注目の判例

商法

2014.02.10
損害賠償請求事件
LEX/DB25446161/最高裁判所第一小法廷 平成26年1月30日 判決 (上告審)/平成24年(受)第1600号
株式会社Aの株主である被上告人(原告、被控訴人)が、同社の取締役であった上告人(被告、控訴人)らに対し、上告人らの忠実義務違反及び善管注意義務違反により同社が損害を被ったと主張して、平成17年法律第87号による改正前の商法267条3項に基づき、連帯して18億8000万円の損害賠償金及びこれに対する平成17年6月13日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を同社に支払うことを求める株主代表訴訟で、原審は、遅延損害金の利率について次のとおり判断して、被上告人の請求を全部認容すべきものとしたため、上告人が上告した事案において、商法266条1項5号に基づき取締役が会社に対して支払う損害賠償金に付すべき遅延損害金の利率は、民法所定の年5分と解するのが相当であり、上記遅延損害金の利率を年6分とした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、また、商法266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務は,期限の定めのない債務であって、履行の請求を受けた時に遅滞に陥ると解するのが相当であり、原審は、上告人らが履行の請求を受けた時について何ら認定説示をすることなく、上告人らに対する訴状送達の日の翌日よりも前の日である平成17年6月13日から遅延損害金を付すべきものとしているのであるから、原審の判断中この部分にも判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中、遅延損害金の請求に関する部分は破棄を免れないとし、遅延損害金の起算日について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2014.02.04
保険金請求控訴事件
LEX/DB25502499/東京高等裁判所 平成25年12月25日 判決 (控訴審)/平成25年(ネ)第5376号
被控訴人(被告)と自動車保険契約を締結していた者の相続人である控訴人(原告)らが、別件交通事故訴訟において認められて支払われた弁護士費用は、保険契約における弁護士費用等担保特約における弁護士費用とは別のものであると主張して、同特約に基づき、保険会社である被控訴人に対し、控訴人らに対する保険金及びこれらに対する遅延損害金の各支払を求めた事案の控訴審において、本件特約が、被保険者において、賠償義務者から弁護士費用相当額の損害賠償金の支払を受けることができず、弁護士報酬額の自己負担を生じる場合のリスクを対象とするものであり、保険料はこのような保険の対価として定められるのであって、上記自己負担の範囲を超える保険金の支払を要するものでないことは、被保険者の損害を填補する損害保険としての性質に照らし、約款1条、11条及び12条を含む本件特約の解釈上明らかであるから、控訴人らの主張は採用の限りでないとして、控訴を棄却した事例。
2014.01.14
損害賠償請求事件
LEX/DB25502340/東京地方裁判所 平成25年11月6日 判決 (第一審)/平成24年(ワ)第32681号
原告らが、被告C、被告E及び被告Fにおいて濫用的な目的で訴外会社の民事再生手続開始の申立てをすることを取締役会で決議し、訴外会社に本件申立てを行わせたことは、悪意又は重過失による任務懈怠に当たるなどと主張して、会社法429条1項又は民法709条、民法719条に基づくなどして、被告らに対し、原告らがそれぞれ損害賠償の支払を求めた事案において、本件申立てが民事再生法21条1項前段の要件に該当し、否認目的を目的の一つとしていることをもって濫用的なものといえず、民事再生法25条4号に該当せず、民事再生法上適法であることなどから、訴外会社による本件申立ては民事再生手続開始の申立権の適法かつ適切な行使であり、社会的にみて許容されない行為でもないから、権利の濫用に当たらず、不法行為を構成しないとして、原告らの請求をいずれも棄却した事例。
2014.01.14
 
LEX/DB25502342/東京高等裁判所 平成25年10月8日 決定 (抗告審)/平成25年(ラ)第751号
相手方がいわゆるマネジメント・バイアウトの一環として、S社による相手方株式の公開買付けの実施後に、相手方株式に全部取得条項を付すなどの定款変更を行った上で、相手方株式の全部取得を行ったところ、相手方株式を保有していた抗告人(申立人)らが、相手方による上記全部取得に反対し、会社法172条1項に基づき、裁判所に対し、保有していた相手方株式の取得価格の決定を求めた事案の抗告審において、本件公開買付価格(1050円)は、SMBC日興證券算定書のDCF法による算定結果の中間程度の値であり、本件取得日の相手方株式の客観的価値である627円に対して約67.5パーセントのプレミアムを付加した価格に相当することなどを併せ考えると、本件公開買付価格は本件取得価格としても相当と考えられるなどとして、本件抗告をいずれも棄却した事例。
2014.01.14
株式取得価格決定申立事件(セレブリックス株式取得価格決定申立事件)
LEX/DB25502124/東京地方裁判所 平成25年9月17日 決定 (第一審)/平成25年(ヒ)第123号
参加人の株式を保有していた申立人が、参加人による全部取得条項付種類会社の全部取得に反対し、会社法172条1項に基づき、申立人が保有していた参加人の株式の取得価格の決定を求めた事案において、公開買付を含む本件MBO(経営者による企業買収)は、経営者と株主との利益相反関係を踏まえ、これを抑制するための相応の措置が講じられ、株主の利益を踏まえた交渉を経て決定されたものと認められる上に、本件公開買付も適切な情報開示がされた上で株主の多数の賛成を得て成立したものということができ、これらを総合的に考慮すれば、本件買付価格は、取得日における参加人の客観的価値(703円)に比して相当のプレミアムが付されていると評価することができるから、本件においては、本件公開買付に近接した時期に実施された他社の事例におけるプレミアム率は明らかでないものの、本件買付価格は、本件MBOの実施によって増大が期待される価値のうち株主が享受されてしかるべき部分として十分な増加価値の分配がされているものと認められ、したがって、本件買付価格は相当であり、本件の株式取得価格も、本件買付価格と同額の1株当たり1310円とするのが相当であるとされた事例。
2013.12.16
再審請求棄却決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25446040/最高裁判所第一小法廷 平成25年11月21日 決定 (許可抗告審)/平成24年(許)第43号
株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける抗告人が、上記確定判決につき、民事訴訟法338条1項3号の再審事由があるとして再審を申し立てた事案において、新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は、上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって、上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになるとした事例。
2013.12.16
損害賠償請求事件(本訴)、退職慰労金請求事件(反訴)、役員報酬請求事件(反訴)
LEX/DB25502188/名古屋地方裁判所 平成25年10月29日 判決 (第一審)/平成21年(ワ)第2430号等
原告(証券会社)が主幹事証券会社を務めて上場した訴外冷凍食品会社の株価に関し、当時の原告の取締役会長及び同執行役員らを被告として、被告らが訴外会社の株式の価格を公募価格以上にしようと、従業員を通じて、個人顧客に勧誘して買い付け注文を受託させ、旧証券取引法159条3項及び旧証券取引法施行令20条に違反する相場固定行為を行ったとして、原告が、被告らに対し、不法行為等に基づく損害賠償を請求し(第1事件)、これに対し、各被告が、原告に対し、退職慰労金又は役員報酬の支払いを請求した(第2から第4事件)事案において、原告の請求を一部認容、一部棄却し(第1事件)、執行役員であった被告の請求を認容し、その余の被告の請求を棄却した事例。
2013.11.05
金融商品取引法違反被告事件
LEX/DB25501761 / 東京地方裁判所 平成25年6月28日 判決 (第一審) / 平成24年(特わ)第91号
2件のインサイダー取引規制違反の事案において、被告人は、本件各犯行当時、経済産業省の幹部職員として本件のような行為に及ぶことは厳に慎むべき立場にあったものであり、そのような立場にある者が、職務上知り得た情報を公益のためではなく私益のために用いて本件犯行に及んだというのは、公益性の高い証券市場の公正さ及び健全さ並びにこれに対する一般投資家の信頼を害し、国家公務員の公務の公正さに対する国民の信頼を傷つけたものとして、厳しく非難されるところであるとして、被告人を懲役1年6月(執行猶予3年)及び罰金100万円に処した事例。
2013.10.08
損害賠償請求控訴事件、損害賠償請求附帯控訴事件、原状回復を命じる裁判の申立事件、控訴棄却・附帯控訴に基づき変更・原状回復を命じる裁判(ジェイコム株式誤発注事件控訴審判決)
LEX/DB25501520 / 東京高等裁判所 平成25年 7月24日 判決 (控訴審) / 平成22年(ネ)第481号等
 証券市場を開設する被控訴人との間で取引参加者契約を締結し、被控訴人の取引参加者である控訴人が、被控訴人の開設する市場において、J社の株式につき、顧客から委託を受けて「61万円1株」の売り注文をするところを、誤って、「1円61万株」の売り注文をし、その後、控訴人が本件売り注文を取り消す注文を発したが、被控訴人のコンピュータ・システムに瑕疵があり、また、被控訴人が売買停止措置等をとらなかったため、上記取消注文の効果が生じなかったことに関して、控訴人において損害が生じたと主張して、債務不履行又は不法行為に基づき、被控訴人に対して、損害賠償を求めた事案の控訴審において、控訴人の落ち度を重大と評しつつ、被控訴人の売買停止義務違反も重過失であることを考慮すると、損害の公平な分担という観点からは、控訴人につき少なくとも3割の過失相殺をするのが相当である等として、附帯控訴に基づき、原判決を変更した事例。
2013.09.10
 
LEX/DB25501470 / 最高裁判所第一小法廷 平成25年 6月 6日 決定 (上告審) / 平成24年(オ)第1669号等
 一審原告補助参加人(自動車及び部分品の製造販売、不動産の賃貸等を目的とする株式会社)の株主である一審被告(上告人兼申立人)が、代表取締役である一審原告(被上告人兼相手方)の任務懈怠行為により、一審原告補助参加人に損害が生じたとして、会社法847条3項に基づき、一審原告に対して、一審原告補助参加人に同額の損害賠償及び遅延損害金の支払いを求め、一審原告が、一審被告による誹謗中傷により一審原告の名誉が毀損され、精神的苦痛を受けたとして、一審被告に対して、不法行為に基づく慰謝料等を求め、第一審が双方の請求をそれぞれ一部認容し、第二審が一審原告の控訴に基づき、原判決を一部変更した事案において、上告を棄却し、上告審として受理しない旨を決定した事例。
2013.08.20
各損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25501377 / 東京高等裁判所 平成25年 4月17日 判決 (控訴審) / 平成23年(ネ)第2230号
 原告ら(控訴人)が、本件MBOは、被告(被控訴人)役員らがそれぞれ取締役又は監査役として旧A社に対して負う善管注意義務に違反して行われたものであり、本件MBOにより、旧A社の株式を低廉な価格で手放すことを余儀なくされ損害を被ったと主張して、被告らに対し、損害賠償を求めたところ、請求が棄却されたため、控訴した事案において、被告取締役らが、本件賛同意見表明の段階において、本件情報及びこれによって生じるであろう株価操作の疑いを払拭する情報を開示しなかった点については、適正情報開示義務違反があったと認めるのが相当であるが、これにより、原告らに損害が発生したと認めることはできないとし、控訴を棄却した事例。