1997年7月号Vol.4

【トレンドView】忍び寄る黒い影『マクロ・ウイルス』

コンピュータジャーナリスト 中尾英二

 通産省の外郭団体である情報処理振興事業協会(IPA)によると、今年4月のコンピュータ・ウイルスの被害届け出件数は200件で、被害届け出を制度化した90年6月以後の月別件数としては過去最高を記録した。最も被害が大きかったのは『マクロエクセル/Laroux』と呼ばれるマクロ・ウイルスに感染したケースで、パソコン2000台が被害にあった。今年1月にも一度に1000台という被害が報告されたが、なぜマクロ・ウイルスの被害がこんなにも広がっているのか。

『コンピュータ・ウイルス』というものが話題になり始めてから、かれこれ10年になるだろうか。何かが流行ると「ちょっとしたイタズラ」をしてやろうという不貞のヤカラ――いわゆる愉快犯が出てくるのは世の常だが、一般的な愉快犯は素人の思いつきでできるのに対してコンピュータ・ウイルスはそれなりの技術がないと作り出すことができない。歴史上の有名な人物(例えばレオナルド・ダ・ビンチ)の誕生日になると、それまで鳴りを潜めていたウイルス・プログラムが動き出して悪さを始める、というような、かなり高尚な知識を持った人間が作っていることは分かるのだが、犯人が特定できないのが特徴だ。

 これまでは、特定の期日がくるまでじっと待っている“トロイの木馬”型が典型的なウイルスだった。突然、ディスプレイに変なメッセージを表示したり、データ・ファイルの中身をアルファベットの羅列に変えてしまったりと、その症状はさまざまだ。通常はどこからかもらったデータやプログラムを収めたFDに混在していて、データやプログラムに取りついたり、ひどい場合はハードディスクに入り込み記録されるファイルを次々と破壊するようなものもある。

 ここにきて話題になっているのは『マクロ・ウイルス』というものだ。ネットワーク、特にインターネットが普及し始めた90年代に入って発生が懸念されていたものだが、パソコン用アプリケーションとして一般に普及しているマイクロソフト社のワープロ『MS-WORD』や表計算ソフト『MS-EXCEL』で作成したデータ・ファイルに取り付く特徴を持っている。WORDやEXCELのマクロ機能を利用して作られたウイルスであることからこの名がついたが、プログラムそのものには取りつかない。しかも多くはデータをインターネットで送信している最中に、どこかのサーバーで取り付くらしい。“らしい”というのは、そのサーバーが特定できないからだ。

 いまのところディスプレイの色を変えたり、とんでもないところにデータが表示され左右に揺れて動くなど「ちょっと驚いた?」という程度の悪さだが、一度登場したウイルスはどんどん改良(?)され機能が向上(?)していくのが常であり、いつどんな悪さを働くようになるか分からない。またネットワークで感染するため、パソコン1台が感染するとたちまちLAN全体に広がってしまう。まったく小学校の流行性感冒より質が悪い。

 マクロ・ウイルスばかりでなく、最近では電子メールを送信したり無償提供されているプログラム――フリーウエアをダウンロードした見返りに発信者のID番号とパスワードを盗んでしまう“スパイ”型ウイルスも登場している。「かかったかな? と思ったら」という風邪薬のCMがあったが、コンピュータ・ウイルスは「かかってない」と思っても予防が欠かせない。ウイルス・プログラムを検出して退治する『ワクチン』プログラムを週に1度は動かして、パソコンの健康を保つよう心がけてはいかがだろうか。

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