1999年7月号Vol.13

【特集:CASE1】小さな改革を積み重ねて財政の非常事態を乗り切る

財政改革/和歌山県下津町

総務課 濵井兵甲課長 / 脇 久雄主幹

所在地
和歌山県海草郡下津町丸田217-1
電話
0734-92-1212
人口
1万5392人(11年5月末現在)
面積
39.83平方キロメートル

──町の概要についてお聞かせください。

濵井 下津町は和歌山市から20キロほどに位置し、和歌山市の生活圏であると同時に農業や漁業も盛んな町です。歴史も古く、町内には紀州徳川家五十五万国の菩提寺・長保寺など文化財も多く残されています。

一二年がかりで巨額の借金を返済

──いま自治体では財政再建に向けた取り組みが本格化していますが、いかがお考えでしょうか?

濵井 そうですね。公債費等の増加により経常収支比率・公債費負担比率などが軒並み上昇し、多くの市町村で財政の硬直化が進んでいます。いま市町村行政は転換期を迎えたといえるでしょう。かく言う下津町も、かつては地方交付税の不交付団体だったのですが現在は大変厳しい状況です。しかし、地域を預かる市町村が破綻すれば、地域住民へのサービスの低下につながりかねません。いま何よりも職員がコスト意識を持つことが必要だと思います。

 はからずも15年前、下津町は元職員が起こした不祥事により巨額債務を抱えてしまいました。実際、職員の給与支払いに懸念が出るほど危機的な財政状況に陥ったのです。その後の町をあげての取り組みで、一昨年に全債務を完済した経験をしました。まぁ、自慢できることではないが、行財政改革では他の市町村よりも一日の長があるといえますね。

──具体的に、どんな取り組みをされたのでしょうか?

 まず手がけたのが『財政健全化計画』の策定です。人件費や物件費などの歳出を徹底して見直し、過去のしがらみで支出していた費用などは真っ先に削りました。もちろん行政事務にかかる経費も徹底して切りつめましたよ。しかし、行政サービスの水準を維持することが最優先課題ですから、財政の健全化を進める一方で必要な事業には十分な予算を投入して、サービス水準は他の市町村に負けないレベルを維持しました。例えば、道路整備なども手がけましたし、学校も二校建て替え、さらに昨年七月には町民交流センター『ふれあいホール』も完成させました。ご覧の通りの オンボロ庁舎 ですが、他にもやることはまだたくさんありますからね。庁舎は一番後回しです(笑)。

──行財政改革の手本といえますね。

濵井 この経験で職員に明確な原価意識が根付きました。住民から税金を預かって地域を運営しているわけですからね。予算要求や予算査定では1000円、1万円で厳しいやり取りをしますし、日常業務でも「この方法が一番なのか、もっと省ける点はないか…」と常に考えながら仕事をしています。この点では橋爪麟兒町長の姿勢が大きく影響しているのではないでしょうか。よく 親の背を見て子どもは育つ というでしょう(笑)。行財政改革を乗り切るには、首長のリーダーシップの下、職員たちがいかに頑張れるかがポイントだと思いますよ。

時代に即した行政手法を模索

──なるほど。その教訓がいまに活かされているわけですね。

 行財政改革というとすぐに人員削減がイメージされますが、これからの地域運営という役割を考えると大規模な自治体ならばともかく小規模なところでは自ずと限界がある。下津町の場合、消防署と町立の女子校を持っており同規模の市町村に比べ職員総数は多いのですが、本庁だけを見れば県内平均を下回ります。現在の職員でどこにも負けない地域運営を推進するためには、当然、民間委託も視野に入れています。より少ない手間と費用でサービスを提供できれば、そこで浮いた分をほかへ振り分けることが可能ですからね。いま庁内の情報化を進めているのもそのためで、具体的な計画は未定ですが早い段階で1人に1台のパソコンを整備したいと考えています。

濵井 長引く景気低迷に、いま民間企業は存亡をかけて大胆なリストラに取り組んでいます。当然、行政にも時代に即した姿が求められているといえるでしょう。それには柔軟に対応できる組織作りも重要です。

 実は下津町では、今年4月から実験的に2名の職員に二つの課の仕事を兼務させています。例えば、ある課に0.5人分の仕事があり、別の課で0.5人分の仕事があった場合、それぞれの課に一人ずつ職員を充てていたのでは余分なコストがかかりますよね。そこで「課をまたがる仕事はできない」という既成概念を取り払ってみようと試みたわけです。従来、プロジェクトチームへの出向という形の兼務はあっても、日常業務の兼務というのはあまりなかったのではないでしょうか。もちろん、兼務する仕事には関連性が必要です。今回のケースでは介護保険制度に備えて、総務課(電算)と福祉課(介護保険)の仕事を兼務する形としましたが、これにより庁内にいい緊張感が生まれました。まだ、スタートしたばかりですが、現状ではまずまずの成果といえるのではないでしょうか。

 それぞれ地域特性があるため、この方法がすべての市町村に当てはまるとはいえませんが、少し考え方を変えるだけでもいろいろな可能性があります。行財政改革はこれからが本番。小さな改革を一つずつ積み重ねながら、大きな改革へとつなげていきたいと考えています。(松尾憲三郎)

記者の目

町役場を訪れると、コスト意識の徹底ぶりが至るところでうかがえる。例えば庁舎内は全ての電灯にスイッチのひもがつけられており、昼休みなど不要なときにはいつでも消灯できるようになっていた。

※掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、取材当時のものです。

※掲載団体様への直接のお問い合わせはご遠慮くださいますようお願いいたします。

  • お客様の声
  • TKCインターネットサービスセンター「TISC」のご紹介