1997年10月号Vol.5

【特集】地方分権の時代をいかに乗り切るか

新しいステージを迎えた財務情報システム

壬生町総務部企画財政課財政係主査 出井 透氏 / 白河地方広域市町村圏整備組合財政係長 岡部孝雄氏
南那須町企画課副主幹兼情報管理係長 小川祥一氏 / 丸子町企画財政課財政係主査 斎藤千比呂氏
司会 TKC地方公共団体事業部営業推進企画部次長 小林惣一

行政改革、省庁再編、高齢化社会など地方自治体を取り巻く環境が激変しつつある中で、市町村は否応なしに行政運営の自立を迫られている。計画的な財政運営でどれだけ高い成果を挙げえるか..市町村という舟が大波を乗り越えられるかどうかはその舵取りによる。それを支援するのが財務情報システムだ。基幹システムである財務情報システムを通じて情報化の方向性を探る。

司会 「今後はクライアント/サーバ(C/S)システムだ」との声にお応えして、財務情報システム『TASK財務マスター』をご提供して1年半がたちました。そこで先進ユーザーの皆さんに改めてシステムをご評価いただき今後の財務情報システムの課題についてお話をうかがいたいと存じます。

斎藤 丸子町は平成8年4月1日にC/Sシステムを導入しましたが、財務会計のOA化が目標だったので特にC/Sシステムを意識したわけではありません。それまではプリンターで伝票を打ち出した経験がなく最初は不安でした。また、その際に基本となるデータもなかったので、7、8年度の予算を『TASK/DBサーバ』で入力し『TASK財務マスター』に変換して対応しました。システムを選んだポイントは“事業別予算”です。20年ほど前から予算積算時に事業別予算で組立てていたのですが、いざ執行の段階になると管理が曖昧になっていたので事業別管理ができるのは魅力でした。

岡部 白河地方広域市町村圏整備組合は、白河市(人口4万6000人)を中心に12市町村によって構成される一部事務組合で、主な事業内容は広域市町村圏計画の策定をはじめ、職員研修、機械運営センター、消防などです。C/Sシステムを導入したのは丸子町さんと同じ平成8年4月で、C/S化のメリットは“事務の省力化と迅速化”が図れたことですね。また、誰がやっても同じ伝票、同じ予算書が出力され字も見やすいという点でも、C/Sを導入してよかったと思います。

出井 壬生町では『TASK/DBサーバ』の評価が高かったことと、各システムとの連動を考えて『TASK財務マスター』に切り替えました。当初は漢字変換ソフトATOKへの戸惑いがあったようですが、システム的には従来の流れを踏襲、またマウスを使うことで“操作性”は抜群によくなったと思います。導入の決め手はやはり事業別予算でしたね。従来も細目レベルの管理はできましたが、階層ごとに事業別予算管理ができる点は非常に興味がありました。もう1つの決め手は“実施計画”です。これまでは査定作業の中で予算要求額と実施計画額を突合しなければなりませんでしたが、実施計画を大・中・小分類に分けてコード化し事業別予算とマッチングさせて、それが予算要求書上に表示されるので容易に対比できるようになりました。

小川 南那須町も平成8年に『TASK/DBサーバ』から『TASK財務マスター』に切り替えました。移行の理由は、①Excelや一太郎など“一般の流通ソフトが使える”、②税・住記などの情報をC/Sに移行して“イントラネット”へ発展させることができる、③オフコンよりも“低コスト”です。実際に試算したところ年間で約200万円違いました。

計画的な財政運用のための試行錯誤

司会 今回のC/Sシステムの目玉のひとつが「地方財政状況調査表67表」のOA化ですが、実際に利用されていかがですか。

斎藤 結果として決算統計はノーエラーで仕上げることができましたが、まだシステムに慣れていなかったことと、自動集計だから楽だという思いこみが強くて残業時間は昨年よりも増えました。欲を言うと「ここまでできるのだからもう少し楽に」という部分があります。財源充当は本表に合わせて項ごとに充当できるようにしてもらえると助かります。また、表間以外にも数字が入る部分は表内検算の通りにチェックしなければならないので、例えば〈ここに数字が入ったら、こっちは網掛けになる〉とかができると便利になると思います。よかった点は、従来は基礎表を手書きで作成していたため記入ミスもありましたが、このチェックが縦横クロスでできるので気楽です。また、従来は表間突合表を2日ぐらいかけて作成していましたが、随時、画面で確認できるようになったので大変重宝しています。

岡部 うちでもタカをくくっていましたね。4月に担当者が入れ替わったため、システムが完璧な形で提供されていれば事務的な問題だけだったのですが、新規システムということで担当者は両方勉強しなければなりませんでした。ただ苦労した分、担当者も随分勉強をしたし、またシステムの不具合も改善してもらったので来年度からは楽になると、またタカをくくっていますよ。(笑)

出井 基幹となるクロス表、2表~13表などを従来の『TASK/DBサーバ』で作成し、C/Sシステムの地方財政状況調査表に直接8年度のデータを入力する方法をとりましたが、残業時間はだいぶ減りましたね。財源充当については細節への充当がなかなか難しいので、別途、各課から補助事業の実績報告書的なもの..例えば歳入に1億円の補助金が入ったら13節に2000万円、15節に8000万円充当されたという調書をもらって対応しています。できれば各課に照会できる基礎表のようなものが作成できると便利ですね。また〈○○国庫支出金が1億円あるが、△△事業にはA節にいくら充当され、B節には…〉等が画面で把握できるといいのですが。

斎藤 8年度分の予算要求資料は手書きで提出してもらい、積算基礎は財政係が新システムにすべて入力し予算承認しました。我われは大変でしたが、9年度分は各課はこれをベースに新規分の追加や単価・数量など内容を修正するだけで容易に予算要求ができるわけですからね。事業別分類が細かすぎるのかもしれませんが、流用を細かく制限したために細節レベルで予算残高が生じ、結果的に平成8年度の決算で繰越金が前年度の1.5倍になってしまいました。伝票に日付や名前が入るため手書き伝票のように駆け込みの予算消化ができないためと思われますが、予算編成の査定がちょっと甘かったかなと反省しています。

出井 従来は、事業別予算編成・執行といった形を取っていなかったので、まずその趣旨を理解してもらうことから始めました。財政担当が事業別分類の素案を作成し各課とヒアリングを行い内容をつめたのですが、我われとしては〈決算統計が楽〉よりも〈執行管理とその後の計画と整合性、執行効果の把握などが容易にできる〉ことを心がけました。ただ、1つだけ心配だったのが「流用の連続になるのでは」という点でした。システムでは流用など何らかの手続きを取らない限り予算が不足します。結果的には財務規則は直さなかったのさなかったのですが、ほかから予算を持ってこられるというのは予算編成が不十分だということですから。ところで、事業別と計画執行で効果を測定する作業が管理できると便利なのですが。実施計画をコード化し予算要求書に表示されたことで比較は容易になりましたが、さらにシステムで実施計画と予算編成それぞれの積算基礎などを対比できれば、より事業別予算の効果が出ると思います。

小川 そうですね。うちでも当初予算の説明資料として使うので、それができれば便利だと思います。ところで、うちでも事業別に管理していますが、ほかの事業に予算を動かせないとすると、担当者がシステムに縛られませんか。

斎藤 それも考えたのですが、最初から甘くすると問題ではないかということで厳しくしました。ですから逆に財務規則をいじったんですよ。

小川 そうなんですか。今年は機構改革があり、例えば〈人件費の細節に管理職手当がなく、そこに管理職手当の対象者が異動した。ところがその細節にはお金がない。でも節の中にあれば人件費の流用は可能なはずだ〉と考えて予算差引できるようにしました。これをきちんとしないと流用伝票を起こさなければならず、監査時にも指摘を受けますからね。また手当まですべて細節で管理すれば決算統計も給与実態調査も楽ですよ。

岡部 うちでは事業展開が多くないので、あまり不便さを感じていませんね。先ごろ行革の一環として財務事務の一元化を行い、消防も含めて財政係がすべて予算執行を管理することになりました。事業費なども細節レベルで管理しているため、すこぶる動きはいいのですが、来年の決算統計や予算を組む時にどうかという懸念はあります。まぁ、しばらくは試行錯誤を続けるしかないでしょう。

財務システムが地方自立化への第一歩

司会 平成9年2月24日、第25次地方制度調査会の「監査制度の改革に関する答申」に基づき地方自治法が改正されました。これらの動きに対応するためにも、よりシステムの枝葉の部分を強化したいと考えています。今後の財務システムの課題についてご意見をいただけませんか。

出井 決算統計システムへの要望としては、表内チェックでは縦計、横計、比率などが正確に表示されるので便利ですが、さらに〈△△ならばいくら以上(未満)になる〉という理論チェックができるといいですね。また、『TASK財務マスター』はExcelに表を取り込めることが特徴ですが、もっと簡単にデータを抽出して、例えば、複数年次の財政計画を作る時などに、決算統計データを簡単にExcelで加工できると便利です。こういった基礎データをきちんと管理することで、外部監査や情報公開にも対応していけると思っています。

斎藤 外部監査といっても2万5000人ぐらいの町では食糧費などの問題はないに等しく、むしろ「実際にどんな効果があったのか」ということが重要です。データを加工して最終成果を示せる資料がExcelで簡単に作成できるといいですね。

司会 Excelとの連携については、Windows NT4.0版で来春には対応します。

岡部 情報公開等への対応を考えると、資料をExcelに落とせて、しかもExcelもその市町村の書式に沿った組み替えができるといいなぁ。すでに開発を始めたということなので期待しています。さらに、いま必要に迫られているのは備品管理で、情報公開でも一番疎かにしているこの部分をきちんと整理したいので、ぜひそういったサブシステムの拡充もお願いしたいですね。

小川 『TASK住記マスター』では汎用検索や汎用抽出できるシステムを考えているということですが、財務システムでもデータベースから必要なものだけを引き出せるようにしてほしいですね。その市町村独自の使い方や様式もあるでしょうが、Excelならばカスタマイズも楽ですから。

司会 ありがとうございます。現在、①住記・税務収納データとの連動、②起債管理システムとの連動による決算統計データの集計、③サブシステムの充実、などレベルアップを図る予定で、その他のご指摘についても改良を重ねていきたいと存じます。さて、地方分権の時代に向け市町村財政は極めて厳しい状況にある一方で、高齢化時代の福祉対策、国際化、環境問題など市町村が抱える課題は山積みであり、これをどう乗り切るか行政運営の手腕が試されています。そのためにも、これまで以上に情報システムの果たす役割が大きいと思いますが、いかがですか。

小川 庁内に財務システムが浸透するほど、「せっかくあるデータならば(財政以外の職員も)利用したい」という要望が高まるでしょう。うちでは住記・税務、健康管理、農業行政をすべてC/Sシステムに移行し、最終的には『イントラネット』を構築する計画です。庁舎内に限らず庁舎外でも施設予約などもイントラネットでやりたいですね。そのためにも1~2年で環境を整備します。

斎藤 うちでもグループウェアの検討を始めました。ただ、住民サービスとは直接関係ない部分でイントラネットだけ先走るのはどうでしょうか。出先機関とのやりとりもスピードの問題等を考えると、まだ電話で十分かなという気もしています。

岡部 いずれワープロ専用機はなくす計画ですが、組合としてのイントラネットは、まだ必要性を感じていません。ただ、消防の『緊急通報システム』では、すでに〈財務システムを含む各種システムをネットワーク化し、できる部分はリンクする〉方向で検討を始めました。

出井 結局、従来のオフコンと同じレベルでしか活用しないのであればクライアント数はもっと少なくていいわけで、コンピュータが得意としてきた計算処理以上のものをC/Sシステムに期待しているんですよね。その点、いま最も興味があるのは『電子決裁』です。行政事務のシステムは『C/Sシステム』~『グループウェア等による文書管理』~『公文書の電子決裁』へと進化するでしょう。そのためにも行政の基幹システムである『財務会計の電子決裁』を検討してほしいと思います。

小川 移行当初は大変でしたが、職員から「小川さん、C/Sにしてよかったよ」といわれるとその苦労も報われます。悩むよりも取り合えず導入して使い始めた方がいいですよ。時代の流れだからやらなければならないのではなく、将来への足掛かりとして、「コンピュータを道具として使うために、みんなに慣れてもらうんだ」という気持ちで取り組むのがいいのではないでしょうか。財務システムの幹の部分はできたので、後の細かい部分は我われがTKCと一緒に育てることで、より使いやすいシステムになってくれればと思います。

斎藤 そうですね。うちも手書きの伝票からいきなりC/Sシステムを導入しましたが、「みんなで段々いいシステムにしていこう」という気持ちで踏み切りました。そのためにも「こうすれば、もっと良くなる」という現場の要望は、これからもTKCにドンドンぶつけていきますよ。

司会 よろしくお願いします。皆さんがおっしゃるように“道具(C/Sシステム)”は揃いました。今後はシステムの枝葉の部分を皆さんと一緒に育んでいきたいと考えておりますので、ご指導のほどお願いいたします。 

壬生町概要

人口4万人/60.76平方キロメートル/日光街道の宿場町として栄え、古くからの特産品・野州干瓢に加え近年は苺栽培が盛ん。おもちゃ博物館には国、時代を超えた展示品が3000点以上ある。
http://www.town.mibu.tochigi.jp/

南那須町概要

人口1万3247人(H7国勢調査)/81.56平方キロメートル/新農村田園文化都市づくりを目指す町。中学校を含むインターネット開設など積極的に情報化を推進している。
http://www.city.nasukarasuyama.lg.jp/

白河地方広域市町村圏整備組合概要

総面積1232.87平方キロメートル/白河市を中心に西白河郡と東白川郡の12市町村で構成。1つの市町村では実現しにくい大規模事業に取組み、大きな成果を挙げている。
http://www.shirakawa.jp/

丸子町概要

人口2万5000人/105.7平方キロメートル/かつては製糸業で隆盛を誇ったが、最近はハイテク産業も急伸。純木造音楽ホールなど芸術文化への造詣が深い町だ。
http://www.city.ueda.nagano.jp/

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