1997年4月号Vol.3

【巻頭言】ネットワーク時代における地方の「復権」の可能性

慶應義塾大学環境情報学部教授 苗村憲司

 世界貿易機関(WTO)の電気通信交渉が合意に達し、通信事業の国際相互乗り入れが実現する見通しです。インターネットの地球規模の発展と併せ、情報通信の世界は国境のない時代に突入します。一方、国の政策として「高度情報化」と「地方分権」が叫ばれています。この時代に、地域社会の果すべき役割をどう考えるべきでしょうか。

 本来、地域社会は人々の生活の基本的な単位です。個人の権利を最も重視する民主主義社会ならば、行政の主要な権限が地方自治体に存在するのが本来の姿です。国家に権力が集中する最大の理由は戦争ですが、それに加えて工業化時代の事情がありました。生産材や製品を運搬する運輸手段と国際貿易の重要性が拡大し、それを確保する役割を国家に期待したからです。

 情報化時代は、情報の創造・流通・利用が物の生産・流通・消費と同程度に重要な役割を占める時代です。情報の流通においては距離や国境はほとんど意味がありません。国家が重要な役割を主張することが不自然な時代になるのです。正に地方が「復権」する時代です。地域情報化も、そのプロセスであると考えるべきでしょう。

 この視点から、地方自治体では次の四点をぜひ実行してほしいと思います。

 第一に、住民の生活や地元産業の活動の共通の場(コミュニティ)として地域社会をとらえ、その特徴的な文化・産業・自然環境等を明確化し、それを言葉やシンボルで表現し、ネットワーク上で公表することです。それがそのコミュニティを他から識別する個性(アイデンティティ)となり、そのコミュニティが愛される理由になるからです。

 第二に、コミュニティに関するさまざまな情報をデータベース化してネットワーク上に提供することです。行政の情報化もこの一環として進める必要があります。もちろん、個人情報の保護には留意する必要がありますが、それは全体の情報量の中ではごく一部のはずです。

 第三に、ネットワークを活用して、そのコミュニティの個性を広く周知し、関心を持つ人々の間の情報連絡の場を作ることです。これにより、その地域の出身者はもちろん、その個性に関心を持つ人々の間に仮想的な拡大地域社会(ヴァーチャルコミュニティ)の形成が期待できます。

 第四に、地域社会が世界レベルで相互に直結し、それぞれの個性を生かして文化・産業の交流を進めることです。姉妹都市の活動を延長した「インターコミュニティ」ネットワークの実現が「復権」後の地方の活性化に役立つに違いありません。

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