注目の判例

刑事訴訟法

2019.02.05
文書提出命令申立てについてした決定に対する抗告審の取消決定等に対する許可抗告事件
LEX/DB25449935/最高裁判所第三小法廷 平成31年 1月22日 決定 (許可抗告審)/平成30年(許)第7号
抗告人が、大阪府警察の違法な捜査により傷害事件の被疑者として逮捕されたなどとして、相手方に対し国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求めた訴訟で、相手方が所持する本件傷害事件の捜査に関する報告書等の各写し(本件文書1、本件文書2)、並びに上記の逮捕に係る逮捕状請求書、逮捕状請求の疎明資料及び逮捕状の各写し(本件文書3)について、民訴法220条1号ないし3号に基づき、文書提出命令の申立てをした事件で、本件傷害事件の捜査は大阪府警察が担当し、抗告人は、平成27年1月に本件傷害事件の被疑者として逮捕された。その後、抗告人は、本件傷害事件について起訴され、有罪判決を受け、同判決は平成29年12月に確定した。本件各文書も、その元となる各文書(本件各原本)も、本件傷害事件の公判に提出されなかったため、原審は、本件文書1については、民訴法220条1号所定の「当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき」に、本件文書2及び本件文書3については、同条3号所定の「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき」に、それぞれ該当するとした上で、本件申立てを却下したため、抗告人が抗告した事案で、本件各原本及びその写しである本件各文書は、本件傷害事件の捜査に関して作成された書類であり,公判に提出されなかったものであるところ、本件各文書は、本件傷害事件の捜査を担当した大阪府警察を置く相手方が所持し、これらについて本件申立てがされているのであるから、本件各原本を大阪地方検察庁の検察官が保管しているとしても、引用文書又は法律関係文書に該当するものとされている本件各文書の提出を拒否した相手方の判断が、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用するものであると認められるときは、裁判所は、その提出を命ずることができることになると判示し、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2018.12.18
損害賠償請求事件(接見交通権一部認容判決)
LEX/DB25561606/鳥取地方裁判所 平成30年11月26日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第95号
弁護士である原告が、原告と勾留中の被告人との間の裁判所構内における接見を裁判所が許可したにもかかわらず、被告の設置運営する刑務所の職員らがこれを実施させないまま同刑務所に被告人を連れ帰ったことなどが違法であり、そのため弁護人としての接見交通権を侵害されたなどと主張して、被告(国)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金の支払等を求めた事案において、裁判所構内における接見許可がされた場合に、刑務所職員は、面会の場所が戒護上の支障が生じないような設備のある部屋等かどうかに関し、裁判所と異なる見解を持ったとしても、裁判所の許可を前提として、その接見の実施に当たり、刑事収容施設法77条1項に基づく何らかの措置を執る必要があるかどうかを検討するにとどめなければならず、その接見の実施を妨げる措置を執ることは、接見配慮義務に反し、許されないものといわなければならないとし、請求を一部認容した事例。
2018.11.20
勾留の裁判に対する準抗告の裁判に対する特別抗告事件
LEX/DB25449783/最高裁判所第二小法廷 平成30年10月31日 決定 (特別抗告審)/平成30年(し)第585号
勾留の裁判に関する準抗告決定(原裁判取消し、勾留請求却下)に対し、検察官が特別抗告した事案において、原決定が、本件勾留の被疑事実である大麻の営利目的輸入と、本件勾留請求に先立つ勾留の被疑事実である規制薬物として取得した大麻の代替物の所持との実質的同一性や、両事実が一罪関係に立つ場合との均衡等のみから、前件の勾留中に本件勾留の被疑事実に関する捜査の同時処理が義務付けられていた旨説示した点は是認できないが、いまだ刑事訴訟法411条を準用すべきものとまでは認められないとし、本件抗告を棄却した事例(補足意見あり)。
2018.11.20
損害賠償請求事件
LEX/DB25561322/東京地方裁判所 平成30年 9月19日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第21485号
死刑確定者として東京拘置所に収容されていた原告X及び弁護士である原告Aが、被告に対し、原告Xに対する信書の発信不許可処分及び面会不許可処分についての各国家賠償請求事件並びに再審請求事件の打合せを目的とする原告らの面会につき、職員を立ち会わせる措置をしてはならない旨の仮の差止めの各決定が東京地方裁判所によってされたにもかかわらず、東京拘置所長が、それらに従わなかったと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ、損害賠償金の支払等を求めた事案の上告審において、行政庁である東京拘置所長が、行政事件訴訟における最も基本的な法律である行訴法の規定を把握していなかった上、原告Aによる再三の抗議にもかかわらず、行政事件訴訟法の規定の確認すら怠り、このために違法な本件各処分をしたことは、到底容認し難いものであって、行政庁に対する信頼を失墜させる異常な事態を生じさせたものといわざるを得ないから、東京拘置所長には、本件各処分をすることについて極めて重大な過失があったものというべきであるが、本件各決定に効力が生じていることを認識しながら、あえて、本件各処分をしたものとまでは認められないとし、原告らの請求を一部認容し、その余の請求をいずれも棄却した事例。
2018.11.13
接見妨害等国家賠償請求事件
LEX/DB25449764/最高裁判所第一小法廷 平成30年10月25日 判決 (上告審)/平成29年(受)第990号
拘置所に被告人として勾留されていた上告人X1及びその弁護人であった上告人X2が、上告人X1が刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして保護室に収容中であることを理由に拘置所の職員が上告人X1と上告人X2との面会を許さなかったことにより、接見交通権を侵害されたなどとして、被上告人に対し、慰謝料及び遅延損害金の支払を求め、被告人が保護室に収容中であることを理由として被告人と弁護人との面会を許さない措置の違法性につき、上告人らの接見交通権の侵害を理由とする損害賠償請求をいずれも棄却したため、上告人が上告した事案で、拘置所において刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして保護室に収容されていた被告人である上告人X1との面会を求める本件申出が、その弁護人である上告人X2からあったのに対し、同拘置所の職員は、本件申出があった事実を上告人X1に告げないまま、保護室に収容中であることを理由として面会を許さなかったもので、上告人X1は、本件申出の前後にわたり保護室において大声を発していたが、当時精神的にどの程度不安定な状態にあったかは明らかではなく、意図的に抗議行動として大声を発していたとみる余地もあるところ、本件申出があった事実を告げられれば、上告人X2と面会するために大声を発するのをやめる可能性があったことを直ちに否定することはできず、上告人X1の言動に係る事情のみをもって、特段の事情があったものということはできないとし、原判決中、上告人らの接見交通権の侵害を理由とする損害賠償請求に関する部分を破棄し、特段の事情の有無等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻した事例(補足意見あり)。
2018.10.30
殺人、商標法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(今市事件控訴審判決)
LEX/DB25561023/東京高等裁判所 平成30年 8月 3日 判決 (控訴審)/平成28年(う)第983号
殺人、商標法違反及び銃砲刀剣類所持等取締法違反(いわゆる今市事件)の各公訴事実のうち、原審では、殺人につき、その犯人と被告人との同一性が争われ(商標法違反及び銃砲刀剣類所持等取締法違反の公訴事実については、争いがなく、区分審理された)、本件殺人の公訴事実は、「被告人は、深夜、茨城県常陸大宮市内の山林西側林道で、被害者(当時7歳)に対し、殺意をもって、ナイフでその胸部を多数回突き刺し、同人を心刺通(心臓損傷)により失血死させた」という事実につき、原審検察官の指摘する客観的事実(情況証拠)のみによって被告人の犯人性を認定できるか検討し、結論として、被告人が殺害犯人である蓋然性は相当に高いものと考えられるが、客観的事実のみから被告人の犯人性を認定することはできないとし、原判決は、被告人が検察官に行った本件自白供述につき、任意性を認めた上、本件殺人の一連の経過や殺害行為の態様、場所、時間等、事件の根幹部分に関する供述は、十分に信用することができるとし、原審関係証拠から認められる客観的事実に、同供述を併せれば、被告人が被害者を殺害したことに合理的な疑いを入れる余地はないとし、被告人を無期懲役に処したため、原審弁護人が被告人のため控訴した事案において、原判決が、自白供述の信用性の補助証拠として採用した取調べの録音録画記録媒体により犯罪事実を直接的に認定したことには訴訟手続の法令違反があり、原判示第1の殺人の日時、場所を自白供述に基づき公訴事実どおりに認定したことには事実誤認が認められ、いずれも判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決を破棄した上で、当高裁は、情況証拠によって認められる間接事実を総合すれば、被告人が殺害犯人であることは、合理的な疑いを差し挟む余地なく認められ、当審で予備的に追加された訴因(殺害の日時、場所を拡張したもの)については、直ちに判決をすることができるものと判断し、被告人を無期懲役にするのが相当であるとした事例。
2018.10.23
松橋事件即時抗告棄却決定に対する特別抗告棄却決定
LEX/DB25561330/最高裁判所第二小法廷 平成30年10月10日 決定 (特別抗告審)/平成29年(し)第718号
殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反及び火薬類取締法違反事件(いわゆる松橋事件)につき、被告人に懲役13年に処する旨の判決が言い渡され、控訴、上告をしたものの、これらが全て棄却され、刑の執行を受け終えた後、被告人の法定代理人成年後見人弁護人が、殺人被告事件について無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したとして、再審を請求したところ、再審開始が決定したため、検察官が即時抗告し、即時抗告審も、再審請求審の決定の説示するとおり、巻き付けた布切れに関する新証拠及び使用された凶器に関する新証拠は、被害者殺害の事実について、被告人に無罪を言い渡すべき新規かつ明白な証拠ということができるから、再審請求審の決定には刑事訴訟法435条6号の要件充足の判断を誤ったところはないとし、即時抗告を棄却したため、検察官が特別抗告した事案において、検察官の本件抗告趣意は、刑事訴訟法433条の抗告理由に当たらないとし、本件特別抗告を棄却した事例。
2018.08.07
再審請求事件(日野町事件第2次再審請求開始決定)
LEX/DB25560764/大津地方裁判所 平成30年 7月11日 決定 (再審請求審)/平成24年(た)第1号
被告人が、かねて客として出入りしていた酒類小売販売店経営者(当時69歳)を殺害して金品を強取しようと企て、同店内で、客として飲酒した際、応対していた同女の背後からいきなり頸部を両手で絞め付け、頸部圧迫に基づく窒息により即死させて殺害した上、同女所有の現金5万円及び手提金庫等を強取したとして起訴され、第1審判決は無期懲役を言い渡し、第2審判決も第1審判決に違法はないとして控訴を棄却し、上告審でも上告棄却したことで、有罪を確定した強盗殺人事件で、被告人である申立人が再審請求をしたが、申立人の自白は、その任意性に疑いはなく、信用性も十分あり、さらに、申立人が犯人であることを示すいくつかの間接事実が存在し、また、申立人のアリバイは成立せず、その他、申立人が犯人ではないことを示す事情は存在せず、確定判決の認定した犯罪事実は優に認められ、その他、弁護人の主張をすべて検討しても、これを覆すことはできないとして、再審の請求を棄却したため、申立人が抗告したが、申立人の死亡により終了した。その後、再度、申立人の遺族が請求人として再審請求をした事案において、当審で取り調べた各新証拠が確定審の審理中に提出されていたならば、被告人を本件犯行について有罪と認定するには、合理的な疑いが生じたものと認められ、本件再審請求は、刑事訴訟法435条6号所定の有罪の言渡しを受けた者に対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したときに該当するとして、再審を開始する決定をした事例。
2018.07.17
検察官による証人等の氏名等の開示に係る措置に関する裁定決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25449567/最高裁判所第二小法廷 平成30年 7月 3日 決定 (特別抗告審)/平成30年(し)第170号
検察官は、被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときには、条件付与等措置も代替開示措置もとることができず、さらに、検察官は、条件付与等措置によっては加害行為等を防止できないおそれがあるときに限り代替開示措置をとることができるとし、裁判所は、検察官が条件付与等措置若しくは代替開示措置をとった場合、加害行為等のおそれがないとき、被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるとき、又は検察官が代替開示措置をとった場合において、条件付与等措置によって加害行為等を防止できるときは、被告人又は弁護人の裁定請求により、決定で、検察官がとった措置の全部又は一部を取り消さなければならないとし、裁定請求があった場合には、検察官は、裁判所からの意見聴取において、刑事訴訟法299条の5第1項各号に該当しないことを明らかにしなければならず、裁判所は、必要なときには、更に被告人又は弁護人の主張を聴くなどすることができるということができ、裁判所の決定に対しては、即時抗告をすることができるとし、刑事訴訟法299条の4、299条の5は、被告人の証人審問権を侵害するものではなく、憲法37条2項前段に違反しないとした事例。
2018.07.17
(袴田事件第2次再審請求(即時抗告審))
LEX/DB25560605/東京高等裁判所 平成30年 6月11日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成26年(く)第193号
請求人(有罪の言渡を受けた者)が、深夜、静岡県清水市(当時)商店の専務方に侵入して金品を物色中、同人(当時41歳)に発見されるや金品強取の決意を固め、同人方裏口付近の土間で、所携のくり小刀(刃渡約12cm)で殺意をもって同人の胸部等を数回突き刺し、さらに、物音に気付いて起きてきた家人に対しても、殺意をもって、同家八畳間で同人の妻(当時39歳)の肩、顎部等を数回、専務の長男(当時14歳)の胸部、頸部等を数回、同家ピアノの間で専務の次女(当時17歳)の胸部、頸部等を数回、それぞれ前記くり小刀で突き刺し、次いで,専務が保管していた商店の売上金20万円余り、小切手5枚等を強取し、さらに専務ら4名を住居もろとも焼いてしまおうと考え、同商店第一工場内に置いてあった石油缶在中の混合油を持ち出して、これを専務ら4名の身体にふりかけ、マッチでこれに点火して放火し、専務らが現に住居に使用しかつ現在する木造平家建住宅1棟を焼損し、上記被害者の専務らを死亡させて殺害したする請求人へ確定判決が出て、請求人が、再審請求(第1次再審請求)をし、同再審請求を棄却する決定をし、これに対する即時抗告及び特別抗告もそれぞれ棄却され、さらに、請求人と再審請求人(有罪の言渡を受けた者の保佐人・請求人の実姉)が、地方裁判所に本件再審請求(第2次再審請求)を行い、無罪であることを認めるべき新たな証拠として種々の書証等を提出したほか、職権によるDNA型鑑定を求め、同裁判所は、これら書証のほか、DNA型鑑定の結果等に基づき、「再審を開始する」との原決定をした。これに対して検察官が即時抗告を申し立てた事案において、5点の衣類に関する新旧証拠及びその余の新旧証拠を総合評価しても、5点の衣類が犯行着衣であり、かつ、それが請求人のものであるとする確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるような事情は見出せず、そのほか、弁護人が種々指摘する点を踏まえても、捜査機関が、5点の衣類をねつ造したことを示す明白な証拠はうかがわれず、5点の衣類を根拠として、請求人を本件の犯人とした確定判決の認定に合理的な疑いが生じていないことは明らかであるとし、原決定を取消し、本件再審請求を棄却した事例。
2018.07.10
強姦未遂、強姦、強制わいせつ被告事件
LEX/DB25449552/最高裁判所第一小法廷 平成30年 6月26日 決定 (上告審)/平成29年(あ)第530号
被告人が経営するマッサージ店で敢行された、アロママッサージを受けに来た女性合計4名に対する強姦1件及び強制わいせつ3件のほか、被告人からアロマに関する指導を受けていた女性に対する強姦未遂で起訴された被告人が、暴行及び脅迫、被害者の同意、強姦又は強制わいせつの犯意を争い、第1審判決は、全事件が有罪であるとして懲役11年を言い渡し、控訴審判決も、強姦罪の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとは認められないなどとし、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案において、被告人は、本件強姦1件及び強制わいせつ3件の犯行の様子を被害者に気付かれないように撮影しデジタルビデオカセット4本に録画し、被告人がこのような隠し撮りをしたのは、被害者にそれぞれその犯行の様子を撮影録画したことを知らせて、捜査機関に被告人の処罰を求めることを断念させ、刑事責任の追及を免れようとしたためであるとし、さらに、本件デジタルビデオカセットは、刑法19条1項2号にいう「犯罪行為の用に供した物」に該当し、没収することができるとして、上告を棄却した事例。
2018.07.03
覚せい剤取締法違反、建造物等以外放火、非現住建造物等放火未遂、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反、窃盗被告事件
「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 9月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25560354/さいたま地方裁判所 平成30年 5月10日 判決 (第一審)/平成28年(わ)第1038号 等
暴力団関係者との交友関係のある被告人の覚せい剤取締法違反、窃盗の罪においては、被告人が所持していた覚せい剤は6グラム以上と多量である上、被告人は18歳頃から断続的に覚せい剤を使用してきたものであり、覚せい剤に対する常習性、親和性は高いとし、また、窃盗の点をみると,被告人は第三者に指示されるがままに自動車を窃取したものであり,被害額は110万円以上と高額であり、被害結果は重大であるなどとし、懲役2年に処したが、建造物等以外放火、非現住建造物等放火未遂及び火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反の各罪においては、検察官が証拠とした本件撮影(〔1〕平成27年10月4日から平成28年5月19日までの間、被告人方近隣の私人管理場所の中にビデオカメラを設置し、データを保存する外付けハードディスクの交換時を除いて24時間連続で撮影を行ったこと、〔2〕撮影範囲は、主に被告人方前の公道及び被告人方玄関であったが,被告人方玄関ドアが開いた際には、ドアの内部の様子が映り込んでおり、ドアの内部の様子が撮影されていた時間が連続約25分間に及ぶこともあったこと、〔3〕警察官は,外付けハードディスクを交換した後,人や車の動きのある部分をパソコンにダウンロードして保存しており,この際明らかに無関係な郵便配達人等の映像は除いていたが,事件と関係のない人や車等の映像でも残されていたものがあった)が、類型的に強制処分に当たるとまではいえないものの、少なくとも平成28年の初め頃以降はその撮影の必要性が相当程度低下していたことは明らかで、それにもかかわらず長期間にわたって撮影を継続したこと自体不適切であった上、しかも本件撮影方法は他の類似事案と比べるとプライバシー侵害の程度が高いものであったと評価できることを考慮すれば、本件放火事件当時の撮影は、任意捜査として相当と認められる範囲を逸脱した違法なものであったと認められるとし、被告人に無罪を言い渡した事例。
2018.06.26
再審請求事件(恵庭OL殺人事件第2次再審請求棄却決定)
LEX/DB25449442/札幌地方裁判所 平成30年 3月20日 決定 (再審請求審)/平成29年(た)第1号
殺人、死体損壊被告事件(申立人が、2000年3月に北海道千歳市、恵庭市又はそれらの周辺で、当時24歳の被害女性を殺害し、死体に灯油をかけ火を放って焼損しもって死体を損壊したというもの)について、申立人が、第二次再審を請求した事案において、確定判決等は、本件の犯人として想定し得る人物を絞り込み、これを請求人と特定するに至る間接事実が各々独立した形で少なからず存在し、そのようにして特定された請求人が犯行やそれに関連する一連の行動に及ぶことは不可能であるなどといった事情が認められないことから、請求人を本件の犯人と認定・判断したものであるところ、本件再審請求審において弁護人が提出した各証拠は、確定判決等が判断の根拠とした間接事実等の認定や評価に影響を及ぼすようなものではないから、請求人を犯人であると認めた確定判決等の事実認定に合理的な疑いは生じ得えないとして、本件再審請求を棄却した事例。
2018.06.05
間接強制申立却下決定に対する執行抗告事件
LEX/DB25560121/東京高等裁判所 平成30年 3月26日 決定 (抗告審(執行抗告))/平成30年(ラ)第216号
抗告人(死刑確定者として拘置所に収容されている者)が、平成26年4月17日及び平成28年3月30日、相手方(国)に対し、再審請求の打合せを目的とする弁護士との面会につき、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律121条に基づき、職員を立ち会わせる措置を執る旨の処分をすることの仮の差止め等を申し立てたところ、東京地方裁判所は、平成28年12月14日、各基本事件について、再審請求の打合せを目的とする抗告人と弁護士との面会につき、仮に,職員を立ち会わせる措置を執る旨の処分をしてはならない旨の決定をしたが、本件は、抗告人が、東京拘置所長において、前記決定が相手方に送達された後である平成28年12月16日、同月22日、平成29年2月15日、同年3月2日、同月27日及び同年4月3日、同決定に反して、抗告人と再審請求の打合せを目的とする弁護士との面会につき、職員を立ち会わせる措置を執った旨主張して、間接強制の裁判を求める旨の申立てをしたところ、原審は、抗告人の本件申立てを不適法であるとして却下したことから、これに不服の抗告人が抗告をした事案において、抗告人の本件申立ては不適法であるからこれを却下すべきであるところ、これと同旨の原決定は相当であるとして、抗告を棄却した事例。
2018.05.22
邸宅侵入、公然わいせつ被告事件
LEX/DB25449452/最高裁判所第一小法廷 平成30年 5月10日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第882号
被告人は、正当な理由がないのに、他人が看守するマンションに、1階オートロック式の出入口から住人に追従して侵入し、1階通路で、不特定多数の者が容易に認識し得る状態で、自己の陰茎を露出して手淫し、引き続き、2階通路で、同様の状態で、自己の陰茎を露出して手淫した上、射精し、公然とわいせつな行為をしたとした事件で、被告人は犯人との同一性を争ったが、第1審判決は、本件現場で採取された精液様の遺留物(本件資料)について実施されたDNA型鑑定(鈴木鑑定)を踏まえ、以下のとおり被告人を犯人と認めて、公訴事実どおりの犯罪事実を認定し、被告人を懲役1年に処したため、被告人が事実誤認を理由に控訴し、原判決は、被告人と犯人との同一性については合理的疑いが残るとして、第1審判決を破棄し、被告人に対し無罪を言い渡し、検察官が上告した事案において、原判決が、本件資料は1人分のDNAに由来し、被告人のDNA型と一致する旨の鈴木鑑定の信用性には疑問があるとし、被告人と犯人との同一性を否定したのは、証拠の評価を誤り、ひいては重大な事実の誤認をしたというべきであり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められるとして、原判決を破棄し、本件控訴を棄却した事例。
2018.04.10
大崎事件第3次再審請求開始決定に対する即時抗告棄却決定
「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 7月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25549643/福岡高等裁判所宮崎支部 平成30年 3月12日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成29年(く)第19号
請求人が、殺人、死体遺棄被告事件(いわゆる大崎事件)で懲役10年に処せられた確定判決について、第3次再審請求をし、請求審における新証拠である鑑定及び新鑑定は、確定審、第1次再審請求及び第2次再審請求において提出された全証拠と併せて総合評価すれば、請求人の本件犯行への関与を認定した確定判決の事実認定には合理的な疑いがあるとし、原決定の再審開始決定に対し、検察官から即時抗告をした事案において、P2鑑定が確定審において提出されていた場合、その立証命題に関連する旧証拠に及ぼす影響により、確定1審判決の事実認定は維持し得なくなり、新旧全証拠をもってしても確定1審判決の認定した殺人、死体遺棄の事実を認定するに十分な証拠はないこととなり、新証拠であるP2鑑定は、新旧全証拠との総合判断により、確定1審判決の認定した殺人、死体遺棄の事実認定に合理的疑いを生じさせるに足りる証拠であると認められ、刑事訴訟法435条6号所定の「無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠」に該当し、検察官の本件即時抗告を棄却した事例。
2018.04.10
覚せい剤取締法違反被告事件
(かばん無断で捜索 違法認定し逆転無罪 覚醒剤所持を巡る事件)
LEX/DB25549551/東京高等裁判所 平成30年 3月 2日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第1845号
被告人が、営利の目的で、千葉県富里市内の駐車場で、覚せい剤10.078グラムを所持したとの事実を認定し、被告人を懲役4年及び罰金50万円に処した第1審判決に対し、被告人が控訴した事案において、本件における無令状捜索の違法の程度は重大であって、将来の違法捜査の抑制の見地からしても、本件覚せい剤等の証拠能力は否定されるべきものであり、本件覚せい剤に関する本件鑑定書も同様に証拠能力を欠くものであるとし、そうすると、本件覚せい剤及び本件鑑定書の証拠能力を肯定した原審の訴訟手続には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるとして、原判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡した事例。
2018.03.27
LEX/DB25549506/仙台高等裁判所 平成30年 2月28日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成26年(く)第24号
准看護師であった請求人が、当時勤務していた医療法人クリニックで、診療を受けていた5名の患者に対し、それぞれ点滴が行われていた際、未必の殺意をもって、点滴ルートを介して、呼吸抑制を引き起こす筋弛緩剤マスキュラックス溶液を各体内に注入して容体を急変させ、うち1名を死亡させて殺害し、他の4名については殺害に至らなかったという、殺人1件及び殺人未遂4件からなるとした事件で、第1審で無期懲役の有罪判決となり、控訴審、上告審も棄却され、第1審の確定判決に対する再審請求をしたが棄却決定となったため、請求人から即時抗告の申立てをした事案において、新証拠の大学教授(当時)医師作成の意見書が、刑事訴訟法435条6号所定の無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たらないとした原決定の結論に誤りはないとして、即時抗告を棄却した事例。
2018.03.13
現住建造物等放火被告事件
LEX/DB25549403/東京高等裁判所 平成30年 2月 9日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第1510号
被告人が、bほか4名が現に住居に使用する鉄筋コンクリート造陸屋根倉庫併用住宅(延べ床面積約141.78平方メートル)に放火しようと考え、同住宅倉庫内で、何らかの方法で点火して火を放ち、その火を同倉庫の木製窓枠に燃え移らせ、前記倉庫併用住宅の一部を焼損(焼損面積合計約0.85平方メートル)したとして、原判決は有罪としたところ、弁護人は、本件放火の犯人は被告人ではないのに、原判決が、被告人が犯人であると認定している点で、事実誤認があるなどとして控訴した事案において、被告人の服装や使用自転車の特徴が特異とはいえず、被告人の居住場所付近で自転車を止めたとはいっても、同所での行動が明らかでない以上、偶然、被告人と似た服装をし、被告人使用自転車と同様の特徴を有する自転車に乗った第三者が、被告人の居住場所付近で自転車を止めた可能性を払拭できず、このほか、原審記録を精査しても、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない、あるいは、少なくとも説明が極めて困難である事実関係を認めることはできないとし、被告人を犯人と認めた原判決の判断は、証拠の評価を誤ったものであり、論理則・経験則等に照らし、著しく不合理なものというほかなく、原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるといわなければならないとして、原判決を破棄し、被告人に対し無罪を言い渡した事例。
2018.03.13
再審請求棄却決定に対する即時抗告事件
(飯塚事件再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定)
LEX/DB25549362/福岡高等裁判所 平成30年 2月 6日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成26年(く)第56号
亡死刑囚に対する死体遺棄、略取誘拐、殺人被告事件について、同人は死刑に処する旨の有罪判決を受け、控訴及び上告はいずれも棄却され、一審判決が確定し、同人に対し、既に死刑が執行されたものであるが、申立人(再審請求人)が再審を請求したところ、弁護人が提出した証拠はいずれも明白性が認められないとして再審請求が棄却されたため、申立人が即時抗告した事案において、論理則、経験則等に照らして不合理な点はなく、当裁判所も正当なものとして是認することができるとし、本件再審請求には刑事訴訟法435条6号の再審事由があるとはいえないとした原決定の判断に誤りはなく、即時抗告を棄却した事例。