2012年4月号Vol.86

【特集3】コンビニ交付の最新動向

──平成24年度も支援事業を継続へ

財団法人地方自治情報センター 研究開発部上席研究員 井上賀博

特集座談会では、「市区町村の現場には変化への“不安”とともに、詳細な情報が“不足”していることへの“不満”がある」との指摘がなされた。確かに、自治体クラウドというとネットワークやシステムの仕組みばかりが語られ、業務への影響など具体像はなかなか見えてこない。そこで一例として、従来あまり語られてこなかった大量一括処理など周辺業務について、クラウド活用でどう変わるのかを考えてみる。

井上賀博氏

●井上賀博(いのうえ・よしひろ)
2001(平成13)年4月、財団法人地方自治情報センター研究開発部プロジェクトマネージャに、2006年4月より現職。住基カードの多目的利用の推進を目的とした「住基カード利活用促進事業」のほか、「地域SNSモデルシステム」などの開発実証事業に取り組んでいる。
財団法人地方自治情報センター

 「コンビニエンスストアにおける証明書等の交付」(コンビニ交付)は、平成22年2月2日に3団体でスタートし、以後順調に参加団体数を増やしてきました(サービスの概要は図1の通り)。平成24年3月1日時点では43団体が参加しており、平成24年8月までに55団体へと拡大する予定です(図2)。図2を見ると、参加団体は関東近郊に集中しながらも徐々に全国へ広がっているようです。

図1コンビニ交付の概要

 また、「住民票の写し」と「印鑑登録証明書」に加えて、平成24年1月11日より「戸籍証明書」「戸籍の附票の写し」、平成24年2月1日より「各種税証明書」が発行できるようになりました。コンビニ交付に参加する団体は、このなかから自由にサービスメニューを選択することができます。ちなみに参加団体のサービス状況を見ると、55団体のうち各種税証明書を交付するのは12団体、戸籍謄抄本を交付するのは13団体、附票の写しを交付するのは7団体となっています。

 さらに、サービスの利用状況については、平成24年1月に月間1万通に到達し、翌月には1万3000通を超えるなど、コンビニ交付の件数は着実に増えています。担当者としては月間1万通の利用を一つの目安と考えていたので、まずはひと区切りという感じがしています。

コンビニ交付の効果

図2コンビニ交付の効果

 コンビニ交付の効果には、「住民の享受するメリット」と「市区町村側のメリット」の二つがあります。

 まず、住民が享受するメリットとしては、いつでもどこでも証明書等の交付を受けられる点が挙げられます。

 これまで、住民は住所地の市区町村窓口に出向かなければ、証明書等の交付を受けることができませんでした。これがコンビニ交付であれば、全国の店舗(現時点ではセブン-イレブン)で証明書等を受け取れます。しかも市区町村の開庁時間や曜日などを気にせず、住民の生活に合わせた柔軟なタイミングでサービスを利用することが可能です。

 実際に、ある住民の方からは「運転免許証を紛失した際、運転免許センターまで即日再交付を受けに行ったところ、住民票の写しが必要と判明した。コンビニ交付のおかげで、住所地の窓口まで往復3時間半が不要となり、大変助かった」との声が寄せられました。

 一方、市区町村側のメリットとしては、「業務の効率化」と「行政コストの削減」が挙げられます。

 現在、多くの市区町村で窓口の混雑が常態化しています。これを緩和するための対策として自動交付機を設置するという方法もありますが、自動交付機が高価なことも影響しているのか、いまだに300弱(全体の6分の1程度)の市区町村にしか設置されていません。この点、コンビニ交付は自動交付機を設置するよりも安価にシステム等を整備でき、市区町村が自ら設置する自動交付機の台数よりもはるかに多くのコンビニ店舗をサービス拠点として活用できるという特長があります。これにより窓口の混雑が緩和され、業務の効率化の点でも効果は大きいといえます。

 また、行政コストの削減については、東京都三鷹市の試算では平成22年度実績として証明書等一枚あたりの交付にかかる経費が窓口では639円、自動交付機では380円となっています。これに対して、仮に自動交付機で交付している枚数がすべてコンビニ交付になったとすると、その際の経費は241円になるとのことです。市区町村の厳しい財政状況を勘案しても、この経費の差は見過ごせない“大きな効果”でしょう。

広まるクラウド活用

 市区町村がコンビニ交付に参加する場合、各種システムの整備が必要になります。その取り組みは、(1)証明発行サーバの構築、(2)既存住基システム等の改修、(3)ICカード標準システムの構築、(4)LGWAN公開セグメントの構築、の四つに大別することができます。

図3コンビニ交付のシステム構築

 証明発行サーバ構築の手法としては、庁内にLGWAN公開セグメントを構築して、そこで証明発行サーバを設置するほか、最近では「クラウドサービス」を活用する事例も増えてきました。クラウドサービスの場合、構築や運用にかかる経費が削減できる効果があるともいわれています。これにより、コンビニ交付のシステム構築は図3に示したように、「市区町村単独」「証明発行サーバのクラウド利用」「証明発行サーバおよび既存住基のクラウド利用」の三つの方式が考えられます。

 なお、クラウドサービスについては実際に利用できるのか、あるいはどこまでクラウド化するのかなど、個々の団体のセキュリティポリシー等と照らし合わせた検討が必要になります。とはいえ、いまの時勢を考えると、クラウドサービスも一つの選択肢として比較検討の土俵に乗せるべきではないでしょうか。

マイナンバー制度の影響は?

 今年2月、政府は税金と社会保障の個人情報を一つにまとめる「共通番号制度法案」(マイナンバー法案)を閣議決定しました。この「マイナンバー」制度が始まると、コンビニ交付も少なからず影響を受けます。

 その一つに住基カードの扱いがあり、現時点では以下のように整理されると思っています。

  1. 平成27年1月までは「住基カード」が交付されるが、その後は住民からの申請により顔写真付きの「個人番号カード」が交付される。
  2. コンビニ交付は、平成27年1月以降も交付済みの住基カードで有効期限の範囲内はサービスを利用できる。
  3. コンビニ交付では、必要な情報をICチップ内に記憶させた住基カードを利用しているが、個人番号カードでも同様の取り扱いによってサービスが利用できるようにする。
  4. 住基カードのICチップへの情報の記載は、LASDECが市区町村へ提供する「ICカード標準システム」で対応しているが、個人番号カードについても同システムで対応する予定である。

 これにより、いまコンビニ交付のサービスを開始したとしても、いずれ個人番号カードへ対応する際に大きな投資を伴うことなく、継続してコンビニ交付を行うことができるようになります。その意味でマイナンバー制度は、コンビニ交付にとって「発展的に住民の利便性が向上する制度」と位置づけることが可能です。

 コンビニ交付の取り組みは“紙”で証明書等の交付を受け、行政機関や民間企業に提出することを前提に、少しでも住民や市区町村が便利になることを目的に行っているものです。この点では、「電子政府・電子自治体が推進されているこの時代に“紙”なのか」という声も聞かれるところです。

 しかし、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)が平成23年8月に決定・公表した『行政キオスク端末のサービス拡大のためのロードマップ』においても、〈社会生活や経済活動において本人や居住関係、戸籍等を公に証明する証明書発行サービスは、地方公共団体の重要な行政事務として引き続き提供されるものと考えられる。〉としており、ここしばらくの間は“紙”の証明書を“便利”に受け取れるコンビニ交付が優れた住民サービスとして活用されるものと考えています。

対応するコンビニ事業者の拡大も

 今後の計画については、大きく三つの方向性を考えています。それが、前述のロードマップでも示されている「サービスメニューの拡大」「設置場所の拡大」「導入自治体の拡大」です。

 第一に、サービスメニューの拡大については、平成23年度に各種税証明、戸籍証明書および戸籍の附票の写しにまで対応したので、とりあえず一段落と考えています。ただし、それ以外の証明書等についてもいくつかの方法によって実現することが可能であり、市区町村の要望に応じて対応していく予定です。

 第二に、設置場所の拡大については、複数のコンビニ事業者との間で協議を続けています。これらのコンビニ事業者からは、「キオスク端末となる機器の更新時期に合わせて、前向きに検討する」とのコメントをもらっており、時期に至れば各社からコンビニ交付へ参加する旨の発表があるものと考えます。

 最後が導入自治体の拡大です。

 地方自治情報センターでは、平成23年度までの実証実験事業としてコンビニ交付に参加する市区町村に対して、システム整備への支援事業を行ってまいりました。本来であれば、ここで予定通り事業を終了するところですが、東日本大震災の影響にも配慮し、平成24年度も継続して支援事業を行うこととなりました。

 これに伴い、新たにコンビニ交付へ参加する市区町村の公募を開始しています。支援事業の詳細については、ホームページ等で周知しているところです。6月29日の締め切りに向けて、多くの市区町村からのご提案をお待ちします。

 コンビニ交付は、さらに多くの市区町村やコンビニ事業者の参加を得て、すぐれた住民サービスとして社会へ定着していくものと確信しています。地方自治情報センターとしても、引き続きコンビニ交付の拡充と普及促進へ積極的に取り組んでいきたいと考えています。

※掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、取材当時のものです。

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