1998年7月号Vol.8

【巻頭言】介護保険導入に向けての市町村への提言

北海道大学文学部教授 金子 勇

 介護保険法を21世紀の超高齢社会への特効薬にするために、緊急の優先課題として、市町村は出来るだけ科学的な要介護認定法に向けて努力すべきことを強調したい。なぜなら、国民が身銭を切る介護保険では、公平で公正な要介護認定方法が期待されているからである。

 過去2回の北海道高齢者ケアサービス体制整備モデル事業の経験から、私は次の7点の留意点を提示するので、2000年4月までに徹底した議論を深めていただくことを願う。

  1. 25%程度生まれる要介護度の一次判定と二次判定の不一致を、75%は一致している現状を評価したうえで、縮小させる調査方法が編み出せるか。
  2. 「かかりつけ医」の定義とは何か。とりわけ、複数の医師(内科、耳鼻科、眼科、皮膚科など)の診察を受けている場合の「かかりつけ医」の決定基準とは何か。
  3. 「かかりつけ医意見書」の依頼から回収までに時間がかかりすぎる。また、記入内容の量に比べ、介護認定調査員の報償費1件の単価が1,700円と安いし、「かかりつけ医」に支払われる報償費1件の単価が3,000円も安いという不満への配慮が可能か。
  4. 介護認定審査会委員全員が有職者なので、その日程調整が難しく、そのうえ膨大な作業量を短期間ではこなせない現状をどう理解するか。
  5. 在宅者のうち、自立意欲が高く、時間はかかるが独力で日常生活動作を実行している場合では、一次判定での要介護度の判定は低くなりやすいことをどのように判断するか。
  6. 反対に施設入所者の場合では、金銭管理、掃除、入浴介助など施設処遇上の理由で全介助が行われる場合があり、要介護度の判定が重くなりがちな傾向をどう見るか。
  7. 一次判定では、痴呆(徘徊、昼夜逆転)よりも機能障害の方が、家族に直接的負担が大きいため、要介護度が重く判定されやすいことをどう認識しておくか。

 以上の課題に取り組むことは、市町村での福祉・医療・保健の専門家の力量を向上させる契機となる。福祉社会は多方面の専門的知識を行政にも要求するから、調査結果を読み取り、それを福祉政策情報へと昇華させる力量が、市町村福祉課職員にも求められる。

 1998年5月現在の高齢化率が16%を突破した日本社会では、その構造疲労を回復させ、支え合う福祉社会づくりの要になる介護保険の順調な滑り出しのためにも、21世紀に向けてこれら7点についての本格的議論が望まれる。

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