1999年1月号Vol.10

【トレンドView】全国各地で大ブレーク!?平成の藩札『地域商品券』

緊急経済対策として、15歳以下の子どもと65歳以上の低所得者に一人当たり2万円、総額7000億円の地域振興券を支給することが決定した。自治省の発表によると額面は1000円で、利用できる地域は原則として振興券の発行市区町村に限定されるが、店舗が少ない場合などは県単位まで拡大できるとしている。この地域振興券構想の発端となったのが『地域商品券』だ。平成の”藩札“ともいえる地域商品券の動向を探る。

 商品券の形態はいろいろ

 江戸時代に諸藩が財政窮乏対策として発行した藩札は、明治初年までに200藩以上で発行され、単に藩財政の補填ばかりでなく困窮に喘ぐ農民に貸し付け年貢の安定化を図る狙いもあった。一方の平成の藩札『地域商品券』の狙いは、沈滞ムードの地元商店を支援することで地域全体の活気を取り戻そうというものだ。普及啓蒙のため敬老祝い品などを地域商品券に切り替えた自治体も少なくない。

 この市町村の補助を受けて発行される地域商品券は、いくつかの種類に分類できる。まず、発行元が自治体か商店街(または商店連合会など)かどうか。自治体が発行する例では京都・園部町が有名で、園部町総務課によると「当初年間予定の300万円を軽く上回り、11月17日現在で発行額は約525万9000円(4955枚)、うち213万7000円が実際に使用された」という。2点目が期限付きかどうかで、短期的な経済効果を狙うため発行日から3ヵ月や半年という使用期限を設けるケースが多い。

 そして最後がプレミアム付きかどうか。この代表例が東京・港区商店街振興組合連合会(区振連)の『港区内共通商品券』。発行は平成8年9月からと後発だったにもかかわらず、昨年4月に行ったプレミアム付きキャンペーンが大反響を巻き起こしたのである。

 大反響を巻き起こした港区方式

 港区は人口15万2000人、面積20平方キロメートルと小規模だが、新橋駅を中心に一大オフィス街を有し昼間人口は90万人になる。「この人たちを地元商店に取り込みたかった」と港区区民生活部商工課・渡辺泰久課長は語る。

「イベントやアーケードなどの整備で地元商店を支援してきたが、地上げや不況の影響で区内の小売店数は減少傾向を続け、このままでは地域全体が廃れてしまうという危機感があった。区振連からの要望もあり商品券の発行支援に踏み切ったが、10年3月までの売上実績は約9800万円。うち約7700万円が区の敬老祝い品等での使用と、一般利用が少ないのが難点だった。そこで一般の人にもっと利用してもらおうと『いいまち・いいみせ』商品券キャンペーンを実施した」(渡辺課長)

 キャンペーンでは商品券を10万円以上購入すると10%、100万円以上購入すると20%のプレミアムを上乗せし、このプレミアム相当分(6000万円)を区が補助した。ところが購入者のほとんどが区民で、「10万円分の購入が大半」との予想に反し約220件のうち200件が100万円以上を購入。ほぼ2ヵ月で完売となった。これについて「5億円販売する予定が、あまりの反響で補助金が底をつき3億7000万円で終わってしまった」と渡辺課長は苦笑する。

 取扱店は現在2200店舗で、期間中に発売された商品券のうち六割の2億2700万円が使用された。一般に地域商品券の回収率は9割程度といわれるが、港区の場合は使用期限を設けていないため回収ペースはゆっくりだ。現時点で地元商店の売上げにどの程度影響があったのか判断するのは難しいが、少なくとも従来、区外へ流れていた買い物客の流出を食い止める効果はあったといえる。

 この港区の成功をきっかけに、プレミアム商品券は全国各地へ瞬く間に広がった。ここ1ヵ月の報道だけでも千葉市、板橋区、練馬区、世田谷区、須坂市などが名乗りを上げ、中でも11月から発行を始めた川口市では「買い物客の利便性を尊重し釣り銭も出す」(広報課)というもので、発売前から徹夜で並ぶ市民もいたようだ。このような各地の反応に先述の港区でも「プレミアム率を下げ、できるだけ多くの人に利用してもらえるよう購入金額に上限を設けるなどして来年度も継続したい」(渡辺課長)と意欲的な態度を見せている。

 短期的な消費刺激には効果あり

 政府の振興券支給も手伝って、大ブレークしそうな地域商品券だが課題も多い。まずは偽造や不正防止で、港区ではプレミアム分については、①加盟店向けに販売内規を作成、②商品券に連番を付けデータ管理、③購入希望者と契約書を交わし、違約した場合はプレミアム分を返却する、など不正使用防止に努めたという。また、買い物客の利便性の向上という課題もある。一つには取扱店をどれだけ確保できるかで、渡辺課長も「商品券に馴染まない業態もあり100%は無理でも、少しでも加盟率を高めるため商店会に加盟していない小売店にも積極的に声をかけ取扱店になってもらっている」と話す。さらに買い物客の生活圏を考えると広域でという要望があるが、地元商店街が難色を示すことも予想される、などなどだ。

 先進事例を見ると確かに短期的な経済効果は期待できそうだ。だが、ブームの火付け役である港区は「プレミアム商品券はカンフル剤で、長期的には地道な努力を積み重ねるしかない」と冷静だ。

 2000年には大店法が廃止され、商店主にも企業家としての意識変革が迫られている。商品券で買い物に来たお客さんをつなぎ止め、リピーターとするのは最終的には商店自身の問題だ。現実に、各地では商品券とは無関係に、商店街の在り方を変え地元住民という顧客を満足させることで勢いを盛り返す商店街も少なくない。

 いま市町村には変革を遂げようとする商店街や産業を多方面から支援することが求められているが、地域商品券は地域活性化策の一つに過ぎない。長期的な視野に立てば、従来の”縦割り“を見直し、商工担当と都市計画担当が連携するなどしてトータルな地域振興に取り組むことも必要ではなかろうか。(井村 薫)

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