1998年1月号Vol.6

【特集】戸籍の電算化の現状

コンピュータジャーナリスト 中尾英二

 いうまでもなく、戸籍とは「日本国が日本国人であることを証明する唯一の資料」である。歴史的に戸籍の由来を調べると、律令の時代の班田収受法にさかのぼる。国が民に田畑を与える代りに、租・庸・調の税を徴収する台帳を作ったのだ。もっとも、近代的な――ないし西欧思想的な――意味での〈国〉の概念が認められたのは19世紀に入ってからで、現在の戸籍制度につながる初源は明治政府における徴税と徴兵である。

 民主主義と平和憲法をもって国是とする現在、戸籍が持つ意味合いは、①人の生死と婚姻にかかわる事柄、②海外に渡航する際のパスポート取得に必要な書類、という程度に過ぎない。国際化が進んだ今日、戸籍を以って徴税が行われるわけではなく、日常生活に必要なのは〈市民権〉の認証である――ということを前振りとして、「戸籍の電算化」というテーマを眺めてみたい。

 さて、法務省が戸籍の電算化を容認したのは94年度だったが、これには多くの異論や反論があった。理由は「国民の国民であるが所以を証明する唯一の公文書だから」である。コンピュータ化――正確に言えば「電子的処理」が可能な形(つまりデジタル化だが)――にすると、人の目に見えなくなり、改変が容易になる、というのである。

 ともあれ、すったもんだの挙げ句に法務省が戸籍の電算化にGOサインを出し、いくつかの地方自治体で先行的な試行作業がスタート。達筆な筆書きで記載された明治以来の旧戸籍は、読み取るだけで大変だし利用頻度が小さいということで、多くは戦後に作られた新戸籍を対象にスタートした。しかし、それでも山のような「外字」をインプットするための準備(いわゆるセットアップ)が大変だということが分かってきた。漢字ひとつ取っても、点のある無し、縦棒がはねるのはねないの、要するに戸籍の原票を記録した人の個性やその時々の気分がそのまま「国民の国民であるが所以を証明する唯一の公文書」に反映されているからだ。文字の形を借りた人間の個性や感情を、正確にコンピュータにインプットするというのは、いかに至難の業であるかを、戸籍の電算化は示している。

 94年度にテストケースとして先行して電算化された戸籍数は、9団体・69万件だった。東京都新宿区の16万2000件(受託企業は富士通)、次いで台東区の14万6000件(日立製作所)、豊島区の13万5000件(日本IBM)の3件だけで初年度全体の64.2%を占めている。地方都市では広島県三原市の3万5000件(自力)、町村では茨城県茨城町の1万4400件(富士ゼロックス)が規模の大きい方である。

 95年度は42団体・66万件が電算化された。最大規模は東京都足立区で19万4000件、第二位は同じく東京都の中野区で13万3000件、最小は秋田県大潟村の860件となっている。自治省の外郭団体である地方自治情報センター(LASDEC)が95年度に全国3300自治体を対象に行った「戸籍電算化に関する取組み状況の調査」によると、ほぼ1割に当たる320自治体が「96年度中に着手したい」と回答しており、情報産業界は「5000億円規模の新市場」と見て大いに期待したわけだった。

 ところが、96年度に実際に着手したのは59団体・70万9000件に過ぎず、97年度にいたってはわずか14団体が作業に入っているに過ぎない。今年度分を含めても、戸籍の電算化を完了もしくは作業中なのは全国で129団体、戸籍数は213万件。1団体当りの処理件数は、94年度が7万6700件、95年度は1万5700件、96年度は1万2000件、今年度は5000件と、年を追うごとに小さくなっている。

 セットアップからインプットまで、処理料金は1件当り2000円といわれるが、最大のネックは法務省と自治省が検討していた助成金が国会審議で否決されたことにある。どの自治体も助成金を当て込んで計画を立てていたので、出ないと分かると一様に先送りにしてしまった。何年内に実施しなければならない、という期限付きではないことも電算化熱が急速に冷え込んだ背景にある。戸籍の電算化は、議会や住民団体と無用の摩擦を起こしてまで強行する必要性が認められないのである。

 自治省が助成金に消極的になったのは、住民基本台帳データベースをネットワークで結ぶ『住民情報ネットワーク化構想』が浮上してきたためだった。住民が他の自治体に引っ越す際、ネットワークで当該住民の情報を転出先自治体に送信し、各種の行政手続きを自動的に処理できるようにしようというものだ。ここでも「国民総背番号制につながる」とか、「ネットワークで送信される情報の機密は維持できるのか」といった異論、反論が出ているが、要するに宅配便業者の荷物追跡システムならぬ納税者追跡システムに他ならない。

 システム構築には総額250億円が見込まれる大事業だが、「住民に対する行政のワン・ストップ・サービスを実現する」と自治省は強調している。たしかにインターネット上の仮想行政窓口ですべての手続きができるのは、情報化時代の行政のあり方を示している。だが「住民票の移動の7割以上は近隣自治体間で行われており、送信された情報は当該自治体で再入力しなければならない」など、実効を疑問視する向きもないことはない。

 しかし、それはさておくとして、この政策の転換は、戸籍より住民票の方が実生活においてはより密接にかかわっているという事実以外の何ものでもない。富士山頂や皇居に本籍を置いている人が少なからずいるという事実からして、戸籍は所詮その程度の歴史の残滓といえなくもない。

TKCの戸籍情報システムへの取り組み

 戸籍事務をコンピュータによって処理するいわゆる戸籍情報システムを提供するためには、法務省から認容を受けなければなりません。この認容を受けた提供会社は全国に8社あり、TKCはその内の1社として、WindowsNTをベ-スに開発を進め、平成7年2月に『TASK戸籍マスター』の名称でシステム提供を開始しています。

1.システムの開発提供

1)システムの特長
①戸籍情報基本システム
 法務省「基準書」に完全準拠したシステムです。
②戸籍附票システム
 戸籍データベースと同時に附票をリアルタイムに更新し、住民記録とも有機的な連携を図りました。
③除籍・改製原戸籍検索・発行システム
 戸籍システムとの連動により、検索・発行処理や除籍のイメージ入力を同一端末で処理できます。
④人口動態調査システム
 戸籍基本システムから引き渡される人口動態に必要な情報が容易に出力されます。

2.当初入力体制の充実と立ち上げ支援

1)システムの稼働実績
 平成10年1月現在、11団体で本稼動、1団体が当初マスターの作成中です。
2)TKC独自のセットアップ方式
 原票から入力する際に出生、婚姻、離婚等の事件名2文字を検索キーとして、必要事項のみ入力する当社独自の方式を採用しています。支援体制としては、市町村の担当者の方と一緒にデータ確認を行うことでデータの精度向上を図っています。
3)平成9年10月から営業推進本部に「戸籍情報システム支援部」を設置しました。データ作成から照合まで一貫して入力処理を行うため、より正確で迅速な立ち上げが可能となりました。

(営業支援部・小林惣一)

※掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、取材当時のものです。

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