求めるとともに、〔2〕三橋公民館(その職員ら)が、本件俳句を本件たよりに掲載しなかったことにより精神的苦痛を受けたと主張し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料の支払等を求めた事案において、三橋公民館及び桜木公民館の職員らが、原告の思想や信条を理由として、本件俳句を本件たよりに掲載しないという不公正な取扱いをしたことにより、法律上保護される利益である本件俳句が掲載されるとの原告の期待が侵害されたということができるから、三橋公民館が、本件俳句を本件たよりに掲載しなかったことは、国家賠償法上、違法であるとして、原告の請求を一部認容し、その余の請求を棄却した事例。
2017.11.21
損害賠償請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」H30.1月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25547456/名古屋高等裁判所 平成29年 9月14日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第796号
名張市議会議員で教育民生委員会に所属する控訴人(原告)が、同委員会で計画された視察旅行の必要性に疑問を感じてその実施に反対意見を述べ、欠席願いを提出した上、同視察旅行を欠席したところ、名張市議会運営委員会が控訴人に対して同欠席について厳重注意処分を決定し、D議長が多数の新聞記者のいる議長室で上記処分の事実を公表するという名誉棄損行為によって精神的苦痛を被ったと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、被控訴人(被告。名張市)に対し、慰謝料の支払等を求め、原審は、議会運営委員会が厳重注意処分を決定し、D議長が同処分を公表したことは、控訴人に対する名誉棄損行為に該当するものの、上記処分は地方議会の自律権の範囲内で決定されたものであって、その適否については司法審査が及ばないとして、控訴人の請求を棄却したため、控訴人が控訴した事案において、被控訴人には国家賠償法1条1項による損害賠償責任があるというべきであるとし、控訴人に認められるべき慰謝料の額を50万円の限度としたうえで一部認容とし、その余の請求を棄却すべきところ、これと異なり、控訴人の請求を全部棄却した原判決は失当であるとして、原判決を取り消した事例。
2017.11.14
選挙無効請求事件 
LEX/DB25449008/最高裁判所第三小法廷 平成29年10月31日 判決 (上告審)/平成29年(行ツ)第67号
公職選挙法204条の選挙無効訴訟は、選挙人らによる公職の候補者に対する投票の結果としての選挙の効力について、選挙人又は公職の候補者が上記のような無効原因の存在を主張して争う争訟方法であり、同法の規定で一定の年齢に達しない者につき被選挙権を制限していることの憲法適合性については、当該者が自己の被選挙権の侵害を理由にその救済を求めて提起する訴訟においてこれを争うことの可否はおくとしても、同条の選挙無効訴訟において選挙人らが被選挙権の制限に係る当該規定の違憲を主張してこれを争うことは法律上予定されていないというべきであるとし、選挙人が同条の選挙無効訴訟において公職選挙法205条1項所定の選挙無効の原因として本件規定の違憲を主張し得るものとはいえないから、この点に関する論旨は採用することができないとして、本件上告を棄却した事例(意見がある)。
2017.11.07
旅券返納命令及び渡航先制限取消請求事件 
LEX/DB25547177/東京地方裁判所 平成29年 4月19日 判決 (第一審)/平成27年(行ウ)第462号
ジャーナリストである原告が、トルコ共和国とシリアとの国境付近に渡航し、現地を取材した上でその成果を発表する計画を有していたところ、外務大臣から旅券法19条1項4号の規定に基づく一般旅券の返納命令を受け、その後、原告が一般旅券の発給の申請をしたところ、外務大臣から一般旅券の発給処分を受けるに当たり、同法5条2項の規定に基づき、その渡航先を本件渡航先とする制限を受けたことから、上記各処分が、いずれも原告の報道及び取材の自由(憲法21条1項)並びに海外渡航の自由(憲法22条2項)を侵害し、外務大臣の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものであり、また、憲法31条に由来する行政手続法13条1項の規定に基づく聴聞の手続を経なかったものであるから、違憲かつ違法であるとして、その各取消しを求めた事案において、原告の請求を棄却した事例。
2017.10.10
選挙無効請求事件 
LEX/DB25448923/最高裁判所大法廷 平成29年 9月27日 判決 (上告審)/平成29年(行ツ)第47号
平成28年7月10日施行の参議院議員通常選挙について、東京都選挙区及び神奈川県選挙区の選挙人である上告人(原告)らが、公職選挙法14条、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は憲法に違反し無効であるから、これに基づき施行された本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟の上告審において、本件選挙当時、平成27年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできないとし、原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(意見、反対意見がある)。
2017.10.10
選挙無効請求事件  
「新・判例解説Watch」H29.12月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25448924/最高裁判所大法廷 平成29年 9月27日 判決 (上告審)/平成29年(行ツ)第4号 等
平成28年7月10日施行の参議院議員通常選挙について、各選挙区(東京都選挙区ほか20選挙区)の選挙人である上告人らが、公職選挙法14条、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は憲法に違反し無効であるから、これに基づき施行された本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟の上告審において、本件選挙当時、平成27年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできないとし、原審の各判断は、いずれも是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(意見、反対意見がある)。
2017.08.15
要指導医薬品指定差止請求事件(薬のインターネット販売 一部規制は合憲)
LEX/DB25546307/東京地方裁判所 平成29年 7月18日 判決 (第一審)/平成26年(行ウ)第29号
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)で、店舗販売業者に対し、要指導医薬品の販売又は授与を行う場合には薬剤師に対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を行わせなければならないものとし、上記の情報提供又は指導ができないときは要指導医薬品の販売又は授与をしてはならないものとする各規定が設けられ、医薬品が要指導医薬品として指定されたことについて、インターネットを通じて店舗以外の場所にいる者に対する郵便その他の方法による医薬品の販売を行う事業者である原告が、本件対面販売規制は必要性及び合理性に欠ける規制であって憲法22条1項に違反するなどと主張して、〔1〕厚生労働大臣が行った製剤に係る要指導医薬品の指定の取消しを求めるとともに、〔2〕要指導医薬品である製剤につき、本件各規定にかかわらず郵便等販売をすることができる権利ないし地位を有することの確認を求めた事案において、本件訴えのうち、厚生労働大臣が行った本件製剤に係る要指導医薬品の指定の取消しを求める部分を却下し、本件対面販売規制を定める本件各規定は、立法府の合理的裁量の範囲を逸脱するものと断じることはできず、憲法22条1項に違反するものということはできないとし、また、本件各指定は、その指定の要件に欠けるものではなく、適法であるとして、原告のその余の請求を棄却した事例。