1998年1月号Vol.6

【巻頭言】ネットワーク社会における市町村行政の在るべき姿

~来るべき変革に向けて~

明星大学情報科学研究センター 教授 大橋有弘

 行政の情報システムほど社会的なシステムはない。企業の情報システムが、個々の企業目的のために構築され、企業内に閉じたものであることと対照的である。

 ここに行政の情報化の社会性という本質的な意味がある。それ故に行政の情報化の成果は本来の受益者である国民に還元されなければならないし、それは住民に最も近い市町村の行政にとって、より重要で現実的な課題である。すなわち、行政の情報化が単に内部事務処理の効率化のためのものにとどまるべきではなく、情報化のメリットが行政サービスの変革につながるべきであり、住民側からはその期待が高まっているのである。

 このような状況において最近、地方の行政に関して注目すべき動きが2つある。情報公開と住民基本台帳ネットワークシステムである。これらはいずれも、今までの市町村の行政運営及び行政と住民との関係に大きな変革をもたらすものであることは間違いない。

 情報公開については、国において法律の制定が平成10年度に予定されており、その要綱に示された内容から判断すると、今までの市町村における条例の考え方では対応できないことは明らかである。すなわち、行政情報は原則すべて公開であり、一部不開示が認められるものについてその範囲を特定するという理念に基づいており、従来の開示できる範囲を特定するという考え方から180度転換するものである。この新しい情報公開法が運用されると行政側に多くのことが要求される。特に、従来の文書管理では幅広い開示請求に対応できず、庁内LANや電子文書管理システムの構築等が必要になろう。また、情報公開が行政の監視にとどまらず、行政への参画を拓くものとして定着するには、住民及び行政の双方の意識改革が求められよう。

 住民基本台帳ネットワークは、今まで各団体内に閉じていたシステムを国の行政機関をも視野に入れて全国レベルに拡張、発展させる内容を持つものである。このネットワークは、行政の情報化が開始されてから30年以上を経過する中での、一大事業というべきものである。そのためには、既存の住民登録システムの全国ネットワークへの対応、オンライン結合禁止条項等、既存の法規定の見直しが必要とされるが、住所変更のワンストップサービス等、結果的には行政の改革、行政サービスの向上に大きく貢献するものであり、次世紀の行政運営の根幹に関わるものとして対応すべき時点に達しているのである。

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