1999年7月号Vol.13

【TKC地方行政研究センターから】住宅ローン減税と個人住民税

特別研究員 逸見幸司

所得税における住宅ローン控除制度の拡充

 所得税においては、住宅取得促進税制として、住宅ローン残高の一定割合を所得税額から控除する住宅取得等特別控除制度が設けられていますが、平成11年度の所得税改正においては、景気対策の観点などから、これを次のように改組し、拡充することとされました。

①平成11年又は12年中に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額を5000万円以下(改正前3000万円以下)とするとともに、その控除率及び控除期間を次のように改める。

▽1年目から6年目まで………1.0%
▽7年目から11年目まで……0.75%
▽12年目から15年目まで…0.5%
(参考)改正前における住宅借入金等の年末残高の限度額、控除率及び控除期間
▽1000万円以下の部分
当初2年間……2.0%(平成12年居住分は1.5%)残り4年間……1.0%
▽1000万円超2000万円以下の部分
6年間……1.0%
▽2000万円超3000万円以下の部分
6年間……0.5%

②適用対象となる住宅借入金等の範囲に、特例対象住宅に係る借入金等と一体として借り入れた償還期間十年以上の当該住宅用地に係る借入金等を加える。

③住宅の床面積要件の上限(240平方メートル)を撤廃するとともに、既存住宅の築後経過年数要件を、耐火建築物は25年以内(改正前20年以内)、耐火建築物以外の建築物は20年以内(改正前15年以内)とする。

住民税において住宅ローン控除制度が
設けられていない理由

 ところで、個人住民税においては、住宅ローン控除制度が設けられていません。その理由は従来から次のように説明されています。

 地方税においては、住宅取得促進の観点から固定資産税や不動産取得税の特例措置など既に多大の配慮を行っていること。

 新たに住宅団地等が建設されたような特定の地方団体においては、学校、街路、公園、上下水道などの公共施設の整備・充実等による関連財政需要が増大するにもかかわらず、他方、このような制度が導入されると、固定資産税及び不動産取得税の減収がある上に個人住民税の大幅な減収を招き当該地方団体の財政に大きな打撃を与えることとなること。

 個人住民税は負担分任を基調とするものであり、地方団体の行政サービスを享受する住民が所得を有するにもかかわらず個人住民税を支払わなくなることは、負担分任という住民税の基本理念に反すること。また、個人住民税には、従来から政策的見地からの税額控除制度は設けられていないこと。

 したがって、平成11年度の地方税制改正の際にも、その創設についての論議がなされましたが、以上の理由のほか、現下の厳しい地方財政に与える影響が甚大であること等の理由により見送られました。

 なお、住宅税制については、平成11年度の税制改正に関する税制調査会の答申において、「住宅税制の拡充に当たっても、将来のあるべき税制を見据え、その方向に背馳しないようなものとすることが必要」であるとされていますが、この特例措置の期間が終了する2年後において、個人住民税における創設問題も含め、この特例措置がどのように取扱われることになるのかその動向に注目しておく必要があります。

逸見幸司
1959年自治省入省。税務局企画、直税各係長、課長補佐、税務管理官、市町村アカデミーおよび(財)資産評価センターの調査研究部長を経て現職

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