1999年7月号Vol.13

【特集:CASE3】ソフト志向の改革プログラムで県内一の長寿都市をめざす

ビジョン策定/栃木県大田原市

民生部健康福祉課 荒井規夫課長

所在地
栃木県大田原市本町1-3-1
電話
0287-23-8704
人口
5万5048人(11年5月1日現在)
面積
133.97平方キロメートル

──大田原市では行政改革の一環として、会議を立って行うそうですね。

荒井 はい。会議時間の短縮のため、昨年から職員同士の打ち合わせは立ったままで行うことにしました。会議の効率的な運営は事務効率の向上や経費節減につながりますからね。ただ、行革の目的とは 経費の削減 ではなく 住民サービスの質の向上 でしょう。そこで大田原市では、21世紀の都市づくりの中核に「市民の健康づくり」を据え改革に取り組んでいます。

 実は、大田原市は県内で脳疾患ワーストワンと、寝たきりの高齢者が多いところなんです。これからの少子高齢化社会には、要介護とならないように健常者の予防指導を充実することが大切です。住民が一生を通じて幸せに生きることができる地域社会を作る。このために、いま千保一夫市長のリーダーシップの下、県内一の長寿都市を目指して「健康は自分に贈ることのできる最高のプレゼント」をスローガンに掲げ、健康の保持増進に努めています。

 これまでの経緯を振り返ると、平成7年7月に『健康長寿都市』を宣言し、また平成八年度には『健康文化と快適なくらしのまち創造プラン事業』のモデル指定を受けたこともあって、健康づくり行政は一段と加速。さらに平成九年四月には『大田原市民がすこやかに長生きするための条例』も策定しました。この条例は家庭と地域ぐるみで行う健康づくりのため、市民と行政の役割を明らかにしたものです。

──宣言や条例の効果はいかがですか?

荒井 市民の健康管理に対する意識が高まったことで、施策にも取り組みやすくなりました。また、保健・医療・福祉など関係機関との緊密な連携ネットワークが拡がったことも大きな効果ですね。この背景には、やはり平成7年度に開学した国際医療福祉大学の存在が大きいといえるでしょう。

地域の活性化は健康づくりから

──具体的には、どんな取り組みをされているのでしょうか?

荒井 条例や創造プランといった計画の策定だけでは意味がないため、平成九年五月に『大田原市健康長寿都市推進検討委員会』を設置しました。検討委員会にはプランをどのように具現化していくかを提言してもらい、それを市の施策に反映しました。例えば、脳血管疾病の発生を低減するため各地区の公民館へ塩分測定器を置いて、貸し出しをしていますが、これは委員会の提言を受けて実現したものです。

 休日検診もそうですね。生活習慣を改善し疾病予防をするためには、より多くの人に健康診断を受けてもらう機会を作る必要があります。そこで土日の休日検診をスタートしました。以前は主に公民館などで検診を実施していたのですが、大型施設を利用することにより総合的な検診が可能となりました。また、一部有料ですが前立腺がん検診や骨粗しょう症検診も同時に実施し、さらに中小零細企業にも検診を呼びかけたこともあって、受診率は着実にアップしています。

 また、「市民ウォーキング」「市民ハイキング」の実施なども提言をきっかけに始まったイベントです。10月10日前後を市民健康週間として健康増進のための数々の催しを実施するほか、毎年7月14日の健康長寿都市宣言記念日には記念行事として「健康セミナー」を開催しています。これらはすべて、平成10年5月に設立された市民組織『大田原市健康長寿都市推進委員会』が市民の役割として実施しているものです。

──まさにソフト志向の地域づくりを実践されているわけですね。

荒井 そうですね。これら住民個人の検診結果を経年管理するため、今年『TASK健康管理システム』を導入しました。このデータは相談会などで生活習慣改善要指導者への保健指導に役立てたり、未受診者への受診勧奨のために該当者を抽出するなど、幅広く活用しています。

まずは理念ありきの地域経営

──健康づくり行政の拡充のため、組織改革も行われたとか?

荒井 ひと口に「健康づくり」といっても、人それぞれに健康の度合いも考え方も異なります。でも、健康を一つの文化ととらえれば、個人という 点 ではなく教育や地域といった面展開が不可欠であり、これを行政がリードするのは当然のことでしょう。平成12年には介護保険もスタートしますし、そのためには保健課と福祉課を統合した方が住民の健康づくりをトータルで支援できると考え、組織改革に取り組みました。新しく誕生した健康福祉課では、従来の行政サービスに加えて市民が自らの健康状態をチェックできる『健康手帳』『市民健康テキスト』を作成・配布するなど生活指導を充実する一方、健康百科相談窓口を設けて各種健康相談や関係機関への紹介等も行っています。

 このように大田原市の行革の中心には 健康 という理念があります。この理念を実現するためにどんな事業と施策をするかを考える、つまり 健康 という基準が地域づくりの方向性を指し示しているわけです。これからの施策は、生活者を起点として「いかに人生を豊かに過ごし、自己実現を成し遂げられるか」という広い視野での取り組みが重要だと思います。誰もが「大田原市に住んでよかった」と思えるような都市づくりをすること??これが真の住民志向の地域経営といえるのではないでしょうか。(森 研人)

記者の目

大田原市は健康を文化としてとらえ、市をあげて保健事業を推進中だ。特に生涯的健康教育を重要視しているところに市の意気込みが感じられ、確実な成果が期待できる。

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