1998年10月号Vol.9

【トレンドView】ISO14001を自治体で初取得白井町の環境共生のまちづくり

本誌夏号でも伝えたように、地方自治体において環境に関する国際規格ISO14001を取得する動きが広がりつつある。今年1月に全国の市町村に先駆けて認証を受けた千葉県白井町では、すでに庁内を対象にした環境マネジメントシステム(EMS)が稼働しており、事務用紙の削減や低公害車の導入などで効果を上げ始めている。

「町も事業所」の発想で取り組む

 東京の都心からおよそ30キロ..白井町はいまでも多くの自然を残し名産の梨で知られる。一方で昭和50年代半ばから千葉ニュータウンの入居などによる都市化が急速に進み、昨年9月には人口が5万人を突破した。

 こうした状況から、行政では緑地の保全やゴミの減量、大気・水質の汚染防止など「環境」が重要な課題になってきている。平成8年度からの『第三次総合計画』で〈自然環境を暮らしに活かす都市〉を一つの基本理念として掲げ〈環境共生のまちづくり〉と〈緑の保全、創出システムの形成〉を先導的施策に据えたのは、その対応にほかならない。

 ISO14001の認証取得もこうした意欲のあらわれだった。準備がスタートしたのは、平成9年5月下旬からだが、当初からこの準備に関わった環境課の眞仲祥道保全係長はこう話す。

 「製造業を中心とした一般企業の取得がほとんどというISO14001を役場に当てはめた場合、道路や公園を整備したり公共施設を建設するなど、広い意味で大きな事業所といえる。そのような立場で各種事務事業を推進していく際、職員1人ひとりが環境への負荷を少しでも減らすことのできる取り組みを早めに行っていくことにした」

 これに同町の中村教彰町長の手賀沼に象徴される「懐かしい故郷」を継承したいという思いが重なって、取得への動きが加速していったのである。

スタッフ中心で8ヵ月で認証

 まず、眞仲係長ら環境課の四名のスタッフを中心として行ったのが全庁的なセクションにまたがっての環境調査だった。各課や出先機関にはどんな事務があって、それがゴミや大気など環境にどんな影響を与えるのか……。事務用紙や工事材料、庁用車の排気ガスなどといった側面から調べた。同時に、職員が取り組むべきマニュアルづくりも進められ、9月中旬には町独自のEMSが動きだしたという。

 また、年度途中での着手だったことから、認証取得に伴う審査登録手数料(約210万円)は九月議会に補正予算案として上程し可決している。こうした素早い動きが効を奏して、11月には事前審査、翌平成10年1月には登録審査をパスし、同月30日に認証登録となったわけだ。

 白井町のISO14001取得で特筆すべきことは、一般企業のように民間のコンサルタント会社を介入させていないことである。スタッフが市販本などを頼りに手探りで方針書を文章化していった。この理由について眞仲係長は「行政について実績を持つコンサルタント会社がなかったことと、役場がまず一歩を踏み出すために肩肘を張らずに身近なものからチャレンジしていきたいという考え方があったからだ」と説明する。

 こうして自治体で初の認証となった同町のEMSは、中村町長の権限に属し町が直接実施する事務を適用範囲として取り組んでいく。主なものは、①両面使用の徹底などによる事務用紙の10%削減、②道路舗装等での再生材利用の促進、③ゴミ分別の徹底や生ゴミの堆肥化による廃棄物の減量・資源化、④昼休みの消灯等により電気使用料を一%削減、⑤低公害車の購入、⑥公園等の公共施設での除草剤の使用10%削減――など十数項目にのぼる。

紙・電気の使用削減に実効

 白井町にEMSが導入されてから約一年が経過したわけだが、すでに目に見える効果が出始めている。数字で表せるものでは、平成8年度実績と比較して、平均、事務用紙使用量で22%、電気使用料で4%と、目標を大きく上回った(役場庁舎内)。さらに、窒素酸化物等の排出量の少なさで7都県市が指定している低公害車についても、7台の導入目標に対して6台が購入済みである。これらについては今後とも定期的な監視・測定結果報告書でチェックしていく。

 それだけでなく間接的なメリットも見逃せない。継続的な取り組みが職員の環境への意識改革を促し、担当事務における細かな配慮が期待できるようになったことと、役場が率先してISO14001の活動を推進していることで、住民や町内の事業所への啓発につながっていくことだ。

 もちろん、すべて問題なしというわけではない。とにかく取り組みをいち早く軌道に乗せるという観点からハードルをやや低めに設定したことから、今後毎年の目標設定の際に、より高いレベルをめざすべき項目もある。また目標を達成し削減から維持にシフトするものもあり、継続的な改善を図るためのサイクル、すなわちplan→Do→Check→Actionのアプローチの中で見直しを検討しなければならないだろう。

 そのために、今年度の予算では内部環境監査委員および事務局職員のスキルアップのための研修費を計上し、取り組みの充実を図りたいとしている。(ジャーナリスト・岡村繁雄)

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