1999年1月号Vol.10

【TKC地方行政研究センターから】固定資産税と標準税率

特別研究員 土屋修一

地方分権勧告による規定改正

 平成10年度の地方税制の改正では、地方分権の推進の観点から、個人の市町村民税均等割の制限税率の廃止や、時代に即応した帳簿書類の電子データによる保存等いくつかの制度の見直しが行われたのが特徴的だったといえます。

 固定資産税については、その税率に係る手続き規定が簡素化の方向で改められ、昭和34年の制限税率規定の改正後、実にほぼ40年を経ての税率関係規定(地方税法350条)の改正となりました。内容は、市町村が1.7%を超える税率で固定資産税を課税する場合で、一の納税義務者に係る固定資産税の課税標準の額が市町村のその総額の3分の2を超える場合における自治大臣への事前届出及び自治大臣による税率の修正指示を廃止するとともに、これに代えて、その納税義務者から当該市町村議会に対する意見の申出制度が創設されたものです。

 これは、平成9年7月に出された地方分権推進委員会の第二次勧告の中で、「標準税率を採用しない場合における国への事前の届出等については、課税自主権の尊重の観点から廃止する」との提言をうけて改正されたものです。

税率の自主決定の要請

 ところで、以上は、地方分権の推進の見地から、いわば、形式的、或いは手続的な問題としての解決が図られたもので、それ自体大変意義あるものですが、地方公共団体が、より自主的、自立的に行財政運営を図っていくためには、この税率の設定が地方団体の意思によって実質的に行えるようにすることこそがきわめて重要ではないでしょうか。

 21世紀に向けて、人口の高齢化、少子化問題一つをとっても医療、福祉に要する新たな財政需要が求められるなか市町村税収の大半を支える固定資産税の税率もまたその検討の対象税目の一つと言えます。

標準税率改正の問題点

 しかしながら、これは、標準税率そのものの改正ないし、廃止に関連するものであり、税制面だけでは解決できない非常に難しい問題といわれています。つまり、「標準税率とは、地方団体が課税する場合に通常よるべき税率で、その財政上の特別の理由がある場合には、これによることを要しない税率である。(地方税法1条)」とされ、地方団体の行政運営を保障する財政調整機能としての地方交付税の算定の基礎となっていること、また、標準税率未満適用の地方団体では、学校その他の文教施設、保育所その他の厚生施設、消防施設等の費用の財源として、地方債を充てることができない(地方財政法5条)こととされている等、地方財政制度との密接な関連があり、これらの調整が図られない限り、現状のままでは、直ちには困難と思われます。

 この点については、昨年一月に発表された、『地方税における資産課税のあり方に関する調査研究報告書(財・自治総合センター 調査研究委員会)』のなかで、その主要な意見の一つとして「――今後、地方分権の流れの中で、個々の市町村が、行政サービスの水準に応じて固定資産税の税率をある程度弾力的に選択できるよう検討する場合には、固定資産税のみならず、地方税財政全体の問題として地方税と地方交付税制度の関連、地方債制度のあり方等について幅広い検討を加える必要がある」と指摘されていることが注目されます。21世紀まで七百余日、当面、直ちには困難でも、できるだけ近い将来、税率を課税団体自身が設定できる仕組みが創られることが期待されます。

つちや・しゅういち
1937年香川県生れ。52年香川県庁、60年自治省入省。税務局固定資産税課、固定資産鑑定官等を経て、93年(財)資産評価システム研究センター勤務、96年TKC入社

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