1998年4月号Vol.7

【TKC地方行政研究センターから】地方分権の推進と地方税制改正

特別研究員 逸見幸司

平成10年度地方税制改正

 平成10年度地方税制改正においては、次のような改正を行うこととされています。

1)1年間限りの特例措置として、平成10年度分の個人住民税について、定額による特別減税を実施する。
2)土地等の譲渡益に係る個人住民税の税率などの見直しを行う。
3)法人事業税の税率を引き下げる。
4)特別土地保有税における三大都市圏の特定市の免税点(基準面積)を1,000平方メートルに引き下げる特例措置を廃止するなどの措置を講ずる。
5)地方分権を推進する観点から地方団体の課税自主権を拡充するための所要の見直しを行う。
6)地方税法上保存義務がある帳簿書類について、電子データによる保存を認めるため、所要の整備を行う。
7)非課税等特別措置の整理合理化などを行う。

課税自主権の拡充措置

 今回の地方税制改正において注目されるのは、前述したように、地方分権の推進の観点から、地方団体の課税自主権の拡充を図ることとし、次のような改正を行うこととしていることです。

1)個人市町村民税は、住民自らが負担を決定する性格が強いこと、個人道府県民税には制限税率がないこととの均衡などを考慮し、その制限税率を廃止する。
2)標準税率を超える税率で道府県民税の所得割、不動産取得税および大規模償却資産に対する固定資産税を課する場合における自治大臣への事前届出を廃止する。
3)1.7%を超える税率で固定資産税を課する一定の場合の自治大臣への事前届出および自治大臣による税率の指示を廃止し、これに代えて、一定の納税義務者の当該市町村の議会への意見申出制度を創設する。

事前届出制および制限税率の廃止の意義

 ところで、地方自治の本旨からいえば、地方税をどれだけ課するかについては、その地方団体の行政の内容と住民の意思とに委ねられるべきものです。

 しかしながら、地方税法においては、国民の総合的な税負担の適正化を図る観点から、税目によっては、ある程度の規制が加えられています。個人市町村民税については、このような観点と地域によってあまりに大きな税負担の差を求めないという住民の意向などに配慮して制限税率が設定されていました。

 今回の改正においては、地方分権を推進する観点から、前記のような改正を行うこととし、地方団体の課税自主権を尊重し、各地方団体が、住民の意向を踏まえつつ、自らの判断と責任において地方税の運用を行い得るための制度を拡充することとしています。

 特に個人市町村民税において制限税率が廃止されたということは、市町村が地方税法上において一人前として認知されたことを意味し、課税自主権の見地からすれば大きな意義のある改正といえます。と同時にその税率の運用にあたって、従来にもまして市町村の責任が重くなりました。

 したがって、市町村にあっては、個人市町村民税について標準税率制度がとられている趣旨を十分理解して、税率の運用にあたっていくことがこれまで以上に肝要になったといえます。

逸見幸司
1959年自治省入省。税務局企画、直税各係長、課長補佐、税務管理官、市町村アカデミーおよび(財)資産評価センターの調査研究部長を経て、96年TKC入社

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