注目の判例

行政法

2022.11.22
裁決取消請求事件
LEX/DB25593481/東京高等裁判所 令和 4年10月12日 判決 (第一審)/平成31年(行ケ)第8号
原告が船長として操船する第二●丸(●丸)が、未明に、きびなご刺し網漁のため、甲板員2名(兄2名。うち1名はP4)を乗せて、無灯火のまま航行して鹿児島県南さつま市坊津町所在の坊泊漁港泊地区の泊所在の船だまり(泊船だまり)から出港し、P5船長が操船する▲丸と、港口付近で衝突し、これにより、●丸の右舷船尾部に圧潰等を、▲丸の船首部及び船底部に破口、亀裂等をそれぞれ生じさせ、原告が入院加療約2箇月を要する右外傷性気胸等の傷害を負った海難事故(本件海難)についての海難審判事件において、門司地方海難審判所が、原告の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する一方、P5を懲戒しないとの裁決をしたところ、原告が、本件海難は、原告の職務上の過失によって生じたものではなく、P5の過失(見張り懈怠、安全な速力違反等)により生じたものであると主張して、本件裁決のうち原告の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止した処分の取消しを求めた事案で、本件衝突と原告の無灯火との間には、因果関係があり、本件裁決における業務停止期間が法定の最短期間である1箇月であることも考慮すれば、やむを得ない範囲のものと認められ、本件裁決には裁量権を逸脱した違法はないとして、原告の請求を棄却した事例。
2022.10.25
国家賠償請求事件
LEX/DB25593422/水戸地方裁判所 令和 4年 9月16日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第552号
カメルーン国籍の男性Aの母である原告が、東日本入管センターを設置していた被告(国)に対し、被告の公務員であった東日本入管センターの職員らは、Aの容態が急変した時点でAを救急搬送するべき義務があったのに、これを怠り、Aを救急搬送しなかったことにより、Aを死亡させたなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、損害金の一部である1000万円の支払等を求めた事案で、被告は、被告の公権力の行使に当たる公務員である上記職員らがその職務を行うについて、救急搬送を要請し、医療機関に救急搬送するべき注意義務があったのに、これを怠り、Aが心肺停止の状態で発見されるまで救急搬送を要請しなかった過失によって違法にAに加えた損害について、賠償する責任を負うとして、原告の請求は、被告に対し、損害金165万円の支払等を求める限度で一部認容した事例。
2022.09.20
固定資産評価審査決定取消等請求事件
LEX/DB25572312/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 9月 8日 判決 (上告審)/令和3年(行ヒ)第283号
ゴルフ場の用に供されている兵庫県丹波市所在の一団の本件各土地に係る固定資産税の納税義務者である上告人が、土地課税台帳に登録された本件各土地の平成30年度の価格を不服として丹波市固定資産評価審査委員会に審査の申出をしたところ、これを棄却する旨の審査の決定を受けたことから、上記価格の適否に関する本件決定の判断に誤りがあるなどと主張して、被上告人を相手に、本件決定のうち上告人が適正な時価と主張する価格を超える部分の取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき、弁護士費用相当額等の損害賠償を求め、原審は、本件各土地の造成に当たり土工事をほとんど要しないにもかかわらず丘陵コースの平均的造成費(840円/平方メートル)を用いることは、評価基準の定める評価方法に従ったものとはいえず、本件登録価格は評価基準によって決定される価格を上回るとして、上告人の本件決定の取消請求を一部認容すべきものとしたが、上告人の損害賠償請求を棄却すべきものとしたため、上告人が上告した事案において、本件委員会の委員に職務上の注意義務違反が認められないとした原審の判断には、国家賠償法1条1項の解釈適用を誤った違法があるとし、原判決中、損害賠償請求に関する部分は破棄し、更に審理を尽くさせるため、同部分につき、本件を原審に差し戻すこととし、上告人のその余の上告については、上告人が上告受理申立ての理由を記載した書面を提出しないので却下した事例。
2022.07.26
損害賠償等請求事件
LEX/DB25572250/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 7月19日 判決 (上告審)/令和3年(オ)第555号 等
水道事業者である被上告人との間で給水契約を締結している上告人らが、給水区域内である宮古島市伊良部において生じた断水により上告人らの経営する宿泊施設における営業利益の喪失等の損害が生じたなどと主張して、被上告人に対し、本件給水契約の債務不履行等に基づく損害賠償を求め、原審は、本件給水契約の債務不履行に基づく損害賠償請求を棄却したため、上告人らが上告した事案で、宮古島市水道事業給水条例16条3項は、被上告人が、水道法15条2項ただし書により水道の使用者に対し給水義務を負わない場合において、当該使用者との関係で給水義務の不履行に基づく損害賠償責任を負うものではないことを確認した規定にすぎず、被上告人が給水義務を負う場合において、同義務の不履行に基づく損害賠償責任を免除した規定ではないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、被上告人の本件断水による給水義務の不履行に基づく損害賠償責任の有無については、本件断水につき、災害その他正当な理由があってやむを得ない場合に当たるか否かなどについて更に審理を尽くした上で判断すべきであるから、本件を原審に差し戻した事例(補足意見がある)。
2022.07.05
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和4年9月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572195/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 6月17日 判決 (上告審)/令和3年(受)第1205号
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力の福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質によってその当時の居住地が汚染されたと主張する者又はその承継人である被上告人(一審原告)らが、上告人(一審被告)に対し、上告人が津波による本件発電所の事故を防ぐために電気事業法(平成24年法律第47号による改正前のもの)に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であり、これにより損害を被ったなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、上告人が、経済産業大臣が上記の規制権限を行使しなかったことを理由として、被上告人らに対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うということはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人らの上告人に対する請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は相当であるから、上記部分につき、被上告人らの控訴を棄却した事例(反対意見、補足意見がある)。
2022.07.05
原状回復等請求事件
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LEX/DB25572196/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 6月17日 判決 (上告審)/令和3年(受)第342号
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力の福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質によってその当時の居住地が汚染されたと主張する者又はその承継人である被上告人(一審原告)らが、上告人(一審被告)に対し、上告人が津波による本件発電所の事故を防ぐために電気事業法(平成24年法律第47号による改正前のもの)に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であり、これにより損害を被ったなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めるとともに、人格権又は同項に基づく原状回復請求として、本件事故当時の居住地における空間放射線量率を0.04マイクロシーベルト毎時以下にすることを求めた上告審において、経済産業大臣が電気事業法40条に基づく規制権限を行使して津波による本件発電所の事故を防ぐための適切な措置を講ずることを東京電力に義務付けなかったことを理由として、被上告人らに対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うということはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中、別紙被上告人目録2から6まで記載の被上告人らの上告人に対する損害賠償請求についての上告人敗訴部分を破棄し、上記請求は理由がないから、上記破棄部分につき、第1審判決中別紙被上告人目録2から4まで記載の被上告人らの請求に関する上告人敗訴部分を取消した上で同部分に関する同被上告人らの請求をいずれも棄却し、別紙被上告人目録2、3、5及び6記載の被上告人らの控訴を棄却し、別紙被上告人目録2及び5記載の被上告人らの原審における追加請求をいずれも棄却した事例(反対意見、補足意見がある)。
2022.05.31
行政文書不開示処分取消請求事件
LEX/DB25572147/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 5月17日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第340号 等
被上告人が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成26年法律第67号による改正前のもの)に基づき、消費者庁長官に対し、株式会社安愚楽牧場(旧商号は有限会社安愚楽共済牧場)に関する行政文書の開示を請求したところ、これに該当する行政文書のうち別紙目録記載の部分等に記録された情報が情報公開法5条6号イ等所定の不開示情報に該当するとして、当該部分等を除いた一部を開示する旨等の各決定を受けたため、本件各決定のうち別紙目録記載の部分等に関する部分の取消しを求めたところ、原審は、本件各決定のうち別紙目録記載3から11までの部分に関する部分の取消請求を認容したため、上告人及び附帯上告人が上告受理申立てをした事案で、原判決中、別紙目録記載の部分に関する部分は破棄し、同目録記載の部分に記録されている情報が情報公開法5条6号イ所定の不開示情報に該当するか否か等につき更に審理を尽くさせるため、上記の破棄部分につき、本件を原審に差し戻すこととし、上告人のその余の上告については、上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので、棄却した事例(補足意見がある)。
2022.04.19
国家賠償請求控訴事件
LEX/DB25591851/東京高等裁判所 令和 4年 3月11日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第2936号
平成8年法律第105号による改正前の優生保護法に基づいて強制不妊手術(本件優生手術)を受けさせられたと主張する控訴人(原告)が、被控訴人(被告。国)に対し、国家賠償法1条1項に基づく慰謝料の支払、また、民法723条の法意に照らし、優生手術を受けた者に対する社会的評価を回復させる義務があるなどとして、被控訴人に対し謝罪広告を求めたところ、原判決が控訴人の請求をいずれも棄却したため、これを不服として控訴人が控訴した事案において、控訴人が本件優生手術を受けたことが認められ、本件優生手術時、控訴人は未成年者であり、これが控訴人の同意によるもの(優生保護法3条の定める「医師の認定による優生手術」)でないことは明らかであるから、本件優生手術が優生条項に基づくものであり、憲法13条、14条1項で保障される人権を侵害するものであることが認められるとし、控訴人の請求を全部棄却した原判決は失当であり、本件控訴は一部理由があるから、原判決を取消し、慰謝料請求について一部認容した事例。
2022.01.25
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25591382/札幌高等裁判所 令和 3年12月14日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第18号
北海道内の漁業者である控訴人らが、〔1〕被控訴人(国・北海道)らは、遅くとも平成29年7月1日までに法的拘束力のある漁獲制限をする義務があったにもかかわらず、これを怠り、漁業者の自主管理に委ねた結果、第3管理期間において上限を大幅に超過する漁獲を招き、控訴人らは第4管理期間以降のくろまぐろ漁が事実上できなくなった、〔2〕被控訴人国の第4管理期間における超過差引きは裁量権を逸脱・濫用するものであり違法であるなどと主張して、被控訴人らに対し、国家賠償法1条1項に基づき、第4管理期間以降6年間の逸失利益及び慰謝料等の支払をそれぞれ求めたところ、原審は、控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らは、原判決を不服として控訴した事案で、被控訴人国の資源管理法、漁業法及び水産資源保護法に基づく規制権限の不行使について、国家賠償法1条1項の適用上、違法とはいえないとし、また、被控訴人北海道の規制権限不行使についても違法とはいえないなどとして、原判決は相当であるとし、本件各控訴を棄却した事例。
2022.01.18
不作為の違法確認等請求事件
LEX/DB25591349/広島地方裁判所 令和 3年10月26日 判決 (第一審)/令和2年(行ウ)第32号
原告は、双極性感情障害により、厚生労働大臣から国民年金法及び厚生年金保険法所定の障害等級2級の裁定を受け、同等級に基づく障害基礎年金及び障害厚生年金を受給していたところ、厚生労働大臣は、原告の障害等級が3級の状態にあるとして、障害基礎年金の支給を停止し、障害厚生年金の額を改定する処分を行ったことにより、原告が、障害の状態は障害等級2級に該当し、本件処分が違法であると主張して、被告(国)に対し、本件処分の取消しを求めた事案において、本件現症時における原告の障害の状態は、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又は頻繁に繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受ける状態にあり、障害の程度は、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度に至っているといえるから、原告の障害等級は2級以上に該当しないとはいえないとして、障害基礎年金の支給を停止し、本件処分を取り消し、請求を認容した事例。
2021.12.28
不当利得返還請求事件
LEX/DB25571864/最高裁判所第三小法廷 令和 3年12月21日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第335号
岡山市の住民である被上告人(原告・控訴人兼附帯被控訴人)が、市議会の複数の会派が平成27年度に交付を受けた政務活動費に関し、岡山市議会の各会派に対する政務活動費の交付に関する条例の定めに適合しない違法な支出がされているから、各会派はこれを不当利得として市に返還すべきであるにもかかわらず、上告人(被告・被控訴人兼附帯控訴人。岡山市長)はその返還の請求を違法に怠っているとして、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、上告人を相手に、各会派に対して不当利得返還を求めた住民訴訟で、原審は、印刷代の全額及び講座費用のうち一部が使途基準に適合しないとした上で、被上告人のネクスト岡山に係る請求を全部認容し、市民ネットに係る請求のうち平成27年5月以降分の政務活動費に係るものを一部認容したため、上告人が上告した事案で、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、被上告人のネクスト岡山に係る請求について認容額を一部変更し、また、市民ネットに係る請求に関する部分については、不当利得返還義務の存否等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すことを命じた。他方、本件上告のうち自由民主党岡山市議団に係る請求に関する部分については、上告受理申立てを棄却し、その余の本件上告については却下した事例(補足意見がある)。
2021.11.24
「黒い雨」被爆者健康手帳交付請求等控訴事件
LEX/DB25590503/広島高等裁判所 令和 3年 7月14日 判決 (控訴審)/令和2年(行コ)第10号
本件申請者らが、昭和20年8月6日に広島市に原子爆弾が投下された後に発生した雨(黒い雨)に遭ったことをもって、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律1条3号の「原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」に当たると主張して、広島市長又は広島県知事に対し、同法2条1項に基づく被爆者健康手帳の各交付申請をし、また、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行令附則2条、別表第3が黒い雨降雨域全体を第一種健康診断特例区域に指定していないのは、被爆者援護法附則17条の委任の趣旨を逸脱・濫用するものであり、広島原爆が投下された際黒い雨降雨域に所在した本件申請者らについては、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行規則附則2条2項に基づく第一種健康診断受診者証の各交付申請が認められてしかるべきであると主張して、広島市長又は広島県知事に対し、上記各交付申請をしたところ、広島市長及び広島県知事が被爆者健康手帳及び第一種健康診断受診者証の各交付申請をいずれも却下したことから、控訴人・広島市らに対し、主位的に、被爆者健康手帳交付申請の各却下処分の取消しと被爆者健康手帳交付の義務付けを求め、予備的に、第一種健康診断受診者証交付申請の各却下処分の取消しと第一種健康診断受診者証交付の義務付けを求め、原審が、本件申請者らの被爆者健康手帳交付申請の各却下処分の取消し及び被爆者健康手帳交付の義務付けの各主位的請求をいずれも認容したところ、控訴人ら及び参加行政庁が控訴した事案で、被控訴人らの各主位的請求はいずれも理由があるところ、これと同旨の原判決は、本件申請者らが原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律1条3号の「原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」に該当するとの判断の根拠として402号通達を用いるなどした点で失当であるが、結論において相当であるとして、本件各控訴をいずれも棄却した事例。
2021.06.29
情報不開示決定取消等請求事件
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LEX/DB25571573/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 6月15日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第102号
東京拘置所に未決拘禁者として収容されていた上告人(原告・控訴人)が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づき、東京矯正管区長に対し、収容中に上告人が受けた診療に関する診療録に記録されている保有個人情報(本件情報)の開示を請求したところ、同法45条1項所定の保有個人情報に当たり、開示請求の対象から除外されているとして、その全部を開示しない旨の決定(本件決定)を受けたことから、被上告人(被告・被控訴人。国)を相手に、その取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料等の支払を求めたところ、原審は、本件情報については、本件決定は適法であるとして、上告人の請求を棄却したため、上告人が控訴した事案で、被収容者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は、行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たらないから、同法12条1項の規定による開示請求の対象となるとして、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差戻した事例(補足意見がある)。
2021.06.15
被災者生活再建支援金支給決定取消処分取消請求本訴,不当利得返還請求反訴,不当利得返還請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和3年8月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571555/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 6月 4日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第133号
本件本訴は、上告人(宮城県から被災者生活再建支援金の支給に関する事務の委託を受けた被災者生活再建支援法人)が、本件各支援金の支給決定(本件各支給決定)を支給要件の認定の誤りを理由に取り消す旨の決定(本件各取消決定)をしたことから、被上告人(上告人から支援金の支給を受けた者又はその相続人)らが,本件各支給決定を取り消すことは許されないと主張して、上告人を相手に、本件各取消決定の取消しを求め、本件反訴は、上告人が、本件各取消決定により被上告人らが本件各支援金を保持する法律上の原因を失ったと主張して、被上告人らに対し、本件各支援金相当額の不当利得返還を求めたところ、原審は、本件各世帯が大規模半壊世帯に該当するとは認められず、本件各支給決定には違法があるとしたものの、本件各取消決定は違法であるとして、その取消しを求めた本訴請求を認容するとともに、不当利得返還を求めた反訴請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、上告人は、本件各世帯が大規模半壊世帯に該当するとの認定に誤りがあることを理由として、本件各支給決定を取り消すことができると判示し、原判決中被上告人らに関する部分(原判決主文第1項)は破棄し、本件各取消決定は適法であるから、その取消しを求めた本訴請求は理由がなく、また、本件各支援金に係る不当利得返還を求める反訴請求は理由があるとして、本訴請求を棄却するとともに反訴請求を認容した第1審判決は正当であるから,被上告人らの控訴を棄却した事例。
2021.06.08
保有個人情報不開示決定処分取消請求控訴事件
LEX/DB25569195/大阪高等裁判所 令和 3年 4月 8日 判決 (控訴審)/令和2年(行コ)第133号
大阪刑務所収容中の控訴人が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律13条に基づき、処分行政庁に対し、控訴人の診療情報(本件情報)の開示を請求したところ、処分行政庁から、本件情報は同法45条1項により開示請求の規定の適用が除外されている情報に該当するとして、その全部を開示しない旨の決定(本件決定)を受けたことから、本件決定は同項の解釈を誤ったものであるなどと主張して、本件決定の取消しを求め、原判決は控訴人の請求を棄却したので、控訴人が、不服であるとして、控訴した事案において、刑事施設において保有する診療情報は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律12条1項による開示請求の対象となるから、刑事施設の被収容者(又は被収容者であった者)からその開示請求がされた場合、当該診療情報の全部又は一部に同法14条所定の不開示情報があるかを検討した上でその開示の可否が検討されなければならないとし、本件情報が開示請求の対象外であることを理由としてされた本件決定は、同法45条1項の解釈適用を誤った違法があり、これを適法として控訴人の請求を棄却した原判決を取消し、控訴人の請求を認容した事例。
2021.05.25
住民訴訟による違法確認請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和3年8月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571497/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 5月14日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第238号
徳島県の住民である被上告人(原告・控訴人)が、県知事Aが管弦楽団の演奏会への出席のために公用車を使用したことは違法であり、公用車の燃料費並びに同行した秘書及び運転手の人件費に相当する額につき、県はA知事に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有するにもかかわらず、上告人(被告・被控訴人)はその行使を違法に怠っていると主張して、上告人を相手に、当該怠る事実が違法であることの確認を求めた住民訴訟で、原判決が被上告人の請求を一部認容したため、上告人が上告した事案において、県を統轄して、これを代表し、また、その事務を管理し及びこれを執行する県知事であるA知事が、県の事務として開催された本件演奏会に出席したことは、公務に該当するものというべきであるとし、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人の請求を棄却した第1審判決は相当であるから、上記部分につき、被上告人の控訴を棄却した事例。
2021.03.23
生活保護基準引下げ処分取消等請求事件(甲事件、乙事件)
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和3年5月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
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LEX/DB25568796/大阪地方裁判所 令和 3年 2月22日 判決 (第一審)/平成26年(行ウ)第288号 等
大阪府内に居住して生活保護法に基づく生活扶助の支給を受けている原告ら(ただし、原告X1、原告X2及び原告X3については、その夫が生活扶助の支給を受けている。)が、生活保護法の委任に基づいて厚生労働大臣が定めた「生活保護法による保護の基準」(保護基準)の数次の改定により、所轄の福祉事務所長らからそれぞれ生活扶助の支給額を減額する旨の保護変更決定(本件各決定)を受けたため、保護基準の上記改定は憲法25条、生活保護法8条等に違反する違憲、違法なものであるとして、〔1〕原告X1,原告X2及び原告X3を除く原告らにおいて、被告ら(ただし、被告国を除く。)を相手に、本件各決定の取消しを求めるとともに、〔2〕被告国に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を求めた事案で、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続に過誤、欠落があり、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるから、本件改定は、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法であるとして、原告らのうち原告X1、原告X2及び原告X3を除く者の本件各決定の取消請求については認容し、原告らのその余の請求(国家賠償請求)については棄却した事例。
2021.03.16
不当利得返還請求事件
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LEX/DB25571330/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 3月 2日 判決 (上告審)/令和2年(受)第763号
被上告人(原告・被控訴人。栃木県)が、上告人(被告・控訴人。国)から、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律にいう補助金を交付された後に、上告人から、補助金により取得した財産の処分価格に係る補助金相当額である金員の納付命令を受け、同額の金員を上告人に支払ったが、本件納付命令は無効であるから、上告人は、本件返納により法律上の原因なく金員を利得し、被上告人は同額の損失を被ったと主張して、上告人に対し、不当利得返還請求権に基づき、金員の返還及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、第1審は被上告人の請求を認容したため、上告人が控訴し、控訴審は第1審判決は相当であるとして本件控訴を棄却したため、上告人が上告した事案で、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律22条に基づくものとしてされた財産の処分の承認が同法7条3項による本件交付決定条件に基づいてされたものとして適法であるとし、控訴審判決を破棄し、被上告人の請求は理由がないから、第1審判決を取消し、同請求を棄却した事例(補足意見がある)。
2021.02.16
損害賠償請求事件
LEX/DB25568415/札幌地方裁判所 令和 2年11月27日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第1913号
北海道内の漁業者である原告らが、被告国及び被告北海道は漁業者への法的措置を講じず、漫然と漁業者の自主管理に委ねた結果、第3管理期間において上限を大幅に超過する漁獲を招き、もって第4管理期間以降のくろまぐろ漁が事実上できなくなったなどと主張して、被告国及び被告北海道に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案において、被告国及び被告北海道の公権力の行使につき、国家賠償法1条1項の適用上違法があるとの原告らの主張は、いずれも理由がないとして、請求をいずれも棄却した事例。
2021.02.02
裁決取消等請求事件
LEX/DB25571251/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 1月22日 判決 (上告審)/令和1年(行ヒ)第393号
被上告人が、上告人を相手に、いずれも知事を上告人の代表者として、(1)本件裁決は権限のない者がした違法なものであるとして、本件裁決の取消しを求め(請求1)、(2)本件知事不作為は違法であるなどとして、その違法の確認を求め(請求2)及び知事が本件審査請求を認容する裁決をすることの義務付けを求め(請求3)、(3)本件管理者不作為を理由として、国家賠償法1条1項に基づく慰謝料の支払を求め(請求4)、原審は、第1審判決を取消して本件を第1審に差し戻したため、上告人が上告した事案で、本件訴えのうち請求1及び請求4に係る部分は、被告の代表者を誤って提起された訴えが不適法であり、その不備はもはや補正することができないとし、また、本件訴えのうち請求2及び請求3に係る部分は、誤った行政庁に宛てて審査請求書を提出することによりされた審査請求に係る不作為の違法確認の訴え及び義務付けの訴えが不適法であり、その不備を補正することができないとし、これと異なる原審の判断には、明らかな法令の違反があり、原判決を破棄し、本件訴えを不適法として却下した第1審判決は是認できるとして、被上告人の控訴を棄却した事例。