注目の判例

刑法

2017.03.14
詐欺、詐欺未遂被告事件 
LEX/DB25545030/大阪地方裁判所 平成29年 2月 7日 判決 (第一審)/平成27年(わ)第4441号
詐欺グループの一員として稼働していたとする被告人が、その役割のうち、上位者の指示を受取役へ連絡等すること、受取役から詐取金を受け取り、被告人を含む上位者に渡すこと、受取役に報酬を渡すことの各役割については、共犯者に引き継いだが、〔1〕共犯者から報告を受け、その内容を上位者に伝えること、〔2〕共犯者から詐取金を受け取り、上位者に渡すこと、〔3〕共犯者を含む受取役に対する報酬を用意し、共犯者に渡すこと、〔4〕犯行に使用する携帯電話を用意し、共犯者に渡したりすることについての役割を担っていたとして、詐欺の共同正犯として起訴された事案において、検察官の主張事実の柱となる各供述は、関係者の供述と矛盾したり、供述内容が一貫せず、供述内容自体に不自然、不合理な点が含まれるなど、信用できないとし、被告人に対し、無罪を言い渡した事例。
2017.01.10
入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反被告事件(美瑛官製談合 1審判決支持) 
LEX/DB25544203/札幌高等裁判所 平成28年10月 4日 判決 (控訴審)/平成28年(う)第142号
町立病院の放射線係長であった被告人が、本件医療機器の購入契約に係る本件指名競争入札に先立ち、公務員としての職務に反し、上記医療機器の製造会社の従業員に対して特定の納品会社に落札させるように指示したほか、同従業員と共謀し、特定の入札指名業者に対して町長の定めた予定価格を下回る仕切価格が記載された見積書を、残る5業者にそれを上回る仕切価格が記載された見積書を、それぞれ送付した結果、上記特定の指名業者に落札させて入札構成侵害行為に及んだとされた事案の控訴審において、被告人に前科がないことなど、原判決指摘の酌むべき事情を考慮しても、本件の罪質や犯情等に照らして、本件が罰金刑で処断すべき軽微な事案とはいえず、原判決の量刑は、刑期及び執行猶予期間の点を含め、重すぎて不当であるとはいえないとして、控訴を棄却した事例。
2016.12.20
詐欺未遂被告事件(だまされたふり作戦 二審も「受け子」無罪) 
LEX/DB25544184/名古屋高等裁判所 平成28年 9月21日 判決 (控訴審)/平成28年(う)第161号
被告人が、氏名不詳者らと共謀の上、氏名不詳者がB方に電話をかけ、同人に対し、電話の相手が被害者の息子であり、同人が現金を至急必要としている旨のうそを言い、その旨誤信させて、被害者から現金の交付を受けようとしたが、同人が警察に相談したためその目的を遂げなかった事実につき、無罪が言い渡され、検察官が控訴した事案において、被告人が、警察官から令状を呈示され捜索等を受けている正にその最中に、Eからの電話に対し、荷物が届いているので取りに来るよう告げるなど、詐欺の被害品を受領したことを認識していたのであれば通常考え難い会話をしていることなどにも照らせば、被告人が、郵便物の中身が詐欺の被害金等であるかもしれないと認識していたと認めるには疑問がある等説示した原判決の判断に、誤りはないとし、控訴を棄却した事例。
2016.12.13
電磁的公正証書原本不実記録,同供用被告事件 
LEX/DB25448306/最高裁判所第一小法廷 平成28年12月 5日 判決 (上告審)/平成26年(あ)第1197号
被告人(A社代表取締役)が、指定暴力団総長Bが不動産の所有者等になることを隠蔽するため不実の登記をしようと企て、同人及び不動産仲介業者Cと共謀の上、市内の宅地、畑等4筆の土地の真実の買主はBであるのに、A社を名目上の買主として、売主Dとの間で上記各土地の売買契約を締結した上、法務局で、上記各土地のうち3筆につき、売買を原因として、所有権が売主DからA社に移転した旨の内容虚偽の登記申請をするとともに、残りの1筆につき、売買予約を原因として、権利者をA社とする内容虚偽の所有権移転請求権仮登記の申請をして、いずれも虚偽の申立てをし、登記官をして、公正証書の原本として用いられる電磁的記録である登記簿の磁気ディスクにそれぞれその旨不実の記録をさせ、公正証書の原本としての用に供した事案(公訴事実第1)、同市内の原野の真実の買主はBであるのに、A社を名目上の買主として、売主Eとの間で上記原野の売買契約を締結した上、法務局で、上記原野につき、売買を原因として、所有権が売主EからA社に移転した旨の内容虚偽の登記申請をして、虚偽の申立てをし、登記官をして、登記簿の磁気ディスクにその旨不実の記録をさせ、公正証書の原本としての用に供した事案(公訴事実第2)、各土地上に建築された建物につき、所有者を被告人とする表題登記及び所有権保存登記の各登記申請をしたことが虚偽の申立てをしたことに当たり、当該各登記が不実の記録であるなどとして、被告人に電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪が成立するとした事案(公訴事実第3及び第4)の上告審において、各土地の所有権が売主らからBに直接移転した旨の認定を前提に、各登記の申請を虚偽の申立てであるとし、また、各登記が不実の記録に当たるとして第1審判決を破棄し、公訴事実第1及び第2について被告人を有罪とした原判決には、事実を誤認して法令の解釈適用を誤った違法があるとし、原判決を破棄し、公訴事実第3及び第4に係る建物に関する表題登記及び所有権保存登記についても、上記と同様の観点から検討すべきものであるところ、第1審判決の挙示する証拠によれば、建物の所有権の帰属に関する第1審判決の事実認定は相当であり、公訴事実第1及び第2について無罪とする一方で、公訴事実第3及び第4について有罪とした第1審判決は、被告人を懲役1年、執行猶予3年を言い渡した量刑判断を含め、これを維持するのが相当であるとした事例。
2016.11.01
銃砲刀剣類所持等取締法違反、傷害被告事件
(弁護士の下腹部切断 元法科大学院生に懲役4年6月) 
LEX/DB25543578/東京地方裁判所 平成28年 7月 5日 判決 (第一審)/平成27年(刑わ)第2208号
当時法科大学院の学生であった被告人が、包丁とはさみを携帯し、妻と共に、妻の勤務先の法律事務所に向かい、その途中、地下鉄駅構内で携帯していた包丁をゴミ箱内に投棄したものの、はさみは携帯したまま同事務所に赴き、妻がその専属の事務員を務める弁護士と面会した際、同人を殴打し、その陰茎をはさみで切断したという銃砲刀剣類所持等取締法違反、傷害の事案において、被告人は、本件犯行の約5日前、妻から、被害者との間に性的関係があったことを打ち明けられて強い衝撃を受け、そして、妻の話しぶりなどから、妻が意に沿わない性交渉に応じさせられていたと考え、被害者に強い憎悪を抱いたものであり、被告人が犯行動機を形成するに至った経緯には、一定程度酌むべき事情は認められるものの、被告人の刑事責任は相当に重いといわなければならないとして、被告人を懲役4年6月に処した事例。
2016.10.25
LEX/DB25541829/大阪高等裁判所 平成26年12月17日 決定 (抗告審)/平成26年(く)第564号
少年Aは、Cと共謀の上、深夜、本件現場において、過去に少年に暴行を加えたことのある被害者に対し、少年が伸縮式警戒棒を伸ばして被害者の左顔面を殴打し、前記Cが鉄棒で被害者の頭部を殴打するなどの暴行を加え、同人に約1週間の安静及び通院加療を要する見込みの頭部外傷、顔面裂傷の傷害を負わせ、原決定の中等少年院送致に対し、少年Aが抗告した事案において、少年らの行為は誤想防衛に該当するとし、傷害罪は成立せず、少年に傷害の犯罪事実があると認めた原決定には重大な事実の誤認があるとして、原決定を取り消し、本件を大阪家庭裁判所に差し戻すこととした事例。
2016.10.11
住居侵入、窃盗、建造物侵入、覚せい剤取締法違反、窃盗未遂被告事件
(令状なしGPS捜査 2審も違法)
LEX/DB25543439/名古屋高等裁判所 平成28年 6月29日 判決 (控訴審)/平成28年(う)第48号
被告人が、侵入盗4件及び侵入盗未遂1件並びに覚せい剤の自己使用及び所持各1件で起訴されたところ、警察官は、被告人使用車両に無断でGPS端末を設置して、その位置情報を取得する捜査を行い、証拠収集を行ったとして、違法な捜査により収集された証拠について証拠排除を求めたところ、原審は、検証許可状等を得ることなく行ったGPS捜査は違法であるが、弁護人が違法収集証拠として排除を求める各証拠は、GPS捜査との関連性を有しないものであるか、関連性を有するとしても、その証拠収集過程に違法はないか、重大な違法まではないものであって、いずれも違法収集証拠に当たらず、これらの証拠能力が否定されることはないとして、被告人に対して懲役6年を言い渡したため、被告人が、違法な捜査を理由とする証拠排除をしなかったことに関する訴訟手続の法令違反及び量刑不当を主張して控訴した事案において、各証拠についていずれも証拠能力を認めて事実認定に供した原判決の判断に違法はないとし、また、原判決の量刑は不当であるとはいえないとし、控訴を棄却した事例。
2016.10.11
「新・判例解説Watch」H28.12月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25543348/最高裁判所第三小法廷 平成28年 6月 7日 決定 (上告審)/平成27年(あ)第235号
被告人は、設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせるクラブを経営するものであるが、共犯者と共謀の上、大阪府公安委員会から風俗営業の許可を受けないで、不特定の来店客にダンスをさせ、かつ、酒類等を提供して飲食させ、許可を受けないで風俗営業を営んだとして、風営法違反により起訴されたが、第1審判決は、無罪を言い渡したため、検察官が控訴し、控訴審判決も第1審判決を結論において正当であるとしたため、検察官が上告した事案において、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、検察官の上告を棄却した事例。
2016.10.03
覚せい剤取締法違反被告事件 
LEX/DB25543388/東京地方裁判所 平成28年 5月31日 判決 (第一審)/平成28年(特わ)第247号 等
被告人が、知人から覚せい剤を有償で譲り受け、覚せい剤を吸引して使用し、残りの覚せい剤を所持した事案において、被告人は、前科前歴がないのはもとより、甲子園球場を沸かせ、その後もプロ野球を代表する打者として活躍するなど、野球界において社会的貢献をしてきたが、本件が大きく報道されるなどして厳しい社会的制裁を受けていることなども、被告人のために酌むべき事情と考えられるとして、被告人を懲役2年6月、執行猶予4年を言い渡した事例。
2016.10.03
非現住建造物等放火被告事件 
LEX/DB25543550/大阪高等裁判所 平成28年 3月15日 判決 (控訴審)/平成27年(う)第1103号
本件建物とその南側駐車場を挟んで南西に位置する自宅で弟夫婦と同居していた被告人が、本件建物に放火して全焼させたとして起訴され、原判決は有罪(懲役3年)としたため、被告人が本件建物に放火したことはなく無罪であるとして控訴した事案において、原審検察官らの行動が、証人の事前面接の域を相当に逸脱した不当なものといわざるを得ないとし、弟には、原審公判供述当時、自らが罪に問われるのを免れるため、検察官に迎合し、虚偽の供述をする動機があったというべきであるとし、原判決が、弟夫婦の証言との整合性を被告人の自白の信用性を肯定する理由の1つとしたことは是認できないが、被告人の自白の信用性を肯定し被告人が本件の犯人と認定したこと自体は、結論として、正当として是認できるとし、控訴を棄却した事例。
2016.08.16
強制わいせつ物陳列、わいせつ電磁的記録等送信頒布、わいせつ電磁的記録媒体頒布被告事件
(ろくでなし子被告に罰金) 
「新・判例解説Watch」H28.9上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25543071/東京地方裁判所 平成28年 5月 9日 判決 (第一審)/平成26年(刑わ)第3268号
漫画家兼芸術家である被告人が、アダルトショップにおいて、被告人ほか2名の女性器を象った石膏ようのもの3点を展示したほか、自己の女性器の三次元形状データファイルが保存されたURL情報等を送信し、同データファイルが記録されたCD-Rを発送したとして、わいせつ物陳列やわいせつ電磁的記録等送信頒布などの罪に問われた事案において、「本件各造形物が、女性器であるとの印象を殊更強く与えるものでなく、それぞれの性的刺激も限定的であることに加えて、本件各造形物に表象された一定の芸術性や思想性による性的刺激の緩和も認められることからすれば、本件各造形物は、主として表現の受領者の好色的興味に訴えるものとは認められないから、刑法175条にいうわいせつ物には該当しない」として、わいせつ物陳列罪については無罪とする一方、「本件各データは、いずれも、女性器の形状を立体的かつ忠実に再現したものであり、それらの形状やその表象方法、データ全体に占める性的部位の割合に照らせば、それぞれの性的刺激の程度が強い上、表現された思想とその表象との関連性を一見して読み取ることは困難であって、芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度もさほど大きく評価できないことからすれば、本件各データは、主として受け手の好色的興味に訴えるものになっているといわざるを得ないから、刑法175条にいうわいせつな電磁的記録に該当する」として、わいせつ電磁的記録等送信頒布などの罪については有罪とし、罰金40万円を言い渡した事例。
2016.08.02
犯人隠避被告事件(犯人隠避罪 逆転無罪) 
LEX/DB25542948/仙台高等裁判所 平成28年 5月10日 判決 (控訴審)/平成27年(う)第21号
被告人が、Bが犯した道路交通法違反(酒気帯び運転、事故不申告)事件につき、これが罰金以上の刑に当たる罪であることを知りながら、同人にその刑責を免れさせる目的で、同日午前2時5分ころ、宮城県加美警察署司法警察員巡査Cに対し、同事件の犯人は自己である旨虚偽の申立てをし、前記Bを隠避させたとして起訴された事案の控訴審において、Bが本件運転者であること、したがって、被告人が自己が犯人である旨虚偽の申立てをしたことについては、合理的な疑いが残るといわざるを得ないとして、原判決を破棄し、被告人に対して無罪を言い渡した事例。
2016.07.26
業務上過失致死傷被告事件(明石歩道橋事故 元副署長の免訴確定へ)
LEX/DB25448062/最高裁判所第三小法廷 平成28年 7月12日 決定 (上告審)/平成26年(あ)第747号
被告人(当時兵庫県明石警察署副署長)は、明石市に所在する歩道橋上で平成13年7月21日に発生して死者11名及び負傷者183名を出した事故に係る業務上過失致死傷被疑事件について、不起訴処分を受けたが、検察審査会において起訴相当の議決を受け、公訴提起をされ、第1審判決は、公訴時効が完成しているから、被告人に対し、免訴を言い渡したため、指定弁護士が控訴し、控訴審判決も、第1審判決は正当であるとし控訴を棄却したため、検察官の職務を行う指定弁護人が、上告した事案において、本件事故は、当時明石警察署地域官であったB地域官が平成14年12月26日に業務上過失致死傷罪で起訴され、平成22年6月18日に同人に対する有罪判決が確定しているため、被告人とB地域官は刑事訴訟法254条2項にいう「共犯」に該当し、被告人に対する関係でも公訴時効が停止していると指定弁護人が主張したが、最高裁は、被告人につき、B地域官との業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立する余地はないとし、原判決が被告人を免訴とした第1審判決を維持したことは正当であるとして、上告を棄却した事例。
2016.07.26
住居侵入,逮捕監禁,殺人,現住建造物等放火,有印私文書偽造・同行使,ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件(山形東京連続放火殺人事件)
LEX/DB25448054/最高裁判所第二小法廷 平成28年 6月13日 判決 (上告審)/平成26年(あ)第1655号
被告人と同性愛の関係にあった男性Aが、山形市のAの実家に帰り、身体に不具合のある両親の世話と家業を手伝っていたところ、被告人が、Aをその実家から連れ戻す目的で、Aの実家の建物への放火を計画し、同建物内にAの両親がいるかもしれず、同建物に放火すればAの両親が死亡するかもしれないことを認識しながら、同建物付近に灯油をまいた上放火し、同建物を全焼させるとともに、Aの両親を焼死させた事案(山形事件)、また、被告人が、その後同性愛の関係にあった別の男性Bの居所を知るため、同人に対する執ようなストーカー行為等を繰り返したが知るに至らず、居所を教えようとしないBの母親Cに対する逆恨みから同人を殺害し、その犯行を隠蔽するため同人方(集合住宅の一室)に放火することを計画し、被告人の妻と共謀の上、C方に侵入し、帰宅したCの両手足を結束バンドで緊縛するなどして約4時間半にわたって逮捕監禁した後、同人の身体に大型のたらいを覆い被せ、燃焼した炭をその中に入れ、同人を一酸化炭素中毒により死亡させ、その後Bが現に住居に使用していた同居宅の床面に灯油をまいた上で放火し、同居宅を全焼させた事案(東京事件)の上告審において、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、これを是認せざるを得ないとし、上告を棄却した事例。
2016.07.19
各詐欺、金融商品取引法違反被告事件(AIJ元社長ら実刑確定) 
LEX/DB25542870/最高裁判所第一小法廷 平成28年 4月12日 決定 (上告審)/平成27年(あ)第537号
内外の有価証券等に係る投資顧問業務等を目的とするA社の代表取締役であった被告人a、同社の取締役であった被告人b及び同社が実質的に支配するB社の代表取締役であった被告人cが共謀の上、27回にわたり、17の年金基金の担当者らに対し、ファンドの虚偽の運用実績を示すなどして合計約248億円をだまし取るなどした詐欺、金融商品取引法違反の事件で、原判決は、1審判決には事実誤認や法令適用の誤りがなく、量刑も追徴の点も相当であるとして控訴を棄却したため、被告人らが上告した事案において、いずれも刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、各上告を棄却した事例。
2016.07.05
児童福祉法違反被告事件 
LEX/DB25448016/最高裁判所第一小法廷 平成28年 6月21日 決定 (上告審)/平成26年(あ)第1546号
原判決が是認した第1審判決が認定した性交は、被害児童(当時16歳)を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交であり、同児童が通う高等学校の常勤講師である被告人は、校内の場所を利用するなどして同児童との性的接触を開始し、ほどなく同児童と共にホテルに入室して性交に及んでおり、被告人は、単に同児童の淫行の相手方となったにとどまらず、同児童に対して事実上の影響力を及ぼして同児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をしたと認められるとして、被告人の行為は、児童福祉法34条1項6号にいう「児童に淫行をさせる行為」に当たり、同号違反の罪の成立を認めた原判断は、正当であるとして、被告人の上告を棄却した事例。
2016.07.05
傷害、殺人、殺人未遂、未成年者略取、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
(石巻事件上告審判決) 
LEX/DB25542988/最高裁判所第一小法廷 平成28年 6月16日 判決 (上告審)/平成26年(あ)第452号
被告人(当時18歳の少年)が、元交際相手(被害者)の態度に腹を立て2日間にわたって暴行を加えて傷害を負わせたという傷害事件(第1事実)、被告人から被害者を引き離して守ろうとした同人の姉(被害者姉)やその友人(被害男性)、被害者の友人(被害者友人)を、それぞれ殺意をもって、牛刀で突き刺し、被害者姉や被害者友人を殺害し、被害男性には重傷を負わせたが、殺害目的を遂げなかったという殺人、殺人未遂事件(第2事実)、その後、被害者を無理矢理連れ帰ろうとして、被害者の足を牛刀で切り付けて、連れ出したという未成年者略取、傷害事件(第3事実)、第2事実及び第3事実の際、正当な理由なく刃の長さ約18cmの牛刀1丁を携帯したという銃砲刀剣類所持等取締法違反事件(第4事実)で、第1審判決及び控訴審判決も死刑を言い渡したため、被告人が上告した事案において、被告人の刑事責任は極めて重大で、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑を是認せざるを得ないとして、上告を棄却した事例。
2016.06.21
電磁的公正証書原本不実記録、同供用被告事件(SFCG元会長 全面無罪) 
LEX/DB25542790/東京高等裁判所 平成28年 3月28日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第1192号
商業手形の割引業務、資金の貸付業務等を目的とするP2社の代表取締役社長兼会長であった被告人が、東京地方裁判所がP2社につき民事再生開始の決定をなし、同決定が確定し、P2社からP3社に対して譲渡されたP2社が保有している簿価418億4583万1026円の不動産担保貸付債権について、民事再生手続当における否認権行使を免れるため、東京法務局の登記官に対し、前記債権を譲渡した事実もないのに、P2社従業員をして内容虚偽の債権譲渡登記を申請させ、登記官をして、債権譲渡登記簿の原本として用いられる電磁的記録にその旨不実の記録をさせ、前記不実の記録を公正証書の原本としての用に供させたとし、原判決は、本件登記の申請が被告人の指示に基づくものであることが認められるとして、電磁的公正証書原本不実記録及び同供用罪については懲役1年6月(執行猶予3年)を言い渡したため、被告人が控訴した事案(なお、民事再生法違反及び会社法違反については無罪。第一審で確定)において、事実誤認の論旨は理由があるとし、原判決中の有罪部分を破棄し、電磁的公正証書原本不実記録及び同供用罪について、無罪を言い渡した事例。
2016.06.21
損害賠償請求事件、共同訴訟参加事件 (フタバ産業 前社長らに賠償命令) 
LEX/DB25542759/名古屋地方裁判所岡崎支部 平成28年 3月25日 判決 (第一審)/平成21年(ワ)第1177号 等
原告の経理部の役員ないし従業員が適正な手続を経ずに取引先に対する不正な金融支援を行ったのは,原告の代表取締役であった被告Z6及び取締役であった被告Z7の監視義務違反等によるものであるとして、原告及び原告の株主として会社法849条1項による訴訟参加をした参加人が、被告Z6及び被告Z7に対し、会社法423条1項に基づき,回収不能になった融資金相当額等の賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案において、原告及び参加人の被告らに対する請求は、14億7336万0651円並びに187万4999.40米ドル及びうち14億4749万3001円に対する平成22年11月5日から支払済みまで、うち187万4999.40米ドルに対する平成21年11月5日から支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり一部認容し、原告及び原告共同訴訟参加人のその余の請求を棄却した事例。
2016.06.14
強盗殺人、死体遺棄被告事件(長野一家3人強盗殺人事件) 
LEX/DB25447983/最高裁判所第三小法廷 平成28年 4月26日 判決 (上告審)/平成26年(あ)第477号
高利貸しを本体とする事業グループの従業員で犯行を主導したとする被告人が、同僚のA及びB並びに知人のCと順次共謀の上、同グループの会長及びその息子である専務を殺害して現金等を強奪しようと企て、長野市内の会長宅において、睡眠導入剤を用いて専務(当時30歳)を昏睡状態に陥らせたところ、その妻(当時26歳)に不審を抱かれ、強盗殺人を成功させるために同女の殺害も決意して同女をロープで絞殺し、その後、専務及び就寝中の会長(当時62歳)を順次、同様に絞殺して現金合計約416万円を強取し、同人らの死体を愛知県内の資材置場まで運んで土中に埋めて遺棄するなどした強盗殺人、死体遺棄の罪で起訴され、第1審は死刑を言い渡し、控訴審でも死刑を維持しため、被告人が上告した事案において、被告人の刑事責任は極めて重大であるといわざるを得ず、被告人が警察から事情聴取を受けた末とはいえ自首し、反省の態度を示していることなど、被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして、上告を棄却した事例。