注目の判例

行政法

2018.11.20
違法公金支出損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 1月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449792/最高裁判所第三小法廷 平成30年11月 6日 判決 (上告審)/平成29年(行ヒ)第226号
大竹市による市の土地の譲渡につき、市の住民である被上告人(控訴人・原告)らが、当該譲渡は地方自治法237条2項にいう適正な対価なくしてされたにもかかわらず、同項の議会の議決によるものでないことなどから違法であるとして、同法242条の2第1項4号に基づき、上告人(被控訴人・被告)を相手に、当時市長の職にあった者に対して損害賠償請求をすること等を求めた住民訴訟で、原審が、A市長に対する損害賠償請求をすることを求める被上告人らの請求のうち本件土地の適正な対価の下限であるという金額4億9910万円と本件譲渡価格との差額である1億4910万円に相当する部分を認容したため、上告人が上告した事案において、本件譲渡議決に関しては、市議会で、本件譲渡価格に加えて平成23年鑑定評価額を踏まえた上で、本件譲渡が適正な対価によらずにされたものであったとしてもこれを行う必要性と妥当性についても審議がされており、審議の実態に即して、本件譲渡が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上これを行うことを認める趣旨でされたものと評価することができるから、本件譲渡議決をもって、地方自治法237条2項の議会の議決があったということができ、本件譲渡の方式等についてみても、プロポーザル方式により本件公募をし、エポックワンらを選定した経緯等に関し、A市長が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したことをうかがわせる事情は存しないとして、本件譲渡に財務会計法規上の義務に違反する違法はなく、A市長は、本件譲渡に関して、市に対する損害賠償責任を負わないというべきであるとして、原判決中上告人敗訴部分につき破棄し、上記部分に関する被上告人らの請求を棄却した第1審判決は相当であるとし、上記部分につき、被上告人らの控訴を棄却した事例(補足意見あり)。
2018.11.06
遺留分減殺請求事件
LEX/DB25449749/最高裁判所第二小法廷 平成30年10月19日 判決 (上告審)/平成29年(受)第1735号
上告人が、被上告人に対し、本件相続分譲渡によって遺留分を侵害されたとして、被上告人が遺産分割調停によって取得した不動産の一部についての遺留分減殺を原因とする持分移転登記手続等を求め、本件相続分譲渡が、亡Aの相続において、その価額を遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与(民法1044条、903条1項)に当たるか否かが争われ、原審は、上告人は遺留分を侵害されていないとして、上告人の請求を棄却すべきものとしたため、上告人が上告した事案で、共同相続人間でされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する「贈与」に当たるとし、本件相続分譲渡はその価額を遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与に当たらないとして上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととした事例。
2018.10.30
裁判官に対する懲戒申立て事件
LEX/DB25449743/最高裁判所大法廷 平成30年10月17日 決定 (上告審)/平成30年(分)第1号
被申立人(高等裁判所の民事事件担当の判事)が、実名が付された自己のアカウントで、高等裁判所で控訴審判決がされて確定した自己の担当外の事件である犬の返還請求等に関する民事訴訟についての報道記事を閲覧することができるウェブサイトにアクセスすることができるようにするとともに、本件アカウントにおける投稿が裁判官である被申立人によるものであることが不特定多数の者に知られている状況の下で行われたものであった本件ツイートをし、上記訴訟を提起して犬の返還請求が認められた当事者の感情を傷つけた事実につき、被申立人である裁判官に対する懲戒申立てをした事案において、被申立人の行為は、裁判所法49条にいう「品位を辱める行状」に当たるとし、被申立人は、本件ツイートを行う以前に、本件アカウントにおける投稿によって裁判官の品位と裁判所に対する国民の信頼を傷つけたなどとして2度にわたる厳重注意を受けており、取り分け2度目の厳重注意は、訴訟に関係した私人の感情を傷つけるものである点で本件と類似する行為に対するものであった上、本件ツイートの僅か2か月前であったこと、当該厳重注意を受ける前の事情聴取の際、被申立人は、訴訟の関係者を傷つけたことについて深く反省しているなどと述べていたことにも照らすと、そのような経緯があるにもかかわらず、本件ツイートに及んだ被申立人の行為は、強く非難されるべきものであるとして、裁判官分限法2条の規定により被申立人を戒告することとした事例(補足意見がある)。
2018.08.07
建築確認処分取消等請求事件
LEX/DB25560531/大阪地方裁判所 平成30年 3月22日 判決 (第一審)/平成29年(行ウ)第126号
本件建築主は、大阪市の一部である別紙図面のA区画(本件土地)に地上5階建ての賃貸マンション(本件建物)の建築を計画し、平成28年7月15日付けで建築確認申請をしたところ、大阪市建築主事は、同年8月8日付けで、本件計画につき建築確認をしたが、本件土地の周辺に居住する原告らが、本件土地につき都市計画法29条1項の開発許可を経ていないから本件建築確認は違法であるなどと主張して、被告(大阪市)に対し、その取消しを求めるとともに、本件建築確認に係る原告らの審査請求を棄却した裁決の取消しを求めた事案で、本件建築確認取消請求において、本件建築確認の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有するとし、本件土地につき開発許可は不要であるとした本件不要判定は適法であり、本件計画は都市計画法29条1項に違反しないとし、他に本件建築確認を違法とすべき事由も見当たらないから、本件建築確認は適法であるとし、これを適法として原告らの審査請求を棄却した本件裁決はその結論において正当であり,本件裁決にこれを取り消すべき瑕疵があるとはいえないとし、原告らの請求をいずれも棄却した事例。
2018.07.31
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」憲法・行政法分野 10月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449587/最高裁判所第一小法廷 平成30年 7月19日 判決 (上告審)/平成28年(受)第563号
都立高校の教職員であった被上告人(原告・被控訴人)ら又はその被承継人らは、その在職中、各所属校の卒業式又は入学式において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の職務命令に従わなかったところ、東京都教育委員会(都教委)は、このことを理由として、東京都公立学校の再任用職員、再雇用職員又は非常勤教員の採用候補者選考において、上記の者らを不合格とし、又はその合格を取り消して、定年又は勧奨による退職後に再任用職員等に採用しなかったことを踏まえ、都教委が上記の者らを不合格とし、又はその合格を取り消したことについて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるなどとして、被上告人らが上告人(被告・控訴人。東京都)に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、第1審判決は、東京都教育委員会の裁量権の範囲の逸脱又は濫用を認め、被上告人らの請求を一部認容したため、上告人が控訴し、控訴審判決も第1審判決を維持しため、上告人が上告した事案において、任命権者である東京都教育委員会が、再任用職員等の採用候補者選考に当たり、従前の勤務成績の内容として本件職務命令に違反したことを被上告人らに不利益に考慮し、これを他の個別事情のいかんにかかわらず特に重視すべき要素であると評価し、そのような評価に基づいて本件不合格等の判断をすることが、その当時の再任用制度等の下で、著しく合理性を欠くものではなく、本件不合格等は、いずれも、都教委の裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないとして、原判決を破棄し、第1審判決中上告人敗訴部分を取消し、同部分につき被上告人らの請求をいずれも棄却した事例。
2018.07.10
許可処分義務付け等請求事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 9月中旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25560541/水戸地方裁判所 平成30年 6月15日 判決 (第一審)/平成28年(行ウ)第9号
被告の知事が、原告がした国定公園の特別地域内における太陽光発電設備の新築の許可申請に対し不許可処分をしたため、原告が、被告に対し、同処分の取消し及び同申請に対する許可処分の義務付けを求める事案で、取消訴訟について、本件申請は、被告が主張するいずれの不許可事由にも該当しないというべきであり、そうであるにもかかわらず被告の知事が本件不許可処分をしたことについては、裁量権の逸脱、濫用があるといわざるをえないとして、取消訴訟に係る原告の請求は理由があるとし、また、義務付け訴訟についても、被告の知事が原告に対し本件申請を許可しないことは、その裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるから、原告の本件申請に対する許可の義務付けの請求には理由があるとし、請求を認容した事例。
2018.06.12
建築変更確認取消裁決取消請求事件
LEX/DB25560274/東京地方裁判所 平成30年 5月24日 判決 (第一審)/平成28年(行ウ)第192号
原告らが建築主となって建築する共同住宅(本件マンション)の建築計画について、指定確認検査機関である株式会社都市居住評価センター(原処分庁)が、建築基準法6条1項前段に定める建築確認処分及び同項後段に定める建築計画変更確認処分をしたところ、被告参加人を含む本件マンションの周辺住民らが建築計画変更確認処分(本件処分)の取消しを求めて審査請求をし(26建審・請第1号審査請求事件)、東京都建築審査会(裁決行政庁)は、本件マンションの建築計画には条例違反の違法があるなどとして、上記審査請求を認容し、本件処分を取り消す旨の裁決をしたため、本件裁決により本件処分が取り消されたことにより本件マンションの建築工事を行うことができなくなったため、建築主である原告らが、被告(東京都)に対し、本件裁決の取消しを求めた事案において、本件マンションの建築計画が東京都建築安全条例32条6号に違反しているとした本件裁決の判断に誤りはなく、その他本件裁決に係る手続上の違法など原告ら及び同補助参加人の主張に係る違法事由はいずれも認められないとし、原告らの請求を棄却した事例。
2018.05.29
原子力発電所設置許可処分取消等請求事件、大間原子力発電所建設・運転差止等請求事件、原子力発電所建設・運転差止等請求事件
LEX/DB25449377/函館地方裁判所 平成30年 3月19日 判決 (第一審)/平成22年(行ウ)第2号
被告電源開発が経済産業大臣の設置許可処分に基づき青森県下北郡大間町に建設に着手した大間原子力発電所(本件原発)について、原告66名が、被告電源開発に対し、人格権に基づく侵害予防として,本件原発の建設及び運転の差止めを求めるとともに、原告ら1164名が、被告らに対し、本件原発の危険性に対する不安のため甚大な精神的苦痛を受けているなどとして、被告電源開発に対しては不法行為に基づき、被告国に対しては国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料各1000万円の一部請求として各3万円の連帯支払を求めた事案で、原告らが、規制委員会が本件原発の安全審査に用いる具体的審査基準に不合理な点があると主張するいずれの事項についても、不合理であるとは認められず、未だ規制委員会の判断がなされておらず、本件原発の運転開始の目途も立っていない現時点(本件口頭弁論終結時)においては、本件原発の重大な事故発生に伴う放射性物質の放出等の具体的危険があるとは認められないとし、原告らの被告電源開発に対する本件原発の建設及び運転の差止請求を棄却し、また、本件原発の運転開始の目途も立っていない現時点においては、本件原発の重大な事故発生に伴う放射性物質の放出等に対する原告らの不安感は抽象的なものにとどまると認められ、原告らの主張する法益侵害が生じているとはいえず、原告らの被告らに対する各慰謝料請求も棄却した事例。
2018.05.08
議場における発言取消命令取消請求事件
LEX/DB25449432/最高裁判所第一小法廷 平成30年 4月26日 判決 (上告審)/平成29年(行ヒ)第216号
被上告人(原告・控訴人。愛知県議会議員)が、県議会議長から、地方自治法129条1項に基づき、県議会の一般質問における県知事に対する発言の一部を取り消すよう命じられたため、上記発言は社会通念上相当な内容のものであるなどとして、上告人(被告・被控訴人。愛知県)を相手に、本件命令の取消しを求め、原審は、本件訴えを適法とし、本件命令の適否が司法審査の対象とならないとした第1審判決を取消し、本件を第1審に差し戻しを言い渡したため、上告人が上告した事案において、県議会議長の県議会議員に対する発言の取消命令の適否は、司法審査の対象とはならないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、本件訴えは不適法であり、これを却下した第1審判決は正当であるから、被上告人の控訴を棄却した事例。
2018.03.20
各水俣病認定申請棄却処分取消等請求控訴事件
LEX/DB25549278/東京高等裁判所 平成29年11月29日 判決 (控訴審)/平成28年(行コ)第259号
1審原告らが1審被告(新潟市)に対し、公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病認定申請棄却処分の取消しを求めるとともに、1審原告q11において、亡q1が、そのり患していた疾病が同法施行令1条に基づく別表第2の1において定める新潟県の区域のうち、新潟市及び豊栄市の区域に係る水質の汚濁の影響による水俣病である旨の認定を受けることができる者であった旨の決定をすることの義務付けを、1審原告q11を除く1審原告らにおいて、自己が、り患している疾病が上記区域に係る水質の汚濁の影響による水俣病である旨の認定をすることの義務付けをそれぞれ求め、原審は、1審原告q2の訴えのうち水俣病である旨の認定をすることの義務付けを求める部分及び1審原告q11の訴えのうち亡q1が水俣病である旨の認定を受けることができる者であった旨の決定をすることの義務付けを求める部分をいずれも却下し、1審原告q2及び1審原告q11のその余の請求をいずれも棄却し、また、1審原告らの請求を公健法所定の水俣病にかかっていると認定しいずれも認容したため、1審原告q2、1審原告q11及び1審被告がそれぞれ控訴した事案において、1審原告らの請求はいずれも理由があるから、原判決中、1審原告q2及び1審原告q11に係る部分をそれぞれ取消し、1審原告q2及び1審原告q11の請求をいずれも認容し、1審被告の控訴を棄却した事例。
2018.01.30
不開示決定処分取消等請求事件
「新・判例解説Watch」H30.3月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449195/最高裁判所第二小法廷 平成30年 1月19日 判決 (上告審)/平成29年(行ヒ)第46号
上告人(1審原告)が、情報公開法に基づき、内閣官房内閣総務官に対し、平成24年12月から同25年12月31日までの内閣官房報償費の支出に関する行政文書の開示を請求したところ、これに該当する行政文書のうち、政策推進費受払簿、支払決定書、出納管理簿、報償費支払明細書、領収書、請求書及び受領書の本件各文書に記録された情報が情報公開法5条3号及び6号所定の不開示情報に当たるとして、本件各文書を開示しないなどとする決定を受けたため、被上告人(1審被告。国)に対し、本件決定のうち同年1月1日から同年12月31日までの本件対象期間の内閣官房報償費の支出に関する本件各文書(本件対象文書)を不開示とした本件不開示決定部分の取消し及び本件対象文書の開示決定の義務付けを求めたところ、第1審判決は、一部の行政文書を不開示した部分を取り消し、開示決定をする旨を命じたほか、一部開示決定の義務付け請求に係る訴えを却下したため、双方が控訴し、原判決は、本件対象文書のうち政策推進費受払簿、出納管理簿(国庫からの内閣官房報償費の支出(受領)に係る記録部分を除く。)及び報償費支払明細書に係る本件不開示決定部分の取消請求を棄却し、これに係る開示決定の義務付けを求める訴えを却下すべきものとしたため、上告人が上告した事案において、政策推進費受払簿、出納管理簿のうち政策推進費の繰入れに係る記録部分及び月分計等記録部分並びに報償費支払明細書のうち政策推進費の繰入れに係る記録部分及び繰越記録部分に係る本件不開示決定部分が適法であるとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、内閣官房内閣総務官が上記の文書及び各記録部分について開示決定をすべきであることは明らかであり、これに係る上告人の本件不開示決定部分の取消請求及び開示決定の義務付け請求は、いずれも認容し、他方、報償費支払明細書のうち調査情報対策費及び活動関係費の各支払決定に係る記録部分に係る本件不開示決定部分が適法であるとした原審の判断は、是認することができ、これに関する上告人の上告は理由がなく、また、上告人のその余の請求に関する上告については、上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除し、原判決を変更した事例(意見がある)。
2018.01.23
損害賠償請求控訴事件
「新・判例解説Watch」H30.2月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449105/大阪高等裁判所 平成29年11月30日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第53号
控訴人(原告)が、大阪府情報公開条例に基づき、大阪府知事に対し、第16回ピースおおさか展示リニューアル監修委員会配付資料等の公開請求をしたのに対し、大阪府知事から、上記配付資料に記録されている情報が本件条例8条1項所定の非公開条例に該当することを理由とする非公開決定を受けたところ、同決定は違法であり、これにより精神的苦痛を受けたと主張して、被控訴人(被告。大阪府)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料の支払を求めた事案の控訴審において、本件文書を公開することにより、本件センターの正当な利益を害すると認められるとして、法人等情報に該当することを理由に本件非公開決定をしたことに相応の合理的な根拠が認められず、本件非公開決定は、大阪府知事が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件非公開決定をした点で、国賠法上も違法であるとして、原判決を変更して、控訴人の請求のうち、被控訴人に対し5万円を支払うよう命じ、その余の請求を棄却した事例。
2018.01.09
居住確認等請求本訴、家屋明渡等請求反訴事件
LEX/DB25449141/最高裁判所第一小法廷 平成29年12月21日 判決 (上告審)/平成29年(受)第491号
本件本訴は、上告人が、被上告人(京都市)の所有する住宅地区改良法2条6項の改良住宅である本件住宅を使用する権利を上告人の母であるAから承継したなどと主張して、被上告人に対し、本件住宅の使用権及び賃料額の確認等を求めるものであり、本件反訴は、被上告人が、本件住宅を占有する上告人に対し、所有権に基づく本件住宅の明渡し及び賃料相当損害金の支払等を求め、原審は、上告人による本件住宅の使用権の承継を否定したため、上告人が上告した事案において、原審の判断は是認することができるとし、上告を棄却した事例。
2018.01.09
執行停止決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25449147/最高裁判所第三小法廷 平成29年12月19日 決定 (許可抗告審)/平成29年(行フ)第3号
留寿都村議会が、地方自治法127条1項に基づき、同議会の議員である相手方が地方自治法92条の2の規定に該当する旨の決定をしたため、相手方が、その取消しを求める訴えを提起した上、これを本案として、行政事件訴訟法25条2項に基づき、本件決定の効力の停止を求めた事案において、相手方は、原々決定により、本件補欠選挙の投票及び開票がされる前に留寿都村議会の議員の地位を暫定的に回復していたのであり、同選挙について公職選挙法所定の異議の申出の期間が経過しても、相手方が上記地位を喪失することはず、そして、同議会の議員としての職務の遂行が制限されることによって相手方が受ける不利益は、その性質上、金銭賠償によって容易に回復し得ないものであるから、そのような重大な損害を避けるため本件決定の効力を停止する緊急の必要があるとし、原審は、原々決定に対する抗告人の抗告を棄却したため、抗告した事案において、現時点で、相手方はもはや上記議員の地位を回復することができない以上、本件決定の効力の停止を求める利益はないものといわざるを得ないとし、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原決定を破棄し、本件決定の効力を停止するとした原々決定を取消し、相手方の本件申立てを却下した事例(補足意見、反対意見がある)。
2018.01.09
被爆者健康手帳交付等請求事件 
LEX/DB25449124/最高裁判所第一小法廷 平成29年12月18日 判決 (上告審)/平成28年(行ヒ)第404号の1
長崎市に投下された原子爆弾に被爆したとする本件申請者らが、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(被爆者援護法)に基づき被爆者健康手帳の交付及び健康管理手当の認定の各申請をしたところ、長崎市長又は長崎県知事からこれらを却下する旨の処分を受けたため、本件申請者らは被爆者援護法1条3号所定の被爆者の要件を満たすなどと主張して、本件各処分の取消し、被爆者健康手帳の交付の義務付け等を求め、本件申請者らのうち本件訴訟の原審口頭弁論終結前に死亡した者については、それぞれ相続人が相続により本件訴訟における当該者の地位を承継したと主張して、訴訟承継の申立てをし、原審は、本件被相続人らに係る本件各処分の取消し及び被爆者健康手帳交付義務付けの訴えについて、本件各処分の取消しによって回復すべき法律上の利益及び被爆者健康手帳の交付の義務付けを求める法律上の利益は、本件申請者らが被爆者援護法上の被爆者として同法による援護(健康管理手当の支給を含む。)を受ける地位であるところ、同法による援護を受ける地位は被爆者に固有のものであり、一身専属的なものであると解されるから、本件相続人らが本件被相続人らの相続人としてこれを承継することはできず、本件被相続人らが本件各処分の取消しを求める訴訟及び被爆者健康手帳の交付の義務付けを求める訴訟は、本件被相続人らの死亡により当然に終了する。
2018.01.09
被爆者健康手帳交付等請求事件
LEX/DB25449125/最高裁判所第一小法廷 平成29年12月18日 判決 (上告審)/平成28年(行ヒ)第404号の2
長崎市に原子爆弾が投下された日の原子爆弾の爆心地付近に在ったなどとするAが、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(被爆者援護法)に基づき被爆者健康手帳の交付及び健康管理手当の認定の各申請をしたところ、長崎市長からこれらを却下する旨の処分を受けたため、Aは被爆者援護法1条2号又は3号所定の被爆者の要件を満たすなどと主張して、本件各処分の取消し等を求め、Aが本件訴訟の第1審口頭弁論終結前に死亡したことから、第1審で、上告人らが相続により本件訴訟におけるAの地位を承継したと主張して、訴訟承継の申立てをし、原審は、本件各処分の取消しによって回復すべき法律上の利益は、Aが被爆者援護法上の被爆者として同法による援護(健康管理手当の支給を含む。)を受ける地位であるところ、同法による援護を受ける地位は被爆者に固有のものであり、一身専属的なものであると解されるから、上告人らがAの相続人としてこれを承継することはできず、本件各処分の取消しを求める訴えは同人の死亡により当然に終了すると判断し、当該訴えにつき訴訟終了宣言をした第1審判決に対する上告人らの控訴を棄却したため、上告人らが上告した事案において、Aは、生前に被爆者健康手帳の交付及び健康管理手当の認定の各申請をしたものであるところ、これらを却下する旨の本件各処分の取消しを求める訴訟の係属中に死亡したのであるから、その相続人である上告人らにおいて、当該訴訟を承継することができるとし、本件各処分の取消しを求める訴えにつき訴訟終了宣言をした第1審判決及びこれを維持した原判決には、いずれも判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるから、原判決中、当該訴えに関する部分を破棄し、同部分に関する第1審判決を取り消し、地方裁判所に差し戻した事例。
2017.12.19
協定遵守請求事件
「新・判例解説Watch」H30.2月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449049/名古屋地方裁判所 平成29年10月27日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第3609号
漁業協同組合である原告が、電気事業を営む株式会社であり、火力発電所を保有、運転している被告に対し、火力発電所の運転による水温の上昇等の影響で、原告の漁獲量が減少し、損害が発生しているなどとし、原告と被告との間で締結された協定書に基づき、主位的に、原告と別紙協議目録記載の事項について協議することを求め、予備的に、被告が原告に対し同協議に応ずる義務を負うことの確認を求めた事案において、本件協定書に基づく協議対象は、本件協定書締結当時に建設が予定されていたA火力発電所5号機及びB火力発電所4・5号機の建設及び操業に関する事項に限られると解されるところ、次期石炭灰処分場建設計画は、B火力発電所4・5号機の操業に関する事項に当たり、本件協定書に基づく協議の対象に当たると解するのが相当であるとし、予備的請求を一部認容した事例。
2017.11.14
損害賠償請求事件 
LEX/DB25449009/東京地方裁判所 平成29年10月17日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第19708号
被告の設置運営する警視庁四谷警察署の留置施設に勾留されていた被疑者である原告A及びその弁護人である原告Bが、被告に対し、原告Aが原告B宛ての信書として発信を申し出た信書について、上記留置施設の職員がその内容を検査した上で一部をマスキングしてこれを発信したことが原告らの間の接見交通権を違法に侵害するものであるとして、国家賠償法1条1項に基づき、原告らが賠償金の支払等を求めた事案において、上記マスキングは刑事訴訟法39条1項及び刑事訴訟法224条2項に反する違法なものであるとし、四谷警察署長及びその指示を受けた留置施設職員は、刑事訴訟法225条1項の文言及び趣旨から、弁護人等に対して発する信書であるか否かはあくまで形式的かつ客観的に判断されるべきであることを容易に了解可能であったといえ、職務上尽くすべき注意義務を怠ったというべきであるとして、請求を一部認容した事例。
2017.11.14
横田基地飛行差止等請求事件(第1事件、第2事件) 
LEX/DB25448974/東京地方裁判所立川支部 平成29年10月11日 判決 (第一審)/平成25年(ワ)第658号 等
横田飛行場の周辺に居住し、又は居住していた住民である原告らが、横田飛行場を航行する航空機の発する騒音を中心とする侵害により身体的被害、睡眠妨害、日常生活妨害や精神的・情緒的被害等を受けているとして、米軍の使用する施設及び区域として、アメリカ合衆国に対して横田飛行場を提供している被告(国)に対し、航空機の離陸、着陸及びエンジンの作動の禁止を求める差止等を請求した事案において、原告らの請求のうち、一部の原告らに対する賠償金の支払を一部認容し、その余の原告らの各訴えを却下し、各原告らによる横田飛行場におけるアメリカ合衆国軍隊の使用する航空機の離発着及びエンジンの作動の差止め、及び将来分の請求については棄却した事例。
2017.10.31
障害年金請求事件 
LEX/DB25448960/最高裁判所第三小法廷 平成29年10月17日 判決 (上告審)/平成29年(行ヒ)第44号
厚生年金保険の被保険者であった昭和45年6月、交通事故により左下腿を切断する傷害を負い、平成23年6月、厚生年金保険法47条(昭和60年法律第34号による改正前)に基づく障害年金の裁定及びその支給をそれぞれ請求したところ、厚生労働大臣は、平成23年8月、上告人に対し、受給権を取得した年月を昭和45年6月とする障害年金の裁定をする一方、厚生年金保険法36条(平成2年2月1日より前については平成元年法律第86号による改正前)所定の支払期から5年を経過した障害年金についてはその支給を受ける権利が時効により消滅しているとして支給しなかったことにつき、本件は、上告人が、上記権利の消滅時効は上記裁定の時から進行すると主張して、被上告人に対し、支給されなかった上記障害年金の支払を求めた事案の上告審において、上記支分権(支払期月ごとに支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利)の消滅時効は、当該障害年金に係る裁定を受ける前であっても、厚生年金保険法36条所定の支払期が到来した時から進行するものと解するのが相当であるとし、上告人の前記傷害に係る障害年金のうち厚生年金保険法36条所定の支払期から5年を経過したものにつき、時効により消滅したものとした原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。